ヲ00年11月8日
大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団
創立25周年記念演奏会「人間について」

会場 カザルスホール

  大阪H・シュッツ室内合唱団は、大阪を根拠地に活発な演奏活動を展開している実力派合唱団だが、ここ7〜8年は、海外公演や毎年秋の東京公演を行うようになって、広くその実力を知られるようになった。実は私も3年前はじめて東京公演を聴いたのだが、そのときはディーリアスやブリテンが素晴らしく、何て充実したアンサンブルだろう、何て軽やかに楽しげに歌うんだろう、と感心した覚えがある。今回は25周年記念ということで、最も定評のある、柴田南雄作品のみのプログラミングとなり、例年より一段と熱のこもった演奏がくりひろげられた。今まで聴いたなかでも最も声の状態がよく、四声のバランスのとれた、密度の濃い素晴らしいハーモニーを聴かせてくれた。

 柴田作品のシアター・ピースは、学生時代から東京混声合唱団などで何度も聞いていたので、正直いまさらとも思ったが・・。これまでずっと「現代音楽の一形態」という、眉間にしわの入った聴き方だったのが、今回この合唱団でのシアター・ピースは、ダイナミックな演劇の一種、上質のエンタテインメントとなっていたのは、新鮮な驚きだった。こういう形態が一般に浸透したせいもあるだろうが、指揮の当間氏の演出力がかなり大きく貢献しているように思えた。

 柴田作品のコラレーションは、たえず保続音がなっていて、難解に聴こえるわりに案外シンプルなのだが、日本音楽も西洋音楽も調性音楽も無調音楽も次々と繰り出して、それをシアター・ピースをはじめとするいろいろなアイデアで、効果的に盛り上げていく手法はさすが。
そういう作品の魅力を、遊び心をもって見事に引き出した演奏であった。