質問18 「光と風をつれて」でのテノールの扱いは?

 「光と風をつれて」の楽譜の前書きに書かれていること以外に、何かアドバイスみたいなものを頂けますでしょうか。特にTen.に対して頂けますか。というのは、うちのTen.事情が厳しいのが一つ。(うちのTen.には背水の陣をひきました)それと、どの曲をみてもそうなのですが、先生の曲には必ずTen.の存在が無視できないようになっています。Ten.のパートソロを作ったりするなどして、Ten.が失敗すると音楽自体が崩れてしまうような印象を受けます。先生ご自身がTen.というパートをどのように捉えていらっしゃるのか。なぜそんなにTen.を際立たせるのか。もし良かったら教えて頂けますか。

大阪府 T.F.

解答
 この質問は、質問者の方から二度の催促をいただいてようやくここにお答えすることになりました。大変お待たせいたしました。実はこの質問以前にいただいて順番待ちになっている質問が山積みだったもので・・。たいへん申し訳ないとは思うのですが、時間のない中で返事を書こうという気になるのは、やはり質問者の方が、作品に深く接してよく内容を理解し、核心をついた質問をしてくださる場合です。でもそう言う質問はあまり多くありません。反対に多いのは、「『ティオ』の演奏上の注意点は?」といった、漠然として要点を絞りにくい質問です。こういう質問は、だいたい練習を始める前に、作品を知る前に聞いてくる場合が多く、質問者本人が、実は、何がわからないかもわからない状態であることが多いのです。冷たいようですが、そう言う場合はお答えしないことが多いです。厳しい言い方かも知れませんが、答えを書きたいと思わせるような、具体的かつ要点を絞った質問をお待ちしております。

 さて今回の質問ですが、学指揮の悩みがよく伝わってきます。ただでさえテノールが少ないのに、どうしてよりによってそのテノールを目立たせるのかというお腹立ちですね。しかしそう言われましても・・。必ずTen.の存在が無視できないようになっています。Ten.のパートソロを作ったりするなどして、Ten.が失敗すると音楽自体が崩れてしまうような印象を受けます。とのことですが、アンコール・ピース用のシンプルな無伴奏合唱でもないかぎり、4部合唱である以上4声とも同格です。どの声部だってメロディを担当し、対旋律を担当し、ハーモニーの支えに回り、リズムを刻んだりもします。それが、4声で演奏する醍醐味だと思うのですが。とりわけ混声の場合、男声と女声の音色の対比が聞かせどころとも言えるわけで、高音担当のテノールが目立つ動きを担当するのは当然ともいえるのです。せっかく歌うのなら、ときどき目立ったほうが気持ちいいではありませんか。それに、「光と風をつれて」のテノールはそう音域が広くないので、他の私の混声作品よりは随分楽に歌えるはずですよ。シンプルな譜面のわりに音が取りにくいのは、木下作品の宿命ということであきらめていただくしかありません。その分コードが洒落ているということで・・。音が取りにくい時は、メロディで取るより、ハーモニーごと感じるようになさってみてください。

2001.5.30