記録に見る98年阪神の闘い
1999ベースボール・レコードブック(ベースボール・マガジン社)を参照して作成しました。
1)チームの記録
- 8月6日、横浜のローズに延長14回、3ランホームランをリベラが打たれてサヨナラ負け。その2日後の8日、今度は延長13回、ヤクルトの辻に中ノ瀬が打たれてサヨナラ負け。翌9日にもヤクルトの宮本に遠山が打たれて連日のサヨナラ負け。惜しかったのは7日のヤクルト戦。川崎と中込の投げ合いで8回まで0対0。8回裏に真中がホームランを放って阪神が負けたわけだが、このホームランがもし9回に出ていれば、同一カード3連戦すべてサヨナラ負け(セは1978年9月19,20,21日の中日:対ヤクルト、パは1997年4月22,23,24日のダイエー:対日ハム以来の史上3回目)、4試合連続サヨナラ負け(史上初)という偉業を成し遂げるところだった。
- 開幕戦では横浜・川村投手に初回先頭打者和田のヒット1本という準ノーヒットノーランで完封負けした。開幕戦での初回先頭打者の安打のみの試合はプロ野球史上初の快挙。開幕戦での安打1本という試合はこれを含めて3試合あるが、そのうちの1試合は1996年の斉藤(巨人)が、これも阪神相手に達成した。ちなみに阪神の開幕戦連敗記録は8で続行中。1999年に巨人に負けると、太平洋が1976年から85年にかけて達成した9連敗の記録に肩を並べる。また、今年のセリーグでの1安打準ノーヒットノーランは他に斉藤(巨人)、伊藤(ヤクルト)が記録しているが、ぜんぶ阪神相手である。
- 開幕戦の2日後では延長12回、リベラの投球を定詰が後逸してサヨナラ負け。今シーズン、両リーグ唯一の捕逸によるサヨナラ負けである。開幕戦の捕逸または暴投によるサヨナラ負けにも阪神は縁が深く、過去小林、野田などが記録している。
- 阪神のチーム本塁打数は86でリーグ最低。球場が広いからと言い訳もあるが、広い球場で出やすいはずの三塁打も16で巨人と並んで最低。盗塁は28でダントツ最低。いかに脚も長打力もない選手を揃えているかの証左である。
- チーム失策数は86でセリーグ最多。しかしポジション別には、失策トップの選手はひとりもいない。まんべんなく全員が失策を積み重ねた結果、みんなで勝ち取った記録といえよう。
- 盗塁阻止率も阪神は.289で最下位。特に山田は.244で、1軍定着の選手のうちで最下位。
- 5月7日から6月12日にかけて、甲子園球場で12連敗。これは1970年、ヤクルトの本拠地14連敗に次いで史上2位。また、8月4日から16日にかけては球団ワースト記録となる12連敗。これは、7月14日以来のロード14連敗とも重なっている。よくよく連敗に縁のある年であった。
- 2軍では1986年以来の優勝を遂げた阪神だが、日本一決定戦ではヤクルトに敗れ、胴上げを見ることになった。1軍での横浜の胴上げ(10月8日)、2軍での自チームの胴上げ(9月10日)とヤクルトの胴上げ(10月10日)、計3回の胴上げをすべてグラウンドでで見た選手は濱中。
2)投手の記録
- 2勝3敗27Sでリリーフエースになったリベラだが、イニング最初から投げると36試合で2勝1敗23セーブ、救援失敗が1回だけという好成績。しかしイニング途中で交代したケースでは8試合に登板して5回の救援失敗(2敗3セーブ)と別人のように悪い。
- 中込は8勝13敗でセリーグ最多敗。防御率も4.78と最低。完投は1回、完封0回も規定投球回数の投手では最低。見事投手4冠王に輝いた。桑田(巨人)の自責点82(中込76)、伊藤(ヤクルト)の勝率.353(中込.381)さえなければこちらも頂いたのだが。
- ファンの間でも論議が盛んな、藪と川尻のエース争い。今年の成績だけを取ると川尻やや有利か。藪は横浜戦に5試合登板して1勝3敗、中日戦に4試合登板して0勝3敗と、上位チームにほとんど勝っていない。それに対し川尻は横浜戦に6試合登板して2勝2敗、中日戦は8試合に登板して5勝1敗。ただし、川尻は広島戦1試合登板で勝敗なし。これは相性か単なる巡り合わせか?
- しかし、通算成績では藪に軍配が上がる。97年10勝、98年11勝と、2年連続二桁勝利。川尻はこれまで、2年連続好成績を残したことのない、いわゆる隔年投手。95年から8勝、13勝、5勝、10勝。
- 川尻と相互補完的な隔年投手が竹内。95年以降の成績は10勝、3勝、8勝、3勝。川尻と竹内を合計すると、18勝、16勝、13勝、13勝と、安定した15勝投手が出来上がる。
3)打者の記録
- 桧山は101三振で惜しくも江藤(広島)の103三振に及ばなかった。昨97年も清原(巨人)の152に及ばぬ150三振で、2年連続のブービー賞。150が101に減ったから進歩したという見方もあるが、それは誤り。単に出場機会が減っただけ。97年は466打数で150三振(3.1打数に1回の三振)が、98年は398打数で101三振(3.9打数に1回の三振)で、確率としてはあまり変わらない。
- 三振といえば他に新庄と大豊。新庄は昨年の120三振から65三振へ大幅減少したが、本塁打も20本から6本に激減。しかし通算では627三振と、セリーグ現役選手では広沢(巨人)の1387、池山(ヤクルト)の1301、駒田(横浜)の972、大豊(阪神)の858,小早川(ヤクルト)の805、江藤(広島)の685、野村(広島)の651に次いで8位と健闘。大豊は出場試合が減ったため94三振に留まったが、307打数だから3.3打数に1回の三振となり、今年に限っては桧山以上の確率である。
- 桧山は通算でも1754打数で472の三振。3.7打数に1回の三振である。池山、大豊の4.1打数に1回、広沢の4.2打数に1回の三振を遙かに引き離しており、セリーグ現役選手ではナンバーワンを誇っている。
- 1本塁打あたりの三振数で見ると、江藤は3.7三振で1本、松井(巨人)は3.0三振で1本。池山は4.4、広沢は5.3となる。阪神勢では、大豊が4.5、新庄が10.8、桧山が6.7と、やはり他を圧倒している。
- 阪神の本塁打三傑は大豊(21本)桧山(15本)ハンセン(11本)だが、本塁打の出た試合の勝敗は、大豊が9勝12敗、桧山が5勝9敗、ハンセンが6勝4敗と、勝利にまったく貢献していない。
- ハンセンは11本塁打を放ったが、1位横浜、2位中日からは1本も打っていない。巨人3本、ヤクルト5本、広島3本と下位チームの、しかも二線級投手からしか打っていない。11本のうち5勝以上の投手から打ったのはたった4本、4勝以下の投手から打ったのが7本。特にヤクルト戦では、川崎、石井などエース級からは全く打たず、5本すべてがドリスキル、エイカーら2線級投手相手。これでは解雇も仕方ないか。
- 桧山は対中日開幕戦の4月7日、2打席連続ホームランを放って好成績を予感させた。しかしその後、中日戦では全くホームランを打っていない。もっとも、他の選手も、大豊1本、ハンセンと新庄は0と、中日戦ではまるで打っていない。
- 新庄は今年6本のホームランを打ったが、そのうち5本はソロホーマー。本塁打が出たときの勝敗も2勝4敗と、注意して投げれば必ず抑えられる与し易い打者ぶりを表している。大豊も正確にはわからないが、21本のうち少なくとも11本はソロホーマー。
4)守備の記録
- ハンセンは17失策で3塁手としては2位(1位は広島・江藤の26)だが、9月23日にはヤクルト戦で1試合3失策のセリーグタイ記録を樹立。ちなみに1試合での失策は5月24日に阪神−横浜戦で新藤、谷繁、ハンセン、桧山、メイの5失策が今シーズンのタイ記録。
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