質問13 自分に適した声部をどうやって判断するか?
(複数の人から掲示板に書き込みのあった質問です。)

解答
 最近歌曲を立て続けに作曲したこともあって、声楽家のリサイタルをよく聴いているので、この質問に大変興味を覚えました。いろいろ専門家にもお話うかがってみましたので答えというより、参考意見として、お読み下さい。

 正直な感想からいうと、プロの現場における声部の分類は、案外とアバウトなのだということでした。合唱のように便宜上きっちり三声部に分類しなくてはならないのと違って本人の声を少しでも引き立てる選曲をするための分類ですから。学生の時、現代日本歌曲の歌い手として有名なS先生から習ったのは「声部の分類は本来音域ではなく、声質によるものだ。」ということでした。とはいえ、上のFも出ない声ではいくら声質がソプラノだとしても、ソプラノ用の曲は歌えないですし、低音のでないアルトというのも、困るわけです。当たり前すぎますが、声質プラス音域で判断するのが一般的なようです。

 日本には、本当のアルトは大変少ないようですが、では、ソプラノと、メゾなどの区別をどうつけるか・・。メゾの方がやや声が深めで音域が少し低めということでしょうが、音域は個人差が激しいですから一概にはいえません。メゾ用の曲でも上のCまで出てくる曲もありますしね。このあたり、かなり微妙です。歌の勉強を始めたときはメゾだったけれど、留学したらソプラノに転向させられたとか、女の先生のときはソプラノだったのに男の先生になったらアルトに代えられたとか、先生からはメゾをやれといわれているが、あくまでソプラノにこだわるとか、ソプラノ歌手としてプロ活動していた人が、しばらくしてメゾに転向した、なんて、いろいろ見聞きします。まあ最後の例は、声質はソプラノなんだが、だんだん高音が出なくなってきて苦しいから、メゾの音域で歌うようになったという必要に迫られてのことでしょうか。

 音大の受験で、たとえば東京芸大などは、入試のときからソプラノとアルトに分かれていますが、ソプラノと2分するほど、日本にアルトが存在しているのか、ちょっと不思議な気もします。声楽家のI先生やT先生によれば、本格的に声楽を勉強し始めて十年くらいしないと、声は本当に定まってこないし、その後もそんなにきっちり分類する必要はないとのご意見。フランス歌曲のスペシャリストM先生によると、声帯専門のお医者さんに見てもらえば、だいたいその人間の声部はわかる。声帯の長短で声域の高低は決まってくるから、との科学的な見解。そりゃそうですね。

 私などからみると、日本女性の声は、声質で分類すれば、ソプラノが圧倒的に多いけれど、ソプラノといったって千差万別。実は一人一人全く違う楽器という気がします。だから、ソプラノ向きの曲という漠然とした書き方より、歌手のAさんの声のために書く、というターゲットを絞った書き方のほうが、魅力のある作品ができそうな気がしますね。

 ちなみに合唱の場合、某指揮者の弁では、ソプラノは高音が出る人、アルトは高音が出ない人、メゾはピッチの正確な人を振り分けるとのことでした。なるほど。

2000.12.25