『ノワール』 #7 の感想


粗筋
革命家グループのリーダーの暗殺の仕事の最中に霧香は負傷した。 また、生徒手帳を落としたことをミレイユに告げる。 ミレイユは身を軽くするため霧香を殺そうとするも撃てず、 そしてついに霧香は革命家グループの残党に捕まる。ミレイユは ──
概観
頼れるミレイユ姐さん大活躍の回、霧香は最初と最後くらいしか出て来ず、 でもやっぱり霧香主役な回であったことよ。 葛藤の表現を絵だけで通したのは『ノワール』ならそれくらいはするだろうと思ったが、 オチが分かり切ってるだけに もうちょい芸があると嬉しかったかも。

ところで、ノワールの感想書きって、なんかもー 国語の入試問題でも解いてるかのような感触があるんですが。 解釈し感じたことを書くってだけだけどさ、 もともとキーが最小限に絞ってあるうえに平気で二つ三つ掛けてあったり 独立した話にみえてしっかり隣の話と対照してたりと検討範囲が広くって大変ですわ ...

シャッフル
シーンの時間順序の入れ換え、いつか使ってくるだろうとは思ってた。 が、わりとおとなし目? ネタと話の繋げ方が凄まじかっただけに。
ミレイユのお仕事
こういうお仕事をしていたのですね ... これなら頼れる殺人代行業者っつうのも分かります。 とくに霧香を殺すのには躊躇しまくってるのに 霧香を助けるとなったら全力全開躊躇無しというのがなんとも素晴らしいです。 とても殺人代行業者が本業の人とは思えない ... :-)

ところで床と同化してたようだけど、どーやったん?

ミレイユの葛藤、その 1
さて、その葛藤の内容が問題だ ...

霧香を殺してしまえば逃げるのは楽だ。情報洩れもない。それがメリットなのはいい。 デメリットのほうは、自分の問題についての糸が一本切れること。 もっとも「ノワール」という名前は霧香が死んでも使えるので、 「ノワール」ルートに関してはあんまり困らない。 「夕叢霧香」というキーワードも、べつに本人が死んでてもあまり困るまい。 ま、本人の記憶が戻るのを期待するルートとかいろいろあるので 「あんたに死んでもらっちゃこまる」のも確かかな。

表向きのはそれでいいとして、感情の動きがよーわからん。

今話のラストのほうででてくるけど、「ノワールは二人で一つのユニット」だと。 もともと霧香を殺さなければならないのはミレイユの(秘密の筈の)お仕事が 霧香にバレているからで、「二人で一つのユニット」であることを認めてしまえば 霧香を殺すべき理由は無くなる。

つまり霧香を自分と同格と認め、助けるに価するかどうかを判断した ── という思いがあるのか、 あるいはもっと単純に自分の庇護下にある人物(つうか子供)を殺すのはしのびない (窮鳥を撃たず)なのか。 そしてミレイユはそういう自分の心の動きを認めるのか拒否するのか。

ミレイユの葛藤、その 2
で、霧香がとっつかまったあとで、ミレイユはどうするか。見捨てるか、助けにいくかってやつ。

ここで悩んだのがミレイユらしい? 捕まる「前」に霧香を殺す、というのと違って 生きたまんま霧香は捕まってるわけで、したら見捨てても 霧香の自白なりなんなりからミレイユまで辿られるかもしれない。 「霧香を助けなければならない」という方向へ強化されてる。 アジトから助け出す、という苦労についてはデメリットのうちに入らなんでしょ? そういう(一文にもならない)仕事がなければそれにこしたことはないけれど、 こういうトコに侵入してってのがいつものお仕事なわけで、普段やってることと一緒。

助け出すのが困難ならそれこそ霧香を口封じで殺す ... くらいの思考はあったかもしれないけど、 それでは「葛藤その 1」の時点での「決心」の顔が立つまい。 「葛藤その 2」の時点で悩むってことは「葛藤その 1」の時点での決定に自信が無いってことで、 「葛藤その 1」の時点の判断が合理的なものでない、 感情的なものが入ってる、という自覚があるってこと。

ここでミレイユが心を決めたあとの仕事は素晴らしいものだった。 つまり、ミレイユは自分の心のありようを認めたんですね ...

前話で霧香が心を決めたあとでなおも暫く撃てなかったことと対照的。 ま、これも葛藤の二段構えとみればミレイユと同じステップを踏んでんだけども。

霧香の生徒手帳
たとえ偽物でも、誰かが自分のために用意してくれたもの。 「ノワール」という名しか持たなかった霧香が肌身離さずってのも分かるが、 てことは、いつ生徒手帳離れするのか(自分の拠り所として生徒手帳に頼らずにすむようになる) ってのが問題になるのだな。

とすると、学校から離れたがらなかったというのも同じ意味ですか。 (誰からか与えられた属性ではあるにしても)この学校に通う自分というものが確かに在った。 本人の気質として生真面目 ... というだけではなかったのですね。

前日までどれだけおなじ学校に通ってたかは分からないけど、 友人関係のほうは切捨てられた記憶の彼方なので、 それは今の自分の在り方とは関係がなく、 (他に誰もいない)夜の学校で別れを偲ぶ、というのは霧香的に非常に正しいと。

でも、こんなとこでいきなり話つなげられても困るかも ...

霧香の一撃
しくしく。『エンジェリックレイヤー』の鈴鹿と同じ、 ベタな残像なんて描かなくてええってば ... 余韻もへったくれもないだろうが。

ところで、ここで霧香が一人も殺さなかったとすれば、 つまり助けられるに任せてたとすれば、 ミレイユはもいっかい心変わりして霧香を 見捨てたんではないかと思うがどーだろう ...?

ま、いきがかり上 助けるには助けただろうが、同格と認めるのは止めたんじゃないかなあ。

今回、この一言
「教えてあげるわ。ノワールは二人で一つの名前なの ──
二人で一つの殺しのユニット」
決意の全ての表現、こういう情報を敵に渡してはいけないんだろうけども、 分かってても言いたくなったら言わないと気がすまないってのがとてもミレイユでした。

... 霧香の想いのほうはどーせ全話通じての主題だろうから 今回の一言は大活躍のミレイユ姐さんに譲るってことで ...


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