アマチュア劇団の裏方さん

ここに記載された内容はあくまでも参考資料です。そのまま実施して何かあっても当方は責任は取れませんが、失敗談があればフィードバックしていただけるとありがたいと思います。不適切な表現の指摘もあればよろしくお願いします。特に照明はアマチュアが正規のホールじゃない場所で行う場合は仕込や本番で一番トラブルの種になるので、電気工事士とは言わないまでもハラをくくれる大人が自己責任で判断・実施して下さい。

ホールで本格的な照明を使いこなすのはそれはそれで大変だが、最初は詳しい人に聞きながら必要最小限の音や明かりからスタートして徐々にノウハウを蓄積して行くしかないだろう。そうして何度かやってみればなんとか格好をつけることができるようになる。スタッフでも特に照明や音響は役者同様の芝居っ気があった方がいいので、劇団員がスタッフをやっているとどんどん深みにハマっていくかもしれない。そのうち、演出をはじめとする周囲の要求は次第に高度になって行き、とても片手間でやれる仕事じゃなくなってくる。そして、ついにはキレそうになる場合もある。
そう言うわけで、創造市場の場合、ホールでの公演はプロの照明屋さんにボランティアみたいな料金でやっていただいている。それにプロじゃないと会館の人がさわらせてもらえない場合もある。音響も事情はほとんど同じだが、創造市場の場合はアマチュアながら腕があり、何より劇団員の中で性格がとってもいい人がいるので劇団員がやっている。しかし、そんないい人でもマジで切れる時を何度か見たことがある。それほど専門的なスタッフは大変な仕事なのだ。
アマチュア劇団が公演する場所は設備の整ったホールばかりとは限らない。学校の教室や小さな公民館、体育館、野外など音響や照明設備が無い場所で芝居をやりたい場合、これらの装置を自分で用意しなければならず、どっかから買ったり借りたり作ったりしないとはじまらない。以下、創造市場の経験に基づくノウハウって言うか苦労談を記す。


機材について
学校の教室や小さな公民館、体育館、野外など音響や照明設備が無い場所で芝居をやりたい場合、これらの装置を自分で用意しなければならない。劇団創造市場の場合、音響については設備のあるホールでもMD装置は使い慣れたものを持ち込んで使っている。ミキサーも設置場所が許せる限りそうしている。アンプ・スピーカ等出力関係はここ数年なんとか買い揃えて基本的なシステムは自前で設置できるようになった。それまではバンドをやっている人から借りたりしていろいろと気を遣っていた。
 照明はここ10年あまりの間に作ったりもらったりして稽古場で公演できる程度の機材を揃えてきた。

機材を借りる
まず、有料のレンタルを思いつくが、機材を全部をレンタルにすると数も多いのでかなりの金額になる。その前にそれよりも低額な(または無料な)学校や公民館(自治体の教育委員会に問い合わせると良い)などの機材を借りることが出来ないか検討しよう。そういったコネがない場合の金額の目安はハートスグループ(http://www.heart-s.co.jp)さんのホームページを参照されるとよいだろう。ダスキンでも機材が置いてあるらしい。ここでは特に照明機材について書いたが音響機材についても事情はほぼ同じだろう。

機材を買う
舞台の機材は需要自体がそんなにないのか、ちょっとした機材でもかなり高い。でも、公演回数が多ければ借りるより買ったほうが安くなるかも知れない。ライブハウスやホールなどで改築や廃業したときに生じる機材を安く譲ってもらえるととてもラッキーだが、なかなかそんな機会はめぐってこない。自治体とのコネを作っておけば廃棄処分となった機材を安く譲ってもらって修理して使う機会があるかも知れない。公共施設のホールなどは定期的に少しづつ機材を更新して行くからだ。照明機材の地明かりなどは資材店や日曜大工のお店に置いてあるような野外作業用の照明機材がそのまま使える。

照明機材の会社
丸茂
東京舞台照明
ちなみに照明に色をつけるゼラは東京舞台照明からファックスでオーダーして着払いの宅急便で届けてもらうことができる。

照明機材を作る
地明かりなどは野外作業用の照明機材がそのまま使えるが、ゼラを入れるためには多少の改造も必要になってくる。エリアを作るためのスポットライトは集光性のある電球を利用したりスリットを自作してそれなりの代用品を製作することも可能だ。レンタルの機材と混在する場合は(平行からCまたはT型に変換するなど)コンセントの形状を揃えるための機材も必要だ。自作・改造の場合は熱と大電流に耐えられるように注意しなければならない。

消耗品
照明用のカラーフィルター(通称「ゼラ」。単に「色」というのが通らしい。商品名でポリカラーとかプラステートとも呼称される。)は文房具屋さんで売っている色つきセロファンとは材質的に違う。ゼラは色が規格化されていて燃えにくい素材になっている。でも電球に直につくと溶けて煙と異臭を発する。もちろんハロゲンランプに色付セロファンなんか使ったら燃えてしまう。教室でやる学園祭で蛍光灯につけるならギリギリセーフというところか?それでも灯体に直巻きは止めた方がいいだろう。どんな色があるかは東京舞台照明 などで色見本を売っているのでまずそれを入手してみればよいが、イメージ通りの色を舞台で再現するにはその手の本を読んだ上にいろいろと経験を積む必要があるだろう。

調光器
照明を制御するにはディムパックと呼ばれる可搬式の調光器をレンタルするか、代用品を自作する。オン・オフだけで良いのなら屋内配線用のスイッチを並べたものを作れば良いだろう。1回路あたり数百円で自作することができる。明るさを調節するには、ちょっと品揃えの豊富な資材店に行くと屋内配線用や室内灯の調光器が2000〜5000円位で置いてあるのでこれが使える。しかし、これはたいてい容量が500W程度のもので、照明機材で言えばベビースポットなど1個分だ。それ以上流すとすぐダメになるので、いろいろな機材で使う場合は回路保護のために5Aのヒューズを入れておくとよいだろう。もっと大きな容量のものもハンダゴテを握るつもりがあれば、作る事が可能だ。(別記参照

照明仕込の時の安全策
舞台の仕込時は熱と大電流に耐える配線、そして落下に対する予防策を仕込に参加するスタッフ全員に徹底しよう。
  1.  自作の照明機材を使用する場合は火災予防のために小型の粉末消火器くらいは用意しておこう。火傷防止のための軍手と皮手袋も欠かせない。
  2. 機材を吊る場合はハンガー以外にチェーンやワイヤーをバトンにかけて落下防止をする。仕込みの際は大勢で作業するし経験も様々なので最後に必ず責任者がハンガーのゆるみ、チェーンの状態、ゼラ枠の固定を確認しよう。
  3. コンセントに直接力が加わらないようにする。またコード類で役者がつまずいたりしないように引き回し固定する。(「養生する」と言う。)
  4. ゼラや暗幕などが照明機材に触れないようにする。幕が照明に触れて異臭騒ぎって言うのはよくある話。正式な会館だと幕類は防炎加工してあるから異臭騒ぎで済むが、野外や教室とかでただの布や紙でも使っていたら火事騒ぎになってしまう。仕込み以外にも転換などによって触れる場合がある。特にローホリやステージスポットは注意が必要だ。役者も注意してもらいたいし、どうしてもそうなりそうな場合は舞台監督や照明の人に(殺気立った状態でも)言おう。
  5. ハロゲン電球は絶対素手でさわってはいけない。さわると寿命が縮む。
電源の確保
配電盤には全体のブレーカーがあってそのあと小さな20〜30Aのブレーカーがあるが、全体のブレーカーから直接引き回せば大電流を使用できる。おおもとのブレーカーから出ているのは単相3線式で中性極(N)から100Vを取って使う。可能かどうかは会場の管理者に確認しよう。配線の際には一旦ブレーカーを落とさないと危ないが、防犯システムが誤作動したり時計が狂ったりする可能性がある。落とす際には必ず管理者の承諾を得てからにしよう。また、ブレーカーを入れる前にもう一度配線をチェックすることと配線先の機材の電源の状態を確認する。中性線を間違えると200V流れて非常に危険だ。ヘタすれば建物全体が停電、最悪の場合には機器の破壊や火災も起こりうる。全館停電とか一度こういうことをやってしまうとあらゆる劇団が二度とその会場で公演出来なくなってしまうかもしれない。専門的な知識と経験を持った人にやってもらった方がいいだろう。電源の容量不足や野外なら建機のリース会社から発電器を借りる。その際引き回すコードの容量やコンセントの形に注意しよう。ちなみに発電器では3相4線式が主流で、そこから中性極と各線の間に100Vの電圧を得ることが出来る。なお、3相3線はモーターを回すのに使われる動力線ってやつで照明には使えない。


大きな電流を制御できる調光器の自作
劇団創造市場で作った調光器のノウハウを述べる。基本回路は秋葉原の部品屋さん「
秋月電子通商」のキットを使用した。キットには、回路図や組立方、実際の仕様方法等詳しい説明書が添付されている。キット本体の価格は1セット700円くらい。中学校でハンダ付けの経験があれば作れるだろう。キット以外に準備するモノはスライド式のボリューム(250k/B)、放熱用のアルミ板、ケース、端子、ヒューズとヒューズボック(またはスイッチを兼用してブレーカー)、コンセントなどが必要で、創造市場の場合、かなりの部分、廃物利用でまかなった。自作の調光器の場合、照明のIN/OUTの際のフェーダーの位置がずれてしまう。(ヒステリシス)これを軽減する回路を設ければ良いのだが、単純な回路では完全に無くすことは難しいようだ。
製作費の総額は、すべて購入すれば3〜4万円位になると思われる。(8回路各20A程度)
 調光器を作るにあたって一番大変なのはケースの自作だと思う。日本人の性でどうしてもコンパクトに作りたくなるが、放熱に配慮して配線や部品配置をする必要がある。
 注意すべき点は説明書にも書いてあるが、特に・・・

  1.  耐圧は実際使用する最大の負荷の2倍以上で設計する。スイッチを入れた瞬間など予想以上の電流が流れることがあるためだ。(100V/10Aなら400V/20Aを流すつもりで・・・)許容量は、素子の許容電流だけでなく配線の太さ、放熱板の面積、放熱効果に制限される。
  2.  放熱板の熱を逃がす工夫(空気の流れの設計)が必要。
  3.  トライアック(電流を制御する半導体)につける放熱板の容量(大きさ)を十分に大きくする。
  4.  出力線の配線にあたっては断面積5.5平方ミリ以上のコードを使用、加工にあたっては減線(被覆といっしょに銅線も切ってしまうこと)に注意する。減線するとその部分だけ電気抵抗が増して発熱、発火などの原因となる。
  5.  フェーダー以外にバイパス(調光回路を経ないで直接点灯、消灯できるスイッチ)、ヒューズまたはブレーカ、サージプロテクタ(点灯した瞬間に流れる大電流から素子を保護する部品)をつけた方がよい。
  6.  コンセントは使用環境によるが、普通の舞台照明と同じT型の方が安全だ。(ただし最近の舞台施設のコンセントはより安全なC型になっている。)普通の平行コンセントは15Aが定格。定格以下でも(1kw程度でも)コンセントの部分等が接触不良によって発熱する場合がある。
  7.  通常の家庭用コンセントは仕様上1口あたり15Aがリミットで、元の配電盤には20Aのブレーカーがついている。つまり、配電盤の大もとのブレーカーからとらない限り1口で最大20Aしか使えない。会場によっては配電盤から直接回路を取ることができない場合もあるので、2回路を独立にして別のコンセント(ブレーカーも別じゃないと意味がない)からとれるようにし、40Aまで使えるようにした。また、アースは通常分離してあり必要に応じ合体できるようにして単相3線(100V+100V)にも対応できるようにした。
  8.  流量の大きな空冷ファンをつけてケース内に熱気がこもらないようにする。ファンは静かなものを選びたい。トライアックが熱でダメになると点灯しっぱなしの状態になる。そういった時のためにもスイッチは必要だ。
  9.  屋内の配線をいじるには電気工事士の資格が必要で、電気事業法や電気工事士法などによって規制されているが、軽微な工事は除外されている。
  10.  引き回すコードの容量にも注意しよう。ホームセンターで売っている延長コードの定格は12A〜15Aが多い。また、容量ギリギリで使い続けていると熱を常に持つ部分(ランプに近い部分や端子の部分、接触不良にたびたびなる部分)は絶縁のためのゴム被覆がもろくなりやすく、ある日突然断線やショートをする場合がある。
おまけ

回路の概念図
秋月電子通商
秋葉原のLAOX COMPUTER館の裏の方にある有名な部品屋さん。パソコンだらけの秋葉原に慣れた人には新鮮な感動があるかも・・・
舞台上のギミックで使えそうなオリジナルのキットなどを豊富においてあります。



照明仕込図(GIF画像ファイル)
1995年青い鳥(土浦市民会館小ホール)
1996年オズの魔法使い(土浦市民会館小ホール)
1996年オズの魔法使い(笠間市中央公民館ホール)
1996年オズの魔法使い(美浦村中央公民館ホール)
1997年真夏の夜の夢(土浦市民会館大ホール)
1998年銀河鉄道の夜(美浦村中央公民館ホール)
1998年陽だまりの樹(土浦市民会館大ホール)
1999年白雪姫(土浦市民会館小ホール)
1999年白雪姫(笠間市中央公民館ホール)
1999年白雪姫(美浦村中央公民館ホール)
1999年茨城県芸術祭演劇祭(つくば市カピオホール)
2000年オズの魔法使い(土浦市民会館小ホール)
2002年森は生きている(土浦市民会館大ホール)

客席の配置図(GIF画像ファイル)
土浦市民会館小ホール


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