ヲ00年10月6日
三原剛バリトンリサイタル
木下牧子を歌う

会場 高知県立美術館ホール

 この演奏会は、ちょうど一年前に京都で行われた同名のコンサート(主催 ライムライトプランニング)の再演。京都で行ったときには、6ステージ中4ステージが三原さんにとって初演だったうえに、新作「へびとりのうた」が仕上がったのは本番の5日前という過酷な条件下のコンサートだったが(それゆえというべきか)、とても緊張感のあるいい演奏となり、歌にもピアノ伴奏にもほとんどミスが出なかったライヴ録音テープは、ほぼそのままの形でCD(fontec)になった。

 あの折、わざわざ京都まで聴きに来てくれた高知県合唱研究会の皆さんから、自分たちが手はずを調えるからぜひ高知でも演奏して欲しい、という熱い依頼のお手紙を受け取ったのは、演奏会後一週間ほどしてからだったと思う。演奏会を主催するというのは、想像するほど簡単なことではないが、彼らはほんとうに情熱的に奔走してくれ、そのおかげで
ホールは満席、演奏のときは緊張感が張りつめ、トークのときはすごく暖かい雰囲気に包まれるという、理想的な状況で集中して演奏することが出来た。三原さんの歌は、京都の時より更に深まり、前回とはまた違った味わいを作品から引き出してくれたように思う。

 今回は6ステージとも昨年と同じプログラム(1.「三好達治の詩による二つの歌」2.「愛する歌」3.「秋の瞳」4.「へびとりの歌」5.「抒情小曲集」6.「黒田三郎の詩による三つの歌」)であったが、一曲練習するごとにいちいち新しい発見があって、演奏の面白さと深さを再認識したのだった。しかし今頃になってこんなに演奏の魅力に取り憑かれてしまうとは。人生って予想がつかなくて面白いです。

 CDがリリースされたとき、レコード芸術の批評に「いつまでも聴いていたいと思わせる麻薬のような美声」と書かれた三原さんの声であるが、今回も高知で多くの新しいファンを獲得したようである。