『ノワール』 #1 の感想


粗筋
ある朝、ふと目が覚めてみれば自分の名前すら分からない。 制服のポケットに入っていた学生証には「夕叢霧香」とあった。 そして、もうひとつ分かることがある ── 私には人が殺せる。
概観
造りの渋さに合わせて粗筋もそれらしくしてみました。 人物描写の緻密さがええです。
夕叢霧香
屋内戦を得意とするタイプ、らしい。 追われた時にすぐに建設現場に飛び込んだ。
両手を上げたおっさんに無造作に弾を撃ち込み、 ほとんど狙いをつける時間もなく一人 1 発でしとめ (あるていど接敵するようにしてはいるようだ)、 怪我の手当に慣れてるあたり一人で動くことを原則とする ... 体術も奇術的で、特殊部隊出身ですか。

一方、記憶もないのに、しかも朝っぱらから 追っ手を 3 人ほど撃ち殺しておいて 学校をさぼらなかったあたり、 記憶をなくした只今の夕叢霧香はすごく常識人(そ、そうか?)。

記憶を失ってみれば「殺せる」ことに不安を感じる程度には常識人。 一方、かつての霧香は写真の中では明るく笑ってる。 とすれば以前の霧香の心ん中でこれをどう整合していたのか。

「記憶を失った」というよりは、 「常識的な価値観を上から新たに被せた」に近い状態、 つまり、記憶を失ったことに昨日までの霧香の意志が関わっている、 ように見える。

なら?

よく言われることだけども、 作為が無い普通の意味での記憶喪失は 本人が記憶を無くしたいというドライブが掛かってることがある。

霧香の記憶喪失は作為が働いている ... と見るのがもちろん第一感だけれど、 その奥には一般的な意味での記憶喪失と同じもの、 本人の逃避が ... あるような、気がする。
記憶を取り戻すことが霧香本人の幸福かどうか。 ミレイユにそれを判断するだけの器量はないと思うだけに。 まあでも、追っ手に追われてるトコで記憶をなくすのは過りなんで、 あとは記憶を消した連中の思惑がどーかってことですね。

ミレイユが調べたことを語るそばで 目ぇつぶったまんま銃をバラして組み立て直してしまったあたり、 「絵で語る」ってことをよくわかってるねぇ。

ミレイユ=ブーケ
こちらは警官上がりでしょうか。 階段のぼりきって飛び跳ねて銃を構えるのがそんな感じ。 軍ならそもそも潰してから動く。 また、一人殺すのにだいたい 2 発必要で、 狙いをつけるに半呼吸いるんで、 基本的に霧香より銃はヘタ :-)

しかも両手を上げたおっさんに銃を突き付けまんまで しかも情報が欲しかったとはいえ、 無造作に近付いて取り押えられるあたり、性格&状況判断ともにかなり甘い。 これで信頼に足る殺人代行業者ってちょっと信じられんぞ。

コトが終った時に霧香を殺す ... と宣ってるけど 殺せないのが見えてるのが物語に安定感を醸し出す。

追っ手の方々
人格はおろか戦術戦略知能のカケラも感じさせない方々 (おとりの約 1 名を除く) なので、単なるヤラレ役。次回は少しはマトモな方々を使うよーに。
夕叢家のパソコン
自分の名前も知らんかったのにパソコンのパスワードは覚えてたのか? 事前に重要なデータは削除してしまってるあたり、前日の本人は けっこう気を回していた人物らしい。
ミレイユから逃げ出した霧香
ミレイユからみると逃げ出した霧香ってのは腹が立つだろーな、 ってのは分かるが、逆に霧香がミレイユから逃げ出すべき理由ってのが やっぱり描写されてみるとちと物足りない。

(ミレイユからでなく)追っ手から逃げるというのは いいんだけど、とすると鉄骨のうえに座ってミレイユを待つ、 という絵的におもいっきり狙った形では 狙い撃ちされてしまう ... この話ではこのテの突っ込みを許しちゃマズいっしょ (^^;

BGM と絵
BGM にどことなくウテナの影を感じる ... が こちらの知識の偏りのせいだと思う。 センチ 1 話を彷彿とさせる BGM と絵のバランス感覚が凄いっす。

絵も素晴らしく綺麗。 「レイヤー」にしても「こみパ」にしても 「CCさくら」見慣れた目には辛かったからねぇ。 ビスタサイズなんは DVD にした時のことを考えてだろーが、 2 話 1 本になりそーな予感が悲しいぞ。

今回、この一言
「『私はいろいろな人と一緒にいるときは、いつも独りぼっちだった』 ...
私じゃないわ。アーネスト=ヘミングウェイよ」
ミレイユが霧香にヘミングウェイを借りて語るセリフの壮絶さよ。


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