北鎌倉・東慶寺(神奈川県・鎌倉 2005.06 by 提灯鮟鱇)


北鎌倉の東慶寺は、駆け込み寺とも縁切り寺ともいわれている。
フォークソング世代の人ならグレープの「縁切り寺」を思い浮かべることだろう。
今とは逆で女性の方からは離婚を言い出せなかった時代に、女人救済の尼寺であった。
1285年開創というから720年の歴史を持つ。梅雨入りの日にアジサイ咲く雨の東慶寺を訪れた。

雨に濡れたアジサイの葉に囲まれて東慶寺山門へと続く階段。
明治になるまで男子禁制だったこの尼寺に救いを求めた女性は、夜間密かにこの坂道から 境内に駆け込んだのだろうか。
東慶寺本堂の泰平殿には本尊の釈迦如来坐像が安置されている。
桜の季節には手前左側の枝垂桜が本堂の景観に彩を添えてくれる。
本堂前のハナショウブが満開。谷戸の木々を借景にして紫が映える。

鎌倉には扇ヶ谷とか紅葉ヶ谷というように、○○ヶ谷という地名が多い。この場合の 「谷」は「たに」ではなく「やつ」と読む。扇ヶ谷は「おおぎがやつ」だ。
「やつ」は谷戸の意味で鎌倉独特な表現だろうか。
境内の奥では湿った岩壁にイワタバコが咲き始めた。葉の形がタバコの葉に似ていて 岩に生えることからイワタバコといわれ、凝灰岩の岩壁が多い鎌倉では多くの 寺でこの花を見ることができる。
ホタルブクロも雨に濡れている。
この日はかなりの雨が降り続き何もかもが濡れていた。
アジサイの花は種類が多すぎて選ぶことが難しいので次の機会にゆずることにします。
イロハカエデの細い枝にも雨の雫がたまっていた。雨滴がレンズになって向こう側の景色を 逆さまに映し出している。風が吹き抜けたら消え落ちてしまう景色だ。

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水無月に相応しい画便りですね。
ホタルブクロ、イリハカエデのしっとり感は、 梅雨という春と夏の間の日本独特の季節が育んだ季節感のようです。
【十三里】
 
 
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