ヲ01年9月19日
新しいうたを創る会

 会場 サントリー小ホール

 このページ3ヶ月もさぼってしまいました。ここでは、自作品関係の演奏会か、面白い(変わった?)演奏会を取り上げているのだけれど、ここのところ、普通のクラシック・コンサートばかりいっていたもので、なかなか話題がなくて、・・といい訳。

 さて久々に言いたいことたくさんの演奏会が出現。「新しいうたを創る会」の第8回初演演奏会である。全国に会員が600人いて、彼らの会費で次々意欲的な委嘱を行っているらしい。似たようなシステムが合唱にもあるなと思ったら、どうやらこの新作歌曲の会もじつは合唱関係者が中心で行っている会らしい。合唱関係の皆さんて、ほんとに委嘱活動に熱心で感心します。今回だけで委嘱初演作が3つもある太っ腹な企画。プログラムの残り3作もここ2〜5年にこの団体が委嘱して誕生した曲らしい。

 出品者は新実徳英、南聡、一柳慧、北爪道夫、近藤譲、中川俊郎の各氏。ビッグな皆さんがお揃いです。歌い手も美声の実力派ぞろい。太っ腹でビッグで実力派と3拍子揃ったこの企画、きっと熱気のある面白い演奏会だろうと楽しみにでかけたのであった。

 北爪道夫氏の「遊び歌集」のテキストは回文やら早口言葉やら、ことわざ、広告コピーやらを作曲者自身が構成したもので、これがなかなか面白くてコンセプトも明瞭。音楽は非常にわかりやすく聴きやすくセンスがいい。(現代音楽系の人には、調性の曲を書かせると、ぐったりするほどセンス悪い人が時々いるが、北爪氏の作品はいつもセンス良いです)特に「ことわざと」の飄々と人を喰った、シニカルな味わいが好きですね。太田直樹さん(バリトン)の好演もあって、次々こみ上げる笑いを抑えるのに苦労したのに、回りを見回すとみんなしーん、中には眉間にしわよせて聴いてる人も。な、なぜ?もしかしてみんな寝てたの?

 南作品も音楽は意外なほどオーソドックスだがテキストの選び方が風変わりで面白い。しかし本人の解説によると、音楽も古風なだけではなく凝りまくっていろんな細工をほどこしているらしい。凝りすぎてちょっと長いが、お茶目でキュートな作品だった。

 近藤譲氏の作風は一番歌曲を連想しにくかったのだが、案外しっくり馴染んでいて、ゆったり上品な味わい。歌詞の意味はぜんぜん聞き取れなかったが、音楽の響きに(特に伴奏の)身を浸しているのが心地よかった。全体に作曲者の歌曲に対する戸惑いが現れているようでもあったが。

 先回も書いたが、やはり今、現代音楽界のキーワードは「遊び心」らしい。この演奏会でも遊び系が3作品、実に半数を占めていた。歌曲の場合、「遊び心」はもっぱらテキストの選択に発揮されるらしく、音楽はかなり普通である。だからシリアスな作品になるととたんに「昔ながらの現代歌曲」みたいなデジャビュな印象になってしまう。(わーごめんなさい。)とはいって「遊び心」だけで、この先現代音楽は生き延びていけるのだろうか・・。

 人ごとなので書きたい放題。でも考えさせられることの多い、予想以上に面白い演奏会で、企画団体にはお礼を申し上げたい。それにしてもこんなに贅沢な新作演奏会なのに、客席ががらがらだったのは本当に驚いた。400人のホールに100人も入っていない感じ。うーん、せっかく委嘱しても聴く人がいないのではもったいないのでは?