一人旅のすすめ(Vol.30)
見えてくる風景



VOL.30:見えてくる風景


グループ旅行と一人旅、
同じ旅でも見えてくるものが違うかも?


点から点への旅行

同じ季節、同じ場所に旅行しても、家族や仲間などと行くグループ旅行と
一人旅とでは、そこで見えてくる風景が違うと思う。
もちろんオカルトチックな意味ではなく(笑)、同行者がいる場合は、
その人とのやりとりが時間の多くを占め、意識がそちらに向いているので、
同じ風景が目の前を通り過ぎていても、余程印象的なものでない限りは、
印象に残ることは少ないのではないだろうか。
もちろん有名観光地や景勝地では、皆がその場所に意識を注ぐので、
旅行の一風景として印象深いものになるが、
言うなれば、点から点への旅行になりがちだと思う。
もちろんそれはそれで素晴らしい事だと思う。
普段あって食事や飲んだりしても話さないような話題でも、
非日常である旅行中ならさらっと出ることもままあるし、
普段あまり話さないような話題もじっくり語り合うこともあるだろう。、
相手の意外な一面を垣間見て新鮮味を感じる機会になることもあると思う。
ただ、その一方、旅行としてはどうしても、景勝地と景勝地、宿と宿へある意味飛ぶような形の
旅行になる事が多いのではないだろうか。


線を引く旅行

そこが一人旅との最大の差の一つでもあり、
ともすれば一人旅の醍醐味とも言えるものでもある。
一人旅の間は、寝ない限りは移動中は外の風景位しか見るものがない(笑)。
もちろん本を読んだり動画を見たり、様々な楽しみ方はあるが、
基本的には自分以外の特定の相手に意識を集中することがないので、必然的に周りに意識が行くようになる。
そこが一人旅の良さで(笑)、何気なく流れる風景をぼーっと眺めているだけで、
様々なものが意識に入っては、何かを残して通り過ぎて行く。

それは深い森の木々であったり、海沿いの集落と小さな踏切であったり、
子供が遊ぶ公園と洗濯物が干されている家々であったり、
見た次の瞬間頭からは消え去るが、その全体的な流れのようなものは、
不思議と心のどこかに残っている事が多いと思う。
「○○の場所に○○な風景があった」と言う明確なものではなく(笑)、
「ああ、あの時の列車のか・・・」と言う漠然としたものである。
景勝地や名物の記憶も素晴らしいが、一人旅の一つの良さに、
その漠然としたイメージの積み重ねが、その旅の大きな一つの記憶となって残る事にあると思う。
それはいわゆる、線の旅行と言えるのかもしれない。。

心に残る旅とは

そういった記憶は頭で考えるものではなく、その時の感覚が蘇ってくるタイプの記憶なので、
その時の旅行を再び体験しているような感触を得られる場合もある。
それはとても美しい夕焼けの風景かもしれないし、
移動中の車内であった些細な出来事かもしれない。
一見何も見えないと思いがちな夜の車窓かもしれない。

ちなみに夜の車窓は、普段は真っ黒でガラスに反射した車内の様子しか見えないのでつまらないが(笑)、
突然現れる街や集落の明かり、その小さな明かりに照らされた限定的な風景にドキッとさせられることが多々ある(笑)。
また、個室寝台などの場合は、部屋の明かりを落としてみると、
普段絶対に目にすることのできない、流れていく夜の風景を眺めることができる。
個人的に個室寝台から見る夜の流れる風景は、
どれだけ技術やセンスを駆使した素晴らしい映像作品でも
真似のできない素晴らしいものだと思っている。

旅行中は、色々な場所で写真を撮ると思うが、
景勝地で撮った写真より、移動中に何気なく撮った写真のほうが、
より印象深いものになることも少なくないし、
好きな音楽などを聞きながら車窓を眺めると、
それだけで自分だけの珠玉の映像を創り出す事ができるかもしれない。





筆者の一人旅は主に写真を撮る為のものですが、
目的地の風景と同じ位、移動中の風景を撮るのが好きで、
それ自体が旅行の目的にもなり得るなあと思っています。

これらの記事に関するご感想等を頂ければ幸いです。


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