1999年、セリーグ6球団を展望して阪神の行方を占う

横浜
 去年優勝したものの、佐々木以外は思ったほど年俸が上がらず、「優勝したらもっと幸せになれると思ったのにー」という嘆き節は、85年優勝の阪神と同じ。優勝に過大な期待を抱き、裏切られたツケが今年に廻ると考えられる。
 しかし、何と言っても優勝チーム。佐々木の疲労が気になるが、斉藤がはじめから全開で投げまくり、ドラフト2位の矢野がローテーションに入れば、投手力もさほど落ちない。ただ中継陣は、給料が上がらず不満気味な上、島田、横山、阿波野が50試合以上の登板で疲労の蓄積が心配。
打撃陣は石井、鈴木はじめこれから脂の乗る年代が多いだけに、今年も優勝候補ではある。もうひとりの外人選手が大当たりでもしたら、これは手がつけられない。

中日
 去年2位に甘んじた屈辱をバネに、今年こそ優勝をとの意気込みは6球団ナンバー1であろう。
 投手力は野口、川上が若干落ちたとしてもFAの武田がローテーションに入れば山本と4本柱で先発陣は完成。サムソンと今中が使えなくてもよし、使えれば投手王国との余裕が持てる。ただ、落合、宣らリリーフ陣の疲労が心配。
 打撃陣はドラフト1位で福留を獲得した以外、これといった補強をしていないのが逆に不気味。この打線では優勝できないことは星野監督も承知しているだけに、今後トレード、外国人獲得に積極的に動くと思われる。

読売
 去年長嶋監督が退団し、森監督が誕生すれば、文句なし優勝と期待されたが、その夢はあえなく崩れた。
 投手は桑田、斉藤が高齢化で期待薄。前科者のガルベスも半年のブランクと心理的トラウマが心配。ドラフト1位の上原と三沢、入来、小野ら若手はちゃんと使ってやれば活躍する選手だとは思うが、長嶋監督と水野コーチにそれを期待するだけ無駄。リリーフは槇原で万全かと思われたが、長嶋監督が「マリオみたいな」外人投手を獲得に動くとの話。さすがチョーさん、やってくれるぜ!
 打撃では松井が全盛期を迎え、清原が落ち目なので、二桁の敬遠という強打者の勲章が、今年の松井には期待できる。あとはみんな自分勝手にやるでしょう。みんな3割打って点は入らない、というチームだから、ここは。仁志、元木、清水、高橋…みんなそうでしょ?

ヤクルト
 ここはもっとも不気味。野村監督退団で誕生した若松監督が「若松イズム」とか言い出さずのほほんとやっているので、いけるかもしれない。
 投手では川崎が去年ほどではないにしても、石井が成長した。シーズン暴投20は、プロ野球史上でも初の素晴らしい記録。今年は20勝、200イニング、200奪三振、20暴投の「20」フィーバーが楽しみ。また、隔年投手の伊藤が今年はいい年に当たっているので期待できる。脱税若手の北川もローテーションに定着し、4本柱はできた。問題は高津に代わるリリーフエース。
 打者では隔年打者の古田が今年はいい年に当たるので、3割、30本は期待できそう。稲葉、飯田も復帰できそうだし、去年よりはやってくれそう。あとは新外国人が頼りですね。

広島
 ここはヤクルトと逆で、達川監督がはしゃぎすぎてチームを壊しにかかっている。12球団随一の練習キチガイで、骨折するまでトレーニングを続ける広島の選手に、更にハードトレーニングを課すなんて、鬼かあんたは。
 投手はとにかくみんな1年目で腕を壊してしまうので、山内、澤崎、佐々岡と新人王を輩出するくせにぜんぜん面子が揃わない。小林、横山もちょっと期待薄。数少ないローテーション投手の加藤の給料が払えず、放出してしまったのも痛すぎる。どうせミンチーも、今年10勝以上したら給料が払いきれないもんなあ…。とにかく、チームのために働けば働くほどチームにいられなくなる選手残酷物語。
 打者は江藤、野村、金本、前田、緒方と円熟した素晴らしいプレイヤーが揃っているんだから、体調に気をつけて休ませながら使えば素晴らしいんだけどなあ。ここ、トレーニングコーチいるのか? ひょっとして、憲兵の拷問みたく、倒れたら脈を取って、「ちょっと危険ですから少し休ませましょう」とかやっているんじゃないだろうか?
 あと、二岡が獲れずに連れてきた外人、あれ、働かんと思うぞ。

阪神
 野村監督の采配に期待。としか言えんなあこのチーム。
 投手は藪、川尻、メイ、井上、山村、中込、と先発陣の数は揃ったが、隔年投手の川尻は今年はダメ年。今年はいい年に当たっている竹内でカバーできるか。それに中継ぎ投手が、シーズン前に小山コーチに潰され、シーズン後に石田部長に潰され、すっかり球威とやる気を失っている。リベラも今年は研究され、サンチェのように1シーズン限りの選手にならないか、ちょっと心配。
 新庄は投手兼任とか遊ばれているが、どうなんでしょうか。坪井も干されそうな予感がしてきた。
 とにかく、今年の阪神は、去年とは顔ぶれががらっと変わることだけは間違いないでしょう。楽しいかどうかは別として。

1999年、阪神の序盤戦を占う

 4月2日、開幕戦(対巨人:東京ドーム)のスターティングメンバーは以下の通り。

 1番 城(センター)
 2番 和田(セカンド)
 3番 濱中(サード)
 4番 平塚(ファースト)
 5番 佐々木(レフト)
 6番 今岡(ショート)
 7番 桧山(ライト)
 8番 矢野(キャッチャー)
 9番 川尻(ピッチャー)

 キャンプまで新聞をにぎわせた新庄は、慣れない投球練習で肘を痛め、外野守備もできない有様で2軍落ちしていた。
 坪井選手はオープン戦で打撃不振に陥り、野村監督に、
「あいつは天才やからな。天才は自分でもなんで打てるか分からんで打っとるんや。だから打てなくなった時も、なんで打てなくなったか、自分でも分からんのや。まして他人が分かるわけない」と見捨てられ、あえなく2軍に送られていた。
 新外国人のジョンソンは、獲得の際に相談がなかったためヘソを曲げた野村監督によって、もはやテストすらされなかった。
 開幕戦で桑田が打てずに濱中の2エラーなどで負け、開幕戦の9連敗というプロ野球タイ記録に並んだ。川尻はその後も3連敗などと振るわず、ローテーションから一時落とされる不振であった。それでも、それ以上の不振にあえぐ読売と広島のおかげで、4月は借金2の4位を保つことができた。

 開幕ダッシュを掛けたのはヤクルト。チャンピオン横浜を石井の快投でねじ伏せ、古田と新外国人の猛打で4月は首位を保った。
 横浜は川村、三浦ら先発陣が崩れ、佐々木に繋げない状態。苛立ちがつのる佐々木は六本木のパブで客と大乱闘を繰り広げ、2週間の謹慎処分。しかも佐々木の横にいた斉藤が右腕を痛め、戦線離脱するというおまけ付きで、まさかの下位低迷。
 中日は久慈と福留の併用がうまく運び、1番李の活躍などあってヤクルトに次ぐ2位をキープ。
 読売は二岡が打撃、守備ともに不安でやむなく川合を二塁にしたものの、清原と松井が揃って打率一割台。斉藤が連日ノックアウトでローテーションを外れるなどで5位。
 広島は開幕の試合に野村と前田と江藤が怪我で出場できない有様で、もはや試合にならず。ぶっちぎりの最下位低迷。

 5月に入ると、濱中が守備の不安からバッティングも崩し、いつの間にかサードは星野になっていた。平塚は4番に座って3割をキープ、大豊の出番はまるでなし。佐々木も2割8分と好調。代打八木を8回以降まで温存する作戦が当たり、なんとか5割をキープ。
 投手陣は期待のルーキー金沢が嬉しいプロ初勝利をあげたものの、川尻の不振は止まらず、横断幕に「もう一度やり直せ!脱税」などと書かれる始末。竹内と山村が代わってローテーションに入り、弓長、伊藤、葛西、吉田、中ノ瀬、清原らの中継ぎ投手陣をだましだまし使う野村継投で、辛うじて投壊を食い止めていた。

 5月にはいると読売が反攻を開始。投手陣崩壊の責任をとって水野を2軍に降格、代わって宮田投手コーチが全権を握ると、入来、三沢、上原をローテーションに入れ、槇原をリリーフエースに戻して快進撃。趙が復帰というタイミングの良さもあって連勝を重ね、ヤクルトと首位争い。ヤクルトは若松監督の投手リレーの失敗が目立ちだし、開幕当初の勢いを失ってきた。
 中日は早く鞭を入れすぎた昨年の反省からか、貯金5前後の状態でじっと首位を窺う。山本、野口、川上、岩瀬、武田、サムソンでローテーションを回し、門倉、島崎、正津の中継陣にできるだけ長く投げさせ、宣と落合を温存する作戦をとる。そのあまりの静けさがかえって気味悪く、中日ベンチはまさに嵐の前の静けさであった。
 横浜が広島とまさかの最下位争い。謹慎処分空け直前の佐々木が、飲みに行ったクラブの客にからかわれ、またも大乱闘。隣にいた宮川がとばっちりで左肘を骨折。度重なる不祥事に、今度は謹慎2ヶ月と3ヶ月分の給料不支給を喰らってしまった。この非常事態に権藤監督の喉は震えるばかり。ついに3600回/秒を数えるに至り、肉眼では確認できなくなってしまった。
 広島は「達川ヨットスクール」「達川・ゲシュタポ収容所」「達川山椒太夫(足を折った選手でも休ませずベンチで声を出させるから)」などと呼ばれ、万人におそれられた。前田はようやく復帰したものの、金本と緒方が疲労骨折で戦線離脱。小林と澤崎が肘を壊して投手陣も崩壊。東出が高卒ルーキーのデビュー一番乗りで善戦するも、焼け石に水。

(続く)


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