グリッサンドとポルタメントの違いは?

 グリッサンドとポルタメントの定義は音楽書の種類や出版社、あるいは音楽家によって認識がかなり異なるんです。木下先生はどのように分別していますか。また「二十億光年の孤独」でのグリッサンドはどのように表現するべきだと思いますか?

 Arki〜アーキ〜 福岡県

解答 

 私の認識ですが、グリッサンドは原則として指定された音程間のすべての音を連続してなめらかに奏することで、指示された音程を指示された時間内に均等に奏することが求められます。一方ポルタメントというのは、楽器の音程跳躍時に生ずる偶発的な現象を強調したものだと思います。たとえばバイオリンのポジションを変えるとき、声楽でメロディを跳躍するときなど、音を移動する過程で音をひきずる現象が起きやすいですね。これが軽度のポルタメントで、普通はそうならないように配慮するわけですが、あえてそれを強調したものがポルタメントということになります。

 私の曲でいうと、「二十億光年」での長いグリッサンドは「指示された時間内に指示された音程間のすべての音を連続して均等になめらかに移行する」ことで宇宙空間の広がりを表現していますし、「方舟」冒頭のポルタメントは、音程跳躍時の音をひきずる現象を強調することにより、勢いよくなだれ込む効果を出そうとしたものです。

 ときっぱり書いてみましたが実際は、合唱に限らず弦楽合奏などでも、長いグリッサンドを指定した場合、かならず奏者によって微妙な奏法の認識の違いがでます。さしあたって私の曲を演奏なさる時はぜひ上の定義で演奏してみてください。

2004.11.2