質問38 「蒼ざめた犬」「風のように」(『幻影』より)

 「蒼ざめた犬」はテンポ速めの160で勢いがあるんで、嵐のように去っていく傾向があるんですが・・。どうなんでしょう。「風のように」の81小節からの言葉が入り乱れるところですが、アルト上の「ギタアひきは」を一番強くというか、前のリズムを引き継いでるのでわりと大きめに歌ってるんですが、他のパートとの音量的なバランスはどうなんでしょう?そして最後145小節目からのハミングは、やはし147アタマまではキッチリfでいくべきでしょうか?                     

アサミ  他

解答 

 「蒼ざめた犬」はセリフが不思議な魅力をもっているので、音楽にうまく言葉をのせて歌うことが大切です。出だしのピアノ前奏が全曲の雰囲気を作ってしまうので、固めの音色で、タイトにリズムを刻んでください。テンポは四分音符160ですが、この曲は二分音符一拍ともいえる曲なので、けっして嵐のように速くはならないはずです。シャープな音楽ですが、テンポは暴走しないように気をつけましょう。必要以上に速くなると、言葉を発することに一杯で、肝心の音が飛んでしまい、子音ばかりが目立つ貧相な演奏になってしまいます。

 合唱って遅い曲はより遅く、速い曲はより速くなる傾向がありませんか?私の曲の場合特に、遅い曲はフレーズを歌うタイプのものが多いので、長いフレーズを山に向けて巻いていく(気持ちを高めていく)上でじりじり速度もアップさせないと音楽が締まりません。だから曲頭のテンポ設定はあくまで開始時の参考テンポでしかないわけで、フレーズの流れに添ってテンポが揺れるのは当然のことです。
 
一方速い曲、もしくはシャープな曲調のものは、テンポの刻みを固定し、安定したリズムパターンの上で音楽が展開していくので、テンポは最初から最後まで固定しないと音楽が不安定になります。ポピュラーでドラムの刻みが入る場合はほとんどテンポ固定型ですね。テンポを固定するというのは理屈では簡単ですが、慣れない場合興奮するとかならず暴走しがちです。いかなる場合もテンポ・キープするにはリズム感を鍛えておく必要があります。

この二つがどうやら逆になりがちなんですね。遅い曲は指定テンポのまま固定して歌うのでフレーズの流れが停滞しどんどん間延びする・・。速い曲は気分の盛り上がりに連動してテンポも限りなく速くなってしまう・・と。最初にどちらのタイプの曲かよく見極めてから、その曲のタイプに合った練習をするようにしましょう。

 「風のように」は幻想的な長いストーリーを持った詩なので、まずその世界をよく味わってください。ピアノの音型はギターを意識したものです。
全体に対位法的で、特にクライマックスでは三声がかなり絡み合うので、響きや言葉が不鮮明にならないよう気を付けましょう。またどうしても深刻に重々しくなりがちですが、透明感と軽やかさを失わずに演奏いただけるとうれしいです。

 ご質問の81小節ですが、Sopの保続音の下でMezzoとAltoが掛け合いをやります。Alto「EHRG」(ギタアひきは)だけ強くしては立体感がでないので、Mezzo「GDCH」(しらんかおして)も同等に引き立たせて歌って下さい。こういう複雑かつ立体的な曲では音量バランスは非常に大切です。いい視点のご質問だと思います。
 そして145小節目からのハミングですが、146小節頭からすでにdim.が始まっています。poco a pocoと書いてあったら、最初のpocoの場所から少しずつdim.をはじめてほしいということです。

2003.6.26