『フィギュア 17』 #6 の感想


粗筋
学芸会の劇の主役は双子。もちろんつばさとヒカルに期待してのもの。 けれど、つばさは主役は出来そうにないと皆の前で断る。そんな彼女を先生は褒めた ──
概観
学級委員にヒカルが推薦される前後の飛鳥の感情変化をシーンの切替えだけで描いてみせる。 絵と脚本に対する凄まじい自信だが、... 力みすぎて主筋がちょいとヘタってるぞぉ。
まぁでも、その飛鳥の表情変化や、切札になった先生の一言とか、観るとこはけっこあった話だった。
唐沢飛鳥
最初は推薦待ちのすまし顔。

健太が推薦されたのち、... なんでしょか。この表情(カオ)。 ありうべき流れのとおりに自分が学級委員になったとすると萩原君と一緒 *^_^* だけどそもそもなれるかな ... という不安と?

翔と飛鳥が推薦されてきたあと、これはまぁ、不安の解消が先で男子については頭から飛んでるかな。

ヒカルが推薦されて ... ふたたび不安顔というよりは、 クラス内での価値の相対的な低下の悲しみとヒカルの台頭への嫉妬?

翌日までひくようなことかどうかはともかく。 ヒカルへの対抗意識が静か〜に燃えあがる流れの飛鳥の百面相、 見てて面白かった。もっとも結論(ヒカルへの対抗意識)以外は本筋で何の意味もなかったので、 だからどーだというほど飛鳥の内面の揺らぎが描写されてたわけではないけど。

「立候補したい人は手を挙げてください」
人間関係の密度の高いクラスだこと ... いいクラスだなぁ。

藤井未来も実は沢田美奈グループの一員だったりしますか。 唐沢飛鳥に対抗させるべくヒカルを推薦したりして。 美奈を推薦しなかったあたり、いろいろよくわかってるとゆーのか、なんつーか。

ところで、美奈の考え方がいまいち不徹底で分かり辛いのだが、 よーするに翔&飛鳥ペアでなくなりさえすればいいのか? 健太&飛鳥ペアとなる可能性がありさえすればいい、というならヒカルを支持する必要はない。

飛鳥→健太、なのは美奈からみて自明のこととして、健太→つばさが美奈の位置から見えるかってーと、 見えない気がする。翔の推薦のされかたが飛鳥と一緒だったので、翔のクラス内での位置が分からん。

ヒカルの照れ方もナイス。... つーか、学級委員というものの立場が、比較的ポジティブであるというのが、 健康的で良いっす。わざわざやろうと言い出すほどではないが、やれるとしてもさほど不満のない立場。

投票
相沢翔 14 票
萩原健太 9 票
唐沢飛鳥 13 票
椎名ヒカル 10 票
... ふみ。このクラス 24 名だったはず。本日の欠席者一名、と。
ところで、どーせならつばさと飛鳥が誰に投票したか描いていただくわけにはいかんかったのだろーか。 たとえば、飛鳥が翔とヒカルに投じていれば、それはそれで今話の飛鳥の物語がきちんと完結する。

まさかと思うが、小川真二が言うたこと(健太とヒカルは体育委員が ...)をネタふりの一つとして

ヒカル票 = 健太票 + 飛鳥がヒカルに投じた票
みたいなことになってるわけじゃなかろ? たしかに、健太とヒカルをペアとして考えよ と言うてるような脚本の空気を微かに感じる(小川真二の発言もその例)が、この時点でそこまで読めっつうのは無理。

── と、ここまで書いてから確認したのだが、欠席者おらんやん。てことは棄権票が 1 票ずつあるやん。誰やぁ!?

気くばり
『ふたごのおひめさま』に賛成多数、なれどその主役をはる予定のつばさが賛成しなかった ... ら、どうするか?
翔と飛鳥は結論を一時保留して、つばさに確認した。

判断としては標準以上の出来だと思うが、つばさ相手に限っては本来と〜ってもマズいぞぅ (だからといってどーすれば良かったかっつうと思いつかん。 翔はみんなの前で提案する前につばさに確認とっておくべきだったか?)。 先生も瞬間的に危惧したんだと思うが、この時点での描写なかったなぁ。 つばさに「確認」したらどうかするとつばさは意思を抑えて主役を引き受けてしまう可能性があった。

この部分、描き手のミス ... というか脚本屋が下手やったとこなんじゃないかな。 カメラを翔からまわしてるのがその理由。つばさへの感情移入が難しくなってる。

本来ここはつばさにかかった圧力を描写するシーンのはず。 観賞者がつばさの判断に耳を傾ける ... という見方をさせるのでなく、 つばさがクラスのみんなの前で反対意見を述べるという困難さ ... も見せるようにしないと先生の一言が生きてこない。

つばさの逡巡から発言への流れをつばさの目の前から描写するのはつばさが一般人なら正しいが、 この場合、みんなの期待にそのまま沿ってしまっては「いけない」ことを描写すんだから、 つばさがのりこえるべきもの、つまりつばさが主役を拒絶する「直前」のみんなの反応 (つばさへの圧力) を描写しないでどーする。

つばさの拒否にヒカルがすぐ反応したが、 ヒカルが圧力かけるのはいつものことなのでコメントするよーなことは特になし。 ... ヒカルの圧力は最初から前提になっとるよーなつばさの反応がとっても可愛かったってのがあるか。

二つのコンテクスト
主筋になるつばさの筋と、飛鳥の筋との絡ませかたに手を焼いたよーだが、ちょいしくってんな。 両方の筋に絡むことができる立場のはずのヒカルがどちらの筋に対しても手が出せない位置にいるからだろうが。 ヒカルの左側と右側で物語がまっぷたつに切れてる感じがする。しかもどちらも弱々しい。 小気味良いネタが続きながら全体の纒まりに欠けるのは主筋が弱いせいだ。

ヒカル〜飛鳥〜美奈のコンテクストは、 現実の上では色々事件があって飛鳥もいろいろ思うところがあったはずだが、 前提/変化/結論がすべて飛鳥の内心だけにとどまってしまっていて現実への作用がなかった。 飛鳥から見ても、ここで思ったことが何にもなかったことにできてしまう。

たとえば、面とむかって「ヒカルに嫉妬してただろ〜」と問いつめても飛鳥にはしらばっくれることが可能だ。 しかも投票で飛鳥が勝ってしまったので、反省機会もなくなった。もったいねー描き方 ...

なんにしても事件を起こす前の美奈のネタふりが体育の授業ん時しかなかったのがちと弱かった。 せめて教室内でもつばさ視点で飛鳥を「観る」のでなく、 美奈視点で「観る」か、あるいはつばさから飛鳥へすこし働きかけさせることで飛鳥の反応を引き出しておけば 筋が厚くなったのに。

つばさ〜ヒカルのコンテクストの問題っちゃあ、これまでも出て来てた問題のえらい極端なケースやね。 戦いを実生活にフィードバックする方法論が甘い。 ヒカルですら死を覚悟した戦いをつばさが切り抜けた → ならば学芸会の主役もなんとかなるかもしれない、 という流れがあまりに記号的にすぎた。

確かに、つばさの問題にヒカルしか関わることができない ... ヒカルの立場からは「出来るよ、やってみようよ」 以上のことは言えないので、つばさの中での昇華を助ける役に立たない。 昇華する流れを表現する方法がないから、記号的に一律な表現にならざるをえないんだけども。 DD に口挟む余裕あるわけないし、父親の役割なんじゃないかと思うのだが、 もすこしこー、全体に戦いを時間的に前倒しして、戦いのケリがついてから翌日までに つばさが決心するまでの流れも描いてくれてもバチはあたらんと思う。 つばさの筋が主筋だろうし、 せっかくの 1 時間枠、前半の小学生日記に時間おごりすぎるのも考えものだぞっと (感想相互で矛盾しとるがな)。

D.D.
「心配しなくていい。最後のマギュアは俺とオルディナだけで処理する」
言葉の半分程度でも実行できてたら多少は発言を尊重する気にもなるのだが ... (笑)

#6 は珍しく DD 達がいっぱいでてくるにもかかわらず、 ここの感想にはロクに顔ださんという、なかなかヒドい扱いをうけてる DD 達だが、... べつに勝てなくてもいいからもちっとこー存在意義を示してくれれば、感想書きでもなんとかするのだが。

ヒカルの怪我
この前後でつばさが何を思い、どうしたか ... ということをヒカルは覚えているべきだと思う。 つばさがヒカルに反対することは少ないし、 つばさの意思が(ヒカルとは独立な環境で)明確になることはもっと少ない。2 話以来ではないか。

2 話もそうだったが、ヒカルが死にかけてはじめてつばさは意思を明確にした。逆にいえば、 ヒカルは仮想的に死ぬべきなのだ ... というのはちと極端だが、 死ぬのと同等の構造をつくることでつばさの意思を引き出すことができるし、 いまのところそれしか方法がない、ということをヒカルは知っているべきだと思う。

論理の流れ
#5 において「恐いことしなくて済んだ、よかったぁ」、 #6 において「つばさちゃん、... ダメかもしれない」 ── #5 のネタふり(やっぱり戦いは恐い) は #7 以降で意味をもつもので #6 (本当に恐かった) との対応関係は直接は無いのだろうが、 でもやっぱり微妙に倒置してあんだろうな。
順方向「本当に恐かった → 恐いことしなくて済んだ」に話が進んでも つばさの呟きが深く同情できてしまうし、それはそれで物語的に合ってると思うんだけども。
つばさ
「なんでヒカルちゃんみたいに、やるって言えないんだろう ...?」
うぅ、そんな難しい問題を訊くな ...
今回、この一言
「つばさちゃん、今日ははっきりと、出来ませんって言えたわね。
先生、嬉しいわ。つばさちゃんが自分の考えを、ちゃんとみんなの前で言えるようになったこと」

いい先生だなぁ ... 存在感、一気に増した。


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