URICLE の製作
── Wake up on LAN から MTV1000 による HD 録画システムまで ──

Author: 神木(version 0.001)

目次

  1. 構想に至る道
  2. 製作
    2.1 ケース
    2.2 マザーボードと CPU
    2.3 ケースとマザーボード
    2.4 CPU とドライブ
  3. Windows 2000
    3.1 デフラグ
    3.2 サービス
    3.3 ハードウエアプロファイル
  4. Suspend と hibernation
    4.1 Suspend(S1) と suspend(S3)
    4.2 Hibernation からのタイマ復帰
    4.3 外部デバイスの監視
  5. Wake up on LAN
    5.1 BIOS の設定
    5.2 Magic packet
    5.3 Intel PRO(R) VM connection
    5.4 PROset II
    5.5 Samba の change notify パケット
    5.6 Switching HUB の物忘れ
  6. MTV-1000
    6.1 Samba 経由の直接書き込み
    6.2 Media Crouse のコーミング
    6.3 ステレオ/モノラル音声の known bug
    6.4 VBR の bitrate ダイナミックレンジ
  7. Tightvnc
  8. Holywood plus

構想に至る道

きっかけはビデオの不調だった。 ちょうどそれなりのキャプチャカードが登場してきたこともあり、 これを機に HD 録画体制に移行しようと思い立つ。

ソフトウエアエンコーダを、どんな重い負荷がかかるかわからない atropos (メインマシン; Linux 機) の上で動かす気はなく、ハードウエアエンコーダは例によって linux でサポートされるものは少なく、 事実上 windows 機が必要だ。

唯一の Windows 機である est の CPU は K6-2 500 であり、 これはもちろん MTV1000 の最低推奨環境を遥かに下回る。 ついでに サウンドカードも ISA である (^^;

しかし est 製作時とは異なり、Linux 機でも DVD が観られるようになってきている。 つまり、キャプチャした mpeg2 画像を atropos 側で再生するめどがたっており、 (ハードウエア)エンコードするだけならば、K6-2 で足りるだろう ... というのが当初の目論見だった。 実際 web 上には K6-2 級の CPU で MTV1000 を使っている報告もあった。

で、MTV1000 を買って来て est に挿し、動かすと ── 動きそうにみえて録画させるとエラーですぐにダウンする。

ここで道は 3 つ。現状の est のままでエラーを追求するか、 あるいは est を MTV1000 推奨環境のマシンとするか、新たにマシンを組むか。

何故 3 つ「も」道があるか。つまり、なぜ素直にエラーを追求する以外の道があるのかというと、 一つには (動けばいいが)動かない場合は推奨環境に届いていないという事実が重いということ、 もう一つは est が強烈な騒音源だからだ。 録画マシンとするならば、DVD 再生マシンだった時とは異なり、常に電源をいれておかねばならない。 騒音的に氏素性のよいマシンを新たに組むのも、est の騒音を下げるように取り組むのも、 作業量としては大きな違いはない。とくに est は AT 機 (not ATX という意味での) なので、 suspend, hibernation のような待機のための仕掛けを持っていない。待機時の騒音という意味では ATX 機とは比べ物にならないほど条件が悪かった。

資源的にかなり逼迫してきた atropos (これも AT 機だ) の ATX 移行のための事前調査を兼ねて est を micro ATX 化する ── uricle の構想はこうして始まった。

ケース

uricle のケースのもつべき機能は MTV1000 が挿さること、ほぼそれだけである。 Sound, VGA, LAN はもちろん必要だがその質は問わない。あるだけでいい。 ここでケース(or ベアボーン) としてノミネートしたのは以下の 3 つ。
  1. Yeongyang YY-A101-X01
  2. FIC sabre (内部の様子)
  3. MSI MS6215 (内部の様子)
sabre も MS6215 もそのままでは MTV1000 (カード長 212mm) は入らないが、5inch ベイを外せば入る。 uricle は CDROM ドライブの類を内蔵する必要はないので、HDD の静音化に smart drive を使いたいなどということを考えなければ、5inch ベイは不要だ。 逆に言えば、小型化では本質的に有利な訳である。

静音的には Heulett Packard や Compaq の採用実績のある sabre が氏素性が良さそうである (実際にも静かだそうだ < 2ch (^^;)。 sabre と内部構造がよく似ている MS6215 もあるいは ... という思いもないではないが、 こちらの評判は今一つ。YY-A101 は電源ファン交換が前提だが、電源が ( sabre や MS6215 みたいな特殊なものでないという意味で) 標準的なものなので、手のうちようはあるだろう。 最終的に sabre にかなり心が傾いていたが、入手難という事実の前に敗北した (2001 年 7 月末より再び出回るようになった ... タッチの差やねん)。

YY-A101 というケースは初めて見掛けた時から機会があれば使ってみたいと思っていたケースではあったが、 今回の構想では後で sabre を手に入れた時に使い回しのきく汎用的なケースを ... という気分も実はあったりした。

YY-A101-X01 YY-A101-X01 (白).
3.5inch ベイ幅の筐体に 3.5inch ベイ x 2, 5inch ベイ x 1 を持つ。 FDD も入れるつもりがなかったので X03 より X01 のほうが気分が良い。

マザーボードと CPU

YY-A101-X01 は micro ATX ケースだから、これと組み合わせるマザーも必然的に micro ATX (or flex ATX) マザーになる。 est の代わりになるものなので est から VGA (permedia2) や LAN (VIA rhine2) は 持って来れるが、sound はオンボードが前提だ ... って、sound が載ってない micro ATX のほうが珍しいかもしれないが。

CPU のほうはというと、消費電力的に Athlon (or Duron) は使えず、PentiumIII か Celeron になる。 この両者、同じクロックなら消費電力はほぼ等しく、同じクロックなら PentiumIII のほうが処理能力が上ということで PentiumIII になった ... と書くと論理的に決定されたようにみえるが 実際にはハードウエアエンコードで CPU に負荷がかかるわけでもないので、 秋葉で入手できた消費電力最小の CPU がたまたま PentiumIII (700MHz; outlet 品) だっただけのことである。

CylixIII は、一発でキャプチャマシンを動かす自信がなかったので除外。 CylixIII を考えるくらいなら手持ちの K6-2 を考える :-)

Socket 370 とするなら、i815 しか選択肢はない。VIA は PCI に大量のデータを流すのに不安がある。 ついでということもあって LAN もオンボードマザーを探す。 micro ATX でカードが 4 枚しかさらないというのが不安だったので。 LAN も載っているとなると選択肢は狭い:

ASUS だけが NIC が 3com のを別実装している。Transcend は CPU の位置が YY-A101 向きだ。 Aopen と MSI は特にとりえはない ... と思う。 MSI のを買ったのは当時「どれも同じだろ」と思って Aopen の BIOS(造りがイマイチ) と ASUS の NIC 別実装(消費電力的に微妙に損だ)を嫌ったからにすぎない。

いま選ぶとなれば WOL のことを考えて CUSL2-M/L か、 あるいは YY-A101 との組みで静音のことを考えて TS-USL3/N になるだろうし、他人に勧める時もこのどちらかになると思う。

ケースとマザーボード

est の場合とは違い、組み立てる時点ではトラブルは全くといっていいほど無かった。 YY-A101 というケースが「非常に大きい」ためだ:
815EM Pro を実装 815EM Pro のケース搭載状態。定規は参考用 (後述)。
上の写真は DVDROM Drive を繋いであるがテスト的に接続してあるだけで、 実使用時には 5inch ベイは空いたままである。 つまりケースの中はガサガサで、取り回しやら何やら考えることは全くない。
case 前部 case 後部
ケース前部裏と後部裏のファン付近。

電源ファン

Justy 80mm角 15mm厚の静音タイプ DSF-80L/15 に交換した。 電源 (Enhance SFX-1215D) 付属のファンはマザーに通電テストした一回だけで、 CPU を挿しては一度も使わず。

DSF-80L/15 のコネクタは 4 ピンものだが、3 ピンへの変換ケーブルを経由して マザーのシステムファン用電源端子から電気を得ている。 ここからだと suspend(S1) でもファンは止まる。
電源内部の 本来の 2 ピンコネクタに繋いだ時、suspend/hibernation 時にどうなるか知らない (一度も試したことがない ...) が、どうなるんだろ。

ちなみに、この 12V 0.11A 2000rpm のファンに交換しても なお HDD や CPU ファンの音より電源ファン由来の騒音のほうが大きい。 前面の 5inch ベイの蓋を外しても音がほとんど変わらないところから、 騒音は筐体の隙間(空気の吸入部分)でなく電源部分(空気の排気部分)で発生しているらしい。 このへん、吸入部分の騒音がかなりを占めていた est と異なる。

騒音レベルとしての目標は atropos だが、 このマシンでは smart drive からもれる HDD のシーク音と電源ファン音がほぼ等しい (この二つ以外に騒音源はない)。 uricle の動作音も、せめて電源ファン音が HDD の回転音よりも小さくなってくれないと ... sigh.

MTV1000 の位置

PCI の下から二つめに挿さっているのは MTV1000. マニュアルによれば最下段に ... ということだそうだが、 最下段は LED などのヘッダが邪魔でカードにストレスがかかりそうだったので避けた。 AGP に何か挿さってるわけでもなし、ノースブリッジからの距離の差は誤差範囲だろう。

気になるといえば、 MTV1000 〜 マザーの AUXコネクタを繋ぐオーディオケーブルの取り回しが気になる。 MTV1000 のカードそのものが邪魔になるが、下(ブラケットと PCI コネクタの間) を通すのも上を通すのも奥を通すのもあまり気がすすまない。 MTV 付属のケーブルが比較的長いこともあって、とりあえず奥を通すようにしているが。

CPU と電源の位置関係

こうしてみると CPU と電源ファンの位置がずれてるのが惜しい ... TS-USL3/N だと CPU フィンの位置に電源ファンの位置がかぶってくるんだよねぇ。 やっぱり一枚確保しとこうかなぁ。

CPU ヒートシンク金具と DIMM ソケット

DIMM を挿した状態で、かろうじてケント紙一枚分くらいの隙間があいている。 両面実装だと接触しそうだが、 ま、両面実装で接触する場合はチップの背が触るわけだからショートすることはないが ...

梁の手前側を通している CPUファン電源ケーブル

ファン付属のケーブルが長すぎてファンに巻き込みそうで恐いので、とりあえず梁を回した。 まとめて縛ればいいことかもしれないが。

CPU とドライブ

実使用時には外されるが、ドライブを載せるとすればどうなるだろうか。
Drive をはめ込む DVD Drive を載せた状態。
Creatve DVD 2250 DVD Drive の奥行きは 195mm で、わずかに CPU ソケットにかかる。 できれば 180mm 台のドライブを使いたい ... となると Hitachi GD-7500 位しか選択肢がなかったりする。
これ を使ってノート用ドライブ (奥行きは 140mm 台) をはめ込むってのも頭にあるが、 ノート用ドライブは縦に使うとなんかヤワそうで ...

ちなみにマザーが TS-USL3/N の場合、 CPU は PCI スロットの切れ目よりも左になるのでドライブと干渉しない。いいなあ。

CPUファンと Drive の隙間 CPUファンと Drive の隙間 .. って、ケーブルが邪魔で肝心の部分が見えんやん ....
基板からドライブまで約 60mm. そのうち 30mm を CPU クーラーが占める。
ちなみに CPU クーラーは「これで銅だ mini」。いかにも冷えそうにない造りだったが、 期待に違わずさっぱりである :-)
CPU が高々 PentiumIII 700MHz だからこの程度でも笑ってられるし、 30mm height と低くて音も静かだから慌ててどうこうしようというつもりはないが。

設置

uricle 設置 机の下のプリンタの奥に置かれた uricle.
3.5inch open ベイにも 5inch ベイにも何も入ってないので、机の下に置ける。 電源ボタンは蓋の裏で、手を伸ばしても容易には届かない。 キーボードやマウスから power on しようにもキーボードもマウスも繋がってないので出来ない。 このマシンの電源を意識的に入れるには普段は atropos から wakeup on lan することで行う。
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