一人旅のすすめ(Vol.28)
旅情



VOL.28:旅情


旅につきもの?の旅情。
今回はこの旅情について考えてみました。


旅情とは何だろう

よく、「旅情溢れる旅」や、「旅情たっぷりの温泉」などという言葉を見聞きする。
この”旅情”というのは一体なんだろうか?
もちろん人によって様々だが、旅行をしている時に感じる高揚感や新鮮さ、
美しい風景を見た時の感動、周りの雰囲気との一体感、
そして、一見関連が無いような、目の前の風景で呼び起される過去の思い出や懐かしさなど、
簡単には表現できない様々なものがこの二文字で表現できると思う。
この得体の知れない言葉(笑)のよさは、当人がいかようにでも表現でき、解釈でき、そして浸ることが出来るところにあると思う。
一人旅は一緒に行動する人がいない分、自分の気持ちや周りの事を良く感じることが出来ると書いたが、
この旅情にしてもそれは当てはまると思う。

今年(2012年)の3月で廃止になる寝台特急日本海、個人的に思い出のある列車だったので、1月に大阪〜青森まで乗ってきた。
筆者が旅情がある乗り物筆頭をどれかひとつ挙げるとしたら、躊躇無く夜行列車を選ぶと思う。
旅行という非日常の中でも、夜を越えて乗り続ける乗り物はさらに非日常的であり、
しかもそれが、列車という普段大半の人が乗り慣れている交通機関である故のギャップ的な感覚も手伝って、
大きな新鮮さを感じるのかもしれない。いつもは立ったり座ったりしている列車の中で、ベッドで寝る感覚、
人で賑わういつもの光景ではなく、人っ子一人立っていない、煌々と光る蛍光灯に照らされるだけの
無機質とも思える真夜中のターミナル駅や、ぽつんと立つ電灯にほんのり照らされる小さなホームの無人駅、
真っ暗な山や森、見ようと思えば見られるがなかなか見られない(笑)、貴重な風景の宝庫でもある。


旅情十人十色

その日本海に乗った時、筆者が感じた旅情は、その夜行列車で過ごす時間そのものではなく、今回乗る理由となった思い出の回想だった。
その時の風景や状況、頭の中をぐるぐる回っていた歌まで(笑)が思い出され、
それが、目の前にある当時と変わらぬ車内の風景と重なって、とても懐かしくその乗車を堪能できた。

旅情というのは、もちろんその人が好きに感じるものなので、例えば夜行列車の場合は、車窓であったり、
ゴトッゴトッという音や振動、車内の風景、夜行列車特有(?)の匂い、そこで会った人との会話など、
色々であるし、「よし、旅情をたっぷり感じるぞ!」と勇んで吸い込むが如く感じるようなものではなく(笑)、
その場で、自然体になった時にスッと自分に入ってくる感覚がそれなのだと思う。

それにもうひとつエッセンスをくわえる事によって、その旅情的なものが飛躍的に増大することがある。
それは、音楽である。もちろん、前述の夜行列車の場合は、列車の音自体がボディソニック的な(笑)とてもいい音楽になる。
ただ、それに自分の好きな曲を加えると、そこに自分がいる事それ自体がひとつの映画や物語の中にいる
ような感覚に陥ることさえある。その音楽自体が、旅情と相まって旅行の思い出になることも珍しくない。

また、旅情や旅行のイメージというのは人それぞれで、感じ方にマニュアル的なものは無い。
ツアーだと、ある程度の誘導的な行程を組んだりすることもあるかもしれないが、
一人旅にはそういう他からの影響は皆無である(もちろん、多くの人が感じる方向性のようなものはあるが)。

筆者は昔、北海道を1月から3月まで旅した事があったのだが、不覚にも好きな音楽を詰めたカセットテープ(笑)を忘れてきてしまった。
手元にあるのはウォークマンに入っていた、B'zのIN THE LIFEというアルバムのみ。
結局、旅行中の音楽はそのカセットだけを繰り返し聞いていた・・・列車に乗っている時、
雪の丘を歩いている時、途中旅費稼ぎのアルバイトで寮で寝る時・・・
おかげで、冬の北海道の雪景色=IN THE LIFEという確固たるイメージが出来上がってしまった(笑)。
もちろんそれは不快なものではなく、そのアルバムの曲を聴くたびに、
雪の中を行くワンマン列車の情景を思い出したり、スキーをして温泉に入ってジンギスカンと食べた事を思い出して勝手に癒されたりする(笑)。
そして逆もまた然りである。

旅情はファジーなもの(笑)である、しかし、もしかしたらその場所、その雰囲気で、基本的に共通するものがある意味決まっているのかもしれない。
雪景色の風景を見ながら、南国の開放的な旅情に浸る人はそういないだろうし(笑)。
ただ、そこにそぐわない変な感覚(笑)に浸ったとしても、それはそれでいいのだと思う。
筆者のアルバムのイメージも、一般的に見ればおそらくその変な感覚の類だと思うが、個人的にはとても気に入っている。
もしかしたら、旅情というのは、変わったものの方が心に残るのかもしれない(笑)。





その夜行列車、開放式B寝台という、カーテンのみで仕切られる二段ベッドだったこともあり、
向かいに乗り合わせた人と、(その方も夜行列車の旅好きだった事もあり)夜行列車の旅情について
数時間ものんびりと語り合いました(笑)。
これもまた旅情ですね。

これらの記事に関するご感想等を頂ければ幸いです。


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