再び丹沢山へ(神奈川県・丹沢 2005.2 by 提灯鮟鱇)


ブナの木に咲く霧氷に会いたくなって再び丹沢山を訪れた。
天気予報では「曇のち晴」だったが一日中雪が降り続き、吹きつける風に運ばれる
雪を貼り付けた木々の枝も灰色の空の下モノトーンの世界に埋没していた。
翌日の夜明け、夜半を過ぎても振り続けた雪はいつの間にか止み
前日の灰色の一日から一転して奇跡のような快晴の青空が広がった。

強い風に吹かれ続け枝は風下へと伸び風の通り道を教えてくれる。
一旦凍りついた霧氷も風に吹き飛ばされ次々と落ちてしまう。
早朝の気温マイナス9度、快晴、風強し、体感温度測定不能。
新雪を頭に乗せながらアセビがもう蕾を膨らませ春の到来を誰よりも早く 伝えようとしている。
アセビからの季節のメッセージを最初に受け取るのは 『風土の恵み』を訪れる皆さんですね。
降り続く雪の中で一頭の雄鹿が山小屋の前にじっと佇んでいた。
通りがかりの登山者から食べ物をもらった経験があるのだろうか。
近づいてもカメラを向けても逃げようとはしない。
雪降り続く世界はモノトーン。横殴りの風が一瞬途切れた瞬間に静寂の世界が 訪れる。
限りなく続く灰色の時間との根競べに負けて引き返そうかと何回思い 迷ったことか。
蒼穹を行くジェットの飛行機雲を追いかけるように新雪の山稜を次の峰へと歩む。
この青空がいつまでも続いてくれることを密かに願いながら。


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銀世界の丹沢山。山の天気は気まぐれだ。 厳しい自然界を訪れた人にのみ見せてくれる自然の 美しさの画便りですね。(十三里)
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