性転換する植物(神奈川県・三浦半島 2006.04〜05 by 提灯鮟鱇)


雌雄が別々の生物の中に、性転換する動物や植物が何種類か知られています。
雌雄異株のテンナンショウも性転換する植物のひとつですが、そんな不思議さに加えて
テンナンショウという名前そのものにも、どこかファンタスティックな世界を感じさせられます。
また花に見える部分は仏炎包と言われますが、この名前にも何か異国情緒を感じさせられます。

テンナンショウの花に見える部分はヘビがが鎌首を持ち上げているような形をしています。
この花に見える部分が仏炎包で、ミズバショウの白い部分と同じです。 本当の花は仏炎包の中に隠されています。ちなみにミズバショウは仏炎包が開いているので 花の部分が外から見えます。



右画像【ミミガタテンナンショウ】
雌雄異株なので雄花の花粉を雌花に運んでくれる虫がいます。 虫は喜んで花粉を運んでいるのでしょうか。
花粉を運ぶ虫は、仏炎包の上の開いた部分から中に入ります。 外側からは花が見えないテンナンショウは虫を惹きつけるような香りでも出しているのでしょうか。



右画像【ホソバテンナンショウ】
仏炎包の中に入った虫は上の入り口からは抜け出せないような内部構造になっているそうです。 返しのような形があって上には登れないのだそうです。一方通行の花といえましょうか。
では中に入った虫はどのようにして仏炎包から抜け出して花粉を運ぶのでしょうか。



右画像【ウラシマソウ】
仏炎包は一枚の布を体の周りに巻きつけたような構造になっています。 その一枚の布の合わせ目の一番下の部分に小さな隙間ができていて虫はそこから抜け出すことができます。 ただし隙間があるのは雄花だけで雌花にはありません。



右画像【左:雄花の脱出口  右:雌株の実(秋)】
仏炎包のわずかな隙間を探して内部を動き回るために雄しべの花粉を体中につけ、 雌花では同じようにしてその花粉を雌しべにこすりつけるという効率的な構造です。 そして隙間のない雌花に入った虫は再び外に出ることはありません。
蟻地獄という言葉を思い浮かべてしまいませんか。



右画像【ムサシアブミ】
テンナンショウは多年草で、同じ株が年によって雄株になったり雌株になったりします。 栄養状態の良い大きな株はメスになり、小さな株はオスになるそうです。 大きくて真っ赤な種をつけるためには体力が必要なのでしょう。



右画像【ユキモチソウ】
テンナンショウの仲間は比較的大きく伸びるものが多いようですが、このカラスビシャクは とても小さな草です。テンナンショウは区別が難しいものが多くて悩みますが、 カラスビシャクはほかと間違えることはありません。

右画像【カラスビシャク】


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虫が入りこんで花粉を雌しべにこすりつける構造ですか。 媒虫花ということでしょうかね。それにしてもこの世界も雌は怖いですね。(十三里)
 
 
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