野望〜打倒!ダイエーへの道〜


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9月1日(月)

打倒!ダイエーへの道〜打撃編〜
 長く苦しいロードも終わり、ようやく優勝への曙光が見えてくるようになりました。さすれば来月は日本シリーズです。敵はおそらく鷹軍団。福岡ダイエーホークス、あなどれない強大な力を持った球団です。そのダイエーホークスに、わが阪神タイガースが勝てる可能性はあるのか? 絶対の強者ダイエーホークスに、つけいるべきアキレス腱はあるのか? これからそれを検証していこうと思います。敵を知りおのれを知らずんば百戦して百敗なり。

 まず、ダイエー打線の個々の選手について確認していきましょう。打順は、日本シリーズでDH制採用のときに想定される打順です。
1番:柴原洋(中堅手・左打) 村松が怪我で代役のトップバッターだが、昨年まで1番を打っていたように実力は十分ある。俊足強打攻守のおそるべき選手。特に右中間への打球が伸びるので注意が必要。足は速いが盗塁技術はないらしい。現西武の高波みたいなもんか。
2番:川崎宗則(三塁手・左打) ことし売り出した久保田世代の若い選手。強肩攻守の内野手。その卓越したミート力で左へ流すことが多い。足は速く、塁に出たら盗塁をじゅうぶん警戒すべき選手。
3番:井口資仁(二塁手・右打) 日本を代表する選手といっても過言ではない。金本の脚力と長打力が衰えたいま、もっともトリプル3に近い男。ミートは巧く、エンドランなどの時は確実に一二塁間にころがす。しかし振りにいったときは右中間に特大のホームランを飛ばす。また塁に出たら走るので手がつけられない。守備範囲も広く、肩が強いというおそるべき選手。
4番:松中信彦(一塁手・左打) 打球のスピードは金本にまさるとも劣らない。鋭いライナーを飛ばすことが多く、そのままスタンドに飛び込むこともしばしばある。外野手は目測を誤らないよう注意すべき。唯一の弱点は膝が悪いことで、後半戦はしばしばスタメンから外れている。
5番:城島健司(捕手・右打) 日本を代表する捕手。座ったままで二塁に矢のような送球を送ることができる、日本で唯一の男。足も速く、しばしば盗塁する。打撃はものすごい。ミートがうまくパワーがむちゃくちゃで打点がすでに100を超えているというのだから、どうにもならない。ただ相当のむら気で、一試合6安打という記録を作るかと思えば、5打数ノーヒット3三振ということもある。まずはささやき戦法で気を腐らせることが必要か。
6番:ペドロ・バルデス(左翼手・左打) 外国人選手にはめずらしく選球眼があって変化球打ちが巧い。どちらかというとリーディングヒッタータイプの選手。むしろ速球に弱いので、高めに速球で攻めると空振りがある。ただし速球は150キロ以上でないと打ち返される。
7番:フリオ・ズレータ(DH・右打) こちらは典型的な外国人選手という感じの打者。大振りで三振をいとわず本塁打を量産する。落ちる変化球に弱いと思われる。守備は一塁以外はありえないと思われる。なにしろ来日当初ライトを守らせたら打球を追わずにヒットを三塁打にしたし、その翌日サードを守らせたら3エラーしたし。
8番:高橋和幸(右翼手・左打) 現在のところ、右投手なら高橋、左投手なら出口という起用らしい。松田か大越がここに入ることもある。あまり注意してみたことがないのでわからないが、勝負強く粘るタイプの好打者らしい。
9番:鳥越祐介(遊撃手・右打) パルプンテ鳥越の異名を持つ。鳥越がヒットを打ったときには天変地異が起こるとも言われる。鳥越が打点を上げた試合は13勝0敗でラッキーボーイともいわれるが、これまでフル出場して打点を上げたのが13試合だけという方に問題があると思われる。
代打:大道典嘉(右打) たまに松中と交代して一塁を守ることもあるが、ほとんど代打専門。長打はあまりないがミートがうまく、しぶとく粘る。
内野手:本間満(左打) 代走、守備固めとして登場すると思われる。打撃は気にする必要がない。
外野手:荒金久雄(右打) 代走、守備固めとして登場すると思われる。打撃は、スクイズバントでど真ん中のストレートとバットが30センチ離れているくらいの実力。
外野手:大越基(右打) 守備はうまく恐るべき強肩だが、打者としてはたいしたことはない。
外野手:松田匡司(左打) 佐久本とのトレードで阪神から移籍。その地位は阪神における佐久本程度。
外野手:出口雄大(右打) 代打、代走、守備固めとして登場すると思われる。打撃は気にする必要がない。
怪我人:小久保裕紀(右打) 4番サードだったがオープン戦でアキレス腱を切り離脱。シリーズ出場は不可能。
怪我人:村松有人(左打) 1番センターだったがシーズン中に鎖骨を折り離脱。シリーズ出場は不可能。

 では次に打線全体としての印象を。
 まず、ダイエー打線は左右の打者がうまくジグザグになっており、しかも豪打タイプと好打タイプでもジグザグ打線になっているということです。ということは、ワンポイントリリーフの投入がとても難しい。吉野をせっかく出しても、打者ひとりで交替させねばならず、リリーフのやりくりがひじょうに苦しくなる、ということです。その点、片岡を4番にすると赤星金本片岡と左打者が続く阪神打線より厄介です。
 次にダイエー打線は、ひとたび打ち出すとみんな打つ、ということ。先日のオリックス戦26得点で見たように、ちょっと力の劣る投手だといっせいに襲いかかって無慈悲なくらいに打ちまくり容赦なく点を取ります。なにしろチーム打率3割という、おそろしい打線です。鳥越の分をカバーしても3割ですから、鳥越以外は3割2分打つと思った方がいいでしょう。ああ、なんとおそろしいことでしょう。その点、片岡や広沢など慈悲深い選手の多い阪神打線とは大違いだと言えましょう。
 しかもダイエー打線は、柴原川崎井口の3人がいつでも走れることができます。阪神は1番今岡、4番片岡という塁上のお地蔵さんがいることもあって、走ることは赤星ひとりにまかせきりです。あとはせいぜい、金本と藤本がダブルスチールに参加する程度です。ダイエー投手は、赤星の足だけ警戒しておけばよいことになります。しかし阪神投手は、1番から3番まで、だれが塁に出ても警戒しなければなりません。これが原因で投手が崩れる可能性は多分にあります。

 こうして見ていくと、ダイエー打線を抑える術はないように思えてきます。しかし、光明はひとつあります。
 日本シリーズは半分がセリーグ主催です。具体的には、1,2,6,7戦は福岡ドームのダイエー主催試合、3,4,5戦は甲子園の阪神主催試合と決まっています。そして、阪神主催試合ではDH制を採用しません。ということは、ズレータか松中が抜けるということです。
 王監督は頑固なまでに型にこだわり、自分の型を崩す奇策を好みません。ですから松中にライトを守らせるなどという奇策は採用せず、ズレータか松中をはずすでしょう。となれば、ダイエーの下位打線は大越(もしくは松田)鳥越投手と、1イニングは0点が期待できることになります。あるいは城島とバルデスを敬遠して下位の3人で楽にアウトを取るという作戦もあります。そこを突破口としてダイエー打線の繋がりを崩す可能性はあります。


9月3日(水)

打倒!ダイエーへの道〜投手編〜
 続いて投手陣の分析へ。

先発投手
斎藤和己(右) 通算9勝の投手が右肩痛から復活して8年目の大ブレイク。絶妙のコントロールを武器に16連勝中と、抜群の安定感を誇る。肩をいちどやったせいか、中6日の登板間隔が必要で、完投も少ないのが唯一の欠点か。直球はコントロール重視で140キロ前後だが、長身のため落差があり打ちにくい。さらに落ちるカーブ、スライダー、カットボールでカウントを稼ぎ、フォークで仕留める。カウントを稼ぎにくる早めに打った方がいいと思われる。あるいは粘って球数を投げさせて、投手交代をじっと待つか。ちなみにむかしダイエーに斎藤姓の選手が多すぎて、カズミだのミツグだのマナブだの呼ばれていたことは、王監督すらすっかり忘れている。なんせ他の選手みんな消えたもので。
和田毅(左) 前評判通りチームの大黒柱となり、新人王当確の超エリートルーキー。速球は145キロ弱だが、多彩な変化球と絶妙の制球で強打者をなで切りにする。牽制もうまく、しばしば走者を刺す。球質が軽いのか、被本塁打が多いのが残念なところ。
ブランドン・ナイト(右) 150キロ超の速球を主体に、カットボール、大きく落ちるカーブで攻める。荒れ球で相手打者にコースを絞らせない。荒れっぱなしのことも多い。
杉内俊哉(左) ストレートとカーブのコンビネーションで初芝やサブローを翻弄するロッテキラー。かつてはロッテにしか勝てなかったが、後半戦はオリックスにも勝てるくらいに成長した。来年は日本ハムに勝てるクラスの投手へ、飛躍が望まれる。好投していて突如炎上するという、藪病を患っている。藪はピンチになると頭に血が昇ってわけがわからなくなるが、こちらはピンチになると腕が縮こまって置きにいくタイプかもしれない。あるいはリードを守ろうとすると失敗する金沢タイプか。四球から崩れるのがパターンなので、四球の後は強気に攻めるのがポイント。
水田章雄(右) 谷間で投げたり、中継ぎしたり、二軍で投げたりと忙しい。ストレートに威力がある。ピックオフプレーがうまいので、走者は気をつけるように。
寺原隼人(右) だいたいローテーションで投げているが、ときどき滅多打ちされて中継ぎに降格される。その九州人らしい抜群のファッションセンスは常にファンを魅了する。150キロ超の速球を持つが、本人曰く「速球は捨てた」ということで、速球を見せておいてカーブやチェンジアップで打者を翻弄するピッチング。ただし若いのでよく自分が翻弄される。某掲示板では「テラモンテ」と呼ばれて愛されたり憎まれたり笑われたりしている。
倉野信次(右) 水田、寺原と「谷間トリオ」を結成している。
新垣渚(右・離脱) 155キロの速球と大塚(中日)なみに落ちるスライダーを武器に快投する。オープン戦で阪神打線を7回ノーヒットに抑えたことは記憶に新しい。弱点は制球難で、いったん乱れると修復できない。そのためいいときは完封、悪いときは序盤でノックアウトという勝ち負けトントンの成績。8月に右足首を負傷し離脱。日本シリーズでの登板は微妙。

中継ぎ投手
吉田修司(左) 37才の高齢ながら、毎日毎日報われない中継ぎに黙々と登板する。今期中に通算500試合登板を達成しそうな勢い。正直、並の左投手なのだが。
渡辺正和(左) 吉田とともに「年寄りの冷や水コンビ」を結成。速球は140キロ弱。右投手だったら5年前に解雇されてたかも。
岡本克道(右) いちおう勝ちパターンのセットアッパーとして、吉田とともに篠原に繋げる役割を担っている。140キロ弱の速球と絶妙のコントロールで、なんとかピンチを凌いだり凌がなかったりする。
吉武真太郎(右) むかぁしローテーション投手だったが、過去のことは本人も周囲もすっかり忘れて中継ぎに安住。140キロ以下の速球、130キロ程度のスライダー、110キロ程度の落ちるスライダー(カーブ?)をアバウトなコントロールで投げ分けるという、並よりちょっと下の左腕投手。落ちるスライダーに引っかからない限り三振の心配はない。
佐藤誠(右) 140キロ弱の速球と5キロほど遅いカットボール(抜いたストレート?)で幻惑し、120キロ程度の落ちるスライダーを振らせる投手。コントロールがいいので落ちる球に注意。
(右) たぶん見ることはない。
永井智浩(右) 篠原ともども、99年を絶頂としてジリ貧状態だったが、こちらはジリ貧からいまだ脱しきれていない。しかし毎年3勝くらいはコンスタントに勝てるので、トレード要員としてはかなり活躍するのではなかろうか。日本シリーズ? 出てきてくれたら嬉しいけど。いちおう、フォークが武器。やや制球難。
溝口大樹(左←利き腕でなく酒のほう) 高卒ルーキーながら、「寮の門限を破って逃げ出した車が人身事故を起こし謹慎処分」「寮の門限を破って塀をよじのぼろうとして転落負傷し謹慎処分と罰金」など、ベテラン選手でもなかなかできない偉業をつぎつぎとなしとげている。博多では「私生活なら豊田泰光二世」と呼ばれているゴールデンルーキー。あと残されているのは「野次に怒って客を殴り告訴される」「飲み屋で素人娘をレイプ」「賭け麻雀で書類送検」「覚醒剤所持で逮捕」「野球賭博で永久追放」「闇金に借金して失踪」くらいか。がんばれ。君ならきっとできる。
スクルメタ(右・離脱) シーズン前半はリリーフエースだったが肩を壊して離脱、帰国。もう逢うことはないでしょう。
山田秋親(右・離脱) かつて「新人王確実」「ダイエーのエースは十年間はこいつ」とまで言われた投手も、たまに一軍に昇格して敗戦処理する程度の選手になってしまった。「ダイエーのスカウトは有能だがコーチが無能」と言われる原因となったひとり(他に山村、松、小椋、溝口、広田、吉本、的場など)。骨折でリタイア。復帰したかどうかは誰も気にしていない。
田之上慶三郎(右) 二年前に13勝を挙げ、昨年は開幕投手を勤めるも、今年は一軍登板なし、二軍で3勝のみ。
星野順治(右) 二年前に13勝を挙げるも、今年は一軍登板なし、二軍で1勝2敗とさんざんな成績。永井、田之上と並んで「トレード要員三羽烏」を結成する。めざすは打てる内野の控え、秀太か上坂だ。

抑え投手
篠原貴行(左) 99年の優勝時の大活躍後はジリ貧状態で低迷していたが、今年の後半からリリーフエースとして復活。以前の150キロを超すストレートはもうないが、球の伸びはほぼ復活した。内角を突く度胸と大きな変化球で打者を打ち取る。

 このチームの投手陣ははっきりしています。先発がすべて。斎藤、和田、ナイト、杉内と続く先発陣はリーグトップ、いや阪神先発陣より上でしょう。とくに斎藤、和田の両エースは、コントロールとコンビネーションで、のらりくらりと打ち取るタイプ。今年、阪神がもっとも苦手とするタイプの投手です。ナイトのように荒れ球で球種が絞れないタイプも阪神は苦手。
 ところがいったん中継ぎにスイッチしたら、ダイエーは12球団最弱、いやそれは巨人とオリックスに失礼かな、まあ少なくとも優勝チームとは思えないくらいの弱体になります。勝ちパターンで出てきそうなのは岡本、吉田、渡辺あたりでしょうか。はっきりいって研究しなくても打てそうです。敗戦処理なら吉武か輝でしょうか。10点くらい取れそうです。抑えの篠原にしても、けっして打てない投手ではない。

 ダイエーの王監督もそこのところは重々承知していると思われるので、シリーズ用に選手起用を変えてくるかもしれません。黄金時代の西武が、シリーズになるとエースの東尾をリリーフに回したように。
 まず問題は先発のローテーションです。斎藤は中6日でないと無理っぽいので、斎藤和田で1,2,6,7戦をまかなうとして、あと3人先発が必要です。ナイト、杉内、そして水田か倉野。あるいは間に合えば新垣か。
 となると考えられるのは、寺原の中継ぎ起用です。球が速く、若いのに老獪なピッチングを見せる寺原でなんとか繋ぎ、篠原までしのぐ。
 あるいは寺原に先発させて杉内中継ぎか。けっこう杉内、中継ぎでは好投している印象があります。藪と同じで、中継ぎでは炎上病が発病しないのかもしれません。
 一部報道では、「新垣復帰、シリーズのリリーフ起用」とも報じられています。ただしこれは、ただでさえ治ったばかりの新垣を酷使して完全に選手生命を絶つ可能性があるので、あまりおすすめできません。新垣も篠原や永井みたいになって、5年後に「新垣、3年ぶり涙の復活勝利!」なんてことにはなりたくないだろうしねえ。

 むしろ恐るべきは、シーズン終盤で何回となく炸裂した恐怖の王采配「肉を斬らせて骨を断つ」作戦。先発を早めにあきらめ、吉武や渡辺など、敗戦処理としか考えられない投手を出して失点してみせ「ああ、今日は勝ったな」と相手チームを安心させているうちにガンガン打って追いつく。そこでふたたび本気になった相手打線に篠原がつかまり、「リリーフエースを潰したんだから、今度こそこっちのもんだ」と安心させておいて猛打爆発の大逆転勝ち、というパターンです。別名「篠原デコイ作戦」とも呼ばれています。


9月5日(金)

打倒!ダイエーへの道〜采配・用兵編〜
 まず王監督の采配ですが、阪神が前回優勝したときの巨人監督時代から、あまり変わってはいないように見えます。
 監督の采配傾向は、帰納法采配と演繹法采配のふたつに大別できると思います。帰納法采配とは、選手の能力から「この選手なら、いまどんなプレーが可能か」と考えていく采配。演繹法采配とは、その逆に状況から「この状況では、どのようなプレーをすべきか」と逆算していく采配。たとえば阪神が9回裏に1点負けていて、先頭の金本が二塁打という場面。ここで次の片岡にバントを命じるのが演繹法采配、勝手に打たせるのが帰納法采配といえましょう。どちらが名監督か、というのはありません。演繹法采配の名監督には西本監督や森監督、帰納法采配の名監督には三原監督や仰木監督があげられるでしょう。
 その分類でいうと、王監督は典型的な演繹法采配。前に「王監督は型にこだわる」と書きましたが、「ここはバントすべき」「ここは低めに投げるべき」というセオリーを大事にするタイプの監督です。
 具体的にいうと、まず左右にこだわる。左投手なら右打者、右投手には左打者、というセオリーを大事にします。だから左の強打者に吉田や渡辺などの左腕投手をぶつけることが多いし、相手の先発投手によって左の高橋と右の出口を使い分けたりします。ただこれがちょっといきすぎて「左右病患者」と呼ばれることもあります。高橋選手と出口選手、すでに打率に1割近い差がついていながら、いまだに愚直に使い分けているのもそのひとつかもしれません。
 そして敬遠が多い。王監督の敬遠というとバース、カブレラ、ローズの本塁打記録阻止が有名ですが、ここでいう敬遠は作戦としての敬遠です。これも左右にこだわるあまり、左投手が投げているときには、右打者を敬遠して左打者で勝負する、という場面が多いのです。たとえば左の渡辺投手が投げていれば、藤本を敬遠して今岡で勝負、などという場面もじゅうぶんにあり得ます。本来ならそのために、阪神打線もジグザグにして敬遠でランナーを溜めたいところです。
 序盤では大量点を狙ってエンドラン、終盤は一点を大事にバントというセオリーにも忠実です。特にフルカウントで、一塁ランナーがスタートを切ることが多い。けっこう鈍足のランナーにもスタートを切らせるので、三振を取ったらゲッツーを取れる可能性が高い。終盤のバントは、松中、城島以外の選手ならだれにでも命じます。まあこれは、四番の原にもバントさせた巨人監督時代よりはましになっていますが。盗塁はあまり好きではない。村松や井口は、自由に走らせていればいまごろ赤星と同じくらい盗塁していても不思議ではないのですが、おそらくあまり盗塁のサインが出ないのでしょう。もともと村松が今年レギュラーを再奪取するまで長期低迷していたのは、王監督に「勝手に走るな」と盗塁禁止令を出されたせいもありました。

 投手交代や代打起用は、決してうまいとは思えません。私がダイエー選手に無知なせいが多分にあるでしょうが、接戦で敗戦処理投手を投入し、失点してから勝ちパターンの中継ぎに交替させたりすることがよくあるように思えます。また、左右にこだわりすぎるせいか、打率の高い選手を低い選手に替えたり、ワンストライク取られてから代打や代走を告げるようなタイミングの遅れも見られるように思います。

 演繹法采配の監督によくあることですが、王監督は頑固でもあります。いちど決めたことはなかなか変更しない。
 そのためいい結果が出たこともあれば、悪い結果になったこともあります。小久保や城島を使い続けて大選手に育てあげたのはいい結果といえましょう。小久保の代役に川崎を据え続けて成功したのもいい結果です。あれほどの低打率にもかかわらず、鳥越を使い続けているのはいいか悪いか、微妙なところです。
 悪い結果はおもに投手陣に出ています。ダイエー投手陣は若い。若すぎます。主力がルーキーの和田と新垣、2年目の寺原と杉内、6年目の篠原、8年目の斎藤、そして外国人のナイトという構成なのはなぜでしょうか。ここ数年若手が伸びなかったというのもありますが、前回優勝時に活躍した若い投手たち、永井、田之上、星野、吉武らはどうしたのでしょうか。
 ほとんど潰れています。永井は右肘を壊し、吉武は右足痛。岡本は右肩痛。星野は指の血行障害。いまは元気な倉野や斎藤や渡辺や篠原も故障リタイアした経験があります。今年もすでに寺原、ナイト、新垣がリタイアしています(寺原は2年連続)。ついでにいえば、すでに退団した投手でも、若田部、西村、佐久本らに故障歴があります。ダイエーの主力投手で故障しなかったのは、先手を取って休んでいた工藤投手と、どんなに投げても壊れない特異体質を持つ下柳投手くらいなものです。
 これには選手の自覚不足もあるだろうし、かつて村松選手が指摘したように球団のトレーナーが未熟なためもあるでしょうが、いくぶんかは王監督の起用法にも原因があると思うのです。
 さきほども述べたように王監督は頑固で、なかなか選手の起用法を変えようとはしません。巨人監督時代に「ピッチャー、カトリ」がギャグになったように、中継ぎでひとりの投手がいいとなったら、その投手を勝ち試合でも負け試合でも使います。登板間隔や疲れを無視して使い倒します。そのうち疲労がたまって打たれだしたら、そこでやっとその投手を諦めます。その典型が昨年序盤の飯島投手でした。下位指名のルーキーながら、「魔球」と呼ばれるほどのシンカーを武器にめきめき売り出した飯島投手は、リリーフ投手としてほとんど毎日投げさせられていました。そして、早くも一ヶ月後には潰れました。それ以降、飯島投手はまだデビュー時の球威を取り戻せないでいます。

 なんだか王監督糾弾みたいになってしまいました。これは決して本意ではなく、ただただお互いベストの状態で好試合をやりたいからです(本音:ぶざまな采配しくさって自滅しやがれ)。とりあえず阪神としては、投手交代や代打の機会をできるだけ多く作り、王監督を迷わせることが肝要といえましょう。そのためにもできれば、ジグザグ打線を組みたいのだがなあ。1番赤星(中)、2番今岡(二)、3番金本(左)、4番八木(DH)、5番片岡(三)、6番アリアス(一)、7番桧山(右)、8番矢野(捕)、9番藤本(遊)なんてのはどうだろう。

 最後に城島捕手について。
 王監督のもとで育ったせいか、城島のリードはほぼ教科書通りのオーソドックスなリードだと思います。内角高めに速球と外角低めの落ちる球のコンビネーション。ただし緊迫した場面で強打者には外角一辺倒。同じコースに同じ球を続けて投げさせることはあまりありません。打者の苦手な球より、投手の得意な球を投げさせるタイプではないでしょうか。だから球に力のある投手しか成功しない、力の落ちたベテラン中継ぎを使いこなせない、という面はあるかもしれません。とりあえず、裏をかかれる心配はしなくていいと思います。
 あまりデータを活用するタイプではないように思えます。データを分析して打者の傾向を調べるよりは、バッターボックスの中での挙動から狙いを察知する、肉体派捕手ではないでしょうか。打者はあまり動かない方がいいかもしれません。
 パスボールはわりと多い方です。シーズン序盤は新垣のスライダーをぽろぽろやらかしていました。基本的に目立ちたがりなので、投手に牽制させるより自分で一塁に投げる方が好きそうです。肩はとても強いので、走者は要警戒。

おまけ:永訣の夜(大ちゃんスレに投稿しようとしたら、文字数超過でハネられてしまった。しかし宮沢は大ちゃんと相性がいいな)
 けふのうちに
 とほくへいつてしまったわたくしのばんちゃうよ
 ぼうしがなくてベンチはへんにあかるいのだ
      (しろぼしとてちてだいちゃ)
 うすきいろくいつそう陰惨なスタンドから
 風船はびちょびちょふつてくる
      (しろぼしとてちてだいちゃ)
 青い星のもやうのついた
 投打ふたつのかけた球団が
 おまへがたべるしろぼしをとらうとして
 わたくしはまがつたてつぽうだまのやうに
 球審にギャラードのなまへを告げた
      (しろぼしとてちてだいちゃ)
 黄色のいろの明るいベンチから
 矢野はびちょびちょ進んでくる
 ああ三浦
 負けるといふいまごろになつて
 わたくしをいつしやうあかるくするために
 こんなさつぱりとしたたつたひとつの勝ちを
 おまへはわたくしにたのんだのだ
 ありがたうわたくしのけなげなばんちゃうよ
 わたくしもまつすぐにすすんでいくから
      (しろぼしとてちてだいちゃ)
 はげしいはげしい熱い快投のあひだから
 おまへはわたくしにたのんだのだ
 巨人やヤクルト 阪神などとよばせた別せかいの
 そこからおちた星のさいごのいっしゃうを……

 ……ふたけたのまけこしのあいだに
 さびしくたまつたかちぼしである
 わたくしはマウンドにあぶなくたち
 デニーとギャラとのまつしろな二相系をたもち
 つめたいふんいきの甲子園のなかから
 わたくしのやさしいばんちゃうの
 さいごのかちぼしをもらつていかう
 わたくしたちがいつしよにそだつてきたあひだ
 みなれたよこはまのこの青のもやうにも
 もうけふおまへはわかれてしまふ
    (Ora Ora Matamo Maguno)
 ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ
 あああのとざされた球場の
 くらひ空気のぶるぺんのなかに
 やさしくあをじろく燃えている
 わたくしのけなげなばんちゃうよ
 この星はどこもまつしろなのだ
 あんなおそろしいかちすすむチームから
 このうつくしい星をとるのだ
   (うまれてくるたて
    こんどはこたにわりやごとばかりで
    くるしまないよにうまれてくる)
 おまへがたべるたったいつつのかちに
 わたくしはいまこころからいのる
 どうかこれが奇跡の天の星に変つて
 やがておまへとみんなとに
 聖い優勝をもたらすことを
 わたくしのすべてのさいはいをかけてねがふ

   ……自分で書いていて泣けてきたのはなぜでしょうか。


9月21日(日)

打倒!ダイエーへの道〜阪神編〜
 対ダイエーへの阪神側の布陣について考えてみましょう。
 まず投手陣について。
 ダイエー打線を抑えるためには、最低でも145キロの速球を持っていることが必要だと思われます。いくら変化球がよくても、速球がそれくらいなければ、ダイエーの打者は騙されてくれません。
 井川は必要条件を満たしています。ダイエー打線にもじゅうぶん通用するでしょう。できれば1、4、7戦に出てほしいくらいです。
 伊良部もその条件は大丈夫なんですが、問題はクイックや牽制が下手なこと。井口、川崎、柴原をはじめとする選手に走りまくられて崩されることは充分考えられます。
 下柳は難しいところ。速球が条件を満たしていないし、去年パリーグでさんざんな成績でしたからね。通用しないと考えたほうがいいでしょう。
 本来は井川と久保田に先発の軸になってもらいたかったのですが、久保田は投げられないと思った方がいいでしょうね。ダイエー打線を抑えてくれると思っていたんだがなあ。残念です。
 ムーアは好調時なら通用すると思いますが、復調の具合が微妙ですね。
 福原は制球はそこそこなんですが、速球が143キロしかないのでは、ダイエー打線の絶好のカモだと思います。先発させず敗戦処理にでも専念させるのがベストでしょう。
 藪も難しいところですが、いいときなら速球がなんとか条件をクリアしますし、内角を攻めることができれば、なんとか通用するかもしれません。
 中継ぎ投手では、安藤、ウィリアムスは通用するでしょう。リガンは微妙。藤川と谷中と石毛は無理っぽい。吉野は左のワンポイントでなんとか。金沢はいいときなら抑えられるかも、ただし炎上したら10点くらい取られそうですが。
 ということで先発は井川、伊良部、藪、ムーアの4人で回したい。井川が1、4、7戦の先発。伊良部が2、6戦。藪が第3戦。ムーアが第5戦。井川の中3日が無理なら、負けを覚悟で下柳を突っ込むしかないでしょう。その場合は完全な捨て試合にして、安藤は絶対に投げさせないこと。

 打線は基本的にペナントレースと変わらないでしょう。
 問題はDHの使い方です。濱中が回復していれば使いたいのですが、それが無理なら関本か早川か沖原か。広沢という手もありますが、彼は動体視力が老衰していて145キロ以上の速球を見極めることができませんから、代打に回して渡辺や吉田などの中継ぎを崩す役割にしたほうがいいと思います。八木も代打にしておきたいですね。
 以前にも書いたように、左右ジグザグ打線にした方が対王監督としては好ましい。2番赤星と3番金本は動かせないだろうからしかたがないとして、4番は右打者にしたい。DH濱中ならベストなのですが、それができなくても桧山や片岡など左打者は避けたい。アリアスもしくはDH八木にしたいのですが、無理かなあ。
 野口は矢野の控え、浅井は万が一の場合の捕手と代打、中村は外野の守備固めと代打と代走、秀太は内野の守備固め(ときどき固くならないことがありますが)と代走、久慈は内野の守備固めとして、ベンチに置いておきたいものです。


10月17日(金)

打倒!ダイエーへの道〜前日編〜
 とうとう明日から始まっちゃうのに、そんなときに星野内閣総辞職なんて発表していいのかしら。
 とりあえず阪神は今年、横浜や巨人といった一発至上主義チーム、広島のようにじっとしてるとボロを出すチームには強いのですが、ヤクルトや中日のような試合巧者タイプのチームを苦手としてきました。ダイエーはその試合巧者タイプ。しかもヤクルトや中日よりはるかに上手です。阪神にとっては不利なチームです。
 さらに阪神打線は、巨人の木佐貫や上原のような、速球主体で決め球がはっきりしている投手はよく打ってきたのですが、ヤクルトの花田や佐藤、中日の平松や久本みたいな、なんであんなのが打てないのかわからない、というつかみどころのない投手に苦しんできました。なんとなく和田や斎藤が、そういうつかみどころのなさそうな投手に感じられます。
 ダイエーと阪神は似たものチームとよく言われます。どちらも足をからめてねちっこく攻め、一発長打と言うよりは打線に切れ目のないチーム。二十勝のエースを中心に好投手の揃ったチーム。でも最も違うのは、選手層です。
 スタメンを比べてみればダイエーの方が一枚上です。村松と赤星は互角でしょうか。でも井口と今岡では長打力、打率では互角、でも足の速さで井口の勝ち。金本と柴原では、やや金本優勢でしょうか。でも片岡と桧山に濱中を足しても松中にはかないません。城島と矢野では、すべての点において城島の方がスケールがでかい。バルデスとアリアス、大道と広沢は互角かな。藤本と鳥越では、打では藤本、守では鳥越。先発投手陣にしても、斎藤、和田、杉内、ナイトと揃って、さらに新垣が復帰したダイエーの方が、井川ひとりの感がある現在の阪神より上です。
 しかし控えを比べると、逆に阪神優位となります。中村、早川、平下、沖原に八木と、代打にも期待できる阪神に比べ、ダイエーの控えで打てそうなのはズレータひとり。吉野、石毛、藤川、リガン、安藤、そしてウィリアムスと、後になるほどいい投手が出てくる阪神に比べ、篠原にどうやって繋ぐか四苦八苦しそうなダイエー。
 つまり総力戦に持ち込めば阪神優位、ということです。序盤で五点以上取ってしまえばダイエーの勝ち、阪神は、とにかく接戦に持ち込み、終盤まで二点差以内でいけば勝ち目が出てくる、ということ。先発の伊良部や下柳が打たれても慌てず、こまめな継投で最少得点に抑え、中盤以降にじわじわ反撃、そして力の落ちる中継ぎ投手が出たら代打攻勢でいっきに逆転、という作戦です。
 ここで問題になるのが星野監督の健康です。星野監督は、去年も今年も、終盤に投げやりな采配が目立ちます。やはり疲れて精神的な粘りがなくなるのでしょう。日本シリーズでもそれが出て、「ああ、井川が打たれたらこらアカンわ。もう勝てんな」と諦めてしまわなければいいのですが。


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