もう最終回じゃあ寂しすぎるぞ!『内藤ライダー』
第4話「無敵の相棒」

「ところでマイケル、相棒にするなら、どんな奴がいい?」
 出盆がコンピューターから向き直って聞いて来た。
「そうだな、タフで頭の切れる奴がいい。」
「うむ。要するに優秀なソフト(頭)と頑丈なハード(体)だな?」
「まあ、そんなとこだ。」
「よし、実は君に見せたいものがある。まずはソフトのほうからだ。」
「え?」
「ついて来たまえ」
 出盆に導かれて、二人は廊下のすみにある、目立たない階段を下りていった。
「まさかこの建物に地下室があるとは思わなかったぜ。」
「会長はこういう秘密基地みたいのが好きだからな。本部を建設するときに、作ったはいいが使い道がなくて放り出されていたんだ。」
 歩きながら出盆が続ける。
「内藤20計画について、会長と相談しはじめるのとほぼ同時にここを実験室として人工頭脳の開発に取りかかった。」
 階段を下り切ったところにあるスチール製のドアの鍵をあけながら、
「そうして生まれたのがこの試作機だ。」
 ほこりっぽく、薄暗い室内には雑然とファイルやコンピューター、工作用らしい作業机などが置かれており、部屋のほぼ中央の机の上には、何やら一昔前のラジカセのようなものが置いてある。
「これが人工頭脳?完成しているのか?」
「あくまでもこれはソフトでしかない。計り知れない能力を秘めてはいるが、ハードがなければ役に立たん。」
「じゃあ、いったいどんなハードにこいつを載せようっていうんだ?」
「それが問題だ。この試作機の制作に38万円かかった。」
「たったそれだけ?」
「開発費は会長がほとんど出してくれたんだ。何しろ、全て自社開発だから莫大な額だぞ。一等地に豪邸が2〜3件は楽に建つだろうな。」
「じゃあ、なんで38万円を出してくれないんだ?」
「いざ造るとなったら、会長がしりごみしてな。開発費に莫大な金を使ったから、造るのにはもっと金がかかると思ったらしい。しかし、実際は材料代と部品代があれば造れるんだから、私が造らせた。」
「へえ、こいつがねえ。」
「どうだ。もしこれを使うなら、制作費の38万円は内藤20計画執行部に請求するぞ。」
「あー、分かった分かった。払えばいいんだろ?どうせ財団の金だ。」
「よし、そうとなったら、今度はハードを探しにいこう。ついてこい。」
「どこへいくんだ?」
「国立だよ。心当たりがあってな。もう話は通してある。おっと、電車賃を忘れるな」
「何だかセコイな」
「仕方なかろう、内藤20計画が何らかの実績を上げるまでは、社内の風当たりも強いんだ。」
「いったい俺はこんなところで何をやっているんだろう」
「もちろん、正義のために闘っているんだ。」

御愛読有難うございました。 the end
ってうっそー!次回に続く!


結局つづいちゃう『内藤ライダー』
第5話「無敵の相棒(中編)」

「さあマイケル、着いたぞ」
 国分寺の財団本部から、JRで2駅。国立駅から歩いて15分。何の変哲もない住宅地の一角に国立産業がある。
「国立産業?確かに立派な建物だが、こんなところに相棒がいるのか?」
「ああそうだ。ほら、一台出て来たぞ。」
 出盆の指す方を見てみると、建物の正面にある門から、一台のトレーラーが出て来るところだった。
「ただのトレーラーに見えるが、あれがどうかしたのか?」
「うむ。国立産業は内藤財団の擁する企業のなかでも、工業製品の生産、物流部門を一手に引き受ける大企業だ。ここの社有車は数百台にのぼるぞ。」
「じゃあ、ここのお古を俺が使うのか?」
「そうだ。人工頭脳の能力を引き出すには、現時点では自動車に搭載するのが一番なんだ。しかし、新車を買うような金はあるわけないから、私からここの社長に掛け合って適当なのを1台まわしてもらえるように話はつけてある。さあ、この中から選べ。」
「選べったって」
 国立産業の中庭。社長の計らいらしく、いかにも「商用車」といった車がぞろぞろと並んでいる。
「おい、出盆本当にこの中の一台にあのコンピューターを載せるのか?」
「仕方なかろう、今期中に成果を上げれば、また新しいのに載せ換えてやる。早く選べ。」
 仕方なくマイケルは、端の車から一台一台調べていった。白い軽の1BOX車、走行12万キロ、ボディのところどころに錆びが話にならない。銀色の中型1BOX車、走行9.5万キロ、8年オチ、タイヤぼーず。だんだん嫌になってきた。とうとう保冷車まで出て来る始末。保冷車にコンピューターを積んで何をしろっていうんだ。最後の一台の車の前で、マイケルは足を止めた。確かに銀色の軽自動車なのだが、今まで見てきた車とは全然雰囲気が違う。
「出盆、これ、なんていう車だ?」
「うーん、さあな私も車には疎くて、良く分からんがボディのどこかに書いてないか?」
「ああ、そうだな、えーとお、ドアのところに名前が書いてあるぞ。なになにKunitati Industrial for Total Trading?ずいぶん長い名前だなぁ。」
「いや、それは車名じゃないぞ。国立産業で業務に使っている車には、みんなそう書いてあるんだ。社員は、頭文字をとってKITT(キット)と呼んでいる。それよりも、ほら、この後ろに書いてあるのが車名じゃないのか?」
「あ、ほんとだ。なになにキャロル?」
「何言ってるんだ。カプチーノだろ?マイケル、お前アルファベットも読めんのか?」
「ちょっと間違えただけだよ。へーえ、カプチーノっていうのか。なんかかっこいい車だな。他のと違って。」
「うむ。なんでこんな車が商用車に混じってこんなところに置いてあるんだ?まぁいいか。どうするマイケル。どうせコンピューターさえ積めればいいんだからこれにするか?二人乗りみたいだが」
「そうだな、こいつにしよう。」
 軽い気持ちで選んだ二人だったが、その時この車の恐ろしさを知る由もなかった

以下次号。ここで終っちゃったら怒られるだろうな。


もうとまらない『内藤ライダー』
第6話 「無敵の相棒(後編)」


「それじゃあ私はちょっと社長にあいさつしてくるからな」
 出盆が行ってしまったので、マイケルはさっそくカプチーノの運転席に座ってみた。妙に乗りにくくて、しかも視野がすごく狭い。
「なんだか窮屈な車だな。」
 マイケルはキーをひねってエンジンを掛けてみた。2〜3回アクセルを踏み込むと、軽快なエンジン音と共にタコメーターの針が跳ね踊る。
「わお、ご機嫌だね。」
「ありがとうございます」
 マイケルは慌ててエンジンを切った。今、確かに誰かの声がした。しかし、この狭い室内に人がいるとも思えないしマイケルは周囲をうかがったが、やはり誰もいない。わけが分からずにぼーっとしていると、出盆が帰ってきた。
「やあマイケル、待たせたな。どうやらその車は、2〜3年前に何かの実験に使った後、お蔵入りになっていたのを引っぱり出して来た物のようだ。よかったなマイケル、掘り出し物だぞ。」
「まさかその実験で人は死んでいないよな?」
「何を物騒なことをいっている。なんでも物流に革命を起こす実験だったということだが、今の社長は1年前に就任したばかりだから、詳しいことは分からないそうだ。でも、お蔵入りになったのはコストがかかりすぎたから、ということらしいぞ。」
 どうやら変なものが取り憑いている車ではないようだ。
「さあ、財団本部でこの車に人工頭脳を載せてみよう。運転してくれるか?」
「あぁ」
 マイケルは少し緊張しながらエンジンを掛けた。車は普通に走り、無事に財団本部に着いた。
「さあ、それでは鬼井のところで取り付け作業をやってもらおう。」
「おにい?」
「ああ、君にはまだ紹介していなかったな。人工頭脳の開発チームの一人で、コンピューターに強い。頼りになる男だぞ」
 出盆に指示されて財団本部のガレージにいくと、鬼井が既に待っていた。
「俺は鬼井那須斗。オニーと呼んでくれ。こいつについてはエキスパートだ。安心して任せてほしい。」
 例のラジカセもどきが用意されている。いったいどんな車になるんだろう。マイケルはなぜか少し不安であった。

以下次号、とうとうマイケルの活躍が見れるかも?


ああ早くマイケルに活躍させたい!『内藤ライダー』
第7話「超高性能!人工頭脳」


「出盆、人工頭脳の取り付けには、やっぱり時間がかかるんだろうな?」
 内藤財団の重役室、マイケルがデスクに座ったまま、それとなく探りをいれる。
「ああ、そういえばさっき鬼井から連絡があったんだ。どうやら取り付け作業が完了したらしい。さあ、ガレージに行ってみよう。」
「たった一日で?一体どんな車になっているんだ」
 マイケルは不安が確実に現実みを増しているのを感じていた。ガレージに着いてみると、隅っこにちんまりとカプチーノが鎮座していた。別 に外観はこれといって変わっていないようだ。
「さあ、乗ってみろ。」
 ドアーはロックされていなかった。運転席に滑り込むと、センターコンソールに取り付けられたTVモニターのようなものが、まっさきに目についた。エンジンを掛けてみる。すると画面 に内藤財団本部の周辺の地図と、自分の車の位置と向きが赤い矢印で表示された。マイケルがあっけにとられていると、出盆が得意満面 でTVのリモコンのようなものをマイケルに手渡しながら話しかけた。
「どうだ、すごいだろう。衛星の通信回路まで利用して自車の位置を確認出来るシステムだ。何しろ衛星の打ち上げから全て自社開発だから、苦労したのなんのって。しかも、このリモコンで人工頭脳のあらゆる機能をコントロールできるようになっている。」
「あー、出盆?これってひょっとして」
 ただのカーナビじゃあないのか?という一言は、とても言い出せなかった。
「すすごいシステムだな、うん、うん」
 マイケルは言葉を濁した。今どきの車だったら別に珍しくもなんともない。オートバックスに行けば、たぶん20万円で載せられる。
「そうだろう、これを積んでいればまったく知らない土地でも迷わずに目的地にたどり着けるぞ!」
「あああ、そうだな。それじゃあちょっとテストドライブに行って来るよ。」
 マイケルはカプチーノをガレージから出した。一つため息をついて、半分やけで勢いよく本部の正門を飛び出した。
「感情が昂っているときの運転は感心しませんが」
 マイケルは思わず急ブレーキをかけた。
「またあの時の声だ。やはり勘違いじゃなかったらしいな。」
「ええ。またエンジンを切られてしまいそうだったので黙っていましたが、今ならきっと受け入れてもらえると思って話しかけました。」
「ああ、なんだって受け入れるさ。一体何者だ?」
「Kunitachi Industial for Total Trading キットと呼んで下さい。」
「それは国立産業の社有車のことじゃないのか?」
「もとはといえば、それは私の様に完全に独立して自動車を運転できる車に付けるべき名前でした。安全かつ効率的に物流をコントロールして、社会に貢献する。内藤財団の基本理念から生まれた実験計画でしたが、あまりにコストがかかるため、試作機を一台作っただけでこの実験は打ち切られました。」
 なんだかそんなことの多い財団だな、などと考えつつ、マイケルが問いかける。
「完全に独立して運転を?ということは」
 言い終わるか終わらないうちにキットが勝手にウインカーを出して走り出してしまった。
「うわ!ちょ、ちょっと待ってくれ!」
 器用にクラッチをつなぎ、スムーズに流れに乗っているものの、やはり怖い。しかし、馴れてくると安全運転であることに気付く。
「へえ、法定速度以内で、交通規則を守って運転するわけか。」
「はい、基本的には。ただし、必要な時にはもっと速度を上げてオートドライブすることも出来ます。今はしませんが。」
「分かった、分かった。しなくていいよ。さあ、分かったから運転を代わってくれ。」
 キットがハザードを出して車を脇に寄せてとまった。さて、このことは出盆に言うべきかどうかマイケルはちょっと考えながらキットを本部に向かって走らせた。

以下次号、やっぱり全然マイケルの活躍は見られませんでした。
人生そんなもんです。


事件だ事件だ嬉しいなっと『内藤ライダー』
第8話「陰謀の影」


 マイケルが本部に戻ってくると、すぐに出盆に呼び出された。キットのことは取り敢えずだまっていようと考えながら、重役室に向かった。
「やあ出盆、人工頭脳はいい調子だったよ。」
「そうかそうか。それは良かった。それじゃあ、これが請求書だ。」
 出盆から手渡された紙を見て、マイケルは我が目を疑った。68万円と書いてある。
「おい出盆、これは一体どういうことだ?人工頭脳は38万円だろ?」
「ああそうだ。しかし、人工頭脳をただ単に車の中に放り出しておいても役に立たんだろ?取り付け工賃が30万円だ。」
「工賃ってたった一日で済むような作業が30万円もかかるのか?」
「そうだ。何しろ特殊技術だからな。そこいらのオートショップでの作業と一緒にしてもらっては困る。」
 オートショップは知っているのにカーナビは知らないのか?理不尽を感じつつも、マイケルは経費で68万円を支払った。
「ちょっと待ってくれよ出盆。そうすると、内藤20計画の予算はもう0円?」
「ああ、そういうことになるかな?」
「じゃあ、これからの活動はどうなるんだ?ガソリン代とか、いろいろかかるんだぞ!」
「そうだな、アルバイトでもして稼いでくれ。とにかく今期は我慢して頑張るしかないんだ。それでは、私はこれから会議があるから失礼する。」
 アルバイト?冗談じゃない。悪夢としかいいようがない。がっくりと肩を落としてうなだれると、何やら書類が一枚落ちている。
「出盆が会議の資料を落としていったのかな?」
 拾い上げて見てみると、それはチラシをコピーしたものだった。新聞の折り込みだろうか。
「何々アルバイト募集?家庭教師か。アルバイト?ははーん、出盆め。いいとこあるじゃないか。なんだかんだ言って、こういうフォローを入れてくれるんだから。」
 詳しく内容を読んでみると、科目は単科でもオーケー、自給や時間は応相談となっている。英語だけならマイケルでも教えられる。
「さて、一体どんな家で教えるのかな?ああ、派遣センターなのか。えーと、住所は群馬?ちょっと遠いが、キットがいれば問題ないか。よし、さっそく面 接を受けにいこう。」
 マイケルは、履歴書を持って一路群馬へ向けて走りだした。
「このように、学生や社会人を『家庭教師』という名目で集めて、理不尽な労働を強制し、人々に虚無感と脱力感を与えるのです。何と恐ろしい計画でしょう。では、次の資料をお配りします」
 財団本部の会議室で、出盆は財団各部署のマネージャーを集めて内藤20計画に関する緊急会議を開いていた。マイケルにはバイトをしろなどと言ったものの、型遅れのカーナビを68万円で売りつけてしまった罪悪感も、多少はあるのだ。皆にマイケルの仕事に対する理解を深めてもらえば、ガソリン代ぐらいは予算を上乗せしてもらえるかもしれないという出盆の親心だった。
「おや?資料のコピーが一枚足りないぞ?まあ、どこかに置き忘れたかな?さあ皆さん、お手元の資料をご覧ください。このように、何の変哲もないアルバイトの募集のようなチラシで、彼らは獲物を呼び込むのです」

マイケル危うし!みんな貧乏が悪いんだ!
罠にはまりつつあるマイケルに、一発逆転のチャンスはあるのか?
待て、次号!


緊迫の急展開!のわけないって『内藤ライダー』
第9話「悪魔の暴走トラック集団!白昼の襲撃」


「キット、前橋まであとどれくらいだ?」
 関越道を飛ばしながら、マイケルが問いかけた。
「インターチェンジまでは約18km、10分ほどで到着します。」
 マイケルが運転しているため、かなり大ざっぱな答えが返ってきた。キットに運転させるのは、必要最小限にしようと考えていた。少し黙っていると、カーステレオからクイーンのボヘミアンラプソティが流れてきた。マイケルはステレオのボリュームを上げた。
「マイケル、ステレオの音量が大きすぎます。緊急車両のサイレンを聞き逃す恐れがあります。」
「何言ってるんだキット、この素晴しい芸術をこれ以上小さい音で聞いたら、もったいないだろう?大丈夫、サイレンの音くらいは聞こえるさ。」
「こんな耳障りな雑音を、芸術と呼ぶあなたの感性はどうしても私には理解いたしかねます。」
「そんなカタイこと言わないで、お前もこのビートに身を任せてみろよ。俺の言っていることが少しは分かるさ。無理かな?」
 マイケル達がそんなやり取りをしていると、突然目の前に壁が現われて、思わずマイケルはスピードを落とした。
「何だ何だ?ずいぶん乱暴な運転だな!」
 マイケルは3車線のうち、真ん中のレーンを走っていたのだが、すぐ後ろを走っていたトラックがいきなり追い越しをかけて来て、キットの目の前に割り込んだのだ。
「マイケル、四方をトラックに囲まれました。」
 気付いてみると、大型トレーラーが四台、キットを取り囲むように走っている。
「もうすぐ前橋インターだ、このままじゃあ高速を降りられないぞ!」
「マイケル、リアトランクを開けてください。」
「トランク?どうやって開けるんだ?」
「センターコンソールが横開きに開きます。中にトランクオープナーがあるので、レバーを引いてください。」
 マイケルは言われたとおりにトランクを開けた。
「それでは左側のトラックと前を走るトラックのすき間から一気に脱出します。すき間の方へハンドルを切って、インパネの赤いボタンを押してください。」
「えーと、ああこのボタンか。どれどれ」
 ボタンを押すと同時に、ドライバーズシートに全身の血液を吸い取られるような感覚に襲われ、一瞬意識を失いかけた。我にかえったときには、前橋インター出口の看板が見えたので、マイケルは慌ててウインカーを出した。一体どうやってトラックの間から抜け出したのか、自分にもさっぱり解らなかった。
「キット、一体今のは何だ?」
「赤いボタンはターボブーストボタンです。どういうわけか、どんなに不自然な体勢からでもジャンプできます。ただし、リアトランクの中にターボブースト用の排気管があるので、トランクを開けてからスイッチを入れないと、トランクフードがふきとびます。」
「へーえ、そうなのか」
 なんでそんな機能があるのかは、あえて聞くまい。現にさっきは役に立ったわけだし。
「さて、面接の会場はなんていう所だったっけ?」
「ステーキの宮という店です。今ディスプレイにルートを表示します。」
「食事しながら面接か。洒落ているのはいいがステーキなんて高いんじゃないのか?」
「大丈夫、データによると普通のファミリーレストランのようです。」
「そんなデータまで入っているのか?すごいな。でもなんでわざわざそんな所で面 接するんだ?派遣センターなら、自社ビルぐらいはあるだろうに。」
「それが、私のデータバンクにもこのような名前の会社は登録されていません。何か怪しいですね。」
「たぶん新しい会社なんだろ?まあ、話を聞くだけ聞いてみよう。いきなり教えろとは言われないだろう。」

ああ!こんなことをしている間に1話終わってしまった。
次回こそ強敵の登場!
待て、次号!


祝!二桁目『内藤ライダー』
第10話「恐怖の面接」


「えーと、駐車場に着いたはいいけど、相手は俺がここにいるとわかるのかな?」
 面接の待ち合わせ場所になっているステーキの宮の駐車場にキットを停めて、マイケルがキットに話しかけた。
「あらかじめこちらの特徴を相手に伝えてありますから、向こうから声をかけてくるのではないですか?」
「ああ、そうだな」
 答えながらマイケルは、辺りを見回した。同じシルバーのカプチーノが2〜3台離れたところに偶然止まっている。相手方にはシルバーのカプチーノとしかこちらの特徴を説明していない。
「マイケル、あの女性はしきりに私と同じ色のカプチーノを覗き込んでいるようですが。」
「ああ、たぶん彼女だろう。」
 マイケルはキットから降り、もう一台のカプチーノを見ている女性のほうへ歩いていった。
「お嬢さん、優秀な家庭教師をお探しですか?」
 あまり年をとっているようには見えない。少なくとも30前だろう。セミロングの髪に、少しウエーブがかかっている。
「ええ。ちょうどいい、あなたでいいわ。さあ、今からこの子に勉強を教えてあげてちょうだい。」
 そういう意味で言ったんじゃない。マイケルはちょっと面喰らいながらも、履歴書のような書類を受け取った。
「ちょっと待ってくれよ、俺は家庭教師のアルバイトの面接に来たんだぜ。あんたはあの広告を出している派遣センターの人間なのか?」
「ええそうよ。KAMITOMO派遣センター。Knowledgeable And Multi Intelligent Teachers for Order system to Medical Organizationの略よ。主に医療機関の従事者向けに家庭教師を派遣しているの。」
「へえ、俺の名前はマイケル内藤。アルバイトで英語の家庭教師をやりたいんだ。で、この子に英語を教えるのが今日の面 接の内容なのかい?」
 マイケルはさっき手渡された書類に目をやった。高校生ぐらいの女の子だった。
「ええ、そうなのよ。さっきは慌てていて、ご免なさい。本当は数学も教えて欲しいんだけど、とりあえず英語だけでも構わないわ。この子、看護婦の卵なんだけどちょっとだけ学力が不足なのよね。」
「そういうわけなら、俺で役に立つんだったら協力するよ。で、給料のことなんだが」
「そう、ありがと。じゃあ、この子だから。適当に落ち着ける場所で教えてあげてね。よろしく。」
 派遣センターの女は、看護婦の卵を置いて、さっさとどこかに行ってしまった。仕方なくマイケルはキットの所へ戻り、看護婦の卵を乗せて場所を移そうとした。すると、キットがマイケルにだけ聞こえるように話しかけてきた。
「マイケル、悪いことは言いません。私のナビゲーション通りに走ってください。」
「ああ、確かに怪しいな。よし、キット頼んだぞ。」
 さあ、行こうか、などと言ってマイケルはさりげなくキットを発進させた。キットの指示通 りに走ると、ミスタードーナツの前に来た。
「キット、ここでいいのか?」
「はい。くれぐれも気をつけて。」
 かくしてマイケルの初仕事が始まった。このときマイケルは、どんなに恐ろしい陰謀に巻き込まれているか、知る由もなかった。

果たしてKAMITOMOの正体とは?マイケルの運命やいかに!
待て、次号!


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