『ノワール』 #22 の感想


粗筋
あてもなく彷徨っていた霧香がたどり着いたのはスペイン国境沿いの小さな村。 アルテナを奉じ、ノワールたる霧香に敬意をはらう人々の村。 同じソルダながら反アルテナ派の霧香の引渡し要求を彼らは拒否し、 送り込まれた軍隊を相手に彼らは小銃をもって立ち向かった ──
概観
霧香に主役が戻った。よしよし。霧香の観点からは話がほとんど進んでないけど、 観るとこは多かったのでいいか。
スペイン-フランス国境地帯
確かにたまに新聞にも出てくるトコですね ... バスク、カタロニアの独立運動やらなんやらいろいろ。 修道院つーとちょうどそのあたりを独立運動もとい自治権拡大運動をほーふつとさせられて。

ヨーロッパ史や世界情勢に絡めた話の多い『ノワール』のトリを務めるのがこの地域ですか、 うーん、なかなか。...

で、10 世紀っつうとなけなしの記憶にあるのが 国土回復運動 の時期なんじゃねーかってことでちょっと索いてみた。
イスラム教徒側のマドリッドの(トレドの)防衛砦の建設が 9世紀後半, キリスト教徒によるトレド征服が 1085 年とソルダ成立は ちょうどイベリア半島の中心地トレドを争ってた時期のころ。 すでにピレネーのあたりはキリスト教徒支配下にあっても、 (スペイン北西部の)カスティリアの成立以後(スペイン北東部の)アラゴン王国建設前と微妙な時期。 「1000 年の〜」という単に切りのよい数値つかってるだけかと思ったら、 わりに面白い背景の時代になってるな。

時期的にソルダと十字軍との関係がどーこーという想像はあったが、どっちかってーと このレコンキスタとの関係のほうが確かにしっくりくる。「荒野へと染み渡り ...」ってのが特に。 十字軍のエルサレム王国じゃ100 年そこそこで地中海沿岸から追い出されてしまって 「染み渡る」ヒマなんてなかったろーし、そういう雰囲気でもない。

ただし。「世界そのもの」になってしまってるほどの組織なら ソルダ発祥の地のバスク独立運動問題くらいさっさと解決しておきなさい、って思ってしまうんですが ...

ところでピレネーまでパリから 400 〜 500km あるんですが、この距離を歩いたんでしょーか、霧香ってば。

霧香と村人さん達
なんだかよくわからないけど村人さん達に礼をされる霧香。 不安感の描写うまいです〜。
「この村、どうかしてるぜ ...」
ひとつめ。これまでソルダが動員した連中は寡黙でわりと素直に殺されていた(今話の村人さん達のように)。 ここで兵隊さん達は恐怖を感じている ... ソルダに属さない、一般人の部隊ということですね。
ところで、パリの騎士団ですら「ダメなんじゃねーか?」と自分たちでのたまっていて 一般の軍隊だけでどーにかなると思うのもちょっとナンで、別働隊として専門の私兵さんも 動員しておくべきだったのでは?

ふたつめ。ソルダが対ノワール用に初めて動員した「軍隊」であり、 ソルダという組織が自分たちの(ソルダ的価値観の)私兵以外に兵力を有する ... 一般世界に実際に権力を持っているということを意味してる。 国境地帯で軍隊を動かしていて、スペイン側にも一定の力をもってるってことだし。

てれとー規制
ちょい前に『銀河英雄伝説』の「聖地」の回だったかな、地球教徒の本部で 装甲擲弾兵部隊が狂信者さん達を殲滅する回を観たばっかで、状況が良く似てるんだけど ... いやぁてれとー規制って凄いねぇ。

NOIR での描写ってば、 血が流れないおかげで歩くサンドバッグに弾うちこんでるだけの描写にしかなってないんですが、 そっちのほうがよっぽど教育上問題があると思うんだけど。

言葉で説明
前々回あたりから口で背景を説明されることが多い ... 興ざめになるからやめてくれ。
狂信者さん達
銃の腕前とか、下手するとミレイユなみなんですが、ここ 30 年ばかしロクに活動してなかったノワールを 待って黙々と練習に時間を費してたのでしょーか。

そもそも村長さんとかアルテナより年長にみえるんですが、アルテナさんがグラン・ルトゥールを提唱する前は この人達は何のために何をしていたんでしょう ... むしろ アルテナさんがグラン・ルトゥールを提唱してるんでなくて、 この村がグラン・ルトゥールを主張し、アルテナはそれを支持基盤としてソルダ内に権力を得た、 とでもいうのですかね。そのわりにはあっさり全滅しちゃってんだけど。

霧香の戦闘モード移行のタイミング
微妙に救いのある場面。

目の前で誰か(おばあさん)が霧香をかばって撃たれるまで戦闘モードに切り替わらなかった。 戦闘モードな霧香もこれまでの霧香の支配下にある ... 戦闘モードな霧香は確かに感情なし問答無用モードなんだけど、 それに切り替わるのに感情的な一定のイベントを必要とする、むやみに切り替わらないというあたり。

こういうタイミングでしか切り替わらないなら、 戦闘モード霧香というのは暗殺者としては非常に使い辛かろう。

軍隊
包囲の敷き方が甘い。あっさり裏道から逃げられてんじゃない ...
焼けてる人形
もちろん第一感であのミレイユ似の子供の持ち物なわけだけど、 見返したら実際に人形と一緒に寝てるとこがあった。 一緒に寝てるくらい大切な人形があーゆー状態になってんだから持ち主のほうも、 ってことで暗喩することは分かるんだけど、
... いちいちそんなとこまで覚えながら観てなきゃいかんというのか ...?
今回、この一言
「この村、どうかしてるぜ ...」
重複しちゃったけど、やっぱりこのセリフしかないです。
[アニメ感想のページへ] [『ノワール』の感想目次へ]