ばらばら色の渋谷センター街 8/5東京出張時に撮影
ヨーロッパの街では調和を重んじるので、この渋谷のような混沌とした色彩の氾濫を街で見かることはない。
渋谷を留守にしたのはわずか一年であったが、日本の都市の雑然とした街並に新鮮さを感じることに気付いた。以前、パリに数ヶ月滞在して東京に戻った時、久しぶりに乗った満員電車の、他人を小突くように押しこんで乗るシステムに戸惑ったことがある。パリでは、メトロなどで他人に触れると反射的に‘Pardon!’という習慣がすぐ身につくし、それが当然の道徳だと思うようになる。また、東京の電車もそうあるべきだと思ったりなんかもする。しかし、違う習慣や道徳を持ちかえることはできない。東京では、触れただけで謝っていては、電車になんか乗ることはできない。最初は文化の違いに違和感を感じていても、1ヶ月もすれば、人にぶつかろうが押しのけようが、あやまろうとする習慣は無くなるし、驚いてなどいられなくなる。
写真を撮る時には新鮮な視点は重要だろう。渋谷は学生時代から十数年の間、毎日のようにうろついた場所であるが、一度も写真を撮ろうと思ったことはなかった。しかし、ドイツに一年暮らしてから戻ると、渋谷のあちこちに、撮りたいと思うような面白い光景が目に飛びこんでくる。習慣や礼儀は知識として持ちかえらないとまずいだろうが、面白く感じる視点はぜひ持ちかえりたいものである。同時に、ヨーロッパの写真を撮る際に、目新しさだけでシャッターを切ることはそろそろ脱却しないといけない頃かもしれない。