こんにゃくはノンカロリーではありません-。栄養学の”辞書”ともいえる「日本食品標準成分表」を、科学技術庁は三月末までに改訂するが、この中で食物繊維の多い、こんにゃく、キノコ類、藻類(海藻など)に初めてカロリーを表示する。この種の食品は、これまでの食糧統計や栄養指導などでカロリーがゼロと計算されており、ダイエットに関心のある人もそう思い込んでいたはず。一体、どういうことなの?
「いや、そもそも、ノンカロリーというのは誤解でして・・・・」と科学技術庁資源室の鹿熊誠・室長補佐。
現在、使われている日本食品標準成分表(通称・食品成分表)は四訂版(1982年)で、きくいも、こんにゃく、きのこ類、藻類の計七十九食品のエネルギー欄は、いずれも横棒線「-」と表示され、戦後間もなくの初版(1951年)から、ずっとこの表示という。なるほど「0」とは書かれていない。
食品成分表のエネルギー値は、その食品(可食部分百グラム当たり)に含まれている タンパク質、脂質、炭水化物を割り出して、各「エネルギー換算係数」を乗じ、三つを足し算して出す。
ところが「きのこ類や藻類の場合、エネルギー換算係数を決める実験をすると、人によって数値にバラつきが出て、一定の係数を定めるのが難しいのです。これが、エネルギー値を表示してこなかった理由で、食品成分表にも注釈として説明しているんです。
しかし、そこまで読んでもらえず、ノンカロリーと誤解されてしまうわけです」(鹿熊さん)
食品成分表は、国民栄養調査(厚生省)や食糧需給見通し(農水省)、学校給食の栄養基準といった公的な統計から、病院給食の基準、糖尿病など生活習慣病の栄養指導にも幅広く利用されているが、この種の食品のエネルギー値はゼロ扱いできた。
「数値を出さないことでノンカロリーという誤解を受けるよりは、一定の目安であっても数値を明示した方がよい、という意見が多く出てきましてね」と鹿熊さん。そこで成分表改訂を機に、新たに十食品を加え、計八十九食品のエネルギーの表示に踏み切ることにした。
問題のエネルギー換算係数だが、各1グラム当たりのタンパク質に4キロカロリー、脂質に9キロカロリー、炭水化物に4キロカロリーを乗ずるいわゆる「4・9・4係数」(アットウオーター係数)を便宜上、採用する。食物繊維は消化されにくいので、実際に利用されるエネルギーは50%で算出するとみられる。
日ごろよく使う食品(百グラム当たり・単位キロカロリー)で計算してみると、▽こんにゃく=板こんやく5▽きのこ類=えのきたけ20、干ししいたけ180、ほんしめじ14、なめこ8、水煮マッシュルーム18▽藻類=焼きのり178、ま昆布145、寒天154、干しひじき140、生わかめ13。
一見、相当のエネルギー量に思えるが、一食当たりの標準使用量に換算すると、例えば焼きのり(2グラム)4、干しひじき(10グラム)14、えのきたけ(40グラム)8、干ししいたけ(2グラム)4と、ほんのわずかのカロリーだ。
今回の改訂で作業グループに加わった管理栄養士の川島由起子さん(聖マリアンナ医大横浜市西部病院栄養部)は「カロリーがあるからといって、食物繊維の多い食品を敬遠しないでほしい。コレステロール値や血糖値を下げるなど、食物繊維の素晴しい働き
に目を向け、今以上に食べて欲しい。その分のわずかなカロリー増は、カロリーの高い食品をちょっと減らせば十二分にカバーできます」と話している。(姫野 忠)
東京新聞 平成9年2月20日 生活 より引用