ヌージとギップルにもらったスフィアと、パインの話を総合すると、大略次のような物語らしい。
かつてシンがいた数年前、召喚に頼らず兵器でシンを倒そうという極秘計画があった。そのうちひとつは、ご存じミヘンセッション。馬鹿な作戦と首脳陣の怠慢（てめえのことだよアーロンの元親友のデブ）のため惨憺たる失敗に終わったミヘンセッションだったが、実はもうひとつ、アカギセッションという作戦もあった。
アカギセッションとは、千年前の超兵器、ヴェグナガンを使ってシンを倒そうとする極秘作戦。この作戦のためスピラ各地から選りすぐりの兵士がアカギ隊に徴募された。その中にパラライ、ヌージ、ギップルと、パインがいた。
ところがこのアカギセッション、訓練中に超兵器が大事故をひきおこし、ヴェグナガンは暴走して失踪、隊員は全滅。わずかに四人だけが生き残ったが、それも行方不明。アカギセッションの秘密は失われてしまったのであった。
……という話らしいのだが、いまひとつ信じられないな。四人だけ生き残ったというのが信じがたい。ひょっとして四人も死んでるんじゃないの？ 生きている人間がそう簡単に異界に行ったり来たりできるとも思えないし（ユウナ様は別格）。最後の最後で、アーロンさんみたく幻光虫と化しちゃうんじゃないのか？
などと疑問を残しつつ物語は進む。
リーダーは行方不明だわ、魔物は出るわ、ですっかり疑心暗鬼となっているスピラの民。ユウナ様やドナまで指導者に担ぎ出そうというのだから、混乱はおして知るべし。
さらに青年同盟と新エボン党の対立は、暴走を抑えるリーダーがいなくなったことで（ヌージって、前にはアジ演説やってなかったっけ？）ますます激化。戦争寸前です。
リュック「スピラはバラバラだね……」
パイン「ここへヴェグナガンが攻めてきたら、ひとたまりもないな」
ユウナ「なんとかして、スピラの心をひとつにまとめなければ……そうだ、歌だわ！ あたしの歌で、スピラの心をとりこにするのよ！！」
……すいません、鼻水が出ました。
さんざん暗く重い話を展開しておいて、なんなんだこの強引かつ脳天気な展開は。
いやもう、このギャップこそＦＦＸ−２の醍醐味としか言いようがないですな。
というわけでユウナ様のジャイアンリサイタルを実現すべく、まずは借金を抱えて夜逃げした興行師を捜すというたわけたミッション。詐欺、契約不履行、窃盗、無免許運転、過失傷害致死、スピード違反、動物虐待などなど多くの罪を重ねた興行師をようやくつかまえ、リサイタルを依頼します。こんなのに依頼するくらいなら、石井館長のほうがずっと罪が軽いと思うのですが。
興行師「ユウナ様のリサイタルですか？ すんばらしい、これで私も借金が返せます。やりましょうやりましょう」
ユウナ「で、会場はどこにしましょう」
リュック「できるだけ多くの人が集まるところがいいんですけど」
興行師「雷平原なんかどうですか？ いっぱい集まりますよ！」
おい、いいのかリュック。雷ダメなんじゃなかったのか。
リュックはともかく、魔物のすみかで、おまけに雷の絶えない場所。これほどリサイタルに適さぬ地はありますまい。どう考えても、開演五分以内に音響機器とかスピーカーとかスクリーンが落雷でぶっこわれると思うのですが。
そのようなまっとうな考えが浮かぶ登場人物がいるわけもなく、ユウナ様ご一行は雷平原の魔物退治。
ボスを倒して、いよいよ各地から拉致してきた観客を会場へ搬送。しかしみんな、機嫌が悪そうです。
ダチ「船に乗せたときから、機嫌が悪かったんだ」
ユウナ「まだケンカしてるんだ」
パイン「姿を消したリーダーは無責任だって、怒ってるらしいぞ」
リュック「勝手だなあ」
……いや、勝手なのは、希望も聞かず有無を言わせず各地から観客を拉致してきたあんたたちだと思います。まさにジャイアンリサイタル。
そんなでも、ユウナ様の歌でスピラがひとつになるところが、このゲームの怖ろしいところ。なんか脳天気な世界だ。
こんなだったら、大統領閣下の演説（しかも棒読み）で世界の意志がひとつになったり、指導者様の映画で民族がひとつになったりすると思うぞ。これでストーリーレベル４完了。
ところで余談ですが、ジャイアンリサイタルの前に、天才少年シンラ君が各地に設置した通信スフィアで、ザリガニ号と各地で連絡がとれるようになります。
シンラ「通信スフィア、見る？」
ああでもなんということでしょう。ルカを選んでもナギ平原を選んでもガガゼトを選んでもザナルカンドを選んでも、シンラ君の返事は同じ。
シンラ「そこ、通信スフィア設置してないし」
以前からぼんやりと感じていたことが、いまこそ確信となりました。
私はゲームの進め方を間違っていたという、恐るべき確信です。
どうやら、ダチが行き先を聞いてくるときに表示される、アクティブリンクの地にだけ行くのでは駄目なようです。ぜんぶ行っておかないと、いろんなストーリーやエピソードが抜け落ちていくらしいのです。
ああ、すぐにアクティブリンクのところに行っておかないと、フラグや条件が消えてしまい、エピソードが消化できないと思っていた私が馬鹿だった。などと後悔と慚愧と悔恨と痛恨と毛根と巨根につつまれながら終了。