3 腱鞘炎(けんしょうえん)

 また不健康ネタである。10年前にホームページを始めていればなあ、話題はビリヤードにドライブに、スキーに水泳に、愚かしくも華やかだったものを(その代わり、肝心の 作曲をあまりやっていなかったが)・・・。今は哀しき不健康ネタ、まあ音楽家にとって腱鞘炎は、職業病だから仕方ないか。

 私が腱鞘炎になるときは、だいたい急にピアノを練習しはじめるのが原因だ。練習しすぎ、というのならともかく、日頃から楽譜をパソコン入力するのに、指を限界近くまで酷使しているので、ちょっとハノンやツエルニー5〜60番を本気で練習するとすぐなる。ほとんどは自作歌曲の伴奏のためで、ソロを弾くことは少ないのだが、それでも一晩の演奏会のプログラムを全部伴奏する場合は、指の運動性を安定させるため、基礎練習を欠かすことはできない。

 最初のうちは、演奏会直前にがんばって2〜3時間も練習し、肝心の当日になって腱鞘炎になったりしていたが、今はなるべく少ない練習時間で、なるべく効率よく練習することを課題としている。本番2ヶ月前から、週1回1時間のペースで徐々にウオーミング・アップし、1ヶ月前になったら 、週2〜3回1時間半ずつ練習するというのが、腱鞘炎にならないぎりぎりのラインだ。そのかわり、基礎練習をするときは、指に全意識を集中させ、演奏を仕上げるときは、どこをどう直したらよくなるかを、とことん頭を使って考える。7〜8小節ずつピックアップしては、あらゆるフレージング、音色、バランス、指使いを試して、しつこく聴き返してみる、というような練習をする。何も考えずに何度も全曲繰り返して弾くより、はるかに短い時間で、確実に上手くなる(ような気がする)。
 腱鞘炎になったおかげで、やっと、ピアノの練習法を知ったのかもしれない。

2000.6.24