7.オヤヂハンター連荘

ファイナルファンタジー12をやっていてよくありがちなこと。
 王家の証たるべき破魔石を求めて、えんえん徒歩で旅をするアーシェは、やっぱりあの顔立ちからいって、「破魔石歩み」という駄洒落なんだろうな、と勝手に納得する。

 ブルオミシェイスの老人が言っていた「ミリアム遺跡奧の暴君の魂」ってのは、見に行ったら速攻で全滅したので、とりあえずは無視して帝都へ。
 この道のりがやたら長い。まず狼とか妖怪一本ダタラとか倒しながらモスフォーラ山地越え。途中で賞金首を倒してふりだしへ戻る。モスフォーラを越えたらサリカ森林。タマネギを倒しながら進むが、ボムキングに勝てずに全滅しふりだしへ。ボムキングは無視して別の道へ。サボってる大工をかきあつめて扉を修理させ、ようやく直して、やっとフォーン海岸へ。浜辺を歩きながらお魚とか犬とか倒して進む。やたら広い海岸通りを抜けると、ハンターのキャンプへ。ここで突如ヴァンとパンネロがはしゃぎだす。
「ワイフ見たー!」(わー海だー、と叫んでいるらしい)
 いやね、お前のその発音はともかくとしてだね、お前らね、いままでさんざん海岸を歩いてたんとちゃうかと。

 はしゃいでる二人をよそに、バルフレアとアーシェが深刻な話をしています。もはやシナリオライター、ヴァンとパンネロを物語にからめるのは放棄したようです。
 なんでもバルフレアの父親こそあのドクター・シド、暴走マッドサイエンティストだそうです。父親の命令でジャッジになったものの、次第に破魔石に狂いだした父親に愛想を尽かし、逃げだして空賊になったのだとか。
「あの親爺から逃げだしたつもりだったが……結局、破魔石から逃げられんかったんだよな」
「王女さま、あんたは強いから、親父のように破魔石の虜になるなよ……頼むから」
 そんな横で砂をかけあって遊ぶ幼い二人。おまえら、……すっかり背景だ。

 海岸からツィッタ大草原に入り、またえんえんと歩く。途中でイヤミな金持ちのボンボンに私的に賞金首の討伐を頼まれ、クランに隠れてショクナイで受ける。この糞ったれガキ、俺に金を払ってから砂漠で行き倒れやがれ、と念じながら。
 大草原から地下通路に入る。
「なあ、女とトルコーって、穏当にデートに行けるのかよ」(なあ、こんなところ通って、本当に帝都に行けるのかよ、と言いたかったらしい)
 とヴァンは心配しますが、ここが帝都への抜け道だそうです。
 こっそり帝都に入ったとしても、帝都であっさりつかまるのではないか。当然の疑問です。しかしアーシェは「私たち、名前は知られているけど、顔はあんまり知られてないから」と、えらく楽観的です。楽観的だからこそ、頭文字をそのまま残したような稚拙な偽名でのし歩いてたんでしょうな。
「どぅぁよな。植え鉢も内緒はお八重の葉を散らなかったしぇ」(だよな。俺たちも最初はお前の顔知らなかったし、と言っているらしい)
「お前はやめて、って言ってるでしょ」
 いつもながら王女様のヒアリング能力には頭が下がります。

 ところが通路の奧、扉を開けたら、クソガキのぞんざいな似顔絵に出てきた賞金首どもが登場。こいつらを倒さないと抜けられないようだが、これがトマトとかカボチャとかタマネギとか、武者小路実篤の色紙のようなキャラのくせに、えらく強い。実篤のくせに生意気だぞ。とにかく扉が開かないので逃げられない。なぶり殺しです。二回全滅して二回振り出しへ。一回休み。装備とライセンスとガンビットをもう一度なんとかして、ようやく勝つ。地下宮殿へ。
 地下宮殿の奧にはアーリマンという亡霊みたいなのがいて、ここでも二回死んで二回ふりだしへ。レベルを上げてようやく撃破。
 ようやく帝都にたどりつきましたが、バラックが建ちならび住民はボロ服で死んだ魚の目をしている。気にくわない。
「インポフセインだよな」(貧乏くさいんだよな、と言いたかったらしい)
 とヴァンがボヤくのももっともです。バルフレアによるとここは帝都旧市街、ひと旗あげようとやってきた田舎者の貧乏人か、破産して上流階級から転落した下層階級が棲む、ふきだまりの貧民街だそうです。じょー、俺と拳闘ってもんをやってみないかへへー。
 旧市街から帝都に入るには、なにか耳よりな情報を持っていないといけないとか。バルフレアの親友、というより腐れ縁みたいな、いかにもこすっからそうな情報屋ジュールの助言で、スラム街住民を密告、めでたくアップタウンへの潜入に成功。ここでバルフレアが一時離脱。

 帝国の首都にふさわしいみごとな街並みに、恨みも任務も忘れ、ぽかんと口をあけて見とれるばかりの田舎者ヴァン。パンネロにからかわれるのももっともです。
「賢愚ついて歩いたよ」(見物して悪いかよ、と言いたかったらしい)
「そりゃ、ほほはへーこくらけろさ」(そりゃ、ここは帝国だけどさ、と言いたかったらしい)
「本名大隈できるポア、藤堂も地底勝った」(こんな遠くまで来るとは、想像もしてなかった)
 これにはパンネロも器用に聞き分けて賛同し、「王女様とか皇帝の御曹司なんて、一生会うことなんてないと思ってたもんね」
「らよら。ハマに食い気引き合いケロ」(だよなあ。たまについていけないけどな、と言いたかったらしい)
 これにバッシュまでもがツッコミを入れます。
「君たちにもようやく、王家に仕える苦労がわかってきたようだな」
 ……いやこれはボケか。
 さっそくふたりにレツゴー三匹のノリで両脇からツッコまれてるし。
ヴァン「ポレは悦に箆飛騨な狒狒」(俺は別に家来じゃないし、と言いたかったらしい)
パンネロ「あー、そんなこと言っていいんですかぁー」
バッシュ「……さ、先を急ごう」
 バッシュがごまかしたのは、たぶん王女様の強烈ぐービンタが怖かったんだと思います。

 しかし帝都からシドのいるドラクロア研究所行きのタクシーに乗るには、またしてもリーフだかなんだかが必要なんだとか。そんなわけでミニゲーム開始。住民に情報を教えてリーフをもらうという、あんまり面白くない伝言ゲーム。
 ようやっとドラクロア研究所まで来ると、バルフレアが待ちくたびれていました。どうやらリーフはあらかじめジュールに渡していたそうだが、猫ババされてしまったらしい。
 シドとジュールへの殺意をたぎらせながら研究所に潜入。どうやら先客がいたらしく、あちこち荒らされて警戒が厳しくなっています。兵士やらジャッジやらを倒し、タコにタコ殴りされて全滅しかかりながらも、ようやく最上階まで到達。
 そのとたん、気の狂ったハゲオヤジが襲いかかってきます。てっきりシドかと思っていたら、違うようです。レダスとかいう、シドを狙った先客らしい。
 でも絶対シドだと思ったよなあ。だってハゲだしヒゲだしイカレてるしオッサンだし。もし世界が十二人のファイナルファンタジーのシドだったら。十二人のシドはオッサンです。八人のシドはヒゲです。五人のシドはハゲてます。九人のシドはイカレてます。もしあなたが飛空艇を建造できたら、あなたは六人のシドよりも技術力があります。もしアルベド語が理解できたら、あなたは一人のシドと会話できます。もしあなたにかわいい奥さんがいたら、あなたは四人のシドよりは幸福です。だからあなたは願いなさい……どうかシドに生まれませんように、と。
 本物のシドはレダスよりかっこよかった。今までのシドでいちばんかっこいいんじゃないだろうか。なんか陰険アーロンみたいなキャラだ。人工衛星みたいなのを周囲の軌道に乗せて防御しながら攻撃してくる。衛星をひとつひとつ潰してから本体を攻撃。ミストナック七連続を連発したのに、死にもせずにギルヴェガンへ逃げていく。どんなタフガイなんだシド。
 そのあと場面が変わり、帝国軍と解放軍の決戦近しという話で、なんとか四世(こいつも名前忘れた)やアーシェ、バッシュや参謀連中がなんか重要な話をしていたような気がするのですが、ひとかけらも覚えていません。とにかく、ハゲのヒゲオヤヂ、レダスのピンク色の股間が気になって気になって、それどころじゃなかった。


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