一人旅のすすめ(Vol.27)
得る旅、与える旅



VOL.27:得る旅、与える旅


旅行で得るものは、
与えられる事でのみ得られるのでしょうか?


旅で得るもの

人は折に触れて旅行に行きたがるが、旅行に何を求めるのだろう?
旅で得るものといえばなんだろう?思い出、新しい価値観、癒し、新しい人間関係・・・その他旅行者にとって十人十色、色々あるだろう。
反対に失う(?)ものといえば、お金や時間、体力・・・その他これも、人によって、旅行内容によって様々である。
失うとは言っても、盗難等に遭ったのであればともかく(笑)、あくまでも対価として使ったということであれば、失うという言葉は適切ではないかもしれない。

得るもの、その対価として失うもの、そのバランスが取れたとき、旅行は素晴らしいものになると思う。
ただ、それにもうひとつ面白いエッセンスが加わる旅行もある。
それは与える旅行である。別に、あちこちに施しをして周るわけではなく(笑)、例えば、旅行先で出逢った人達に、
写真を撮ってあげたり、似顔絵を描いてあげたり、その場所の情報を教えたり、案内したりと、自分の得意分野で喜んでもらうような事に重きを置く旅行である。
もっとも、最初から「○○してあげるぞ!」と意気込んで出かけても、周りの人はそのオーラに引いてしまう(笑)だろうから、
あくまでも結果的に、他の人に喜んでもらう事ができた事に満足するという感じである。

与えるとは言っても、それは一方的ではなく、ほとんどの場合、与える側にも大きなメリットがある。
精神的な満足感、写真を撮ったり絵を書いたり、何かを教えることによる経験や思い出の蓄積、
よほど相手に迷惑をかけるような失敗をしない限りは(笑)、得ることと同じ位、素晴らしい旅行の一部になるはずである。
非日常の経験である旅行だからこそ、普段出来ない事をサクッとやってしまえるし、普段だと億劫になったりしているような、
そういった「得て与える」ということを、少しだけ意識して旅行をしてみると、旅行の彩がぐっと増すのではないだろうか。


意気込んで出かけるとあまりよくないと書いたが、意気込んで出かけるべき(笑)旅行先もある。
ウガンダにある、Teach Inn Ugandaというホテルは、ホテルが学校になっており、地元の子供に、宿泊者が自分の得意な分野の授業をするという、
とてもユニークな宿である。日本でもBS世界のドキュメンタリーなどで放送されたことがあるので、ご存知の方も多いかもしれない。
宿泊客が先生になって、英語を教えたり、体育のように一緒になって遊んだり、それはまさに、与えるための宿だといえるだろう。
そして、それ以上に自分にとって「いいもの」を得るための宿だとも言えるのではないだろうか。
日本にはさすがにそういったタイプの宿などはないだろうが、旅行先で出会う人に、自分の能力で喜んでもらえたら、
とてもポジティブな気持ちになれるし、いい思い出にもなる。相手とお互いにそういう交流が出来れば、なおさらである。
旅先でのいい出逢いというのは、そういうものも指すのかもしれない。

Teach Inn Uganda
ティーチ・イン・ウガンダ


蛇足だが、ウガンダといえば、長い内戦で国土が荒れ、疲弊している国のひとつで、
今夏にも大規模な爆破テロで多くの犠牲者を出した、政治的にも経済的にも不安定な国である。
そして、世界、とりわけアフリカや東南アジア、南米には、そういった国がまだまだ多い。
そういった国の人たちに、寄付や間接的な支援をした事のある人も多いだろう。
また、何か自分に出来ることをしたいとは思うが、方法がわからなかったりして億劫になっている人も少なくないのではないだろうか?

寄付の窓口や間接的な支援の方法は色々あるが、ひとつ面白い方法を紹介しよう。
それは、現地で起業を望む人への投資である。投資とは言っても、利率はゼロ(笑)。
実質、寄付のような投資である。ただ、通常の寄付と違うのは、投資先が起業に成功し、融資額を返済することが出来たら、投資額は無利子ながら手元に戻ってくる。
そしてその戻ってきた資金を、改めて違う起業を望む人に投資することが出来るのである。

もちろん政情も経済も不安定な国の個人に投資するのだから、回収できない事もあるだろう(実際の回収率はかなり良いようだが)、
しかし、そうなったとしても、もともと寄付のつもりで行っていた投資なので、損失という気持ちにはならないと思う。
そして面白いのが、投資した先の人とコミュニケーションが図れる事が多いと言う事である。
もちろん、相手がネット環境を持っていることは非常にまれなので、運営しているkivaという仲介組織を通してという事になるが、
今どのような状況で、軌道に乗りそうか、問題がありそうかなど、投資した相手の事がとても身近に感じることが出来、
どこでどのように使われているのか不透明な寄付より、はるかに実感を感じることが出来る。
そして、お互いが一市民同士なので、相手の国の同じレベルでのコミュニケーションが出来たりと、投資側にもとてもメリットがある。
ついでに、サイトは英語のみなので、英語の勉強にもなる(笑)。

支援といえば、資金援助や食料医薬衣料品の配布が主だが、その場合は、即効性はあるが、効果がなくなる(使ってしまうとおしまい)のも早い。
また、キナ臭い話だが、支援物資や資金が、末端まで行き渡らずに横流しや横領に遭ったり、
現地の支援システムが機能しなくて放置、腐食で無駄に・・という事も、そういう国の現状からして少なくない。
この起業投資は、効果はとても遅いものの、そこで起業した人が成功すると雇用が生まれ、
地域経済を小さいながら長く活性化させるというのが、一番の利点であり、有効な点だと思う。
雇用が生まれれば犯罪も減り、治安も改善し、人々の意識が微細ながらゆとりのある方向(教育など)へ向かい、
マクロな意味での底上げにも繋がる(もちろん、それには年単位の非常に長い時間がかかるが)。

また、投資は仲介組織を通じて直接配布される(そのため起業家に対する審査は厳しいらしい)ので、無駄もほとんどない。
また、先にも書いたように、相手の近況がわかるので、こちらもとても実感が沸いてくる。
起業とは言っても、派手なビジネスを展開する(笑)わけではなく、農業、飲食店、薪などの燃料、レンガ、運送など、個人が始めるようなものへの投資なので、
とても身近に感じることが出来るだろう。投資額も最低US$25からなので、かなり手軽である。
英語サイトしかないので、敷居は正直高いが、興味のある人は覗いて見てはいかがだろうか。

ちなみに筆者は、以前タンザニアの食料品店に投資し、見事全額戻ってきた。つまり、起業が成功したということだろう。
起業した人の努力も報われ、地域の役に立つ店が出来、投資額も戻ってくる(笑)、まさにベストな結果だったと思う。
今現在はルワンダのレンガ店と、カンボジアの燃料店に投資している。
筆者ははっきり言って英語はさっぱりだが(笑)、辞書片手に読んでいくと、苦労する分実感もひとしおである。
ゲーム感覚でやってしまうと、それは相手にとって凄く失礼なので、その辺の意識はしっかり持つ必要があるが、
やはり投資した額を有効に使ってもらい、それが地域経済を活性化させて帰ってきて、また違う相手に投資できるという、
世界のために何かをやった、という漠然とした満足感以上のものを感じることが出来る、とても面白いシステムだと思う。


kiva





なんか蛇足のほうが長くなってしまってすみません(笑)。
まあ、困っている時も、そうでない時も(笑)、
与えたり得たりするのはお互い様
ということで。

これらの記事に関するご感想等を頂ければ幸いです。


一人旅トップページへ


Copyright 2010 MITSUHARU MAEDA



inthepictures_mda@hotmail.com