17 住環境

 衣食住のうち、わたしがいちばんこだわるのは住である。これは作曲という作業をずっと家の中でおこなうことが大きく影響していると思う。滞在時間が長いだけに、部屋の間取りやインテリア、家具の位置がとても気になるのだ。今住んでいるのは築20年以上のくたびれたファミリーマンションだが、内装は入居時に全面改装した。いろいろな新築マンションの間取りを見て歩いて勉強し、一番住みやすい間取りを自分なりに一生懸命設計して、そのとおりに改築してもらったものだ。インテリアも、壁紙からフローリングの色、家具のかたち、大きさ、色など徹底的にこだわって東京中の家具店を探し回り、本当に気に入ったものだけをそろえた。フローリングの色はパステルグレーオークで、友人に言わせると、全体にうっすら埃をかぶったような色、らしいが、とても好きな色なので、これに合わせて家具もグレイッシュ・ブラウンでそろえた。あまり熱中したので、部屋をすっかり調えるまでの2年間、作曲が手につかなかったほどだ。決して高級なわけではないが、住んで10年近くたつ今も、心安らぐ大好きな部屋だ。それに、仕事部屋の窓からM公園の池と、それを取り囲むこんもりした木々の緑を見下ろすことが出来るのも大きい。2〜3ヶ月作曲で自宅に缶詰め、という場合も、そういう住環境のおかげで平穏を保つことが出来るのだと思う。

 そんな私だから、ホテルにもかなりうるさい。ホテルといっても、仕事などで夜遅くチェック・インし、翌朝はやくチェック・アウトするときは、ごくふつうのビジネスホテルで充分だが、OFFの時に泊まるホテルにはこだわる。こだわるポイントとしては、一に広さ、二にインテリアの高級感とセンス、三にサービス、四に朝食のおいしさ、あたりであろうか。特にバス・ルームがゆったり広々高級、というのがポイント高い。日本のマンションは最近ずい分広くセンス良くなってきているけれど、バス・ルームだけはどういう訳か相変わらずユニット・バスであることが多いので、せめてホテルでくらい優雅な気分を味わいたいのだ。もっとも住環境に満足出来るホテルは、当然ながらものすごく宿泊料が高いので、泊まりたくても滅多に泊まれないのがかなしい現状だが。

 つい先日、作品展の新作を全て書き上げた後に、練習の立ち合いで大阪にいった折、自分へのご褒美もかねて梅田の阪急インターナショナルに泊まったのだが、ここはかなりの満足度だった。インターネット割引で、ツインにシングルの値段で泊まることが出きたし。夜の練習立ち会いまで時間があったので、窓が大きくて気持ちの良いホテルの部屋で、ホテル・メイドのケーキを食べながら本を読んでいたら、ここしばらくの疲れがすーっととれていくような気がした。また泊まりたいホテルだ。

 ちなみに東京のホテルでは、目白のフォーシーズンズ・ホテルがダントツにすばらしいと思う。シンメトリカルな和テイストのインテリアと美しい庭園が最高。

2001.4.4