『遠野』
苔むしる五百羅漢に岩しみず今はしずかなことの確かさ
遠野にてしづかに民話をききし午つゆ草すらも霊魂かと思ふ
涙すは暮坪蕎麦のから辛さにぞ遠野伝へる哀しみにあらず
青き穂のわずかにかしぐ畦道に賢治に似たる青鷺一羽
犂のおと蚕に岩穿つ音のして猟銃響き破るしづけさ
飛鳥にはあらね民草生のほとりまこと遠野は田野のみやこ
耳すまし心こらして呼吸すれば石塔巻ひてゆく風語り