『ノワール』 #25 の感想


粗筋
クロエがミレイユを刺す瞬間。 彼女のナイフは霧香の銃弾ではじきとばされた。 驚くクロエは霧香を見つめ、嘆き、哀しみ、 そして叫んだ ── 「うそつき!」
概観
クロエの描写が増えたとこで、でもやっぱり(物語全体のほうの)本筋に絡めずに お亡くなりになってしまうなど、脚本の心構えがちょっちブレてる感がないでもない。
ノワール候補三人の総当たり戦が入り、ラストスパートに入ってる自覚はあるように見えるんだが、 ラス直前(人格描写もネタのばらまきも終えてそれで組み細工する時期) に挿れるような話の造りになってない。

が、まあ、やっぱり「最終回 - 1 の法則」 (最終回の一つ前の回がいちばん面白い) と呼んでいるものにあてはまる回ではあった。 霧香の表情はよくうごくし、 オデット様もぴしっと話をしめ、ラストのミレイユがやっぱりへっぽこであったとか。 ミレイユはきっとラストまでそうなんだろう。

クロエとアルテナ
「あなたに愛されて幸せです」
「まあ、私もですよ」
前回ちょっとみられた、
「長女(クロエ)が母親(アルテナ)を次女(霧香)に奪られて拗ねる」
の続き ... というか、まとめ?

クロエと霧香の関係はどっちかってーと、

「出奔中の長男(霧香)を捜し当てた次男坊(クロエ)が、 会社を継いでくれ〜と呼び戻した」
関係に近いと思っていた ... つまり、 今は自分のほうが会社(ノワール)についてよく知ってるし実力そのほかも 自負するに足ると思ってるが、 潜在的なもの底力のたぐいは敬愛する兄(霧香)のほうが上で 彼を長としたほうが遥かにうまくいくだろうと思っている ... 的な感じで、霧香を上とする感覚。

#24 での「あなたを目指してきた」というのからみても、 二人の関係はそーゆーもんだと思っていたが、 このケースだと(自分より格が上の)霧香を呼び戻すのは 霧香にいまさらノワールの長とられて その形でやっていくだけの覚悟と自信があればこそ、 ってことになるはずなんで、 アルテナの奪り合いでのクロエの甘え方が ちょっと「自分の存在に自信がない」的な感じがあるのは意外だった。

クロエの内心描写がほとんどなくて分かり辛いんだけど、 霧香とともにやってく覚悟はあるが それはアルテナに自分が認められていればこそ ── てな二律背反的なものをここで背負わせるんだったら、 クロエ殺しちゃうのは物語的にもったいないと思う。 それだけで 1 話以上書けそうな内容があるのに。

ミレイユ vs 霧香
広角マクロなレンズワークがちょっと煩いかも。 でも実写ではどーにも不可能な (カメラ持ってる人もミレイユや霧香なみの体術が要るぞ ...) カメラワークは恰好ええっす。

時計の音はミレイユにとっても霧香にとってもオデット様なんだなあ。 もしかして霧香の初仕事かしらん (前回のクロエの台詞からはそーゆー雰囲気ではなかったが)。

ミレイユ vs クロエ
クロエ宣うところの「誰にも邪魔はさせません」てな、 もちろん「あんたには私と霧香の仲は邪魔させません」なんでしょうな。

へっぽこミレイユながらいちおう即死はしていない :-)

三人の総当たり戦でやっぱりいちばんへっぽこな闘いであったが、
ミレイユ vs 霧香戦はもしかして霧香ってば、何気に力をセーブしてました?

クロエ vs 霧香
ミレイユのためなら霧香はクロエも殺せる。 それがクロエも分かっちゃうってのは哀しい。

... でとどまるんならまだしも、 前回のクロエのセリフ「霧香とアルテナのためならなんでもできる」 の返事が「ミレイユのためならクロエも殺せる」てんじゃ、 哀しい通りこして哀れなんだが、メタファー的には 単に「振られただけ」ですか ...
うう、笑うんだか泣くんだかよーわからん。

... それにしても美しい闘いでした。

「二人で暮らすあなたとミレイユは、とても、とても ──
わたしだったのに! わたしのはずだった!」
分からん(いや、意味するところは分かるけど)。
「二人で暮らす」状態に(去年の時点で)クロエと霧香を置くためには ... なんつーか、執事か秘書でもいないといけないよーな。

記憶を奪われる「修行」中の霧香をクロエが面倒見られるとは思えんし、 記憶を奪われたクロエを霧香が面倒見られるとはもっと思えん。

モチーフ
前回から ところどころに『NOIR』自身からひっぱってきたオマージュが見られたので でてくるだろうなと思ったら出てきた、 「イントッカービレ」の再演。 襲われるミレイユを霧香が銃で兇器をはじきとばすシーン。

なんのためにあったんだかよくわからん話がこうやって 絡まってくさまを見るのは楽しい。うん。

メタファー
三本のロウソクの一本が消えるのをはじめとして、 こちらも山程。
オデット様による霧香救済
... 前回、感想書きしなかったことを悔いたシーン。
ミレイユによる霧香救済はない。ではどーするかってーと、 前回でオデットによる救済を暗示してきたので、 「ほほぅ」などと思っていた。

#23 までの展開だとラストへの流れが分からんかったんだが、 #24 でどのような流れもつくれるようになってちょっと感心していた。 霧香救済にミレイユが直接絡まなくてよくなって、 霧香の助けがない状態で ミレイユがクロエに勝つ必要がなくなったとか。

へっぽこミレイユじゃよほどの偶然か僥倖でもないと対クロエ戦の 勝利はなく、こんなとこで幸運の女神様御降臨いただいたんじゃ ラスボスなアルテナ戦でネタがなくなっちゃう。

そういやぁ、島民の慕われ方からしてオデット様の「格」は ミレイユなんぞとは桁が違う(アルテナと同格以上)ようなので、 ただ捨てるのはもったいないな〜とは心の底で思ってたような気はする。

こー、アルテナ、オデットの絡みが もすこし見たい。オデッサさまのお言葉からみて 霧香をオデットの代理人としてのオデット vs アルテナが最終回に ありそうである ... というか期待。 だって、オデット様のお言葉は明らかにアルテナの言葉を知っていてこそのもの。

ミレイユ? オデット様が出てきたんなら要らんな ...

おねーさまなミレイユ
足ひっぱりまくって霧香に救われてなお、 おねーさまなふりをするミレイユ。

「まだ終わりじゃない」などと宣いしが、 ... 別にそのまま帰っても誰も文句言わんよ、きっと。 反アルテナ派にとってはミレイユを手もとに置いたつもりでいるだろうし、 アルテナはノワールが誕生すればよし、だろうから。

そーゆー意味、傷心の霧香をクロエから引き離す言葉としては弱いあたりが しょせんはへっぽこミレイユなのであったことよ :-)

今回、この一言
「愛が人を殺すこともある。でも、忘れないで。
憎しみは、けっして人を救いはしない。けっして ...」
霧香の言葉も、クロエの言葉も ラスト間近だけあって決め台詞的だったけれど、 でもやっぱりオデット様の御言葉 (^^:

おかーさま役が多くなってきてる三石琴乃は、 やっぱり『NOIR』でもおかーさま役なのであった。 それに、おねーさま役より合ってると思う。

ところで、これ、アルテナの言葉と合わせて 現実世界に向けても叫んでおきたい言葉かもしんない。 『NOIR』ではどっちが勝つのかね ... って分かりきってるか ...


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