19.脳天気な終末

 ベベル地下四十階、亡者ジスカルの化身。いきなりアルテマを放ってユリパを全滅に追い込むつわもの。
 ジョゼ寺院、マキナ派が創った超絶兵器。攻撃力と守備力と魔法防御力が無意味に高く、攻撃も魔法もまったく歯が立たないうちに撲殺されるしれもの。
 ビーカネル砂漠、発掘本拠地を襲う熱砂の悪魔。HPが無意味に高く、攻め疲れしているうちに溶岩を噴きあげて皆殺しするたわけもの。
 こいつら、どうやっても勝てません。だめです。
 もう疲れました。
 異界へ行きます。さようなら。捜さないでください。

 てなわけで異界へ。
シンラ「カモメ団、卒業ミッションだし」
ダチ「おいおい、これで終わりなんていうなよ」
シンラ「ぼくにとってはそうなりそうだし」
 ドサクサまぎれにユウナ様に抱きつくシンラ。
アニキ「ハグハグは帰ってからのお楽しみ!」
 あの……ファイナルファンタジーでは、抱きつくことを「ハグハグ」という決まりでもあるのでしょうか?
 いや……FF8で、魔女を復活させて地球を危機に陥れたり、宇宙に放り出されてどこか遠いところへ行ってしまいそうになったりという、緊迫しまくったイベントの後で「はぐはぐして(はぁと)」などと言ってのけた、あの女のインパクトが強かったもので。そういえばあの女もそうとう脳天気でしたな。
 むろん、カモメ団も脳天気です。スピラが壊滅するかどうかという瀬戸際で、妙なポーズを決める奴ら。最高だぜ。

 ビサイドの神殿の穴から異界へ。
 ぐねぐねした道を進むと、また野良召喚獣が出現します。シヴァ、メーガス三姉妹、そしてアニマ。想い出にふけりながら瞬殺。だてに冒頭の三強を倒すべく無駄にレベルアップしていない。
 そのうち祈り子まで出てきました。前作でティーダにつきまとっていたチビですよ。
祈り子「ごめんね……暗黒に引きずりこまれて、抵抗できなかったんだ」
ユウナ「いいのよ。……いくら出てきたって、あたしの経験値になるだけなんだから」
祈り子「……」
ユウナ「ところで、ティーダの贋者はどうしてる?」
祈り子「あれ?……シューインの影だよ。想いが強すぎて、ひとりでに動き出したんだ」
ユウナ「影なら大丈夫、消せるよ」
祈り子「どうやって?」
ユウナ「光で照らせば、影は消える」
リュック「光?」
パイン「レンの想い……か」
ユウナ「うん。いわゆる愛ってやつね」

 愛をもってモンスターを撲殺してまわり、ドロンジョ様ご一行が待ちぼうけのお花畑を過ぎ、鍵盤を踏みながら進む。鍵盤の踏み方を間違えたらしく、アジ=ダカーハとかいうのが襲ってきましたが撃破。だからだてにレベル89まで上げてないんだってば。
 いよいよのどんづまりにヌージがいました。
ヌージ「バラライもヴェグナガンも、奴の支配下だ」
ユウナ「シューインですね」
ヌージ「だが策はある。上策とは言えぬが」
リュック「どうするの?」
ヌージ「まずバラライを倒す。とりつく相手を失ったシューインは、きっと俺にとりつく。そしたら、この義足に仕込んだ爆弾でヴェグナガンもろとも自爆だ」
ユウナ「それ、却下」
ヌージ「?」
ユウナ「それ、あたしたちが二年前にシンを倒した手口といっしょ。著作権侵害です」
ヌージ「……」
パイン「それに、義足に爆弾を仕込むのはヤマトの真田さんの手口だ」
ヌージ「…………」
リュック「で、ユウナんはどうするの?」
ユウナ「力まかせにとにかく倒してまわる。そして愛」
ヌージ「そうだよな、そうゆうゲームなんだよな、これは……」
パイン「しょせん、あたしたちアカギ隊残党のようなシリアスなキャラは、このゲームの雰囲気になじまないってこった」

 てなわけでとにかく倒してまわる。愛をもって。
 ヴェグナガンの尻尾、足、腕、頭と順番に叩きつぶす。てんで弱いでやんの。これだったら同じ機械でも、マキナ派の超絶兵器のほうがよっぽど最終兵器だ。
 ヴェグナガンが壊れて這いだしてきたシューインに愛作戦決行。
ユウナ「あなたに伝えたいの…… 千年間、伝えられなかった言葉を。……ありがとう、あなたと歩けて楽しかった」
シューイン「おまえは、レンじゃない!」
 最後まで話の通じない奴だったな、シューイン。
 訳のわからない逆ギレで襲いかかってきたので、愛作戦から力作戦に変更。愛をもって叩きつぶす。愛がわからない奴は殺す。エースオブブリッツのパクリみたいな技はなかなか強力だけど、しょせんユウナ様の敵ではない。
 それにしても亡者のよしみでしょうか、やたらアーロン、ジェクト、ブラスカの三亡者が話しかけて集中力を乱そうとしてきます。
 ま、そんなことでどうにかなるユウナ様じゃないけどな。
ジェクト「ユウナちゃん、すまねぇ」
アーロン「悪あがきだ! 終わらせてやれ」
ブラスカ「これで終わるよ」
ユウナ「うっさいっちゅーの!」
ブラスカ「ユウナ……お父さんに何て言葉を」
ユウナ「じゃっかましいわい。くたばっちまえば親も兄弟もないけん」
リュック「ユウナん、エセ広島弁で誰と話してるの?」
パイン「いよいよ、脳天気のうえに、デンパまでしょいこんだか」
 叩きつぶされたシューインを、ユウナから遊離したレンがやさしく往生させます。それにしてもレン、声が低くつぶれて、まるでオカマか悪い病気の商売女のようだ。

 こうしてスピラは救われました。
 ルカスタジアムでは、ヌージ、バラライ、ギップルの三巨頭が抗争の手打ちをおこなっています。
ヌージ「みんな、スピラという同じ船に乗っている仲間だ」
 などという名台詞に喝采する愚民ども。それにしてもこの愚民ども、ノリ良すぎ。やっぱ喝采しないと秘密警察に引っ張られて砂漠の収容所で二十年間の強制労働とかあるのか?
 そのころユウナは、ザリガニ号に乗ってどこかの空を飛んでいます。
 青空をどこまでも翔ぶザリガニ。なぜか甲板でうずくまるユリパ。風を受けるユウナの横顔。
「……きっかけは、キミが映ったスフィア」
 大団円。

 って、終わってねーよ全然。エンディングでコンプリート率が53%ってのはなんなんだよ。半分ちょっとじゃねーか。ドレスフィアだって半分くらいしかねーよ。このゲーム、半分しか遊んでねーんだよまだ。ええいええい、「強くてニューゲーム」だい。ユウナ拾遺物語だ。


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