一人旅のすすめ(Vol.26)
夜行列車



VOL.26:夜行列車


昔は旅行の王道のひとつだった夜行列車。
だんだんと姿を消しつつある夜行列車について書いてみました。


夜行列車の今昔

夜行列車が減っている。
記事を書いている2010年、この3月にも、長寿列車だった北陸、能登の二つが姿を消す。
昔は、旅行といえば特急、特急といえば夜行列車(笑)ともいえるほど、その路線も列車数も百花繚乱、
主な観光地であれば、どこに行くにも夜行列車という選択肢は特急や急行、快速、普通列車としてすら存在していた。
しかし今日、新幹線の路線拡大、飛行機、そして夜行バスの台頭により、じりじりと数を減らしてきている。
以前は夜行列車(ブルートレイン)の王道といえば、東京や上野から走っている九州や東北路線だった。
発は東京や上野から下関、博多、西鹿児島、熊本、長崎、佐世保、大分、青森など、あらゆる方面に毎日走っており、
運行時間が長いためか、食堂車なども充実していて、列車の旅を楽しむ環境が十分に整えられていた。
当時大阪に住んでいて寝台列車大ファンだった(笑)筆者は、まだ小学生だった事もあり、
ボロボロになるまで読み返した図鑑などで、その列車たちに憧れを募らせていた。

しかし今では、東京発の定期夜行列車は四国と山陰地方に行く二列車のみとなり、
九州に行く夜行列車はすべて廃止されてしまった。
もちろん、時代の流れ的にそれは仕方ないと思う。
飛行機や新幹線が発達し、ゆっくり時間をかけていく長距離夜行列車の役目は、輸送というよりは観光、
すなわち、その列車に乗る事自体が目的な存在に変わってきているのかもしれない。
それ故、食堂車等の営業もコスト削減からなくなり、単に夜通し乗る列車となってしまった今までの夜行列車が消えて行った一方、
トワイライトエキスプレスやカシオペア、北斗星など、観光に重点を置いた列車はいまだ健在だし、
移動と堪能、ある意味棲み分けができるいい時代になったといえるのかもしれない。

夜行列車の利点欠点

ただ、夜行列車は”移動手段”として新幹線や飛行機、夜行バスなどに圧倒的に劣るのだろうか?
筆者はそうは思わない。
もちろん、在来線である夜行列車は、新幹線のような大量&高速輸送や、飛行機のような超高速輸送には太刀打ちできない。
夜行列車はいくら旅情があるといっても、普段の仕事等で使う人は、出張の度に毎回旅情にたっぷり浸っていても仕方ないだろう(笑)。
しかし、上の三大勢力(?)に太刀打ちできる優位点が夜行列車にはあると思う。
それは、時間の使い方である。

よく出張に行くと、仕事を出張先で済ませたあと、地元に帰り、家に帰り、翌朝出社する。
移動→帰宅→通勤という三ステップを出張後の疲れた体で行う事になるわけだ。
しかし、夜行列車を使うと、出張先で仕事を済ませた後、夜行列車に乗りそこで睡眠、朝ターミナル駅に到着→出社
という、極めて効率的な行動が取れる。会社が自宅近くの場合はともかく、
夜行列車が発着する大ターミナルから行き易い場合は、(気分的にはともかく(笑))、身体的な疲労は
夜行列車を使ったほうがはるかに少ないと思う。

たとえば、東京〜大阪といえば、移動手段も選び放題な交通の大動脈、新幹線、飛行機、高速道路、夜行バスなど、
あらゆるニーズに応えられる移動手段が揃っている路線だが、なんと2008年まで銀河という夜行急行列車が定期的に運行されていた。
そんな路線で夜行列車なんて、あってもなくても一緒では・・と思われがちだがさにあらず。
この列車は、新幹線の最終列車が出発したあとに発車し、新幹線の始発列車が到着するまでに東京なり大阪なりに到着できる、
時間の有効利用という点では、まさに理想的な列車だったのである。夜行バスも同じメリットを持つが、高速道路を使う分、
列車のような完全な定時運行は難しく、事故や渋滞の要素も少なくないため、平常時なら定時に到着するこの夜行列車が、
最新の交通システムが一番に導入されるような交通の大動脈で、最近まで存続した理由はその微妙なメリットにあったのだと思う。

現に、東京〜大垣を結ぶ夜行快速「ムーンライトながら(いわゆる大垣夜行)」も2009年まで定期便として運転され、
現在は定期運行ではなくなったものの、運行時はいまだに非常に高い人気を誇っている。
東京〜九州路線も同じような使い方をしている人が多かったようで、昔、大分(以前は西鹿児島)〜東京を走る
富士という寝台特急に仕事で山口から東京方面に乗った事があったのだが、ラウンジがワイシャツにネクタイ姿のサラリーマンの
方々で埋め尽くされ、居酒屋のような状態だった(笑)。もうすぐ廃止される上野〜金沢を走る
寝台特急北陸も、そのようなメリットを持った列車だった。

要するに、悪く言えば、帯に短し襷に長し、よく言えば、絶妙なバランスが取れている交通手段といえるのではないだろうか(笑)。


夜行列車は無用の長物?

このような使い方が定期的にされていた昔は、夜行列車の存在価値も十分にあったのかもしれないが、
今の時代、新幹線や飛行機がさらに便利になり、ビジネスホテルも携帯ひとつでその場で予約でき、
その時の状況と気分で(笑)手段を完全に決められるような時代に、夜行列車は取り残されてしまったのかもしれない。
せめて、寝台(特に個室)が、飛行機などと同じように手軽に予約できるようになっていれば、
利用客もまだある程度は見込めたのかもしれないが・・・。
運行会社もやはり会社、収益が見込めないものは消えていく運命なのだろう。

これからは、夜行列車=観光という特化が進むかもしれない。
その需要はまだまだ十分にあると思う。以前カシオペアに乗った時、レストランやラウンジは人で賑わっていたし、
その時の乗車予約自体も、キャンセルでなんとか入手できたという状態だった(時期的な繁閑が大きいだろうが)。
ごくたまにやるようだが、日本のあちこちの観光地に立ち寄る日本一周などの企画寝台列車が、カシオペアや
トワイライトエキスプレスのようなクオリティであったら、かなり受けるのではないだろうか。
これからは、夜行列車は移動手段というよりも、旅行中のエンターテイメントのひとつして、発展していくかもしれない。
それはそれでうれしい事だが(笑)。
ただ、今までの昔ながらだからこそ雰囲気がある、開放二段式や三段式の寝台・・・という形の夜行列車も、決して忘れたくはないものである。





夜行列車は、音、振動、匂い(笑)、
独特の世界があるように思います。
旅情第一の旅行をしたい方、
夜行列車が一押しですよ(笑)。

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