(2006年8月最終報告)

〈経過と治療方式の選択〉

「前立腺肥大症」は古来からあるが原因は定かではない。加齢に伴い進行することが多く、男性ホルモンと、女性ホルモンの
  アンバランス
によるところが背景にあるようである。巷にはその対策の薬草や多くのがあるが、肥大を抜本的になくすものは、
  無く
、その部分を削除(あるいはそれ相当の処置)するしかないととされている。(症状の小さい場合は薬の効果もあるが)

■ 小生は今年に入り頻尿の度合いが甚だしくなり、3月頃から夜間3回以上、昼間は1時間毎の尿意と、生活に支障が出てきた。
  後で分かったことではあるが、この悩みを持つと尿意は、肉体的な刺激と心理的なもので起こり、人によっては水音でも催すこと
  がある。いよいよ困り、主治医の薦めにより通常の手術を受けようと市内の大病院を紹介していただいた。

■ 4月市内の病院に出かけ、手術の段取りを決めようと診察を受けたが、小生の切羽詰った心情も理解されず、尿検査・血液検査
  を行っただけで、1ヶ月後の再診を行うとののんびりした話であった。肩透かしをくらい、物足りない心境で帰宅した。

■ その日の午後、小生のことを聞き知った友人N氏より電話があり、彼の幾多の経験(最近前立腺がんの摘出手術を行った)から、
  肉体的負担の少ない「高温度温熱療法」を行っている病院が東京にあり、症例実績も数千件あることを教えてもらった。

■ 早速インターネットで調べた。通常温熱療法は、高周波電磁加熱で患部の細胞を焼き壊死させて行うもので、摂氏40℃〜45℃で
  あるが、「高温度温熱療法」は70℃〜75℃と高く、その効果が高いと推察された(あくまで素人の感想ではあるが)。
  更に症例が多く経験も多いことから、信頼が出来るのではないかと考えた。

■ 一方別の友人W氏(湘南地区の大病院の院長)と別途連絡をとり、@貴病院での手術はどうかA「高温熱療法」については
  どうか、を含め小生の状況などを話をし、処置の相談した。
  その結果、微妙な場所だけに、技能を必要とするもので、特に経験豊富なところがよい。肥大症は病気ではなく単純な尿路障害
  あるので、効果の期待される方法であれば良く、「高温熱療法」でもよいのではないかと賛同を得た。
  なお、友人の病院での手術については医者の経験度から、小生が満足しないのではないかということであった。

■ 更に、近くの主治医にこれらのことを含めて、再度相談W氏と同じ様な意見を頂き、更に「高温熱療法」での治療期間中
  その病院が遠方(東京・神田)ということもあり、緊急な処置が必要であったら、十分に協力するとのこころ強い話も頂いた。
  これらのことから、「高温熱療法」による治療選択を念頭に、東京の当病院に詳しい相談に行くことにした。
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〈「高温熱療法」病院「医療法人社団・神田医新クリニック」での初診〉

■ 電話により初診の予約を行い、4月18日当病院を訪れ診察を受け、院長等から本方式の概要説明を受け、各種質問を行った。
  特に「治療方式の説明と効果」「回復までの処置・期間」「合併症や問題点」「費用」などを聞き一応納得の上治療を受ける
  ことにした。(説明は丁寧で納得し、多少の不安があるものの「まな板の鯉」になる決心をした。)

(1)治療方法と期待される効果

■ 前立腺肥大症は男性特有の症状で、50歳頃から尿道を取り囲む胡桃大の20グラムほどの前立腺が腫れてきて、尿道を圧迫し、
  尿が出にくくなる。残尿が増え頻尿となり、トイレに行く回数が増えて、生活がしにくくなる。
  (小生の場合は、34グラムほどで、特別大きい訳ではないが、頻尿が問題であるということであった。)

■ 薬による治療方法があるが、(数年この方法を行ってきた)前立腺の腫れを防ぐ(あるいは小さくする)などの抜本的ななことは
  出来ない。この腫れをとり尿道を広げるためには、外科的手術により、尿路周りの前立腺の一部を削除するか、温熱による
  加熱処理によって細胞の一部を壊死させる方法しかない。

■ 当初は手術による処置を考えていたが、温熱療法で手術に近い効果が得られることを知り、これを受けることにした。
  特に中程度の症状(小生はこれに該当する)では効果が大きく、一回の処置で5〜10年間の状態確保が可能との説明があった。
  また、温熱療法はからだへの負担が少なく、一般的に70数歳頃からは腫れの増加は少なくなるとの説明も選択の理由になった。

■ 温熱療法にはいくつかの方式があるが、特にがん細胞が熱に弱いことを利用しがん治療に使われているものが多いようである。
  高周波やマイクロ波の電磁波によりコントロールしながら局部加熱で細胞を局所破壊する。一般的には40〜45℃の温度である。
  当病院のものは、特に温度が高く70〜75℃まで加熱できるマイクロ波(945Mヘルツ)の方式である。(米国製)
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(2)治療と問題点 回復までの処置・期間など

外科手術は、前立腺の細胞の削除を行うので(通常は尿道から行う)一部の神経を痛める可能性が高く、括約筋障害により、
  尿のコントロールに支障をもたらす可能性があるが、本「高温熱療法」ではこの種の影響は少ないということである。

■ ただ、この方式も肉体的損傷を与える訳で問題はゼロではない。医師の経験を信じ、トラブルの少ないことを祈るのみである。

■ 治療は、特殊な外徑数ミリのカテーテル(管)を尿道に挿入し尿道周りの前立腺へのマイクロ波照射を行い加熱し、細胞の
  一部を壊死させ、縮小させる。 治療時間は約1時間で、加熱の間は尿道周り以外に影響が出ないようにコントロールし、
  冷却しながら行う。(温度センサーを、直腸付近に挿入)

■ 加熱治療後、膀胱までのカテーテルを尿道に挿入し、先端に膀胱内尿を排出する栓をする。この状態で約2週間設置し日常の
  排泄は手動により栓の開閉で行う。これで加熱により腫れた前立腺細胞が破壊され、時間経過により壊死細胞が周りの組織に
  吸収
され正常な状態に回復させる。その間は組織が変化するため2〜3日は出血の障害が出ることがあり安静に保つこと。

■ 2週間後カテーテルを取り除き、時間をかけて排尿のリハビリを行う。この間6〜8週間を要するとのことであった。

■閑話休題:前立腺肥大症と年齢の関連
  前立腺肥大症は加齢が大きな要因で50歳後進行するとのこと。(個人差はあるが・・ご参考)
  (年代により率は 60歳:60%程度  70歳:70%程度 80歳:80%程度。ただし72歳頃から進行が遅くなる)

(3)費用など

■ 入院時5万円を供託し、治療後清算するとのことである。
  勿論、健康保険の適用があり、小生の場合は本人負担が10%で、治療費用1万円、入院費や雑費を含め15,000円程度とのこと。
  その他、通常の「治療承諾書」も提出する。
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〈「神田医新クリニック」での治療〉(2006年5月8日〜5月9日)

■ 5月8日治療の日。午前9時30分頃神田の病院に到着。早速手続きを行った。
  「治療承諾書」「健康保健証」の提出、5万円の供託金の支払い(帰宅時実費精算)治療準備に入る。
 ・なお、2病院(藤沢市民病院・神田クリニック)での血液検査の結果、がんのマーカーであるPSAが、2.34 と 1.7
  いずれもがんの心配が無いという値(通常PSA4.0を超えると要注意)であったので、幸いにも肥大のみの対策であった。

(1)5月8日治療(治療時間経過と概要とコメント)
  ・10:00頃 事前の検査(心電図、胸のX線写真の撮影)
  ・10:30頃 病衣服に着替えベットに入る。浣腸を行う。
  ・10:50頃 痛め止め注射・直腸に温度センサー挿入、引き続き尿道へのカテーテル挿入。(挿入時少々痛みあり)
  ・11:05頃 点滴スタート。(痛め止め)にて治療準備完了。
  ・11:10頃 加熱開始。(60℃→72℃目標) 肥大の大きい人は75℃まであげる)腹の中で熱を感じるが我慢できる範囲。
  ・11:25頃 72度の状態になり、加熱続行(30分程度を保つ)。
  ・12:05頃 加熱終了。(血圧の測定 155/90mmHg少々高め。緊張のせい?通常135/75mmHg付近)
  ・12:17頃 治療装置をはずし、カテーテルに排尿用の袋を取り付ける。
  ・12:30  痛め止め注射後、ベットにて昼食を摂る。以後ベット上にて安静にする。
  ・19:00頃 ベットで夕食。
  ・21:00頃 安定剤を服用し睡眠に入る。

(2)5月9日治療終了後処理から退院まで(概要とコメント)
  朝未明(4時ごろ)に目が覚め、排尿袋の処理をして、退院準備に入る。
  ・6:00頃 化膿止めの点滴を行う。
  ・6:30頃 排尿袋をはずし、カテーテルの先端に尿排出用栓を取り付ける。(排尿テストを行う)
  ・7:00頃 近くの喫茶店に外出し、朝食を摂る。(入院者2名*と同行)
  ・8:00頃 院長回診。特に問題なし。
  ・8:30頃 担当医より、今後の予定を聞く。(カテーテルは2週間後取り外す。血尿の恐れあり水分を多く摂ることなど)
  ・9:00頃 次回の予約(5月22日)をし、 費用の清算(入院料を含め約14,000円)を行った。

■ 以上の全てが終了し、昼前に自宅に無事着き、一段階が完了した。
  今後正常な状態までに、6〜8週間程度かかる。その間出血することがあるが、特に問題は無く、心配はないとのこと。

■*閑話休題:<朝食時同じ治療を受けた2名の方との会話
 ・1名は滋賀県から来られた72歳の方:治療3回目で1回目は温度不足かあまり効果なく、2回目で約5年経過し、又受けた。
 ・もう1名の方は埼玉からの64歳の方:水の音がすると尿意を齎す。かなり精神的に参っている様子であった。
 (彼は小生より軽い症状?ということか、この朝カテーテルを外してあったが、排尿が出来ず尿閉の症状が出て、朝食後
  再度カテーテルを挿入し、排尿栓を取り付け帰宅した。閉尿は後遺症として、心配である。)
 いずれの方も、肉体的負担の少ないことが、本方式を採用された理由とのことであった。

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〈「実施後の経過」(自宅での2週間)〉(2006年5月9日〜5月22日)

■ 退院し自宅での経過を纏めてみた。カテーテルを外す予定までの2週間は、肉体的・精神的にも苦痛の期間であった。
  やはり細かいところで心配があったが、余計なものを外し開放感を味あうことを想像し、我慢の2週間でもあった。

長い長い2週間であった。少しずつ明るさも見えてきた2週間でもあった。
  ・退院時の注意は「食事は刺激物は避ける」「風呂はぬるめ」「排尿は栓を抜いて行うが、20〜30CCは残すこと」
  (膀胱が空になるとカテーテルの先端で傷をつけるのを防止:精神的に苦痛)「過激な運動は避ける」等などであった。
  ・日課は、朝夕食事後「抗生物質」「痛め止め」「胃薬」を服用し、場合によって「座薬」も用いること。

■ 排尿回数は、当初は入院時とあまり変わりなく夜が3〜4回、昼は1〜2時間毎であったが、1週間後頃から減ってきた。
  ・カテーテルを入れているので、回数の制御は自分で行うのであるが、異物の刺激?が尿意を催すのでその都度
   作業?を行ってきた。後半は違和感も少なくなり、その回数が減ってきた。夜間が減って助かってきた。
  ・排尿時の血尿は3回程度あり、最初はびっくりしたが、退院時に予告されていたので、これも回復する一過程で
   あると耐え忍び、水分を多めに摂って、早期排出に心掛けた。
  ・外出も一日おき程度行ったが、やはり違和感を抱えてのもので気分的に乗れず、急いで帰宅することが多かった。

■22日治療処置最後。朝出発時先に指導のあったように、朝いっぱいの水分を摂り、病院に向かった。
  ・カテーテル(管)を入れた状態で約2時間電車に乗り、排尿の苦痛に耐えながら到着し、早速管を抜き排尿した。
   本来ならそのまま超音波検査により残尿を測り、更に排尿し検査することになっていたが、待ちきれなくなっていた。
  ・更に、利尿作用を促す注射を行い、再度水分を摂り(800ccほど飲んだ)残尿時・排出後の超音波検査で状態の確認を行った。
  ・抜管し違和感が無くなり、気分的に軽くなったが、10分置きぐらいの尿意には参った。
  ・早速医者の診察(主に会話)があり、一応順調と思う。今後約2週間は利尿作用の楽な新薬カプセル(ユリーフ)を飲み、
   水分を多く摂り尿の通じを良くすること(頻尿状態は続く)。
   ただ、途中血尿が出ることがあるが、壊死細胞の排出のためで心配なしとのこと。
  ・今後の心配は、前立腺の浮腫により閉尿(尿が出なくなり膀胱がいっぱいになる)が起こることである。
  ・次回は、約1ヶ月間括約筋の活動(?)を戻すことを行うとのこと。(6月末)全て完了ということになるという話であった。
  ・とにかくカテーテルを外した開放感はなんともいえない爽快なものである。
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〈「治療終了後の回復期間1」(自宅での2週間)〉(2006年5月23日〜6月2日)


〈「治療終了後の回復期間2」(自宅)〉(2006年6月2日〜6月29日)

■ 6月29日最終検査の予定で病院を訪れ医師の診察を受けた。
 結果はまだ最終段階には至らず、く更に一ヶ月のリハビリ期間に入ることになった。
 理由は残尿量が思ったほど減らない。頻尿の度合いもあまり改善されていない。これをリハビリで良くしていくとのことであった。
■経過は、29日朝病院に着き、手続きご、早速超音波診断を行い、尿の状態を測定した。
 ・その後放尿し尿流測定(尿の勢いと状態を測定)をを行い、更に残尿量の超音波測定を行った。
■次に、く「IPSS 国際評価法」により体の状態を自己評価表に記載し提出した。
 (「残尿感」「尿意の間隔時間」「尿の出方」「放尿時のいきみ」「夜のトイレ回数」など10項目ほどの設問に答える。
■診察は評価法や、本人の期待値とデータ等を合わせ相談に入る。(小生の感じでの期待値とはかなり違っている)
 ・診断では頻尿については精神的のものもあり、更にく膀胱が弱っていて(収縮力の低下)しばらくく訓練する必要があるとのこと。
 ・そのための薬(エブ ランチル15)を日に2回投与し、膀胱の収縮力を回復させる。
  最初の尿意を我慢し薬の効果とあわせ、膀胱に貯留する量を増やし、回数を減らすことを目指す。ことにある。
 ・日数が経るにつれ、放尿の間隔が長くなり、1ヶ月程度で満足できる状態になるだろう。
 ・特に夜間の回数が減ってくるのは最後になるが期待値に近ずく。(現在は夜間2〜3回)
■人それぞれ状態が異なることもあり、月単位でじっくりあせらず直していく必要だあるとのことで、納得した次第である。
■現在は少々改善されたとの感があるが、もっと良くなることを期待して、これからの1ヶ月後を待つことにしよう。
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〈「治療終了後の回復期間3」(自宅)〉(2006年6月30日〜9月末日予定)

■ いよいよ明日が最終診断の日となる予定。(7月27日)
 5月8日治療を始めて、3ヶ月近くになるが、効果があったかどうか。自覚だけがそのメジャーになる。
 特に夜間のトイレ回数は、3回以上(就寝後、起床時までの回数)であったのが、1回程度減って2回ぐらいである。
 これを、改善されたかどうかと判断することが出来るか?。大変難しいところである。
■人の体は夫々異なり、絶対的なメジャーは無いことは、色んな点で体感しているが、本件については特にその感がしている。
 明日、診察のためのデータと医者との面談による何らかの結論が出るが、現在の心境ではある程度効果があった。今後は様子をみて
 状況が変われば、”そのまま”か”再度対策をする”と、言うことになるのではないかと思う。(7月26日の感想)
■7月27日診察が行われ、諸データの結果、状況は良い方向に行っている。ただ残尿感がまだあり、特に膀胱の収縮力を回復させる
 訓練がまだ必要とのことで、そのための補助薬を2ヶ月を用意し、結果を後日チェックすることになった。
■特に指摘されたのは、尿の頻度を時間データを採って管理しているとの話をしたら、「それはやめてくれ、気にすることが最もだめ」
 とのことであった。精神的なものも大変影響してとのことである。
■本人の感じでは、元に近いと思えるし、以上の結果2ヶ月の様子見になる。今後は特に異変は起こらないと思うので、体験記はこれで
 おしまい
とします。つまらない記事をご覧になっていただき有難うございました。  (おしまい)


■*閑話休題:<前立腺がんで亡くなった友人>
 ・去る7月28日高校同級生で昭和33年東北大学に一緒に入学した友人が前立腺がんで亡くなった
 ・理学部を卒業し、大学に残り教授として活躍し、定年後は弘前大学にて後進の指導に当たっていた。(後年東北大学名誉教授
 ・体調が思わしくなく3年ほど前に退職し、病気の養生に当たっていたことを聞いていたが、70歳で逝去された報を聞きました。
   ・前立腺がんは処置を誤ると大変で、彼も発見した時は手術もままならずホルモン療法のみであったと聞いていた。
  このがんは、各所に転移するのが特徴で、彼も骨に転移して処置がお手上げであったとのことであった。
 ・小生が前立腺の治療を行っている時のことで、非常にショックを受けた次第です。
 ・このがんは場所が場所だけになかなか発見が難しいものですが、先にも記載した血液検査によるマーカー「PSA」
 値によりかなりの率で発見が出来るようです。
 是非高齢者は特に血液検査を行うことをお勧めします。(PSA値 4・0未満ならほぼ問題がない。値がそれ以上で
 あれば精密検査
をした方がよいようである。)
 ・大変に真面目な学究の徒がぴったりする人柄で、3年前に同期会で会ったときは、「これから人生を楽しむんだ」と言って居た姿が
  今でも髣髴として思い出されます。ご家族もさぞかし残念でしょう。四釜慶治君の冥福を心よりお祈りします
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