小春日和の日向山(神奈川県・厚木市 日向山 2004.11 by 兄山女、提灯鮟鱇、十三里)


晩秋の七沢温泉郷・日向山からの画便りです

霜月も下旬とは思えぬ小春日和の中、 七沢温泉郷の里山を歩き始めて早速、山茶花が迎えてくれました。
道すがら見かける花々は里山の自然の豊かさを想像させてくれました。



山茶花もひなたに笑みをこぼしてる山へと還る神を見送り



春の七草の1つゴギョウ(オギョウ)は、このハハコグサのことです。
春から初夏にかけて花を咲かせますが、晩秋にも咲いていました。
農耕の伝来とともに中国から渡ってきた史前帰化植物だそうです。 良く似た仲間に秋に花開くアキノハハコグサがあります。

夏に咲くマツカゼソウが、たった1本だけ小さな白い花をつけていました。
真夏の蒸し暑い日にたくさんの白い花が風にやさしく揺れていると、暑さを 忘れさせてくれます。
晩秋のマツカゼソウは少し寂しそうでしたが、それは 見る人の心を映しているだけなのかも知れません。

第二次世界大戦後に日本に入ってきて道路工事などで切り崩された斜面に 広がっていく荒地のパイオニア的なベニバナボロギク。
シュンギクに似た香りがあり食用になります。第2次世界大戦中は南洋春菊 とか昭和草と呼ばれ兵士らが食用にしたそうです。
七沢温泉郷のせせらぎが聴こえる清流沿いを歩くと右手に鐘ヶ嶽。
点在する紅葉が朝陽に輝いていた。
鳥の声も聞こえる。(春にはウグイスも聴こえます)


大釜弁財天の滑滝が美しい水模様を見せていました。落ち葉に装われた凝灰 岩の滑らかな岩肌を滑り落ちる水は澄みきって白い泡と水音だけが存在を示 しています。
渦巻く滝つぼの形が大釜の名前の由来になったそうです。
大釜弁財天から日向山に向かって登る北側斜面は杉林であった。
登り初めの山道は何日も天気が続いていたというのに水が湧き出て水の豊かさを思わせる。


やまみちを辿るひとびと追いかけて日向の山に陽は射しこむる


触角を1本なくした黒い虫が晩秋の陽に暖められてゆっくりゆっくりと 前に進んでいました。センチコガネの仲間でしょうか。もしそうなら鹿の 糞を食べているのかも知れません。
人は、観るものしか見えず観えるものは過去の経験ばかりだと言われます。 この小さな虫には進むべき未来が見えているのでしょうか。
日向山山頂から下る南斜面は北側斜面とは対象的に暖かく常緑樹と落葉樹の混合林。



秋の日の日向薬師へ通う路クヌギ葉舞い散る常緑樹(ときわぎ)のなか

常緑樹林のトンネルの隙間にコナラやクヌギの黄金色の葉が光っている。
殺風景な常緑樹林をやぶつばきが彩っていた。

山道を下り切ると里山の梅園が現れ、目映いばかりの紅葉に出会った。

日向薬師。716年、僧行基の開創になるいう古刹で、日本三大薬師の一つに数えられ、日向山霊山寺という。 本堂は朱塗り単層草ぶきで、落ち着いた山寺の風情は歴史を感じさせる。
境内の杉は樹齢800年とも。


澄みわたり空が彼方にしりぞけば白雲木も秋を知るらし

日向薬師から温泉宿までは緩やかな下り坂。山々を右手に見ながら道々の低木樹の紅葉が目を楽しませてくれる。

再び七沢温泉郷に入ると民家の庭先の楓が色づいていた。夜の冷え込みと昼間の陽だまりの落差を 感じさせる紅葉である。

ひなびた京風の門構えを潜ると竹やぶの小道は温泉宿の別邸草庵へ。 水車小屋が今にも回りそうである。草庵は文豪でも住んでいたかと思わせる静かな佇まいの木造の平屋であった。


七沢温泉はひなびた湯治場であったという。「くすり湯」と呼ばれたアルカリ鉱泉につかると、 疲れも癒せます。山際に沈む太陽の陽が注ぐのも乙なもの。童謡夕焼小焼の碑もうなずける。
湯上りに明治を思わせるレトロな造りの佇まいのカフェにて飲む地ビールは格別だった。
カフェの出窓からたわわに稔った柚子が覗いていた。


三本のビールのラベルとりどりに並ぶ七沢湯の宿のカフェ

   
 
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