『ノワール』 #3 の感想


粗筋
ミレイユが久しぶりに訪れた墓地。その墓には、先に花を捧げた先客があった。 彼女が、次の依頼人 ── そして、ミレイユ達「ノワール」を狙う同業者でもあった。
概観
2 話の裏ですか。日常の延長としての殺人に対して お仕事の延長としての日常と。 それと、物語全体の構造つうか行く先が朧ろげながら明らかになった回。 1 クール級の造りのわりに都合 4 つの立場、筋があるようで、そら濃くもなるがな。

ポップコーンネタは想像がつきました。事前にネタふってあったし。 会話のセリフの裏っ側に込めた意味の多いこと、聞いてて呆れました。 そーかここまで詰め込むか、って。
前半の静、後半の動、どちらも密度高く、このままずっとつっぱしっちゃってください。

「つまんないこと覚えてるわね」
つまんないつうか、ミイレユの行動とか発想とかに興味がある(持ち始めた) ── ということを表現したシーンなんで、まあ、そのまんまなんでしょうが、 それをミレイユに確認した (ミレイユに関心があることをミレイユが知ってもかまわない、知ってほしい) てのが良い感じ。

2 話にてミレイユがナイフの件で霧香を凝視したことに ぜんぜん興味がなかったことを思えば、変化が速い。

ところで、いわゆる「綾波型」として表現されてる霧香だけど、 記憶をなくす以前はふつーに笑ってた(表面だけか真にかはともかく)わけだし、 「感情を得ていく話」として構成されてるこの主筋の部分には強烈な違和感がある。

喪失感とか不安感のたぐいの重しがあって今の霧香があるのであって 病的な意味での「綾波型」ではないんだから、 「今の霧香が急いで感情を取り戻す」必要はないし、要の記憶が戻らない以上、 「感情を得ていく」つうても限度があると思うんだけど。

正義
ターゲットについていちいち「かなりの悪党みたいね」などとコメントしているあたり、 「正義」というものが仄か見える。 ミレイユ本人はそーゆーことに拘りそうにない(が、拘るというのもミレイユ的かも)ので、 殺すことを悲しいと思わないことを悲しいと思ってるらしい霧香への配慮?

仕事はけっこう選んでるらしいけど、選択基準に「悪い奴」というのが入ってる。 旧ノワールとあるていど同一視されるためには、あまり選択基準を変えられない。 旧ノワール(素朴に考えてミレイユの両親?)もそーゆー方々だったんかな。 ま、確かにたまに警察の依頼を請けることもあったわけだが。

霧香とミレイユ
霧香が銃の組み立てを終えてミレイユに向け、.... 構えたトコは微妙に軸線は外してあったけど、一致する瞬間に ミレイユも霧香に銃を向ける。ん、両側のバランスとるのも大変だねぇ。

デフォルトでは銃を向けられたら無警告で撃つ(から向けてはいけない)てのと、 こいつに銃を向けられても構わない(向けても撃たれない)てのと。 微妙な表現ではあるが、あんまり上手くいった感じではないかも。 二人の表情の動きがヘンだったからかな。(冗談だよと)笑えとは言わんが、 二人とも無表情のままでいたほうがシーンとして好み。

にしても、霧香がミレイユに向けた、ってとこに ミレイユは自分を(反射的には)無警告で撃たない、とかいう信頼とか信じてるとか ミレイユの側にも霧香は自分を撃たないと思ってるとか そーゆーのがあることになるんだよなあ。 殺し屋さんがそーゆー風に狎れていいもんなのかしらん (霧香は精神的に殺し屋さんでないからいい ...?)。

ポップコーン
簡易型トラップ ... 足音でドアの向こう側を一発必中、ってのも凄かったけんどねぇ。 ポップコーンで居場所を判断、撃つってのも凄いが (ミレイユには聞こえてない音ってのがまた) ... ちょっと狙いつけるのに時間かかってんな。腕を後ろにふり上げる様子が見えたら 相手方も気付かれたと思ってふつー撃つと思う。やっぱ死んでる < 霧香

この敵の方々って、霧香やミレイユの腕を知らんのでしょうか。 C 班まであっさりやられて、「さすがにノワールを名乗る ...」と一目おいてるわりに 対処の仕方に真剣味がないっす。カジノ場に誘ったつうても 誘った時点で包囲できてるわけでも捕捉してるわけでもなし、戦術が中途半端。

有利な立場に身を置いて、そこから一撃必殺の位置に近付きたくなるのは分からんでもないが、 1 チームくらい狙撃できる位置につけたと同時に撃つ奴が居てもいいのでは ... 一撃でしとめられなくても怪我させれば戦力としては落ちるんだし。

絵的に少し違和感あったのは 音で判断して撃った一発で、霧香の視線が相手をしっかりみつめてたやつ。 音で判断してたやつは目ぇつぶってたとか目がそっち向いてなかったとかだったので、 音で判断しつつ目もそっち... というのがちょっと。 眼を使ってると耳は使えないと思うし。

ところで。初回といい前回といい、今回は霧香の意志というか、頭の使い方がすこし変わった。

暗殺技術に関する知識は持っていても、初話では「身体が反射的に動いた」どまり、 前回も銃かまえて見回る場面のあたりすこし浮いた感じがまだあった、 格好は「警戒」してるけど精神的には何にもしてなくて形だけ。 実際に戦闘というものの知識や経験が生き出すのは身体の動きが反射的なものになってから。 頭は使ってない。

ポップコーンをバラまくのは「ただなんとなく蒔いてみたくなったから (なんだかよくわからないけどそうすると役に立つような気がする)」ではなく、 ちゃんと それが踏まれる時の音がサポートに役にたつだろう、 という見通しのもとにバラまいてる(ように見える)。 自分の殺人の知識の肯定にあたる ... んだが、 これ、今回のゲームを仕掛けた「上」の連中の予定線なんだろうなあ。

ミレイユ
独りで仕事してたら死んでる。ぜったい死んでる。 最初の罠はともかく(この時点で死んでるか ...)闇ん中でも。 暗闇ん中での戦い、事前の「なんか飲むぅ?」というほどの余裕ぜんぜんなかったやん。 暗闇ん中での戦闘で霧香がこれほど使いものになるとは予想してなかったわけだし。 霧香に先手とられっぱなしでうろたえるのがなんとも (^^;;

奥方にちょろちょろつつかれて感情的になるとこ、 昔から殺人をお仕事にしてんだし この手の問題は心理的には解決済みと思えて実はそーでもないと。 こーゆー仕事してるわりに「一般人」に見える。 にしてもタイトな御洋服着て 感情を押えつけるようにして攻撃的な思考されますとミサト以外の何者でもない ...

ノワールのことを伝えられてない
論理が甘いつーか抜けてます。 ここでミレイユが言うように、ノワールの二人組のメンバのことを伝えられてなかった、 という可能性もあるけど、「上」の連中もノワールの内情を知らないという可能性がある。 つまり、「ノワール」という名前に反応してる連中 ── 「上」は実は旧ノワールな方々で ノワールという名前を使われてることが気に入らんとか。 ミレイユが気付いてない、のでなく脚本屋さんが気付いてない、 という描写になってるのがちょっとなんだかなぁ。

「ノワール」というキーワードの狼煙はどっちにも働く。 ノワールという言葉を使わせたくない方向と、ノワールという言葉を使わせたい方向と。 論理をさっさと固定するのはもったいない。もっとも、最終的に 「霧香の記憶を消したことでなにごとかを実現しようとする側」と 「それを阻止する側」というものが霧香やミレイユ以外の立場として存在するはずなので、 視野狭窄なことにはならないでしょう、たぶん。

絵と声
唇とか髪のあたり、 手ぇ抜いてみたりとか拘ってみたりとか、いろいろ忙しそうだ :-) 予告に上がってきた絵のほうが概して手抜きだったから、 あとからちょっと手ぇ入れたかな(ンなはずはない?)。

霧香のくわほー、今回は表現がちょっち難しかったようで。 棒読み声音になるとこを本当に棒読みしちゃあかん。 ミレイユの三石と奥方の大坂史子のやりとりが素晴らしかっただけに ちと落差を感じた ...

今回、この一言
「その花、前も買ってたね」
精神の健全たる。
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