『ノワール』 #23 の感想


粗筋
霧香と別れたミレイユに反アルテナ派のブレホールが接触してきた。 「ソルダに入れ」と彼は言った。権力を手にすることができると。 そのためには荘園に行ってクロエあるいは霧香のどちらかを殺さねばならないと。 ソルダには両手があればいい。3 人は要らない ──
概観
最終話にむけてのタメですね。(主役たる)ミレイユ側の条件を整えた。 ラストがどういうものでなければならないか、かなり良く定まってくるけど、 ... なんかあんまり面白いラストになりようがないような気がすんだけど。 各話それぞれは、#23 含めてけっこ面白い話になってんだけど、 クロエ登場以前と以後で話がちゃんと繋がってないと思う。

それにしてもミレイユのへたれぶりは今話でも健在である。 こいつが霧香をとりかえせるなんてどーやったら信じられるのだろう ...

ラストに向けて
「オルフェウスとエウリディーケ」なんでしょうね、きっと。霧香も(精神的に)死んでて冥界入りしてるし、 ミレイユ(オルフェウス)が霧香(エウリディーケ)を取り戻しに アルテナ(ハデス)の居る荘園(冥界)に出かけるってな感じで。 荘園は時に取り残された場所 ... ってのもおそらくそういう(冥界という)意味。

そのギリシア神話において「エウリディーケをハデスから取り返した」だけでは話が終わっておらず、 結局は(ハデスとは関係ない)オルフェウスの失敗でエウリディーケを失うというオチをもってしたのが 象徴的なんだけども、 『ノワール』という物語、繰り返し繰り返し「取り戻す」というモチーフが出てきてて、 ラストに「霧香を取り戻す」というのを置いて締めるのは非常に良く理解できるけど、 これだけしつこく使っちゃった以上はラストに置くにはそのまんまだと弱くて、変調しないといけない訳だ。 ... 霧香が記憶を取り戻すにも成功したし、 アルテナも霧香を取り戻した、ラストではミレイユが霧香を取り戻した ... というのでは 物語が終わってない。

それはなんと言っても、アルテナがミレイユや霧香に殺されたとしても、 単に霧香を人質にとってた奴がノワールに殺された(#7 の再演ですな) ── という描写にしかならないから。

霧香とアルテナの繋がりがどうあれ、ミレイユには関係ないことだし、 今話で明確になったミレイユのスタンスからは、霧香をアルテナのもとに置いておくことは 「それ自体が罪である」からアルテナの言い分に聞く耳もたなくていい。

ソルダのグラン・ルトゥールが(ソルダにとって)どんなに素晴らしかろうと、 ソルダを敵と定めたミレイユには何の意味もない。ソルダの外側の、一般世界において「素晴らしい」 というところまで行けば意味があるだろうけど、 ミレイユが銃を掲げたトコでそんなこと言ってみたって遅い。ミレイユにとっても意味があるならば、 霧香をミレイユから切り離す前に告げなければならないことだ。

見ている側(視聴者の側)にとっても同じことが言える。 霧香はアルテナのもとにあるべきである ── という命題に同調すべきなにものも描かれてないので、 視点がミレイユ側にならざるをえないが、 ミレイユがどうにもへたれてて、アルテナどころか子分のクロエにすら勝てそうになく、 正々堂々と戦って勝つ(ようするに盛り上がる形) ... にはとてもならないだろう、 つーかいまさらクロエ、霧香を敵に回してミレイユが勝っちゃったら白けると思う。

途中どこかで「霧香の寝返り」があるはずだが(なかったら凄いなあ)、 そしてアルテナの計画(とたぶんアルテナ自身)が潰されて、 そして荘園の外に出る ... ラストにむけて主役を取り戻したミレイユだが、 こういう状況のドコに活躍する場所がある?

元ネタよろしくアルテナには さっさと殺されていただいて、でもその帰国途上で反主流派がなにかするとかで霧香が死ぬ (再度、冥界へ。そして復活がありえない) ... くらいでもしないと話が終われないと思う。

反アルテナ派とミレイユ
「オルフェウスとエウリディーケ」のイメージでいけばアケロンの河渡しのカロンすか。 ミレイユがヘタれてるのがここの比較でも分かる ... というのは、 オルフェウスはカロンやケルベロスを実力(琴)で従えたわけだ。 それに合わせるとすれば、ミレイユは銃で脅して実力で荘園の位置を聞き出さなくてはならない。 反アルテナ派との協商つうかソルダの下に入って荘園の位置を教えてもらうなんて論外である。

なによりも、反アルテナ派はこれまでアルテナに手だしできなかったわけだ。 その程度の実力しかもたない連中に力で勝てなくてアルテナに勝てるはずがなかろう。 戦略がどーこーという以前の問題だ。

レミ=ブレホールのアプローチ
遅すぎる。霧香がミレイユから切り離される前にアプローチせんでどーする。 なんだかのんびりなコトをのたまうておられるが、 ミレイユがクロエや霧香よか下であることは知っとるはずやろ? すくなくとも騎士団かなんかをつけてクロエ、霧香の戦力を分断するようにしないと とーてー勝ち目なんかないぞ。 ミレイユが負けたらアルテナの力が強まるどころか 造反ってことで粛正されてしまうんだから、全戦力を投入するくらいはしないといけないし、 それならノワール相手の戦いで戦力を消耗するまえに取り込んでおかないと。
霧香の判決
以上、ここまで霧香の状況の変化のことは無視してきた。 記憶を取り戻し、もと(?)の霧香になった。で、ミレイユのもとに戻るとすれば ミレイユと暮らしていた時代の ... 内心の(なんだかよくわからない)重圧に耐える形の霧香でなければならない。 重圧のたぐいが無いものとしている今の霧香ではなくて。

記憶を取り戻し、自分が何をやってきたのか知った、そのことを霧香自身がどう処理するか ... て問題がミレイユが霧香を取り戻す時に本来ならあるはずなんだけど、 霧香自身がすでに判決を出してしまってる ── 「ミレイユ、私を殺して」という形で。

だからミレイユが霧香を取り戻すとすれば、霧香に「あんたは死ななくていい」と言わねばならないのだけれど、 ... もちろん言うのだろうけど、ミレイユ程度じゃ霧香の死刑判決に抵抗できないですな。 死刑判決そのものはアルテナの行動とぜんぜん関係がないんで、 アルテナ(心を入れ換えたとして)にも手が出せない。 #6 で悔悟してるじーさま撃ち殺してしまってるから、霧香自身にもこの判決ひっくりかえしようがなかろう。

したがって、ラストで霧香は死ななければならない ... と思うんだが、これ、ひっくりかえせないと物語的にかなり悲しいぞ。 アルテナにいいようにされた生涯ってことになってしまう。

霧香の写真
記憶がもどった細目な霧香 ... というつもりで描いてんだろうけどさ。 #1 で出てきてた「両親と一緒に写ってる、笑ってる霧香」の写真はどう説明する気だ? 記憶を失う前の撮影だろ? CG で適当に合成 ... ということもできなくはないが、 そんなもんがアルテナのところにあるとは思えないし、そんなもんをアルテナが使うとも思えん。

『ノワール』のラストに向けて個人的には解決していただきたい唯一の謎がこの写真である。 アルテナがなにをどう考えていようと、グラン・ルトゥールがどーであろうと、 そんなもん知ったことか。どーせミレイユ(と霧香)で叩きつぶす話になるのがわかってんのに。

クロエ
仕事終わっちゃったし、 こう話が押し詰まってたらミレイユ vs アルテナの露払いにしかならんので もはやどーでもよろしい。

なんか次回予告で出ずっぱりで霧香と遊んでんだけど、本筋外。

今回、この一言
「君は世界を相手に一人で戦うつもりか?」
「一人とは ── 限らないわ」
「... 妙に聞こえるかもしれないが、健闘を祈っているよ」
本来ミレイユのセリフだけで良いのだろうが、 ヘタれたミレイユが言ったんじゃ「一人では戦力が足りなさすぎるの」 としか聞こえないぞう、ってことでブレホールの返答も。

ここの感想でさんざん酷いことを書きまくっているが、 それでも(妙に聞こえるかもしれないが)健闘を祈っているよ > ミレイユ。


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