ヲ00年7月30日
<東京の夏>音楽祭2000
映画のための音楽 

会場 紀尾井ホール

 毎年面白い企画で夏の音楽シーンを盛り上げる<東京の夏音楽祭>も今年で16回目。
よくネタが尽きないものである。

 今年は「映画と音楽」というテーマでいろいろな出し物があったが、私は30日の「映画のための音楽」に出掛けてみた。“サイレント・シネマ「ギーズ公の暗殺」をオリジナル・スコアのライヴ演奏付で上演する日本初の試み”というのが売りであったが、この映画、なんと1908年の作品だ。そんなむかしから映画は存在してたんですね。もっと驚くのはその付随音楽を書いたのがサン=サーンス。サン=サーンスってそんな最近のひとだったのかと、いちいち素朴な感想を抱く私であった。(注 シャルル・カミユ・サン=サーンス/1835 パリ-1921 アルジェ)

 実際に映画を上映しながらオーケストラの生演奏を付けたのが、「ギーズ公の暗殺」と「幕間」の2作、A.コープランドと武満徹の映画音楽作品は音楽のみが演奏された。

 やはり歴史に残る作曲家というのはとことん個性的だ。もう4人とも、純音楽だろうが映画付随音楽だろうが関係ないってくらいにプンプン個性をまき散らす。すごい。
 独立した音楽としての完成度でいえばコープランド作品に軍配が上がるように思った。一番いわゆる「劇伴」的なのがサン=サーンス(やや大仰なクラシック的オーケストレーションが、その後映画音楽の典型的スタイルになっていったということか)。破格に暗いのがタケミツ作品。(現代音楽の演奏会では、そんなに感じないが。)

 私が一番楽しめたのは「幕間」(1924)ですね。監督・脚本 ルネ・クレール、音楽エリック・サテイ、美術ピカビアによるダダのコラージュ映画である。かなり間伸びした場面も多く、自称前衛芸術家が集まって遊んでいる的雰囲気も漂うが、今見ても感覚が新鮮だ。権威を笑い飛ばす姿勢で、明るくばかばかしく、徹底的に無意味なのが面白い。

小松一彦さん指揮の新交響楽団が熱演。特に弦楽器がいい音を出していた。