自衛隊が携行するのはガンマ線用ガイガーカウンター。「湾岸戦争シンドローム」は劣化ウランとは無関係
衆議院イラク問題特別委員会議事録(159回3号,2004年1月29日)より

照屋委員 昨日の予算委員会、それから、ただいまの共産党の赤嶺委員の質問に対する防衛庁長官の答弁等々を聞いておりますと、本当に、情けないというか、強い怒りを禁じ得ないのであります。要するに、先遣隊の報告が、事実確認含めて余りにもずさんであるということが明白になりました。
 このようなずさんな先遣隊の報告に基づいて、防衛庁長官は自衛隊本隊のイラクへの派遣を命令された。これは、とても国会としても承認するわけにはいかないし、ましてや国民もそれを許さないだろうと私は思うんですね。余りにもひど過ぎる、こういうふうに思わざるを得ません。
 それで私は、きょうは最初に、一月の二十六日の予算委員会で、防衛庁長官並びに外務大臣に、イラクへ派遣をされる自衛隊員の劣化ウラン弾による被曝の問題をいろいろお聞きいたしました。その私の質問に対する外務大臣、防衛庁長官の答弁は、とても納得し得るものではない。したがって、きょう、さらに引き続いてお伺いをいたしたいと思います。
 最初に、外務大臣にお伺いをいたしますが、私は一月二十六日の予算委員会で、国連環境計画、UNEP、この報告書についてただしました。その後、私も精査をいたしましたら、昨年の十月二十日付で、国連環境計画、UNEPの中の戦争後評価部隊、PCAU、この報告書が出ておるということについて、外務大臣は承知をしておられるでしょうか。
川口国務大臣 いたしております。
照屋委員 この報告書によりますと、国連環境計画は、米国国防総省とイギリスの国防省は、米国及び英国の連合軍が二〇〇三年のイラク戦争でも劣化ウランでできた爆薬を使ったことを認めました、こういうふうになっていることを外務大臣は承知しておられますか。
川口国務大臣 UNEPが二〇〇三年、昨年の十月にまとめた報告書におきまして劣化ウラン弾について記述があって、今後の調査の必要性について示唆をしているというふうに承知しております。
照屋委員 私が聞いているのは、UNEPの中の戦争後評価部隊、これが昨年十月二十日の報告書の中で、今指摘をしましたように、米英軍がイラク戦争でも劣化ウラン弾を使った、使用した、こういう内容になっているのではありませんか。
川口国務大臣 今委員がおっしゃったUNEPの報告書につきまして、我々としてUNEPに問い合わせをいたしました。そういたしましたら、今月の二十二日ですけれども、当該部分については、二〇〇三年の三月二十六日に米中央軍のブルックス准将が行った会見における発言に基づいて作成をしたという回答がありました。
 それで、この准将の発言ですけれども、これは、米国の軍隊の保有する弾薬のうち、劣化ウランを使用した弾薬がわずかにあるということを述べたものでございまして、米国が今回イラクで軍事行動をした際に劣化ウラン弾を使ったということを言ったということではないというふうに理解をいたしております。

 それから、我々として、これは前にも国会で申しましたけれども、ブルックス准将の発言について米国政府に問い合わせをいたしております。それで、その際の回答としては、実際に今回の対イラク軍事行動で米軍が劣化ウラン弾を使用したか否かについては米国政府は明らかにしていませんし、今後とも明らかにする予定はないという回答を得ております。
照屋委員 外務大臣、この間政府は、今外務大臣答弁のように、米国は使っていないとか、あるいは、少なくとも使ったとは言っていないというふうなことを繰り返し言い続けて、そして、何かしら、イラクにおける米国の劣化ウラン弾の使用を日本の外務省として認めるわけにはいかない、米国をかばい続けているというふうに思わざるを得ないわけです。
 ところが、現実問題として、イラクへ派遣をされる自衛隊員や自衛隊員の家族というのは、劣化ウラン弾による放射能汚染、被曝に対する恐怖を感じているんですよ。
 外務大臣、それじゃ、イギリス軍が使ったということについてはどうですか。
川口国務大臣 イギリス軍は劣化ウラン弾を使ったということを認めているというふうに理解をしています。
照屋委員 それは、外務省は、イギリス軍の劣化ウラン弾の使用については何を根拠にイギリスが使ったということをおっしゃっておるんでしょうか。
川口国務大臣 これは、イギリスみずからが劣化ウラン弾を、一・九トンだったと思いますが、使ったということを言っているということです。
照屋委員 だから、私が聞いているのは、イギリス軍がバスラで一・九トンの劣化ウラン弾を使ったということを、外務省はどういうルートで、何を根拠にそれを承知しておるというふうにおっしゃっておるんですか。
川口国務大臣 これは、イギリスの政府の公表資料でございます。
照屋委員 このイラクにおける劣化ウラン弾、使用された劣化ウラン弾による放射能汚染、これは、派遣される自衛隊の生命身体の安全に対する危険もさることながら、本当に広大な環境破壊ももたらしていることは国連環境計画でも明らかになっているわけですね。
 先ほど外務大臣もお触れになりました国連環境計画の中で、イラク国には劣化ウランで破壊された車両等が今なお放置をされて危険な状態にある、こういう内容になっていることも承知をしておられるでしょうか。
川口国務大臣 いずれにいたしましても、劣化ウラン弾というのは特定通常兵器使用禁止制限条約の規制の対象にはなっていないわけでございます。ということは、その使用は禁じられていないということです。
 劣化ウラン弾の健康被害につきまして国際機関等による調査が行われているわけでして、UNEPあるいはWHOが報告書をつくっていますけれども、国際的に確定的な結論が出されているというふうには承知をいたしておりません。
 政府としては、引き続きこうした国際機関の調査の動向を注視していきたいというふうに考えています。
照屋委員 防衛庁長官にお伺いいたします。
 マスコミ報道によりますと、陸上自衛隊北部方面隊は、昨年の十二月二十日、イラクへの派遣候補要員八百五十名の家族を集めた説明会を開催して、米軍が使用したとされる劣化ウラン弾による放射線の影響には、対策として、隊員一人一人に新型線量計を持たせ、放射線を検知した場所での活動は取りやめる、このような説明をしたと報じられておりますが、それは事実でしょうか。
石破国務大臣 現在、私が承知をいたしておりますのは、イラクへ派遣される陸上自衛隊の部隊には、放射線を測定するため、微量ガンマ線測定器、ガンマ線用線量計を携行させると承知をいたしております。
 今回、陸上自衛隊をイラクに派遣するに際しましては、微量ガンマ線測定器を一台約五十万円で五台調達、ガンマ線用線量計を一台約四万円で六百台調達というふうに承知をいたしておるところでございます。

照屋委員 防衛庁長官は、昨年十二月十六日の参議院外交防衛委員会で、我が党の大田昌秀議員が「サマワに派遣される自衛隊は放射能探知器を持参するとの報道がありますが、それは事実ですか。」と尋ねられて、そういうことを確認しているわけではありません、このような答弁をしておりますが、覚えておられますか。
石破国務大臣 覚えております。
照屋委員 そうすると、イラクへ派遣される自衛隊員に放射線の線量計を持たそう、持参させよう、そういうふうに防衛庁が決めたのはいつの時点なんですか。
石破国務大臣 その後のことでございます。
照屋委員 いや、私が聞いているのは、その後というのはわかりますよ。そうじゃないと、あなた、また虚偽の答弁をしたということになりますからね。
 それは日付は特定できませんか。
石破国務大臣 何月何日ということを今特定できるだけの知見を有しておりません。
照屋委員 じゃ、十二月十六日の時点までは、少なくとも自衛隊に放射能の探知器を持参させようなどとはよもや思っていなかった。その後に持参させることになったわけですね。
 なぜそのような方針に防衛庁は変わったんでしょうか。
石破国務大臣 よもや思っていなかったということはございません。それはいろいろなことがあるであろう。しかしながら、IAEAなりあるいは世界保健機構、WHOなり、そういうところから、日本も大きな役割を果たしている、そういうところからいろいろな報告を受け、知見を得て、そういうような具体的に被害があるとは承知をしていないというふうにはお答えをいたしました。
 しかし、その大田委員の御質問に対する答弁でも、持っていきませんということを私はお答えをしていないはずです。自衛隊員の安全には常に配慮をしなければならないということ、大田委員に対するお答えかどうかは忘れましたが、唯一の被爆国として、いずれにしてもそういうような被害に対して、放射能被害というものに対しては、我が国は鋭敏、鋭敏という言葉を使ったかどうかは記憶をしておりませんけれども、注意を払わねばならない、そういう答弁をしたのであって、よもや考えていなかったものをという委員の御指摘は当たらないのではないかと考えます。
照屋委員 防衛庁長官はそうおっしゃるんですが、大田委員は、「サマワに派遣される自衛隊は放射能探知器を持参するとの報道がありますが、それは事実ですか。」と、持参するという報道、これは事実ですかと聞いたのに対して、防衛庁長官は、そういうことを確認しているわけではありません、このように答えているんですよ。
石破国務大臣 その時点で決まっておらない以上、そのように答弁をするのは当然のことでございます。
照屋委員 それでは、こう聞きましょう。
 派遣された先遣隊は、サマワにおける放射能汚染の実態については調査をされたんでしょうか、さらに、その結果は先遣隊からの報告書には記載をされておるんでしょうか、お伺いしましょう。
石破国務大臣 先遣隊が線量計を持参したということは、もう答弁を申し上げたとおりのことでございます。
 劣化ウラン弾というものが人体に与える評価、影響というのは、皮膚を通過しない、直接採取をしない限り影響は生じない、それも重金属性によるものであるということも答弁を申し上げました。
 しかしながら、念には念を入れて線量計というものを持参させる、それはガイガーカウンターというふうに世の中で言われるものでございます。彼らが活動するときに、それがたとえ放射能ダストというものであるにせよ、普通の人間界、普通の自然界において生じないものがあればその線量計は反応することができるというものでございます。そういうものが反応したという報告は受けておりません。

照屋委員 人体云々じゃなくして、ずばり答えてくださいよ。
 先遣隊は、サマワで放射能汚染についての調査はやられたんですかと私は聞いているんです。
石破国務大臣 放射能の調査というものに特定して調査を行ったということはございません。しかしながら、持っていった線量計が反応したという報告も受けておりません。
照屋委員 私は、自衛隊を派遣するに当たって、劣化ウラン弾による被害というのは、放射能汚染というのは、これはもう防衛庁長官も外務大臣も、湾岸戦争症候群と言われるぐらい、アメリカ社会は、帰還した米兵やその家族などを含めて大変大きな問題になっておるんですよ。
 昨年十二月二十五日の公明新聞を見ますと、神崎代表と一緒にサマワの状況を視察した遠山参議院議員がインタビューでこんなことをおっしゃっているんですね。「イラク南部は劣化ウラン弾が最も多く使用された地域でもあり、その放射能被害を危惧する声がありますが。」こういう問いに対して、遠山議員は、「オランダ軍は劣化ウラン弾が使用された場所を特定し、立ち入り禁止にするなどの対策をすでに行っています。」こういうふうに言っておるんです。
 要するに、私は予算委員会でも言いましたけれども、イタリア軍は既に、劣化ウラン弾による被曝で、もう七名の者が体を壊して帰還しているんです。そして、この公明党の調査団でも、今私が具体的に読み上げたように、公明新聞に載った記事では、オランダ軍は使用された場所を特定して、それによって対策をしているわけですよ。
 でも、自衛隊はそれをやっていないでしょう。それはやはり、私は、派遣される自衛隊の生命の安全に対する余りにも配慮を欠いた、これでは、今度の政府の自衛隊の派遣というのは、イラクで米英軍が使用した劣化ウラン弾、これに加担をするようなもの、よく言われる、放射能戦争あるいは劣化ウラン弾戦争への日本の参加であると言っても私は言い過ぎじゃないと思うんです。これは大変な問題ですよ。あなたが顔をしかめて、これで許されるような問題じゃないんですよ。だから、公明党の調査団も気を使って、私は関心を持って調査したんだろうと思うんですね。
 なぜ自衛隊は、本当に隊員の安全を考えるのであれば、イラクにおいて使用された劣化ウラン弾の地域、その範囲、これを特定するような作業をしないんでしょうか。
石破国務大臣 公明新聞の報道というものは確認をいたしますけれども、私、何度もお答えをしたかと思います。WHOやいろいろな機関によって、劣化ウラン弾の被害というものはない、そして、湾岸戦争シンドロームというお話がございましたが、それも、人体に対する影響が劣化ウランとの関連性は確認されていないとの報告を受けておるわけでございます。
 そういたしますと、現在のところ私どもは、劣化ウランについて、人体に直接摂取でもしない限り、直接摂取した場合もそれは重金属ということを先ほどお答えをいたしました、影響があるとは思っていないけれども、しかしながら万が一ということもある、念には念を入れてということもある、したがって線量計というものを携行していくということ、それを行っているということはお答えをしておるとおりです。

 私が顔をしかめてとか、それで済むとか、そういうことを申し上げているのではない。やはりそういうことに注意をすればこそ、国民の税金を使いまして線量計というものを携行する、そして自衛官の安全を確保する、それを考えなければ、線量計を持っていくなどという判断にはならないと私は思います。
照屋委員 その、今度自衛隊員が携行していく線量計というのは、どこのメーカーの線量計なんですか。
石破国務大臣 線量計のメーカーは、これは特定をいたしております。今ここで名前を申し上げることはできません。これは申し上げてもいっかな構いませんが、現在私が掌握をしておらないということでございます。線量計を携行するメーカーも特定はできております。これは、武器等々安全にかかわるものではございませんので、申し上げても差し支えのないものでございます。
照屋委員 この線量計、どこのメーカーで、それから、一個当たりの値段とか、防衛庁は何個調達をしたのか、その線量計はどういう機能を持っておるのか。これを、委員長、私は当委員会に資料として提出することを強く求めたいと思います。
石破国務大臣 失礼いたしました。
 製造会社はアロカ株式会社でございます。金額は、先ほどお答えをいたしましたが、微量ガンマ線測定器は一台約五十万円、五台調達、ガンマ線用線量計は一台約四万円で六百台調達をいたしておるところでございます。
 微量ガンマ線測定器は、センサー部分を検知対象物にかざし、対象物の放射能汚染の有無及び強度を測定するものでございます。自然界に通常存在しておるレベルの放射線量率を測定することは可能であり、検知対象物、地域の放射線量率が自然界に通常存在しているレベルの放射線量率を超えていれば、その放射線量率の違いを検知することが可能でございます。
 一方、ガンマ線用線量計は、個人の受けたガンマ線の累積量を測定するために使用するものでございまして、隊員個人が携行し、機器前面にガンマ線の累積値が表示をされる、そのような性能を有しているものでございます。
照屋委員 この計量器の性能というか機能については大いに問題があるやに専門家から私も話を聞いておりますので、また機会を見て議論をしたいというふうに思っております。