へ〜んしん!2
フォースレンジャー篇

作:真下マヒロ

 目覚めるとフォースイエローになっていた。
 喫茶店「フォスレ」の地下にある秘密基地には最新の設備がそろった手術室がある。その手術室の中央にある手術台に私は横たわっていた。
 手術台から起き上がった私は、元特殊部隊の格闘技技官であり、元地球防衛隊の司令官でもあり、工学と医学と化学の博士号を持っていて世界科学技術アカデミーの理事でもあり、フォースレンジャーの生みの親でもあり、さらには喫茶店「フォスレ」の陽気なマスターでもある座花源兵衛氏と握手をした。
 座花源兵衛氏は「成功だよ。これで君もフォースレンジャーの一員だ。世界の平和の為に頑張ってくれ給え」といって両手で私の手を握り返した。
「頑張ります」といって手術台から降りようとした時に、自分の左手につけられた腕時計が目に入った。
 座花源兵衛氏が説明を始める。
「それがフォースレンジャーの証、超理力増幅機、フォースウォッチだ!」
 こんな大きい腕時計をしていたらすぐにフォースレンジャーだとばれてしまうような気がする。しかもご丁寧に黄色い文字で『F』とか書いてある。たぶんフォースイエローだから黄色い字なのだろう。説明によるとコレは変身用装置であり、通信機でもあり、火炎放射器でもあり、小型ミサイル発射装置でもあり、レーダーでもあり、さらにはアラーム付き時計でもあるそうだ。これだけでも悪の秘密結社『へッカー』に勝てそうだ。
「では地上にフォースレンジャーのメンバーが待っている。行こう」

 喫茶店には4人の若者が待っていた。男3人に女1人。皆、細身で眼光が鋭く、心持ち口が微笑んでいる。かく言う私もそういう顔立ちである。
「君がフォースイエローかい」とキレのある動作で握手を求めてきた男は赤い服を着ている。活発な性格のようだ。元レスキュー隊員だそうだ。
「宜しく頼む」と斜に構えて握手を求めてきた男は青い服を着ている。冷静でニヒルな性格らしい。元警察官だそうだ。
「ま、お手柔らかに、よろしく頼みますわ」と関西弁で握手を求めてきた男は緑の服を着ている。陽気な性格らしい。元自然保護監視員だそうだ。
「よろしくね」と上目遣いで握手を求めてきた女はピンクの服を着ている。女の子らしい性格らしい。元国連職員だそうだ。
 私は、それぞれに対して丁寧に「宜しくお願いします」と握手をかえした。多分服の色がそのままフォースレンジャーのカラーなのであろう。かく言う私も黄色い服を着ている。
「世界の平和を守るんだ!」
 多分フォースレッドであると思われる赤い服の男がそう高らかに宣言した。雰囲気的に同調しておいたほうがよさそうなので一緒に「おう」と片手を振り上げた。

 一同解散したあと、緑の男が近寄ってきた。フォースグリーンであろうと思われるその男はさっきとは打って変わって妙にテンションの低い押し殺した声で言った。
「とりあえず、変身のポーズを決めんと」
 何を気にしているのか誰も見ていないのに辺りを見まわしている。
「変身のポーズ?この腕時計で変身できるんじゃないんですか?」
「まあ、そうやけど、あれやし。決まりだから」
「はあ」
「まあ、そのうち、ここのやり方も分かってくるやろ。それまでは言う通りにやっといたらええねん。なっ。」
「はあ」
「あとで地下の特訓場にきてくれるか」
「はあ」

 地下の特訓場はあまり広くも無いリノリュウムばりの部屋だった。ちょっと大きな会議室といった感じである。隅のほうに大きな機械が置いてある。
「あれ、何ですか?」
「ああ、あれか。あれはいろんな状況をこの部屋に創り出す装置。今は使ってないから。今必要なのは鏡やな」
 といって隣の物置き場みたいな所から大きな鏡を持ってきた。
「あれやな。前のフォースイエローの振り付けをちょっと変えるくらいでいいわな」
「前のってどんな感じだったんですか」
「ああ、ちょっとノート持ってくるから待っといて。ノートに全部載っとんねん」
 といって物置き場に入っていった。
 暫くごそごそと音がしていたがその音の中から声が聞こえてきた。
「突然、変な話するけど、ピンクには手だしたらあかんで」
「は?なんですか?」
 ダンボールを一つ抱えてきたフォースグリーンはそのまま話を続けた。
「ありゃ、いまレッドとブルーで三角関係やから。いま兄ちゃんが割りこんだらエライ事になるから。おとなしゅうしといた方がいいよ」
 フォースグリーンはダンボールの中から1冊のノートを探し出し、私の前に突き出した。私はそれを受け取るとページをぺらぺらとめくった。あまりうまくも無い絵で振り付けらしきものがびっしりと描かれている。
 フォースグリーンはさらに続けた。
「わしら緑や黄色はたいして女にもてへんねん。ええ所は皆、レッドとブルーがかっさらっていくねん。兄ちゃんが来る前にイエローやってた子も、それが嫌でやめたんだから」
「アメリカに留学じゃないんですか?遺伝子科学の研究で引き抜かれたってききましたけど」
「そりゃ、表向きの話。わしら給料も貰わんと、さんざん身体張って闘って、その結果、怪我しても労災もおりん。あげくの果てに女にもてんのじゃあ、割りあわん。クラブやスナックとか飲みに行った所で自分がフォースレンジャーだって事も言われへんのやし。見かえりがないねん。100メートル3秒で走れても、全然、嬉し無いんじゃ。そんなの実生活じゃ使えんもん」
 反応がない私の様子を見て、フォースグリーンは「まあ、そのうち解るわ」といって私の持ったノートをぶん取り、「他の隊員とかぶらんようにせんと。後で問題になるから。じゃ、やるか」と首をこきこきと回した。

 一連の振り付けを何とか憶えた頃、フォースグリーンが「今日はもうええやろ。かえろか」と言った。いいかげん疲れていた私は「そうですね」と同調した。
「よっしゃ、今日はワシん家で一杯いくか?」
 妙に景気よくフォースグリーンが自分の顔をぴしゃりと叩いた。
「そうですね。お邪魔します」

 フォースグリーンの家は喫茶店『フォスレ』からほど近い住宅地にあった。一軒家で両親と暮らしているらしい。表札に「緑山」とあった。
 フォースグリーンの部屋に通された私はいろんな賞状やトロフィーを見せられた。どうやらコレを見せたかったらしい。
 そこに母親らしきおばさんが入って来た。ビールを持ってきたようだ。
私は「どうも、御邪魔してます。黄川といいます」とペコペコした。
「何にもないけど、ゆっくりしていってや。黄川さんはやっぱ、あれですか?難しいお仕事してらっしゃるんですか」
「ええ、まあ」
「えらいわぁ。ウチんのは、折角自然保護の仕事してたのに、何で辞めたか。黄川さんは…」
 そのおばさんは私に色々質問しながらテーブルの上にビールを置いた。
 フォースグリーンがその様子をイライラしながら見ている。
「はよ行けや」
 おばさんはその声に「こわいこわい」とおどけながら部屋を出て行こうとした。
「それじゃ、ゆっくりしていってや」
「どうも」
 部屋を出て行くおばさんが急に振りかえってフォースグリーンに言った。
「あんた、緑の服ばっかり着んと、たまには違う色も買ってこんと。いつも同じ格好してたら女の子、誰も相手してくれへんで」
「うっさい。これでいいんじゃ。余計なことぬかすな」
「黄川さんはあんたと違って明日もあんねんから。あんまり迷惑かけんなや」
「わかっとるわ、早く行け」
 フォースグリーンは「ほんま、うっさいわ」と言いながらビールの栓をぬいた。
 しばらく私は飲みながら彼の愚痴めいた話を聞いていた。そして話が一通りおわって間が出来た時に訊いてみた。
「私、思うんですけど、キックを放つ時に『フォースキック!』とか言っちゃったら、敵にばれちゃうような気がするんですよ。『ああ、次、キックが来るんか』って。だから何にも言わない方がいいんじゃないかって」
「それじゃ気合が入らんやんけ」
「それじゃ『おおお!』とか『やー!』とかでもいいんじゃないですか?」
「まあな」
 フォースグリーンはそれ以上、その事について答えようとしなかった。
 そして私はおばさんに引き止められたり、御土産を持たされそうになるのを何とか断り、漸く10時ごろフォースグリーン邸から脱出することに成功した。

 引っ越してきたばかりの自分のアパートに戻ると、部屋に送られてきていた引越しの荷物も解かずにごろりと横になった。
 改造されたせいか、妙に興奮して寝つけなかった。身体中に力がみなぎっているといった感じである。何とかしなければどうにもならない。天井の木目を見ながら自分の懐事情を思い起こして見る。国立生物科学研究所を退職したときに貰った退職金が振りこまれているはずだ。つまり、多少羽目を外してもいいだけの軍資金があるという事である。私は早速布団から飛びあがり着替えると行き付けのイメクラ『第11通学区』に走った。
 このイメクラは繁華街にある。普通の良心的なイメクラだ。学生時代に友達に連れられてやってきてから、金のある時はここと決めている。私は数あるメニューの中でも「体育教師と体操着女子生徒」がお気に入りである。特に用具置き場の部屋の出来は秀逸である。いつもの様に入ってミサキちゃんを指名しようとしたが、この前見たメニューに「正義の味方」というのがあったのを思い出した。店員に「『正義の味方』って、いつもやっているのはどの子ですかね?」と聞いてみた。慣れていない子にやってもらっても、ぎこちなくて、ただのコスプレになってしまうからだ。そこらへん、ぬかりはない。
「エミちゃんです。ちょうど今、あいています。」
 私は「じゃあ、その子で」といって、メニューを見ながら「正義の味方を監禁する怪人」という設定でやることに決めた。私が怪人役である。
「エミでーす」と出迎えてくれた女の子は写真どおりの女の子であった。とくに可愛いとも思わないがそれはあまり問題無い。問題は内容である。行為の最中はどうせマスクで顔は見えないのだ。
 殺風景な普通の部屋に椅子があり、パイプベッドがある。手錠もあるし縄もある。なかなかよさそうだ。
 エミちゃんは思ったより本格的な格好をしている。まさにフォースピンクである。
 彼女は「これ着ます?」と『ヘッカー』と描かれた黒のTシャツを渡してきた。
 諸処の準備を終え、エミちゃん扮するフォースピンクをベッドにロープで縛りつけ、黒い帯でマスクの上から目隠しをした。これでエミちゃん、いやフォースピンクからは私の姿は見えない。そして渡されたTシャツを着こみ、さあこれからという時に、廊下の方からガタガタと音が聞こえてきた。
 ドアの向こうから悲鳴のようなものが聞こえる。これもアトラクションの一つなのだろうか。もしかしたらこの「正義の味方、怪人プレイ」の演出かもしれない。なかなか凝った演出をしてくれるものだ。と思っているときにドアがガタガタと音を立てた。さらに盛り上げてくれるのだろうか。何かのサービスがあるのかもしれない。見ているとスッとドアが開いた。そこには完璧なコスチュームの『ヘッカー』戦闘員が立っていた。
「おお、本格的ですねェ」と感心していると、その戦闘員が何人も雪崩こんでくる。狭い部屋が戦闘員でいっぱいになった。
 そして最後に怪人のような者が入ってくる。あれも作ったのだろうか。すごいイメクラも有ったものだ。友達皆に教えてやろう。するとその怪人が戦闘員をかき分け、前に来た。
 その怪人は右手が鞭になっている。上半身が棘だらけで見るからに毒々しい格好である。
「私の名はバラローズ」
 そして私を指差しながら言う。
「貴様が新しいフォースイエローか?」
 そして身構えた。
「私の毒鞭攻撃を受けて見よ!」
 それに対して目隠し状態のエミちゃんが「あのー。そういうのは苦手なんですけど」と答えた。
 バラローズと名乗った怪人は私とベッドで縛られているエミちゃんを見比べながら「ほんとにお前がフォースイエローか?」と念をおした。
「私がフォースイエローだと知っていると言う事はまさか本物か?」と思いながら、私は覚えたての変身ポーズの最初である両手を交差させるポーズをとった。
 そして私は「貴様等、ヘッカーだな?」と見たらすぐ分かる事をなぜか言ってしまった。
 自分の着ている黒いTシャツにも『ヘッカー』と描かれているが、この際関係無い。
 私はキレの有る動きで変身のポーズをして(二箇所振りつけを間違えた)最後にフォースウォッチの『F』という字を押した。自分の身体が光りに包み込まれ、その数瞬後には変身が完了していた。
「フォースイエロー見参!」
 見参もなにもずっとここにいたのだが、決まりなので言ってみた。そして通信機にもなるフォースウォッチで緊急信号を出した。これで数分後にはメンバーがここに駆けつけるであろう。
 狭い部屋で戦闘員達と戦うのは不利だと思い、「こっちだ!」と叫びながら廊下に出た。ぞろぞろと戦闘員達がついて来る。
 廊下で店員にばったり会った。店員は私の格好を見て「御客様、コスチュームの持ち出しは出来ない事になっているのですが」とこわばった笑いをみせた。

 イメクラを出たすぐの道路で戦闘員達と闘った。深夜の繁華街ということもあって人通りが多く、「危ないから近寄らないで下さい!」と叫んだ。が、酔ったサラリーマンなどがフラフラと近寄ってきて「あんちゃん、フォースレンジャー?俺の家に来てくんない?子供が喜ぶから。五歳の長男がファンなんだよ。なんだったっけ、あれ。フォースなんとかっていう腕に付けるやつ、あれ買わされてさぁ、押すとピポピポいう奴」と私の背中をバンバン叩く。
 それを無視して走って繁華街を抜け、外れにある公園に出ようとした。走っている最中、ふと、後ろを見た。ぞろぞろと戦闘員がついて来る。最後尾にバラローズがいるのが見える。あまり走るのは得意でないらしく、ドタドタと息を切らしている。このまま走っていれば勝てるのではないだろうか。なんせ私は100メートル3秒で走れるのだ。
 しかし、そのスピードで走ると後ろが付いて来れないのでペースを合せながら走った。

 公園に出た。街灯がポツンと点いている。その明かりの下に変身したフォースレンジャーのメンバーがいた。
 私はそのメンバーに合流し、戦闘員達に向かって身構えた。
 私達は戦闘員達に囲まれた。最後にバラローズが到着し「皆の者、かかれぃ!」と右手の鞭を振りまわした。
 戦闘員というのはこんなに弱いものなのだろうか、特に力を入れている訳でもないのにひっくり返ったり、回転して吹っ飛んだりする。戦闘員が地面に落ちると何故か爆発が起こる。その爆発のほうが怖い。
 手早く戦闘員を片付けると一人残ったバラローズが「おのれ!今日のところは退散だ!」と叫び、煙と共に消えた。あんな技が使えるならさっきゼエゼエ言いながら走らなくてもよかったのに。

 後に残った5人は御互いの健闘を称えあうように頷きあった。その中で、フォースグリーンだけが私に近寄ってきて、小さな声で言った。
「えらい所でえらいことをしたもんやな。まあ、気持ちはわかるけど」
「何がですか」
「わしら一応、正義の味方やで。ちびっこのヒーローやで。イメクラはいかんがな。まあ、たまには御忍びで行ってもええけど、そこで怪人と戦ったらいかんわ。しかも夜やで。夜はあかんねん。」
「だって、向こうから来たんですよ」
「だからいつも気を張っておらんと。次からは勘弁してや」

 次の日の朝、喫茶店「フォスレ」で作戦会議となった。出席者はフォースレンジャーの五人と座花源兵衛氏の6名である。会議といってもバラバラにカウンターとか座席に座っているだけである。
「バラローズか。許せん!」とフォースレッドがコブシで自分の膝を叩きながら言った。
「今度は何処にいったい現れるんだ」とフォースブルーが言った。次は宅地の造成地だろうと思ったが言うのはやめておいた。
「街で聞き込みだ!」
 突然、フォースレッドが雲を掴むような事をいったが皆それに「よし」とか「わかった」とか言っているので私も「オッケー」と言っておいた。どうもそれで決定らしい。

 街で訊きこみをしている時にきゅうにフォースウォッチがピポピポと音を立てた。通信が入ったようだ。
「バラローズが現れた!」座花源兵衛氏の声である。
 場所は結局、なんだかんだいって、やはり宅地の造成地であった。訊きこみに半日潰した理由がわからない。
 その場所の中央付近にヘッカー戦闘員とバラローズが並んで待っていた。
 我々フォースレンジャー五人は丘の上でその様子を確認した。黙って、そうっと覗きこんでいるほかのメンバーに「このまま、後ろに回ってレーザーで始末しません?」と提案してみた。
 フォースグリーンが私の肩を叩いて「まあな」と意味不明なことを言った。結局そのまま、私の提案は無言のうちに却下された。
 とうとう、このときがやって来た。変身のポーズとそれに続く登場のポーズである。我々は並んで丘の上に登場した。戦闘員とバラローズが見上げている。何故か攻撃してくる様子はない。
「フォースレッド」
「フォースブルー」
 そいて私の番である。振り付けを思い出しながら「フォースイエロー」と叫んでポーズを決めていった。最後のポーズが決まった瞬間に、やり遂げた達成感と少しの侘しさが私を包み込んだ。
「フォースグリーン」
「フォースピンク」
「五人合わせて、フォースレンジャー!」

 我々は一斉に飛び降りると戦闘員達の前に立った。やはり今回も、戦闘員達は弱かった。こんなに弱いなら戦闘員を出す必要はないだろう。
 泡になって消えてしまった戦闘員達のあとにバラローズだけが取り残された。
「フォースレンジャー、この毒鞭を受けて見よ!」
 いつのまにか鞭が5本に分かれている。
 バラローズは右手の鞭を振りまわす。と、どうした事だろうか、さっきまであれほど強かったメンバーがその鞭に絡め取られてしまった。かく言う私も絡めとられている。
「くそう、フォースイエロー、あの技を使うんだ!」
 フォースレッドが私に向かって叫んだ。あの技とはなにかよく分からなかったが、鞭に絡めとられている割りに私の右手は自由だったので、適当に「フォーススクリューパンチ」と叫んでみた。振り付けの時ノートの隅に書いてあったのを思い出したのだ。すると私の周りが光りパンチの光りのような物がバラローズに向かって飛んで行った。
 そのパンチを受けたバラローズは「うお」を叫んで、我々の身体に巻きついている鞭を簡単に解いた。このバラローズ、もしかしたら実は結構正直者で良い奴かもしれない。だが今はそんな事を言ってられない。
 我々フォースレンジャーは五人一斉に「フォースキック」と叫びながら飛びあがった。バラローズはそのキックを身体の真正面に受け、よろめいた。
「おおお」バラローズがうめく。
 そして我々フォースレンジャー五人はバラローズが爆発するのをただ黙って見ていた。

「フォースレンジャー!」
 突然、女性の声がした。
 大きな胸がまぶしいレオタード姿の女性が丘の上に立っている。
「あれはアシナガバチ女!」
 フォースレッドが叫んだ。
 アシナガバチ女は私達の方を指差しながら言った。
「今度会った時は容赦しないよ!」
 そしてその大きい胸を揺らしながら去って行った。あの一言を言いたいが為にきたのだろうか。ご苦労なことである。
「くそう。ヘッカーめ、必ず倒してやる!」フォースレッドがコブシを握り締めて叫んだ。この人はどうもコブシを握り締めて叫ぶのが癖らしい。

 そして、すでに時間は夕暮れである。
 我々フォースレンジャー五人は走っていた。
 背中の遥か後方には大きな夕日が出ている。
 その夕日を背中に走りながら私は、「今度イメクラで『アシナガバチ女とフォースレンジャー』プレイを注文しよう」とか考えていた。

 …ところで我々は今どこに向かって走っているのだろうか。

終り


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