コブシ大戦
真下マヒロ:作

 平和的というか破滅的というか退廃的というか、鉄と血の戦争は地上から消え失せ、すべての紛争はジャンケンで解決されることとなった。ジャンケンとはあのジャンケンである。グーチョキパーのジャンケンである。グーは石、チョキは鋏、パーは紙。グーはチョキに勝ってチョキはパーに勝ってパーはグーに勝つ。そのジャンケンである。誰もが馬鹿らしいと思った。しかし国際条約でそう決まったためしかたがない。国家は威信をかけてジャンケンの研究を始めた。
 国はジャンケン券を国連「拳」機構(UNKO)から買う。一枚で一回負けることができる。つまり持っている枚数だけ負けることができるのだ。沢山もっているほうが有利なので大国は今まで軍事兵器に注ぎ込んでいた予算でこのジャンケン券を買いまくった。あたりまえながら金のない小国はこの券を少ししか買えない。
 ジャンケンはUNKOの審判員の立ち会いのもと行なわれる。一回のジャンケンが何日にも及ぶこともある。どちらかが降参するかどちらかのジャンケン券がなくなるまで延々と続けられるので何か月何年もかかる。ジャンケン券一枚はめちゃくちゃ高いので一回負けただけでも国家的損失はでかい。なんと一枚で空母一隻と同じ。しかも毎年ジャンケン券維持費と称してこれもまた一枚で戦略爆撃機一機分くらいとられる。だからジャンケンは国家の持ちうる最終的手段である。
 これはそんな時代のお話である。

    *   *   *

 ヤマダフミオはサラリーマンである。電車にゆられて会社に着いてもそこには神がこの世の醜悪なものをすべて寄せ集めて造り給うたようなオバハンしかいない。フミオが想像していたようなムチムチOLなんて一人もいない。美人秘書だっていない。まったく、だまされたような気分で毎日会社に来ている。いや、実際だまされたのだ。入社前に就職活動で会社訪問に来たときは若い娘さん方が沢山いて、ずいぶんと居心地の良さそうな会社だなと思った。だからこの会社を選んだのだが、入社してみると若い娘さんなんて一人もいない。なぜかなと思い先輩にそれとなく聞いて見ると「ああ、あの頃いたのは皆派遣社員だよ」という答え。所詮おれはそういう人生さ、と床に向かってつぶやいてみる。
 フミオが通う会社では幼児向けのジャンケン教材を企画制作している。ジャンケンのルールから始まってジャンケンの正しいお作法、必勝法まで。フミオは営業課所属で各家庭をまわり分かり易く説明して値段は高く販売するのが仕事だ。口下手だから営業成績はすこぶる悪い。フミオがクビにならないのはジャンケンがめっぽう強いからである。会社はこれほどまでにジャンケンが強い男を手放すのは惜しいと、それだけの理由で彼をクビにしない。

 営業部は朝礼が終わるといつものようにあわただしくなった。フミオが鞄に販売する教材を詰め込んで営業に出ていこうとするとフミオの机の電話が鳴った。
「はい、営業のヤマダフミオです」ちなみに営業部にはヤマダ姓が二人いる。が、それはこの物語には関係ない。
「総務のサトウですけど、防衛庁の方が見えられてます」
「防衛庁……何だろ。あっ今いきます」
 フミオは鞄を持ったまま足早に部屋をでた。
 応接室には二人の男がいた。フミオは一礼すると中に入る。一人は黒ずくめのスーツ。もう一人は青い制服を着ている。制服のほうが年上のようだ。フミオが入ってくると二人とも立ち上がって礼をした。
「ヤマダさんのことはよく存じております。私は防衛庁防衛局防衛政策課のイソザキです」
「はあ」
 握手。今度は制服の方が手を伸ばしてくる。
「私は自衛隊統合幕僚部防衛課のスズキモトです」
「はあ」
 三人はテーブルを囲む。黒ずくめのスーツの方、イソザキが鞄から資料を取り出した。フミオは不安げに質問した。
「あのう、なんで防衛庁の方が私に」
 資料を拡げながらイソザキが答えた。
「ええ、本来ならご自宅の方にお伺いするのが正式なんですが、ことは急を要しておりまして。率直に言いましょう、あなたの力が必要なのです」
「はあ」
 イソザキがフミオの前に資料を広げた表の一つを指で示した。
「我が国の防衛事情は非常に切迫しておりまして、UNKOの発行するジャンケン券を少ししかもっていない。それが防衛という名のもとにおけるぎりぎり限度の枚数なんです」
「はあ」
「それでこれをみてください。隣国の軍事力の状態、つまりジャンケン券の推定枚数です。この枚数に対抗するにはジャンケンに強くなるしかない」
「ええ、そうでしょうね」
「しかし、我が国の防衛予算ではジャンケン券の維持だけで精一杯でジャンケンの研究などほとんど進んでないのが現状なのです」
「はあ」
 イソザキはここで居住まいをただすとフミオの目を見据えた。
「ヤマダさん、あなた、ジャンケンに負けたことがありますか」
「そりゃありますよ」
「その時無理と負けたってことはないですか。あんまり勝ち続けると人間関係に響くと。ねえそうでしょう。こちらではすべて調査済なのです」
 そういえばそんな気がする。今までに本気をだして負けたことはない。
「その、ヤマダさんのジャンケンの強さが我が国には必要なのです」
「はあ」
「力を貸してください。ヤマダさん」
「…でも今すぐジャンケンが始まるってわけでもないでしょう」
 その問いに制服の方が答えた。
「始まりそうなんですよ。我が国が体験する初の国家間ジャンケンってやつが」
「えっ。うそ」
 イソザキが言う。
「K国に潜入していたスパイがその兆候を伝えてきたのです。現にK国のジャンケン部隊が国境付近に移動している」
「ええっ。なんてこった」
「協力してくれますね」
「なんてこった。もうおしまいだ」
「おしまいにならないようにあなたに頼んでいるんです。ヤマダさん」
「僕じゃ勝てませんよ。無理、無理です」
「あなたしかいないんです。国土全体をジャンケンに巻き込まないためにも、たちあがってください」
「しかし……」
 煮え切らないフミオを見て青い制服のスズキモトが言う。
「あなたのジャンケンの強さは我国にとって軍事的脅威になりうる。あなたが協力を拒む場合……我々はあなたを拘束しなければならない」
 フミオは一瞬たじろいだ。なんてこった。返事は最初から一つしかないのか。
「結局協力しなきゃ駄目って事ですか」
「そういうことです」
「…わかりました。自信はまったくありませんが協力しましょう」
 イソザキがフミオの前に拡げた資料をしまいはじめる。
「さすがヤマダさんです。では詳しいことは車の中で」
「えっ今すぐですか。いや私も仕事が」
「事態は切迫しているのですよ。会社の方には我々から話しておきます」
 イソザキとスズキモトは立ち上がった。フミオも立ち上がらざるをえなかった。

 黒いリムジンのリアシート。警護の白バイが前を行くのが見える。フミオは広いシートの真中にちょこんと座っている。前にはイソザキとスズキモトがフミオの方を向いて座る。車が発進したときからイソザキとスズキモトが交互に現状と戦略の説明をしていたがフミオにはほとんど聞こえていない。突然おこった事態に頭がついていかないのだ。
 知らないうちにリムジンから降ろされ、今度はヘリに乗せられた。草色の機体の腹に「自衛隊幕僚部」の文字が白く書かれている。巨大な二つのプロペラが回り初め、轟音が空気をゆらしはじめる。
 フミオは不安になって大きな声で「どこにいくんですかぁ」とイソザキに聞いた。それに対してイソザキはまあまあと大様に手を動かしただけだった。フミオは一層不安になる。ヘリが飛びはじめ見る見るうちに町並が小さくなっていく。どこにいくのだろう。

 着いたところは国境だった。高いフェンスがすぐ近くに見える。そのフェンスの向こうがK国だというのは説明されなくてもわかる。そのK国の領土の方に何十台もの軍用トレーラーだの、装甲車だのが見える。
 スズキモトが無線でどこかと連絡をとっている。
「宣戦布告はあったのか。…そうか。UNKOに連絡は?なに、K国がしたでしょう?こちらからも連絡するんだ。すでに駆け引きは始まっているんだぞ!」
 フミオがイソザキに恐る恐る尋ねた。
「あの、じゃんけんですよね」
「そうですよ」
「じゃあ、あの装甲車とかは何なんでしょう」
「あそこの車両にはK国のじゃんけんシステムの末端機器が搭載されているはずです。敵首都の中央情報司令部とつながっているのです。細かい事はわかりませんが一つ言える事はこのじゃんけんに敵は総力を結集しているということです」
「はあ」
「そろそろ前線に向かいましょう」
「前線?」
「じゃんけんをする場所ですよ」

 そこは巨大な舞台であった。八方にテレビカメラや計測機器が並んでいる。イソザキの話によるとUNKOのじゃんけん総合測定機器だそうだ。後だしの判定や、指の形などを計測し、不正がないようにじゃんけんを執り行なうのがUNKOの役目である。この計測システムはじゃんけんの勝敗、不正についての判定にほぼ100パーセントの正確さをほこる。不正が発覚した場合、じゃんけん券の没収や、天文学的な額の罰金がその国をおそう。昔、中東のある国が不正をして発覚し、経済制裁やら何やらで大恐慌となり、国そのものが崩壊してしまったそうだ。そのことがあってから不正をしようという勢力は現れない。
 イソザキとスズキモトがUNKOの腕章をつけた男達に挨拶をしている。その向こうで今回のじゃんけんがUNKO公認であることを証明するための文書に敵味方双方の司令官がサインをしている。その風景をぼんやり見ていたフミオは突然名前を呼ばれた。
「ヤマダフミオさん。こちらへ」
 呼ばれた方向に歩いていくとペンを持たされ文書にサインさせられた。どうもこれはフミオが国の代表であることを証明するための文書らしい。
 促されるままに膨大な文書にサインしていると舞台のそでの方があわただしくなった。K国のじゃんけんシステムが起動したようだ。舞台の近くに停車している装甲車から丸いアンテナが出てくる。その装甲車の後ろにひかえている数十台のトレーラーからも大小さまざまのアンテナがにょきにょきと出てきた。上空には警戒管制機が飛んでいるらしいと、何時の間にか傍らに立っているイソザキが教えてくれた。
 K国装甲車の内部ではオペレーターが読み上げている。
「血圧198・120、脈拍120。係数コンマ04。筋肉内圧187。正常。体表温度36.02。正常。C−37回路からライン接続完了。衛星「テプティン」正常作動中。敵身体頭部に自動モードで照準ロック完了」
装甲車のメインモニターにフミオの頭頂部が映った。オペレーター達がその映像を凝視している。
 その時フミオは思っていた。なんか頭の上がもぞもぞする。

 とうとう開始されるらしい。フミオが舞台の上で待っているとゆっくりと舞台に登ってくる者がいる。どうやらK国の代表らしい。頭にインカムやらアンテナやらを付け、胸にはメーターみたいな物がついている。それにひきかえフミオは連れられて来た時のままのスーツにネクタイの企業戦士スタイル。見た目だけで軍事力、もとい、じゃんけん力の違いが分かる。フミオは敵の姿に圧倒されかかっている。UNKOの審判が5人、舞台の上に登ってきた。簡単な説明があり、両者位置に着くようにとの指示があった。舞台周囲の計測器が小刻みに動いている。
 一呼吸おいて中央に立った白髪の審判が「一回戦、用意!」と叫び、両手を挙げた。K国の代表が構えに入った。両手を組んでひねって、上体を後ろに向けるあのスタイルである。一方フミオは棒立ち。
 審判が両手を振り下ろす。

「じゃ〜んけ〜ん」
 K国の代表が両手を素早く振る。手を読まれない為の戦術だということはフミオにも分かった。
 そして同時に「ポン!」と手を出した。

フミオ  グー
K国代表 グー

 審判が「あいこ!」と喚いて両手を挙げた。舞台の四隅に立っている副審も口々に「あいこ!」と叫んで両手を挙げる。

 K国装甲車のオペレーターが
「第一回戦、あいこです。H−22回路へのライン接続を設定。敵個体が次に出す手の推定モードに入ります」
 と、無線の向こうの中央情報司令部に向かって報告する。
 上空を飛んでいる警戒管制機もまさに「戦場のような」忙しさになっている。衛星「テプティン」が送ってくる情報を総合して中央情報司令部に送る。その中央情報司令部では巨大ないくつものスクリーンを見つめながらK国軍の首脳達が戦略会議に入っていた。彼らの戦略では最初は「あいこ」になるのが望ましかった。つまりここまでは彼らの戦略通りに事は進行していることになる。そしてここからが本当の戦いであるとK国軍首脳部の面々は思っている。K国軍総力を挙げて次に出す手の選定に入った。

 舞台のそでで見ていたイソザキは「あいこか。まず上々の出だしです」といってスコア表に書き込む。その隣のスズキモトは「むう」といって腕を組む。フミオに対して何のバックアップもしてやれない彼らに出来ることはこのくらいであった。不安そうに彼らの方を見たフミオに対しイソザキは「良い感じです」と言って手を振った。

 一回戦を終えたK国代表はK国が用意した椅子に腰掛けて荒い息をはいている。K国のドクターや技術者が彼の周りで身体の機能や状態をチェックしている。フミオはそれを見ながら手持ち無沙汰にしている。
 ふいに審判が「二回戦!」と怒鳴った。K国の代表は首の関節を鳴らしながら舞台中央まで歩いてくる。フミオは一回戦が終わったときのままの場所にずっといるので改めては動かない。

審判が叫ぶ。「二回戦、用意!」

「じゃ〜んけ〜ん」
そして同時に「ポン」。

フミオ  パー
K国代表 グー

 フミオの勝ちであった。
K国の代表はふにゃふにゃとその場にへたりこんだ。それをK国の医療チームと技術者達が引き摺って行く。K国の代表は白目をむいて口から泡を吹いている。
 K国のオペレーターが悲鳴に似た声で叫ぶ。
「二回戦、敗北です!擬似支援モード設定。PPOラインからの接続を完了。敵身体温度36.6度。「テプティン」からの映像を送ります」
 中央情報司令部の巨大なスクリーンにフミオの映像が映る。ネクタイを緩めながら手で顔を扇いでいるフミオが映っている。
 中央情報司令部は混乱していた。戦略会議室の首脳達はスクリーンを見つめながらうなっていた。しばらくして、いくつもの勲章をつけた恰幅のいい将軍が立ち上がった。
「同志諸君!戦いはまだ始まったばかりだ。何を悲観する事があろうか。勝利は我々と共にある!」
 「おお」というどよめきが起こり拍手が起こった。何故か首脳達は全員立ち上がり拍手をする。始めるともなく万歳が始まり、戦略会議室の負けムードは一気に吹き飛んだ。

「やりましたね。一勝です。ナイスですよ」
 イソザキがフミオに声を掛けた。
「このままずっと続くんですか」
「ええ。どちらかが降伏するかどちらかのジャンケン券がなくなるまで、ずっとです」
「敵はどのくらい券をもってるんですか」
 イソザキは手を大きく拡げてみせて「このくらい」と曖昧な事をいう。まだまだ先は長いらしい。

 K国のトレーラーから新しい代表が出てきた。どうやら一人一敗という方式らしい。確かに一度負けると負け癖がつくものである。新しい代表は手続きを済ませて舞台に上がってきた。さっきの代表よりは小柄である。身体中が機械で覆われている。彼は意外にも話しかけてきた。
「フミオさん。あなたは最初にグーを出しましたネ。そして次はパーです。と、なると次に出てくるのは何でしょうネ。興味ありますネ」
 成程。心理戦か。フミオは奇妙な笑顔で微笑んでいるK国の代表にぎこちなく微笑みかえす。その反応を受けてK国代表の身体中の機械が一斉に動き出した。
 K国の装甲車のオペレーターはK国代表に情報を送る。
「T−30回線接続。R34より推定処理モード起動。敵身体温度36.9度に上昇。ただ今より自動追尾システムに移行します」
 中央情報司令部のスーパーコンピュータが一斉に動き出した。このスーパーコンピュータは第二次中東ジャンケンの時に投入された最新式の物である。
 K国代表の胸についている青い発光体が点滅する。K国代表の身体中の機械は駆動音をより一層大きくして動き続ける。フミオはポカンとその情景を見ている。
 K国代表の身体中の機械がピタリと止まった。
「わかりましたよ。あなたは次にグーを出しますネ。私わかりました」
 フミオはポカンとした顔でそのまま笑顔を作った。
 審判が怒鳴る。「三回戦。用意!」

「じゃ〜んけ〜ん」「ポン」

フミオ  グー
K国代表 チョキ

「うわああ」と情けない声を出してK国代表が後ろに倒れた。フミオは言った通りにグーを出したのにと半ばあきれている。
「さすがですよ。フミオさん。すごい読みですよ。すごい駆け引きですよ」
 イソザキが柄にもなく興奮している。

 そしてフミオは勝ち続けた。これでもかというくらい勝ち続けた。その度にイソザキの「ナイスですよ」という声がとんできて、K国側は悲鳴をあげた。K国の代表達は泣き叫び、発狂する者、卒倒する者、発作を起こす者が続出した。もはやK国の敗色は濃厚になったその時、中央情報司令部の戦略会議室に詰めた首脳達はある結論を出した。
「あれを投入しよう。」
「あれって、まさか…あれは最終決戦用だ。この戦いでは使用できない。」
「いま使わなかったらいつ使うというんだね。今がまさに最終決戦ではないか。あれを使わずに停戦を申し込む事などできるか」
「そうか、そうだな。そうするしかあるまい」

 K国の領内から砂煙を上げて装甲輸送陸戦艇が近づいてきて停止した。
 巨大な装甲輸送陸戦艇の後部ハッチが空気の抜ける音とともにゆっくりと開いた。中から七人の巨大な人影が現れた。顔の部分に赤い光が光っている。七人はゆっくりと舞台に近づいてくる。
 イソザキとスズキモトの顔が見る見るうちに青くなる。
「あ、あれは、なんと、すでにあれが開発されていたとは。情報ではまだ実験段階だと」
「コードネーム『七人の巨人』、世界のじゃんけんの戦略を根本から覆すというあれですか」
 すでに背広を脱いでワイシャツ姿になったフミオは舞台から声を掛けた。
「だってじゃんけんは一対一でやるんでしょ。なんで七人もいるんですか。」
 その声にスズキモトが答えた。
「そんなことK国に聞いてくれ。それよりまずい事になった。」
 イソザキがスズキモトに言う。
「フミオさんを信じましょう」

 フミオはワイシャツの腕をまくりながらその七人を見ていた。その巨大な七人の内の一人が舞台に上がってくる。真っ黒い身体の頭部に赤い光が無気味に光っている。審判の頬を汗がつたり、イソザキとスズキモト、いや全世界が固唾をのんで見守った。フミオはのんきに首のあたりを掻きながら「今日は帰ったらビールを飲もう、いや買い置きなかったな、コンビニで買って帰らなきゃ」とか考えている。
 審判の「用意!」の声が辺りにこだました。

終わり


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