春のまなざし(長野県上高地・西穂高 2007.02 by 兄山女)


長野県上高地・西穂高からの画便りです。

自然は一方で荒々しい姿を見せるかと思うと、一方では同じ力が 恵みとなって現れることもある。
火山もそのひとつ。一度、噴火するととてつもない被害をもたらすが、 おとなしくしていると、温泉という開放と愉悦の場を提供する。

【右:大正池と焼岳】
上高地の焼岳。北アルプスで最も激しい活火山であり、1915年の噴火では、 泥流を流し梓川をせきとめ、大正池を生んだ。最近では1962年にも噴火し、 噴石が人を傷つけた。
その山のマグマの活動で、平湯温泉・福地温泉を 初めとする豊かな奥飛騨温泉郷があり、我々の宿泊した坂巻温泉もその恩恵に与っている。
坂巻温泉に一泊し、前日は上高地をスノーシューで散策、翌日は新穂高温泉へ回り ロープウェーから西穂山荘まで登る。
2月下旬だが、すでに春の陽気。

【右:田代池】
上高地では、すでにカラマツの根の周りの雪が融け、やせ細った岩魚が 人の気配で逃げてゆく。
さすがに、西穂高のほうへ回ると、スノーパウダーと言える雪が積もっている。 それでもこの時期としては、積雪量は例年に比べはるかに少ないという。 雪をかぶった大シラビソも、白さよりも緑が目立っていた。

【右:西穂高岳】




【兄山女の歌】

水ぬるむ伏流水の池に透け岩魚はほそきからだをとばす

かすかともしかも確かに訪れてシラビソ周りに光を伝える

スノーシュー持ちて釜トンネルへ向かうころ雲にうもれし前穂あらわる
絞られるごとく眠りに降下する夢なぞ繰ったがさても帰らず

白銀の穂高の頭上尾をひきて飛行機雲は西へとむかえり

白雪をふむ毎(ごと)山々あらわれる北アルプスの陽光まぶしき

正面は霞沢岳したの池が大正池とぞこの時空に立つ

太陽と白い雪とが照らしだす北のアルプス抒情を排す
   
 
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