名探偵コナン 劇場版5 「天国へのカウントダウン」の感想

ver 1.1 (May 12, 2001)

粗筋
高層ビルに閉じ込められた! 下は火の海 ──
概観の前に
... かぎりなくやる気のない粗筋だこと :-)

「哀ちゃんいっぱい \^_^/」だけみてて あんまり頭つかってなかったもんで、以下の感想もわりとたんじゅん。わはは。

概観
鑑賞者層をできるだけ広げるための努力が凄いというか、 全体の調和を犠牲にしてもつめこむだけつめこんだというか。 見るとこ書くこと山ほどあれど、「感想全体をこういう風にデザインしたいな」 というたぐいの方向性のあるドラマ、ではなかったような気がする。

でも未鑑賞の『時計じかけの摩天楼』を除けば、ピカイチの出来だと思ったのは けっして灰原哀に目がくらんだわけではナイと思う ── つーか、こういう詰め込みな話は けっこ好き(それだけかい)。

ま、いずれにせよ きっちりハマった感覚がないのは、 所詮はまだ続いてる物語途中で本筋に干渉しないよう埋め込まれた余話 という辛さが見えるからなんだろう。 灰原や歩美のコンテクストが これだけでずっぱりだったにして物語的に何も進んでないのは、『青の古城』であったように たった一言で話を進めてしまったのに比べれば、なんか窮屈だった。しゃーないことだけども。

少年探偵団
事前に「少年探偵団大活躍!」と聞いていたので「つまらなそう」とか思っていたのは秘密だ。 ... 「少年探偵団」としての活躍でなく、 少年探偵団のメンバが個々に大活躍でしたのね ... 良かったっす。 「元太くんえらいっ男だっ!」とか :-)

「警察のマネゴトをするなっ」の一喝があってこその『コナン』ですな。 真似する連中がいたら大変だもんなあ。

灰原の電話
えらく前宣伝に使われたわりには ... ほとんど使い捨てなネタだったなあ。

前宣伝用シーンがわりととってつけられたような、絵的に綺麗なわりに あってもなくてもいいとかちと無理やろそれはみたいなシーンが多いのは 『コナン』劇場版の特徴みたいなもんなのでまったく期待してなかったが、
... にしてもこれは酷いな。

これまでもたくさん電話してたはずで、 それがなぜにとつぜん博士の興味もつところとなったのか、てのが不自然なんだよな ...

博士が疑うのに対して「大丈夫だよ」と即答するコナンとか、 鑑賞するとこはけっこうあったんだが、 もともと灰原の筋は『コナン』の鑑賞者層としては上のほうに設定されてるところ、 いちいち口で説明させてから泣かさんでも。
どーもな、灰原の心情吐露シーンの描き方が低年齢層向けに引っ張られてる感があってイマイチなんだよな ... このあたり原作の注意深く聞いてないと分からん(コナンですら時々分からん)のに親しんでるだけに。

そら無口な奴の心情描写は感情的に爆発させるのが定石だけど、 感情がはけ口もとめて泣き叫ぶ方向に爆発するまえに さっさと自分で何かを(ポジティブな方向とは限らない、今回の話のラストのように)決めて動いてしまう、 というタイプだから爆発するほどエネルギーを内に溜めない。 灰原の扱いのやっかいなのは、このあたりに由来するんで、感情的にせよ 自分という人物の presentation が出来るほど 分かりやすい人間なら周囲はここまで苦労しなかったんでないかい。

確かに灰原は掛かってくるプレッシャに弱いところはあり、 したがって電話に逃げるとか、それを二人に見つかってロクに言い訳もできずに逃げるとか、 まあ、いかにも灰原的なんだけど、... キャンプの最中にわざわざ電話さがして電話するって ンな無理矢理な展開つくらんでもと思う。 これをするなら、姉に電話したくなるような、あゆみちゃんあたりの姉妹ネタとか欲しかった。

灰原哀の席 ── 居場所
くぅ。本家がこのネタをこのタイミングで、ここで使うか。本誌では出て来まいと思ってただけに油断した。 あーつまり、今の「サンデー」では、これは描けまいと思ってた。全盛期の「サンデー」 (主人公すら物語途中で殺してしまうことがあるような :-) やちょいまえの「花とゆめ」とかならともかく。

江戸川コナンが工藤新一の存在基盤を置き ... つまり新一に「戻る」んだ、と思っているのに対し、 灰原は自分の存在基盤を「宮野志保」から離してしまって「組織から逃げ続ける者」 としてしか定義づけられなくなってしまっているので、心理的にかなり危険な状態にある。

組織のことが頭にあるあいだは「いつ殺されるか」とおびえ続けるし、 組織のことを忘れていられる間はこんどは「自分は何者か」という不安にさらされつづける。 組織のことがなくても宮野志保に戻る意味は既になく、 灰原哀のままで生きるとしても「小学生」としては反則的すぎて身のおきどころがない。
心情を理解する人は居ても早晩それは崩れる ... というか崩す方向で自宅で仕事してんだから 仕事続けるのはさぞかしキツかろうつーかもはやなんで薬の研究なんか出来るんだとしか思わんが、 最大の動機とおぼしき罪の意識がなかったらさっさと灰原は死んでるだろう。 今はネガティブな行動をネガティブな感情でかろうじて抑えつけてるだけだ。

ここで歩美達が「(灰原の席は)ここにあるよ」と語るが、もちろん言葉そのものは何の役にも立ってないし、 そもそも(灰原の)被保護者である歩美達に存在意義を提示されるつもりはなかろう、というか かつて宮野志保であったという反則的な事実を伝えてないという時点で 三人の存在そのものはどうあがいても「灰原哀」の存在意義に何の役にも立ちはしないが、 灰原という人間の周囲につくりあげられつつあるささやかなネットワークには 「灰原哀」の「席」が存在するという事実 ── 「宮野志保」は全く関わっていないネットワークであり、 このネットワークの中であれば灰原は「灰原哀」自身として存在できる事実は大きい。 それは「灰原哀」という人物が「宮野志保」と切り離されても {存在していける|生きていける}ということのささやかな証明だから。 もちろん彼女が「灰原哀」として存在したいのかどうかという問題はまた別として。

もちろん灰原もコナンや三人の存在を忘れたふりしての「席がない」発言ではないだろうけど、 パラダイムシフトした内容については、おそらく気付いてなかったんじゃないかと思う。

ときわかねなり氏 (漢字不明...)
びんぼうな高校教師兼霊能力者だと思ったが、 いつのまにそんな大金持ちになったのか ... (別の話やろ)
蘭に相談するあゆみちゃん
... あゆみちゃん気付いてないね? ひさしぶりに小学生な精神を見た :-)

ともかくコナンでは新一と勝負にぜんぜんならへんと思ってるわけで、 ... って、おまえほんとにコナンのこと好きなんか? (歩美は新一のことをほとんど見たことがないはず) ってのはあるが それはおいといて、 で、「どーせコナン君のこと振るならフォローいれといてね」と注文してるわけだが、 ... これ「相談」じゃねぇぞ、てのもおいといて、 なんでフォローが欲しいのかといえば、自分にはできないことだとか 自分が仕掛けるまえにはその下準備ができてるとうれしいなとか、いろいろ。

ここでちょっと話を深くしてるのが 「灰原さんじゃない」と否定しておいてこれだけ灰原のことを意識してるというあたり。

灰原哀がコナンのことを「そういう目でみたことない」つうのは以前 聞いてるわけだけど、そういうことをききたくなるていどには 「灰原哀はコナン君のことがすき」であるように見えると。 で、それは今も変わってない。 コナンが灰原の髪型の園子にみとれたとこで、 自分もそーしよーかなって、 事実上のライバルは灰原であるとみとめたようなものなわけで。 灰原がコナンに気がある ── だけならまだしも、コナンのほうに灰原に気があっちゃこまるし。

コナンが蘭とくっつく目は無い。 ならば、コナンが蘭に振られる前後で灰原哀よりも有利な位置につけるよう、 無意識に蘭に工作を依頼した ...

本人まったく気付いてないとこがとても可愛い。

あゆみちゃんに相談される蘭
あゆみちゃんの発言 「他に好きな人がいるんです」 に対して蘭の 「灰原さん?」 をどう読むか。 たいして灰原に遭遇することもなかったろうに、そう先読みするってことが。

コナンが新一かどうか、という点について蘭は不思議なほど鈍い。 一度は博士が小さくする薬でも ... というトコまで到達してたわけで、 非常識な現実に至る最後の壁はすでに通過してる。

どう考えるかはいろいろあれど、

コナン君は灰原さんのことが好きだから、コナンは新一でない(新一であってはならない)
という読み方が個人的に好み。... かなり灰原ファンな読み方してるけど (^^; ともかく蘭の内心において、コナン = 新一説を否定するだけの (論理でなく) 感情があるはずで、 そこに進めない理由は他になく、その理由として使えるものも、 そんなにあるわけではない。

ここでコナンが蘭のことが好きだってことになると、 コナン = 新一説を否定するための感情レベルの壁がほんとに何もなくなるんだけど、 .... この話、コナン = 新一説絡みで何の展開もなかったのはそのバランスか? この話でコナン = 新一?説ができてるとこちらのラインからも寄ってかないといけなくなるし。 もっともコナン = 新一説を中途半端に補強されると、 「コナンは灰原に気がある」ようには(歩美にすら; 蘭にも)見えてるだけに、 よけい問題がめんどくさくなるってか ...

そのうち、「このあたり考えるのがめんどくさいからコナンは新一でない(新一であってはならない)」 に変化したら、... みゅ、さすがにちょっとイヤかも。

心拍数
ドキドキすると数えやすくなる ── って拍動が上がってて 6 歳の子供が 60 拍/分しかないんじゃ病院行きだと思うので たぶん 120 拍/分くらいあるんだろう。素では 80-90 拍/分くらいとみて まあそんなもん?

パーティ会場での、 コナンが隣にいない状態でのカウントが遅い (隣にコナンがいると速くなる) というのはあゆみちゃん的には正しいと思うが、光彦のほうが ... 「緊張すると数えるのは速くなる」という常識に反したのが凄いぞ。
つまり、「緊張すると数えるのは速くなる」という事実を知っていて 光彦はその補正を掛けた(補正を掛けすぎた)ってことになるから。

パーティ会場でのカウントのシーン、 一緒になってカウントしていたが、自分の読みでは 27 秒だった。 1/1.2 倍の補正かけてカウントしてたので素では 32.4 秒カウントしたことに相当する。 1 回しか観てないから実際に何秒だったのかは知らないが、 まあ、コナンと同じくらいの精度?

ラスト、「コナン君がいると大丈夫」の意味が拍動が数えやすくなる ── てとこで、文学的:-) な意味でなかったとこで ガクっとしておわり? なんで拍動が数えやすくなるのか、てとこまでよめば 事実関係は「文学的」なとことたいしてかわりはないんだけども。

「酔ってたってことくらいね」
... これぞ灰原哀の正しい使い方。ぱちぱちぱち。
「世紀末」では滑べってたし、「瞳の中の」では役に立ってなかったので ...

「知恵だせ」の返答がほんとに知恵出しただけ ... どう解釈してどう役立てるかはコナンに全部お任せ。 観察することと解釈することを明確に切り分けた潔さがとても好き。

ジン
本業の片手間に立てた計画がこの精密さ ... 外のエレベーター以外ぜんぶ封じて降りてきたとこを射撃、 もし居なければ出口を一つにまとめて時間差で爆破。 爆弾つけて順繰りに爆破させてるだけなのに、この抜け道の無さは一体。

誰がまきぞえになろうが気にしないだろうが、志保を殺すまではジン達が この場に来てることをさとられちゃマズいわけで(灰原に似てる)園子を殺しかけて慌てるのが 志保のセンスを認めてるようで可愛い(言葉の使い方がちょっと違うか?)。

ただ、最後まで志保を発見できなかったことから導かれる結論が 「(志保は)ここにはこなかった」てのはちょっと ... 自分達の計画に水も漏らさぬ自信があると? 相手が同レベルの知性の持ち主なら、計画のバグを突くくらいはするだろう。 もちろんジン達が来てると思わなければそんな細かい頭の使い方はしないだろうから、 志保が全力モードであって自分達の計画の見知らぬバグを突いた ── 「俺達がここへ来てたことを勘づいてたか? (だから、たとえば男装して切りぬけた)」 という感想であって欲しかったと思う。

また、そうでないと電話の逆探に失敗したのがネタふりとして弱い。

「園子おねえちゃんパンツまる見え!」
これが蘭だったら腕をつかむなりして身を挺して守るんだろうけどねぇ。 「愛」の差だねぇ。... 的確なことは的確なセリフだけど :-)

火事なのにエレベーターが止まっちゃったもんだから どさくさにまぎれて誰も気にしちゃいなかったけど、 狙撃されたんだよなあ。おちついたとこで誰か思い出せよな ...

そら、あとでガラス割れちゃったし、証拠はナンもなくなっちゃったけど。

エレベーターパニック
なにげにすごいのが自前で跳躍してエレベーターの箱の上に跳び上がった蘭 ...

蓋を蹴り上げることはできても扉を開けることはできず、蘭の力を借りたつう描写は なんかちょっと珍しい? ただ、蘭の位置からしてこういう活躍の仕方してもあんまり意味ないです。 コナンだから力が足りないのであって、新一に戻ったら蘭の助力は不用、てのには変わりないから。

ところで、扉を開けるシーンで、気ぃ溜めて一気、ではなかったですな。 作家の館での宝探しん時に蘭を捕まえて人質にしようとした犯人さんをかかとおとしかなんかで 叩きつぶしたシーンでの気の入れ方が気に入ってたんだけど、今回はそれほどでもなかった。

ガラスを蹴り割る蘭
ええと、もちろん蹴り割られるようでは高層ビルの窓ガラスとは言えないし、 割られた時に粉々に砕け散るようでは「工事の手抜きもええかげんにせえよ」 とか思っちゃうんだけど、2000 歩ゆずってそれは目をつぶることにする。 所詮は材質の問題だし。

... が、足場の悪いとこで蹴り破ったと同時に飛び込むって無理じゃないかと。 運動量的には窓にブチあたったぶんがぜんぶ窓ガラスに伝わるってのが理想的で、 したら蘭自身のほうは窓の外で止まってしまう。

もすこし高層ビルのガラスに敬意を払って、 蹴りやぶった次の周期で飛び込むとかしてくれても ...

ところで、消火ホースは難燃性です。そうそう燃えません。 ついでに、ほとんど伸縮しない硬い帆布で出来てるホースでバンジージャンプしたら 腰の骨が砕けるんでないかと思う ... いくら鍛えてて筋肉に力いれて支えたって、無理ではないかなあ。

そもそもバンジーみたいにいきおいよく跳ぶ必要はなく、 山登りよろしくソロソロと壁蹴りながら降りてけばすむ話。

コナンについて行く灰原
「先に上に行ってまっていてくれ」と少年探偵団にむけて言った時、 灰原は (3 人に同行せず)コナンのあとをついていった。

灰原としては今回の事件には興味のないところであったはずであり、 ちょっと違和感があった。 これまで灰原の行動原理は、コナンが居ない時の少年探偵団のおもりに近かった。 何かするか/しようよと言われた時に、その場に保護者が別にいるときは 絶対に動こうとしないし、逆に誰もいないときに 3 人が動きだした時は あとをくっついていって面倒をみる、という形になることが多い。 探偵としてのコナンのフォローに入ることもあるが、 それは尋かれたらつき合う、程度にすぎない (しかも分析として的確ではあっても正しい読みではない :-) 今話もそうだった。

ので、ここは 3 人のほうにくっついていくのが灰原の行動としての本来ではなかったかと思う。 そういう意味で、ものすごく興味深い行動だった。

コナンとしては、もちろん独りで行くつもりだったろうし、 でも灰原があとをついていっても驚きも感心も非難もせず、そのままを受け入れた。 灰原がついてきてしまっているということにまったくデメリットを感じていない (メリットのほうは、問題を解いてしまったあとのコナンにとって灰原に頼む分がないので もともとない。独りでなんとかなると思ったわけだし)。

探偵モードに入って 3 人のことが頭から抜けてしまってるということであり、 もうひとつは灰原を(探偵モード、つまり全力全開モードに入ってる)自分と同格にみている ── ということでもある。 庇護すべき存在として定義づけられている蘭とはえらい違いである (同じ条件で蘭が新一のあとくっついてきたら新一は怒るだろう)。 ... なんでこれで未だ新一 x 蘭な展開でなんとかしようとしてるのかがすごく謎だ。

3 人のほうも灰原がコナンのほうについていってしまって何にも声かけなかったってのが なんとも。コナンは灰原についてこいとは言わなかったので、 灰原からくっついていった、 灰原が自分から何かをしようとしている、 という非常にめずらしいシーンを目撃したはずなのに何のコメントもなかった。 わけで。

「灰原が自分から何かをしようとしている」とは思わなかったってことで、 コナンにくっついていくのが当然のことだと、それだけのかもしだされるものがあったと。

じーさまが墨汁をどーっとすてるところ。 「もう絵もやめるんだ」という意志表示かと思ったが、.... いやあ凄いわ。そうくるか。 自分の内心の吐露も表現力豊かに、さすが日本画家の大家。

事件そのものは単純につくってあとはアクション勝負、みたいなコナン劇場版だけど、 このシーン一発で事件そのものも印象づけてきた。

感動的な伏線ですな。カーテン ...

ところで、その昔すんでたとこでは富士山が綺麗に見えてたんだが、 まん前に某ビル(日本一高い ...) がつったったことによって景観がブチ壊しになった。
... このじーさまの気持ちは実に良く分かる。 その後わりとすぐ引っ越したので犯罪に手を染めることはなかったけど :-)

天国へのカウントダウン
そりゃあ 30 秒を素で数えるよりはギリギリまで時計を見てたほうが精度は上がるだろうし、 あゆみちゃんのカウントの間隔と実際の時計のカウントの誤差補正とか いろいろあるから灰原が残ったのは灰原的な価値観のもとでは正しい。 ... が、そもそも車に時計はついてないんか? 秒のテンポさえ合ってればいいんだから、 同期がとれれば灰原は戻ってもよかろ?
バスジャック事件
いくつかの感想を周回してきて、思ったこと ── バスジャック事件との類似性。 TV でちょうど『バスジャック事件』にて灰原が爆発寸前のバスの中に独り残る、という描写と重なって ... というやつだ。

... ぜんぜん重ねて考えなかったけどなあ。

バスジャック事件の時は「自分は消えなければならない」 宮野志保の面影をもつ子供がこの場に居てはいけない、という、死ぬつもりでその場に残った。 「自分以外の人間が助かるため」というのは単なる大義名分にすぎない。 だから助け出されることは灰原哀にとって迷惑なことであり、コナンは一言それに言及しなけばならなかった。

一方、今回の事件では、自分以外の人間が助かるために灰原は本当に全力を尽くしただけで 自分がどうこうということはない。自分は助かってもいいし、助からなくってもいい。 物事の評価に自分の生存が計算に入ってないだけだ。 したがって、無事に助かったあとでコナン達は灰原の行動について何か言う必要がない、 全員が助かったことを素直に喜べばいい。

この違いは大きいと思う。とくに後者は、組織や、それを裏切ったとかいった今の状況とは無関係に 宮野志保/灰原哀の本来の性格、気質としての行動に近いと思うだけに。

元太えらいっ!
もちろんハンドル握ってたためにコナンの反応が遅れたんだろうが ... いつもなら少年探偵団ごとき:-) に遅れをとるようなコナンではないわけだし。

ただ、新一的には灰原がなぜ残ったのか一瞬理解できてしまったために、 元太や光彦のように「問答無用で残っちゃダメ」的な身体の反射に遅れた ── くらいの深みがあってもよかったと思う、つうか、あるのか? 灰原のほうしか見てなかったんで コナンの描写の記憶があまりない (^^;

B 棟への大ジャンプ
すいません、暗算で灰原やコナンに負けました。 式がパタパタを出始めたと同時に計算始めたんだけど 「計算」であってテーブルの lookup でなかったため、 スクリーンの平方根にまどわされたのが敗因だな ...
落下距離は 5t^2 なので 20m 落下するには 2 秒、と読んだほうが暗算的には速い。

しかし「2 秒」と念押ししておいて「ちょっとあゆみちゃんこれ借りるよ」 と飛んでる車ん中で会話するというのがなんとも。借りたころには着いてると思う。

とんでるあいだは(垂直方向については車の浮力のぶん以外は)無重力なので 「離しませんよ絶対」と光彦が がんばるほどではないが、そうでなければ体力なさそうな光彦に人間一人支えるのは無理か ... のわりには飛んでる最中の描写の重力がちょっと変か?

車は 100km/h でふっとんでってるので、水平方向には 100km/h の風圧がかかっており、 したがって灰原は下にでなく少し後ろに流れるのが描写的には正しい (重力も弱くなってることではあるし)。

ちなみに、ぜったいに忘れられてるファクタは、50km/h でガラスぶちやぶって飛び出した 車が爆風で 100km/h に増速した瞬間の出来事。
... 50km/h で壁にたたきつけられるのと同じ衝撃だったはずなんですが。 よくみんなムチ打ちになりませんでしたな(いや、ふつー死んでると思う)。 20m 落下して水面に叩き付けられてみんな元気ってのんも凄いが。すくなくとも じーさまは骨の一本や二本折ったんでないかい。寝てて受身もとれなかったろうに。

バンジージャンプんとこで蘭がなにげにコナンを抱えてないほうの腕を広げてるんだけど、 もちろん空気抵抗を増やすためだろうけど、 頭を使ってない、つまり本物のバンジージャンプを観察しての描写に比べると 机上の計算だけで車のジャンプつくってみました〜てのが良く分かる ;-)

物理の計算、その 2:-)
真空中での落下速度は t 秒後に 10t (m/s). 水平方向に 30m/s, 2 秒後に水面への突入速度は およそ 40m/s. 着水時 1m ほどしか冠水してないので完全停止まで約 1/40s, 力積は 1600m/s^2 でおよそ 160G ──

全員ぺしゃんこに潰れて死んでます ...

ところで、 空気抵抗の第一次近似で速度に比例する成分を入れて微分方程式たてて暗算というくらいは 以前は平気でやっていた。 空気抵抗無視の真空近似は近似の程度が低すぎて現実には役にたたず、 暗算するくらいなら一次近似くらいが丁度だったんだが、 係数いくつだったか忘れてる、というのがちょっとショックだった ...

オチ
乾かせばって、水にドブつけされた車には乗れません。 けんど、エンジンの修理くらいは TOKIWA さん家が保険に入ってるんでないかなあ。 ... だめ? そういうこと期待しちゃ。
今回、この一言
「吉田さん泣かしたら怒るわよ」
「親友の」あゆみちゃんが悲しむような事態になったら怒る ── という表層は表層として、 裏を素直に「吉田さんだったら(私は身を引いても)不満は無いわ」と読んで ... 告白でもあるような気がしないわけでもないし、表層の成分がはっきりでてるからこそ、 そういう裏を置くことに躊躇がなかったと読めるんだけど、まあ、いいか。


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