『機動天使エンジェリックレイヤー』 #6 の感想

ver 1.1 (May 7, 2001)

粗筋
ついに鳩子の鈴鹿と当たった。さすがに強い。まるで避ける方向が分かるかのような攻撃 ──
概観
どーしても「問題-回答」形式のゲームにしかならんらしい。 ゲームってそーゆーもんやないやろ? ま、それはともかく、#1 の感想で書いた「試合に至る道筋」への回答も出た。 「ヒカルが怪我しないようもっと頑張る」か ... 落とし所としては、 そういうのもありなんかなあ。なんかちょっとズレてる気もするんだけどね。
二人ゲーム
前回のみさきの戦いで点稼ぎをねらうのがアリかナシか ... という議論があったらしい。 アリっつうかナシっつうか ... 二人ゲームを覚えていくにあたっての 最初のブレークスルーは「鍛える(ナシ派?)」ということと「ゲームに勝つ(アリ派?)」 ということの調和にあるが、 議論に参加するということ自体、このレベルにまで達してないという証拠みたいなもんだが、 世の中そーゆーもんか?
「負けた時に泣ける奴は強くなる」
と言うし、今話でもいっちゃんが言うていた。 微細なポイント差で勝つことを考えるという「頭の良い」戦い方をして 負けた時に「泣ける」はずがないんだが、そのあたりまるで分かってへんのやろか。

微差での勝負が勝負になるということは、もともと力量差がほとんどないということを意味する。 「鍛える」というのは自分に力量を越える負荷をかけることなんだから、 同格レベルでのゲームが微差になるという「当然」のことをいくら繰り返しても 「鍛える」ことにはならない。 微差のゲームを耐えるということが負荷になるからゼロではないが、 極端な話、こちらも全力を出さずに、相手が全力を出す前にさっさと潰してしまうというのが ゲームの「勝ち方」としては理想的だ(余力は残せるし次の対戦相手に手を読まれることもないし、 なんといってもラクだ)が、... ンなゲームを 10 やろうと 100 やろうと上達とは無縁の世界だと思う。

計算もなにも通用しない格上を相手にして使えるものを全て使うゲームに比べれば、 成長の度合は桁が異なる。 自分の力を出し切った上で負けるというのは、 自分自身のこれまでの全ての蓄積が役に立たなかったというのは 全人格の否定に相当する。だからこそ「泣ける」のだ。 泣けるから強いんじゃない。泣けるほどのものをゲームに投入することができる、 そういう鍛え方をするから強くなる。

逆に。二人ゲームのルールは二人に平等であり、初期条件も同等だ。 人の才覚が似たようなものならば、ゲームのルールを味方につけることが できれば役に立つだろう。 ゲームが終った時点でポイントが上の者が勝つなら、途中でポイントが上に立つということは 「そのまま逃げ切る」というオプションを手にするということだし、 ゲームとしてはそれを活用して当然だ。

この二つを調和させるのは難儀なことであって ... 負けるつもりでゲームする奴はいない。勝率第一に考えれば逃げ切ることを思わざるをえないし、 となれば手持ちのカードのうち勝率に貢献しそうにないカードは使わないことになる。 で、

「本番のゲームでは練習の 8 割くらいに抑える」
ということになったりする。

最初は勝てるが、 この状態が続くと成長速度で周囲に追い抜かれるので結果として負けがこみはじめる。 何故勝てないのか ── という見つめ直しが最初のブレークスルーになるんだと思う。 たとえば『ヒカルの碁』でヒカルが院生になって暫くして成績が下がったのが典型例。

でまあ、わりと最初から全力でブチかましていたみさきはそういうとこ筋が良かったわけで、 それが一般人の成長ルートにハマればそりゃあ期待していた鳩子は泣くだろう。

今話の鈴鹿とのゲームで自然とそれが直ったてのは大きいよなあ。 言われて直るもんでもないだけに ── 「2, 3 回は負けてもいいから全力でブチまかせ、したら強くなるぞ」 といわれても素直にそういうゲームが本番で出来る奴は居ないからねぇ (ちなみに格闘技で全力で体当りしかけて躱されて 3 秒で負ける、 とかいうのは「全力でブチかます」とは言わない)。 つーか、分かってても出来ねーって ...

ところで、全力を引き出すようなゲームを作ったのは鳩子の試験みたいなもんだろう。 これにパスしなかったら本気で見捨てるつうことで。 ゲームの戦略としては相手の力を引き出すつうのはバカのやることだと思うが、 カードを何枚も残した状態でゲームしてたから出来る余裕ではあるか。

「6 回戦の冒頭が切れた」
これ、6 話目(今話)の冒頭が切れた(3 〜 8 回戦はダイジェストでお送りします)てカケてあるのか ...?
対戦相手をみつめる
まあ、基本というか、なんか、... なあ。

ときどき私とゲームしてる某がのたまいていわく 「しかけるときは表情が消えるんで良く分かる(笑)」 ── ゲーム中の表情の 8 割はもちろんフェイクだが カナメの仕掛けの時は一切よまれんよう表情消す癖を逆手にとられとったらしく。 表情消すなら最初から最後まで消しておかんと意味なし、ってことなんだが、 ポーカーフェイスは「表情」をゲームのカードとして使えなくなるので なんか自分の手を縛るような感じになるのがちと気にくわん。

たかが表情つうても奥が深いのだな、と思ったことであったが、 そーゆーのに比べれば 「ヒカルに右に避けさせる時に自分は左を向く」 ていどのこともしなかったのは、まあ、戦術の初心者だなあ、てので良いとしても 鳩子の表情をみさきが読めた、ってのがちと問題だな。
上手い奴の表情なんざマジメに読みにいったら右とも左ともつかず どまん中で立往生するもんだと思うが。 つーか、相手をピン止めしてしまうのが表情というカードの使い方の基本だが ...

鳩子
どうみても手ぇ抜いてた前半。みさきが鳩子のやりかたに気づいた時によろこんだ ── んと、これを喜ぶのは当然のこととして通過しちゃったけど、いちおー書いておく。

二人ゲームにおいて、自分の戦術がぜんぶハマってしまうことほどつまらないことは少ない。 ゲームの面白さ、醍醐味はひとつには「かけひき」にあり、相手との対話にある。 ぜんぶハマるというのは、つまり一方的にしゃべってるだけ(相手はそれに頷いてるだけ) みたいなもんだ。
鳩子がきったカードは「相手の視線を読む」だけで、しばらくしてみさきはそれに気づいた、 ... 対話が成立したってことで。 ほんとうのゲームはこの瞬間からはじまる。 視線のフェイクやら表情消したりやらを通じてのかけひきという形で。 もちろん他にも使えるカードは山程あるだろうけども。

実力差からどーせ勝負にもなにもならへんのだろうから、 それ以上のことは「今は」期待しない、ただ、「気づいた」という感受性、センスは、 鳩子としては面白かろう。... ゲーム中にゲームの質が変わるというのは、 たぶんゲームをいちばん面白くするものだと思うし。

戦略をたて、その筋にそって各戦術を定め、 ゲームを運営する。ものごとがすべて順調なら、それでゲームそのものは終りだ。 途中でコケれば負けるし、そうでなければ予定通り勝利を収める、それが一つの流れ。 ゲームの質が変わることで、戦略レベルの練り直し、各戦術の再検討と。 すべきことがいきなりふくれ上る。 ベルトコンベアの上にのってダラダラと流れていたゲームに命が吹き込まれる、生き返る感覚。

この条件を満たすことは難しい。

相手が気付くか変わるかしないとこの感覚は得られない。自分を鍛えるだけでは、 ぜったいに得られない。... 自分が強くなれば相対的に相手の技量も上がるが、それだけだ。 この感覚は力量の絶対値とは関係がないから。「好敵手」という括りですら語れない。

鳩子がみさきに期待していたのがそういうゲームならば、 そしてこのゲームで確認した(そういうゲームが味わえる)ということならば、 そりゃあ前話では怒ると思うし、今話では満足するだろうと思う。

この感覚は「変わる側」からはまったく味わえない ... まあ「変わる側」が苦労するのを眺めて楽しむに近い構図だから仕方ないんだけども、 でも、「変わる側」の、この視野が急激に広がる感覚は「変わらない側」よりも良いものだと 「変わらない側」は知るから、自分もそうありたいと思う部分があるから、 鳩子は(力量的には遥かに下の)みさきに敬意をはらうんだろう。

手持ちのカードを封じた手加減した状態でなく、 全力でのゲームで、そういう感覚が味わえたらいいな ── という鳩子の想いが実によく分かった。

高速回転蹴り
ほとんど静止状態からトップスピードというあたり、カタリナとはケタが違うということか、 ってのはともかくとして、一枚絵なんつー手抜きせんでくれ。もしかして TV 東京規制の一環か?
いっちゃん
前話でみさきの戦い方を理解できなかった珠代には (今話でみさきを慰めることは)出来ないことだし、 虎太郎が口を挟むこともできない(それなら前話の時点で言うておくべきである)ので、 いっちゃんをつれてくるのだろうとは思っていたが、 丁寧なふぉろーやん。

みさきのやりようを全肯定しつつ、 合理化(鳩子は強いから負けて当然だよね)の歪みを防いで 悔しさを口に出させる(再認識させる)つうのは基本っすな。 基本すぎるわりに他になんもしてないのがちとアレだが、 あとはいっちゃんの表情が語るだけで十分ですかい。

もっとも、コーチのお仕事がいつもこんなに簡単だったらどんなに良いだろう、とか思ったりもする。 みさきの育ち方、戦い方が素直だからいっちゃんの仕事は単純で済んでるけど。

今回、この一言
「それが分かれば、自分はぜったい、もっと強うなれる」
いっちゃんさんの表情がすごく良かった。この方、こーゆー表情も出来るんね。


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