4.そして君の姿に涙する

 もうこうなったらしょうがないと覚悟して、じわじわじわじわと進む。
 モンスターを倒し、金を手に入れたらすぐ本拠地に戻り、傷薬を買ってHPを回復し出直す。それの数限りないくりかえしで、ようやくバイオ公社へ。それにしても、こんな苦労してたどり着いたバイオ公社にまで侵入している教えたガールはなんなんだ。無敵か。

 バイオ公社というのはやっぱり予想通り悪趣味なところで、会社の中にモンスターの死体だとか檻に入れられたモンスターだとか野放しのモンスターがごろごろしている。巨大な龍の白骨死体まで展示されている。こんな環境で仕事ができるバイオ公社の社員はなんなんだ。無敵か。

 ようやくのことでバイオ公社のリフトに飛び乗るが、やれやれと安心するのも束の間、またボッシュが絡んでくる。
「なあ、この手柄、俺にゆずる気はないか? 俺は1/64、将来はこの世界を支配することだってできる身分だ。俺に必要なのは手柄だけだ」
 うるせえなこいつ。まだ懲りないのか。だいたい、RPGで序盤から世界を支配するだのなんだの言っている野郎にロクなヤツはいない。たいがい後から出てくる邪神とか、自分で呼び出した召喚獣だとかに瞬殺されるか、もっと偉い魔女の使いっぱしりにされちまうんだよ。だいたい、この世界を支配するのはオレだ。てめえみたいな中途半端エリートじゃない。殺したろか。

 と思う主人公の心を読みとってくれたのか、突如として反政府ゲリラが登場。リフトにバズーカ一発ぶっ放してくれました。しかし、主人公も廃物遺棄坑の底の底へ。あう。しかし、そんな底の底にまで出店している教えたガールはなんなんだ。やっぱり無敵か。

 底に落ちて失神している間に、さっき見た龍の白骨が語りかけてきたらしい。
「おまえは選ばれた……千年の世界を壊す究極の破壊者として……死すべきときを見つけるがいい……」
 なんかぶっそうなことを言っていますが、すいません私、これまでに十回以上死んでるんですけど。死すべきとき、常時。

 なんだかんだで龍の力が手に入ったらしいのですが、とりあえず使わずにうろつく。
 強そうなサイクロプスが少女をさらっていくのが見える。ああ、お約束で助けなきゃならんのだろうな。というか選択の余地なくアニメーションで戦闘に突入。もうアニメーションで最後までやってくれればいいのに、途中から戦闘画面に。ううううう。
 苦労してようやくサイクロプスをやっつけ、少女を救出。
リュウ「もう大丈夫だよ。オレの名前はリュウ。君は?」
少女「ニィ……ナ……」
リュウ「口が……きけないのか?」
 おいおいちゃんと喋っとるやんけ。あんたこそ耳が聞こえないのか?

 というわけでこの娘がニーナだったらしい。
 しかし、かつてのウィンディア王女、光り輝く黒い翼を持つ空翔ける少女が、なんとみじめな姿に。羽らしきものの痕跡はいじけてくちゃくちゃに縮こまり、とうてい空を飛べそうにない。そして額には雌犬奴隷の烙印。着ているものはシュミーズだけというその風体。どう考えても逃亡奴隷か浮浪児。まさに、ニーナの退化のどんづまりと言えましょう。そして、ああ、その髪の毛も、苦労したせいか若いのに……。

ニーナの髪の毛

 ニーナの髪の毛のことが気になって、ダメージを回復せずにうろついていたせいで、アリさんの群れにつかまり全滅。ああ、ああ、またあのいけすかないエリート野郎との道中からやり直しか。


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