2004年9月23日:カレーのメイド様

 きょうは強力なる新戦力の加入です。その名もトレンビー。ヒデキ・マツイ並に頼りになる新戦力です。
 いつものようにラムで待ち合わせ。今日のラムは、「みこみみデー」と称して、ピンクの巫女装束にうさ耳という、どこのデジキャラットだというような衣装に身を包んだおにゃにょこが働いておりました。私と未鏡さんはいつものように誘惑に負け、小悪魔の生ビールを飲む。日も高いうちから酒をかっくらうおっさんに呆れながらも、トレンビーさんはさわやかにアイスコーヒー。
 残念なことに、きょうは休日で新人が多かったのでしょうか、まだ訓練が行き届いていないのか、入店の際に「お帰りなさいませご主人様」というのを間違えて「いらっしゃいませ」と、また帰るときに「いってらっしゃいませ御主人様」でなく「ありがとうございました」と、普通に応対している店員さんがまま見受けられました。いや、一般的にはちゃんとした応対なんですけどね。

 そして北上し、中央通りをスモーカーズコーナー、ソフマップと越えたところで左折し、ガシャポン会館という、私などは昔「ガチャガチャ」と呼んでいた(よく10円で遊んでいたなあ。ガムとかスーパーボールとかスライムとかモーラとかゴム怪獣とか怪獣消しゴムとかスーパーカー消しゴムとかキン消しとか出して)、なにがしかの金を入れてハンドルを回すと球形のカプセルに包まれた景品が出てくる機械がずらりと並んだ店、そこの上にある、キュアメイドカフェに。
 格調高い燻した木目調のデザインの店内は、テーブルの間隔も広くとってゆったりと落ち着けるレイアウトです。ゆったりと流れる名曲。黒を基調にしたしっとりとしたメイド服に身を包んだメイドさん。眼鏡がたまんねえぜ。はっ何という下品なことを。神よお許しを。などと葛藤しつつ席に着きます。
 こんなところで香り高いハーブティーでも飲んだらくつろげるだろうなあ。でも我々が頼んだのは、名物チャンピオンカレーでした。
 チャンピオンカレーとは何者か。なんでも金沢が発祥の地だそうです。「TVチャンピオン」のカレー選手権で優勝して、その名を「チャンピオンカレー」と変えたそのカツカレーは、地元ではそのボリュームと麻薬的な習慣性をもって、学生を中心に愛されているそうです。
 やがて運ばれてきたチャンピオンカレーを見たわれわれ三人は、ふと軽侮するような微笑をもらしました。
 (ふっ、さすがメイド喫茶じゃて。こんまいちっこい器じゃのう。おいどんなら一口でぺろりですたい)
 などと、なぜか九州弁で思考しつつ食べはじめました。やがてわれわれの顔から微笑が消え、汗が顔にあらわれました。
 (こ、こやつ、意外と食いでがあるばってん。食うても食うても減らんとですたい)
 そう、そのカレーの器は、表面積こそ狭いのですが、カレーにしては異例なほど底が深く、実は思ったよりも莫大な埋蔵量を誇っていたのでありました。カレーの量に苦しんだのは、神保町の名物カレー「まんてん」以来です。
 味は結構なものでした。赤褐色で、ハヤシを煮詰めたようなどろりとしたルーは、実際にトマトを使っているのではないでしょうか、ほのかに酸っぱく、和風の出汁が利いていました。口に入れると甘く感じ、大したことねえなと思っているとじわりとスパイスが利いてきます。カツはさくさくとして香ばしく、一緒に盛ってあるサラダも美味しゅうございました。
 こんなに長々とカレーについて書いてきたのはほかでもない。
 yadonさん、ご婚約者とお幸せそうで、そしてカレーを食されている日記はもっとお幸せそうで、おめでとうございます。東京に転勤になって東国のカレーを精力的に食されているご様子、そのご健啖ぶりを感嘆して見ております。
 大坪五郎さん、ご家庭もお幸せそうで、お父上もご健在で、珍スポット巡りも映画鑑賞もお盛んなよし、おめでとうございます。カレーも盛んに食べられていらっしゃるご様子、陰ながらお祝いしております。
 さてと、ここで挑戦状を叩きつけるぞ。
 さあカレー愛好家のお二人、東京は秋葉原から歩いて五分の、この交通至便なこの店に来て、チャンピオンカレーを食する情熱と勇気はございますか? 婚約者や愛妻愛児を振り切ってチャンピオンカレーをこのメイド喫茶に食いに来られますか? ほっほっほっほっほ(高笑い)。
 ↑いいかげんにやめとけ。特に大坪さんは、ヘタすると金沢まで本家チャンピオンカレーを食いに行きかねないぞ。

 うまかったがとにかく量が多すぎた。チャンピオンカレーで膨満した胃を休めるため、われわれはCos−Chaへ移動。きょうはチャイナデーでした。以前のラムの正統派チャイナとは異なり、チャイナミニスカートともいうべき衣装の女の子にコーヒーをもらい、ようやくひと息つく。ちゃんとチャイナらしく頭にぼんぼりを作っている女の子もいて感心する。
 しばらくすると、たしかスクール水着のとき胸をはちきらせていた、お月見のときバニーガールでお尻をぷりんぷりんさせていたのと同じと思われる長身の女の子が、これは普通の長さのチャイナドレス、でもスリットが極限まで切れ込んだのを着てさんびすしていました。なんかこの店、いつ行ってもあの娘がMVPな気がします。

 やや落ち着いたところで上の階のLittleBSDへ。今日は込んでいるのでカウンター席でした。この店はカウンターだと隣の人以外の声は聞き取れない。こちらの注意が七割方コスプレ娘にいっているからなおさらだ。今日はトレンビーさんによると、なんとかいうファミレス娘をコマすゲームの登場人物がふたりいました。「スチュワーデス物語」のドジでカメな娘もいました。あとミニキャラット(だったっけ?)とかいうひらひらした恰好の娘もいましたが、私くらいの年代だとあれは、巫女さんとうぃんどいずぶろーいんぐふろむじえーじゃんのアレの合いの子にしか見えません。

 そしてゆるゆると浮浪者のたむろする陸橋を渡り、秋葉原駅の反対側にある「ひよこ家」に。明日が平日のせいか、すんなりと入れました。今日はお誕生日の人が多いのか、二回「はっぴーばーすでーつーゆー」の歌を合唱しました。ここのメイドさんは、やっぱりなんというのか落ち着けます。茶髪できつめの顔の娘も、ひじょうに親切で柔らかい物腰ですし。
 それでもまだチャンピオンカレーが胃でごろごろしているので、つまみはサラミとチーズの盛り合わせのみ。ここでワインのボトルを頼む。そしてメイドさんに頼み込み、ラベルをいただく。そのワインについてはこちらに。
 私の憧れのメガヒットサイトを運営しながらも荒らしの前にあえなく沈没した話とか、シスタープリンセスにハマって莫大な金額を投資したあげく飽きてしまって歳三さんにことごとく寄贈した話とか、トレンビーさんからは面白い話をいくつも聞いたのですが、公表するにはヤバめの話かもしれないのでふれないでおきます。トレンビーさんは会ってますます謎が深まりました。
 あと、私がギャルゲーエロゲーホモゲーに造詣が無さすぎて話についていけなかった。トレンビーさんと未鏡さんはうまく話が進んでいたのにね。なんだ、私が消えればいいんじゃん。しばらく布教の念に燃えて話してくれたトレンビーさんも、私の携帯電話が5年前のシティフォン(それから新製品が出ない)、自宅のパソコンのOSが98というのを聞くと、「ゲームあげますよ」「メール送りますよ」の言葉がめっきり絶えてしまったのでありました。時代遅れですみません。生まれてすみません。
 あと、「歳三さんはまた留年する。卒業できない。就職できない」という結論に達してしまいました。ごめんなさい歳三さん。すこしはまじめに講義に出て下さい。あなたの卒業を待っています。祈る気持ちで待っています。いいぞがんばれ歳三。萌えよ歳三。あと、人文科学系のレポートが書けなかったらわれわれが代筆します。法律系はトレンビーさん、工学系は未鏡さん、歴史と自然科学は私ということで。お礼は「面白い文章サイト紹介日記」の立ち上げでよろしい。
 あと、PINKさんはステキだとか可愛いとかセクシーギャルとかアイスさんにはもったいないとかいう話が出ていたような気がしましたが、みんな夢の中です。たしかいっしょうさんのライブでお会いしましたよね。むかしむかしの話ですが。

 帰りがけ、なにかが足りない、なにか見なかったものがある、という気分がずっとしていました。居酒屋のどちらも結構でした。お酒に不足はない。メイドさんやコスプレさんは可愛らしい。つまみだって塩辛からハンバーグ、エイヒレから闇串までいろいろある(ほとんど注文できなかったけど)。でも、居酒屋ならあるはずの何かが足りない。
 ……やっと思い当たりました。そうか、「刺身」がないんだ。
 両店とも、メイド居酒屋もしくはコスプレ居酒屋として開業するにあたって、いろいろとメニューを吟味したのでしょう。その結果、偶然のようにどちらも、刺身のようなナマモノは避ける、という決定に至ったのでしょう。私はその結論を支持します。なにもメイドさんが刺身包丁かかえてヒラメをそぎ切りすることはない。小悪魔が出刃包丁ふるってマグロをさばくことはない。見てみたいけど。
 結論が出て安心した私は、帰りがけにスーパーに寄って戻り鰹の刺身を買って帰りました。


 追記。大坪五郎さんはみごとに私の挑戦を受けて立ち、チャンピオンカレーを制覇されました。まっことカレーの道には妥協なし。


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