9月の上旬、今年最後の鮎釣りにと千曲川水系へ。朝のうちに
渓流で山女を狙い、暑くなったら鮎との算段。まずは渓流を
めざし、大門川、武石川、八丁地川、鹿曲川をと千曲川の
支流を巡るが、どの川も何か足りない。諦めた頃には昼と
なり、東御市にある千曲川本流沿いの海野宿で昼食。
この宿は北国街道の宿場町。江戸時代には加賀藩などの
参勤交代や、佐渡金山の金を運ぶ宿駅として賑ったという。
【白鳥神社の欅の巨木】 |
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30年ほど前には司馬遼太郎が訪れ、「街道をゆく」の
「信州佐久みち」として書いている。防火目的の卯建(うだつ)や海野
格子など江戸時代の旅籠の建物、道の中央を流れる用水路など
昔をしのばせる街並みが500m以上も続く。この街並みを目だった
観光地としてよりは生活の場として維持してきた人びとの努力には
敬服する。ここの「すいとん」や「クルミ餅」にも、街並みに
似た味わいを感じ舌鼓を打った。
ただ、素晴らしさを感じる一方、何か座り心地の悪さと
いうかバランスの欠落をもう一方で覚えていたのも確かだった。 【海野宿】 |
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海野宿の入り口には、白鳥神社という古社があり、樹齢700年もの
欅の巨木が何本も残っているのに、宿場そのものは
むき出しで炎天下に続いているようだった。いくら空が澄み、空気が
乾燥している信州でも、わずかの柳だけでは辛いのでは
ないか、しかもその柳も途上にあるといった状態では。
その後、千曲川本流、依田川と回ったが、やはりむき出しの川で、
この日は結局竿を出さずに終った。
夕刻に依田川の上流にある鹿教湯温泉につかりながら、
この日の千曲川水系が、たまたま或る日の千曲川であることを願った。 【海野宿の卯建】 |
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【鹿教湯温泉 薬師堂の大わらじ】 【兄山女の歌】 夏闌ける海野(うんの)の宿の空つかたあきつあかねの影が駆けゆく 重なれる山の彼方ゆわたりくる鹿教湯(かけゆ)かそけき風と語らう 夕暮れは心の風の通い路かぜよ吹けふけ鹿教湯に吹けよ |
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