ヲ01年2月8日
小劇場オペラ
「賢い女」

 会場 新国立劇場小劇場

 本当ならこの日、オーチャードホールで「ファウスト博士」を見ようと思っていたのだが、どうしたわけか急にもっと軽いものが見たくなって、たまたま同日やっていた小劇場オペラ「賢い女」に出掛けてしまった。あんなに「ファウスト博士」楽しみにしていたのに・・気まぐれな私。でも新国立劇場の小劇場オペラシリーズは、今とても人気があり、直前にチケットが取れたのはラッキーだったようだ。シンプルな装置、少人数アンサンブルによる伴奏とはいえ、今どきオペラがたったの4,200円で見ることができるのは魅力。この日は7日から10日までの4日公演の第二日目であった。

 オペラ「賢い女」は、世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」で有名なカール・オルフがグリム童話「王様と賢い女の物語」を題材に自ら台本も書いた作品。オペラというよりせりふの入る音楽劇というべきか。せりふ部分はユーモアと風刺に満ちた気の利いたもので、これをオルフが書いたのなら作家としてもなかなかのものだ。今回はせりふの面白さを生かすため、せりふだけ日本語、歌の部分は原語で日本語字幕を出す、というスタイルであった。字幕の位置が少々高かったせいか、舞台と字幕を交互に見ていたら首が痛くなってしまった・・ヤレヤレ。

 打楽器をふんだんに使った土着的エネルギー溢れる音楽は相変わらず魅力的。現代オペラって複雑で観念的でうんざりさせられるものも多いから、現代作品としては意表をついたオルフのシンプルさが人気があるのはよくわかる。でもそのシンプルさはオーケストラでは意味を持つが、ピアノ伴奏にした途端、一挙に単調さが際立ってしまう傾向がある。間が持たない。予告では伴奏に管弦楽と書いてあったので楽しみにしていたのだが、実際はピアノ、オルガンと打楽器だけによるアレンジで、工夫はされているものの、やはり音色の単調さは拭えなかった。400人のホールだから仕方ないか。

 演奏陣(指揮 時任康文氏)はみな好演だったといえるだろう。特に印象に残ったのは三人の浮浪者役(高橋淳・新小田大・篠木純一の各氏)。小ホールなので日本語のせりふもはっきり聞こえ芝居もなかなか楽しかった。途中でたっぷり出てくる男声三重唱や四重唱も聴かせた。オペラでの重唱というと、それぞれの声を聴かせるのが中心でアンサンブルとしてはイマイチなことが多いが、この日はとてもよくハモったアンサンブルで感心した。最近はオペラにダンスを入れるのが流行っているが、今回も例にもれず道化役で三人のダンサーが出てきた。下手をするとオペラの中で浮いてしまうことも多いダンスだが、今回は振り付けの気が利いていて、場面に変化と華やかさも出て、効果的だったと思う。
主役のひとり、王様役の小島聖史氏もプロに混ざり果敢にダンスを披露していた。

 なおこのオペラは全一幕、一時間半の短めのオペラなので休憩時間なしで一気に上演されたが、休憩時間がないのって、何だか物足りないものですね。誰か知人が来ていたとしても、顔を合わせることもできないから、そそくさ来てそそくさ帰るという味気ない観劇になってしまう。休憩時間て、案外大切な意味を持っているのだと気付かされた。ついでにもう一つ。新国立の小劇場ってどうして内壁が黒いんでしょう。小さい上に壁が黒いので圧迫感があって、狭所恐怖症の私は窒息しそう。

 と、文句ばかりいっているが、小劇場でオペラをやるのはとても面白い企画だと思う。特に日本語オペラの魅力を引き出すには、あまり大きいホールでの上演より、言葉や音楽の細かい表情までわかる小ホールのほうが面白いともいえるので、これから日本のオペラもどんどん上演していただきたいと思う。ちなみに次回は原加壽子さんの「シャーロック・ホームズの事件簿」らしい。楽しみなシリーズです。