9.ガンビット改革のすすめ

「今回はおそれおおくもアーシェ王女陛下においでいただき、FF12のキーともいうべき、ガンビットについて解説していただこうと思います」
「本当に私の教えを求めてる? ひょっとしてあんた、私をマリベルやリュックと同レベルにおとしめるのが狙いじゃないの?」
「いやめっそうもない。マリベルは鬼畜担当、リュックはニギヤカ担当、そしてお前は自分勝手担当ってことで」
(ぐービンタ)
「お前って呼ぶとぶつよ?」
「ぶってから言うなよう。しかも半疑問形で」

「気を取り直して進めます。みなさん、たとえばヴァンに【HP=100%の敵→盗む】と設定したところ、乱戦の中でヴァンがどこか遠く先方へ走り抜けてしまい、気がついたときにははるか遠くで戦闘不能していた、という苦い想い出がありませんか?」
「よくあるわね。アイツ、だいたい盗むしかとりえのない盗賊のくせに、いちど盗んだ相手かどうかの区別もつかない馬鹿だから、えんえん盗み続けてダメージを一方的にくらうのよね。バカなのよね。いや、バッカなのよね」
「それはひとえに、ガンビットの設定が正しくないために起こることなのです」
「じゃ、あのバカに、【身分が上の味方→敬語】っていう、社会人としては初歩の初歩のガンビットを設定してもらえない? せめて【アーシェ→王女殿下、もしくは貴女様】でもいいわ」
「いや、そういうのは……とりあえずわかりやすく説明するために、プロ野球を例にとってみましょう。これは平均的な采配をするという評判の、ロッテ・バレンタイン監督の継投ガンビットです。

【HP>80%の先発→続投】
【5点差<敵→敗戦処理】
【5点差>敵→若手を試す】
【不調のコバマサ→休ませる】
【不調の藪田→休ませる】
【9回→コバマサ】
【8回→藪田】

「色々な起こりうる事象について備えた、よくできたガンビットだといえますね。では、阪神・岡田監督の継投ガンビットを見ていただきましょう」

【9回→久保田】
【8回→藤川】
【7回→ウィリアムス】

「バカなんじゃないの」
「はい、たったこれだけなんですね。先発投手の疲労度や点差、局面に関係なく、とにかくJFKで締めることしか考えていない単純きわまる脳味噌構造が、よくわかりますね。なんとこれ、本当に久保田の不調も故障もかえりみず、久保田が骨折するまでこれで進んでたんですねー。怖ろしいですねー」
「バカよね。いや、バッカよね」
「攻撃の時の岡田監督は、もっとすごいんですよ」

【鳥谷→好きなように打たせる】
【今岡→5番】
【チャンスで藤本か投手→代打スペンサー】
【藤本凡退→関本に交代】
【不調の今岡→休ませる】

「はい、この例はせっかくの不調今岡を休ませるガンビットがあるのに、それより今岡5番というガンビットの優先順位が高いために、なんの意味もなかったケースですね。けっきょく今岡も骨を折るまで5番でした」
「バッカじゃないの? 光降れ!」
「いや、いきなりミストナックを決めないでくださいよ。実はこのケース、岡田監督の監督初年度にもあったんですね」

【7回→リガン】
【阪神の攻撃→いま攻撃中やからわからない】
【逆転される→吉野は役目果たせへんから帰らせたわ】
【大敗→誰かなんとかしてくれ!】
【惨敗→おお、もう……】
【骨を折ったリガン→休ませる】
【休ませる→一泊5600円くらいのとこに泊まったらええやん】

「これで阪神歴代、いやプロ野球史上でも有数の有能なセットアッパーが、あたら才能を潰してしまったんで……」
「打ち払え!とどろけ!」
「ぎゃあぁぁぁぁ」

「とりあえずうっとおしい奴は討 伐 完 了したけど……あら、なにかしらこの石版。え、連敗にあえぐ巨人軍の野手起用ガンビットですって?」

【小坂→1番以外】
【小坂→ショート以外】
【小坂→盗塁以外】

「…………」


戻る