オペラ座の怪人

映画では当然休憩はありませんが(^-^; 舞台ではここから第2幕に入ります。
しつこいようですが、更にやばいほど(笑)ネタバレ満載です!


マスカレード / Why So Silent

老ラウルがクリスティーヌへの想いを馳せ、時代はまた過去へ遡り新年行事仮面舞踏会へ。アンドレとフィルマンのあの変装は・・・フィルマンさん、ヤギですか(笑) カシミヤ?(笑)。あのでかい角がなんかちょっと可愛くて笑えた。 アンドレさんは鶏ですか(笑)。中に入ると鶏さんはいなくなってましたが外限定?(笑)。オペラ座の中へ入るとそこはまさに金色の世界!まさに色使いが金一色といった感じでかなり派手です!でもそれぞれ色々と変装していますが、舞台と比べるとなんとなくちょっと地味なような気がしました。顔の部分はかなり気合入れてメイクしているんですけど(笑)衣装が質素だったからかな・・・イヤ、じゅうぶん派手だとは思うんですけどね。で、お一人だけ仮面をかぶっていてもものすご〜くキレるダンスを披露している人がいるんですよ。かなりピンポイント扱いで目立ってる(笑)。実はバレエ界ではかなり有名なホセ・ディラードさんという方らしいのですが、さすが、お美しい!どうやら『スワン・レイク』に出演されていて評判の高い方のようですね。そんな人までこの撮影に参加させているこの映画・・・豪華だぞ♪。マダム・ジリーは思いっきり日本風の変装でとてもよくお似合い♪あの衣装といい髪形といいかなり意識したものになっていて、日本人としてはそれがなんだか嬉しかったりしました。そんななか、ラウルとクリスティーヌが婚約の話をしながら入ってきます。二人のダンスシーンは目の保養というくらいキレイで感動的!やっぱり外国の人のダンスは品がありますよね〜、それに絵になる!そんな二人がダンスしているのをカルロッタは脇で『あんた達イチャついてんじゃないわよ!』って視線を投げかけてるのがなんだか笑えます(笑)。でもここでもピアンジは目立ってない〜(^-^;; カルロッタに欲求不満溜めさせちゃダメじゃないか(爆)。そんな人間模様が渦巻く中(笑)クライマックスの大階段大合唱!ここで上から何故か金の紙ふぶきがパーッと落ちてきて(誰がどうやってバラまいているかは気にしてはいけない 笑) 絵的にいえばものすごく美しいものになってました。それに、扇子を使用した演出がまたこの風景にピッタリマッチしているのでこれを見ただけでもお腹いっぱい状態♪ もう大感動です!!このマスカレードに関しては、日本を意識したと思われる部分がけっこうありましたよね。西洋と東洋の融合・・・こんなにも絵になるもんなんだと感動いたしました。大階段シーンの前には裏方さんたちも騒いでいるシーンがあるのですが、これを見たときに映画『タイタニック』が頭を過ったのは私だけではないはずだ(笑)。たしかあの映画のときも上流と下級のそれぞれの楽しみ方の描写があったんですよね。今回のマスカレードでの裏方さんたちの『安い酒でも歌って躍れば幸せ』といった表情も印象的でした。そういえば時代的にもタイタニックとちょっと近いかもしれないしね。それにしても、ラウルとクリスティーヌ・・・『婚約したことは内緒』とか言っていながら、あんな大勢の前でキスしたら意味ないじゃん(爆) しかもかなり熱々に(苦笑)。とっても絵になる二人だから映画的にはいいのですが、ここだけはどうも解せんなぁ(^-^;;。

解せないといえば、この『マスカレード』の
戸田氏の訳…。「仮面の洪水」っていう表現は・・・どうなん!?(爆)。もそっとマシな言葉はなかったんかいな。

マスカレードが最高潮になったとき音楽が『オペラ座の怪人テーマ』に代わり、
カメラがスーッと奥に移ると赤い悪魔の姿をしたファントムが現れます。このファントムの登場のさせ方がものすごく印象的で大好きでした!金の紙ふぶきの奥に下を見据えているファントムがとにかくものすごく美しい!!ファントムの衣装も身体のシワをひとつも作らないようにした(これって着るだけでもかなり大変だったでしょうねぇ…ジェリー、お疲れ様 笑) だけあってものすごくセクシーです。舞台版では骸骨の仮面しか見えないのに対し、映画では上半分を骸骨模様のマスクで隠しているのみなので表情がよく分るようになってます。これがなおさらセクシーに見えてしまう!白マスクの下の目の周りは黒く塗りつぶしてあってメイク的にはそうとうキツそうではありますが(現にジェリーもマスクを取るとパンダみたいな顔で歩くのが恥ずかしかったと言ってます 笑)、なんとも美しい赤ファントムでして…またまた惚れ度アップです(笑)。この赤ファントムが現れた時、周囲の人たちは『あんた、いったい誰!?』といった不思議そうな表情で、それでも息を詰めながら見つめています。ファントムは自分が書き上げたオペラ『勝利のドン・ファン』のスコアを叩きつけ剣を抜くのですが、これがまたカッチョエエ!!(壊)。トコトン絵になりますわ…。ファントムがカルロッタやピアンジ、支配人たちにイチャモンをつけている間(苦笑)、ラウルはファントムと戦う決意でクリスティーヌの元を離れ剣を取りに行きます。とことん勇敢でアクティブなラウルです!ラウル、後に髪縛ってたほうが絶対かっこいいよ〜。で、最後にクリスティーヌにファントムは『私の元へ戻って来い』と迫るのですが・・・このシーンがものすごく切ないんですよっっ!クリスティーヌを見つめているファントムの表情…マスクで顔を隠していても彼女への溢れんばかりの感情が痛いほど伝わってくる(T_T)。今まで恐怖の表情で見つめていたクリスティーヌが、そんなファントムを見てまるで磁石に吸い寄せられるように彼のもとへ自ら近づいていくシーンがとても説得力あったと思います。あんな切ないファントム見たら、我を忘れて行っちゃうよね…。しかも、この時流れているバックのBGMが『learn to be lonely』なんですよ・・・ファントムの孤独を歌った曲の・・・だからなおさらこのシーンは泣けます(T_T)。もしもクリスティーヌの胸にラウルからの婚約指輪がかかっていなかったら、違う結果があったのかも・・・。舞台でも同じようなシチュエーションはありますが、映画ではより深く描かれていて初めて泣きましたね、ここで。ファントムとクリスティーヌが一瞬いい雰囲気になったのも束の間、彼女の胸にあった婚約指輪を見たファントムは急に激しい怒りを顕にして彼女の指輪をチェーンごと引きちぎって炎とともに立ち去ります。

ここでまた出ました、
戸田おばさんの怪しい訳(爆)『私の贈り物、お前は私のもの』ってどういう意味ですか!?初めてこの訳見たとき私の頭の中にたくさんの?が飛びましたよ(^-^;;;; ファントムはクリスティーヌに贈り物してないし(苦笑)。私は劇団四季版を見ているので自分の中で意味合いを整理できましたが、初めて見る人にとってはあの訳は不親切すぎるだろう、て言うか意味が違うだろう(爆)。ちなみに、あのシーンはクリスティーヌの指輪を見たファントムが『お前はラウルのものではない、私とお前の絆はまだつながれているんだ!』と怒りを顕にしているんです。そのあたりのニュアンスをもっと字幕に出してほしかったなぁ。

炎とともに地下へ去ったファントムを追って、ラウルもすぐさまその後を追います。
ラウル、すごい勇敢だぞ!ラウルが飛び降りた場所は鏡の迷宮・・・幾重にも重なる鏡に囲まれ、ファントムに翻弄されています。この鏡の迷宮は原作にも出ていて、ファントムがいかに建築家として天才だったかのエピソードにもなっています。鏡の迷宮ってどんな感じかな、と思っていたのでこの映画で(ちょっとチャチだけど 笑)映像化されてたのがよかったです。ラウルは鏡に囲まれて時折現れるファントムに剣を振るいますが歯が立たず、上からは首を縛るためのロープも落ちてくる・・・ここ、けっこうスリル満点!。そんなラウルを助けにやってきたのが、『いったいどうやってここへ!?』の神出鬼没な(笑)マダム・ジリー。この方、ファントムのことなら何でもお見通しです(^-^;;


舞台ではこんな感じ
1幕ラストで落ちたシャンデリアは
休憩時間の間に客席上へ戻っていきます。休憩始まってだいたい5分前後くらいかな・・・すぐにトイレに立たなければこの様子を見ることが出来ますのでよろしければ是非(笑)。ちなみにこのシャンデリアはこの先落ちてくることはありません(爆)。
2幕頭のアンクラクト(始まる前の音楽演奏)のあと、フィルマンとアンドレが仮面舞踏会に出席する衣装で登場します。この時の二人はものすごく
色合い的にド派手なキラキラ衣装を身に着けているんですけど(笑)顔には骸骨っぽい仮面をかぶっていて、照明も最初暗いため『ファントム』が二人いるように見せているような演出になっています。後ろ向きにやってきて背中でぶつかった二人はお互いの骸骨仮面を取ってホッとするという、なかなか楽しい登場ですね。この二人のシーンの後に華やかなマスカレードが始まるのですが、これはこのミュージカル最大の見所のウチのひとつです。映画では『金色』っぽいイメージでしたが、舞台では黒の背景の中に色とりどりの蛍光色衣装が映えて、とっても派手で華やかに見えます。変装も様々で、猿のオルゴールをイメージしたものや大柄なマントをつけた道化など・・・とにかく目で楽しめます!このナンバーの中で支配人やマダム・ジリーたちがソロで歌うシーンがありますが、映画では『3ヶ月間平和だった』と語っているのに対し、舞台では『半年平和だった』となっています。ファントムが現れなかった時期のことで、映画よりも舞台のほうが長くファントムが篭っていたということになりますね(笑)。ちなみに、映画の訳で『3ヶ月のロングラン』と訳がありましたが・・・ここもちょっとつじつまが合ってないですよねぇ。一瞬、「3ヶ月もマスカレードやってんのかい!」と思ってしまったではないか(爆)。
マスカレードが盛り上がっている中、ラウルとクリスティーヌもやってきます。衣装は基本的に舞台と同じで、特に
ラウルはかなり忠実に同じです(笑)。婚約を人に隠すというクリスティーヌに『なぜ』とラウルが迫るシーンがありますが、映画ではセリフで表現されていましたが舞台では全て歌で表現されます。私は映画を見たときに2人がセリフで話しているのを見て、勝手に脳内歌変換しておりました(笑)。ここは舞台のように歌っていたほうが次の音楽との繋がりもあるので好きですね。映画では二人はずっと一緒にダンスしていますが、舞台ではマスカレードのざわめきの中で2人がはぐれてしまうシーンがあります。お互いがお互いを探しているのに、色々な変装した人たちが邪魔してなかなか会えない・・・で、ようやく出会えた二人はお互いの愛を感じるわけです。。マスカレードの華やかさとラウルとクリスティーヌのラブラブ度が伺えるこのシーン、すごく好きなんです!ここは舞台ならではの演出なので是非楽しんでほしいところです。一番の盛り上がりどころで『マスカレード』と合唱するシーンは更に見もの!!ここは鳥肌立ちます!ひとつ難癖を言えば、階段の脇にダミーの人形が並んでいることかな(苦笑)。人数を多く見せるために並んでいると思われるのですが、何度も見ている私にはどうもマネキンにしか見えない(爆)。ま、派手だからいいんですけどね(^-^;;。ちなみに映画ではその様子を見ているだけだったラウルとクリスティーヌですが、舞台ではしっかり参加していて一緒に歌い踊っています。

マスカレードが最高潮になったときに赤い悪魔と化したファントムが現れます。映画ではカメラがターンして登場という印象的な手法を使っていましたが、舞台では一番大きなマントをつけた人が階段上部にいるんですけどその人がいっぱいにマントを広げて後を隠していて、その背後からファントムが現れるといった演出になっています。ちょっと文章で書くのは難しいので(^-^;; これは実際に舞台で確認してみてください。なかなか上手い演出だと感動しますよ〜。で、赤ファントムですが・・・映画では思いっきりタイトでセクシーな変装でめちゃめちゃカッコよかったですが、舞台では不気味さを表現していて・・・まず顔の部分はすべて骸骨で覆われていて素顔は一切うかがい知ることは出来ません。そして迫力を出すためか衣装もあまりタイトなものではなく、大きく見せるようなものになっています。だから登場した時は本当に『お化けが出た〜〜!』って感じで他の客もその姿を見た瞬間に恐怖で悲鳴を上げているのが特徴的ですね。映画では『あんた誰!?』って唖然としてましたが(笑)舞台では皆さん、思いっきり怖がってます(^-^;;。その後、自分のオペラを投げつけるのは同じなのですが、映画の訳では『勝利のドン・ファン』となっていますが舞台では『ドン・ファンの勝利』。長年舞台で見慣れていた私はどうも『勝利のドン・ファン』というのがシックリこなくて…(苦笑)。で、スコアを投げつけるシーンですが映画では床下に叩きつけていますが舞台では階段下にいる支配人に投げ渡す形になっています。でも舞台を観て毎回思うんですが、あの骸骨面をつけてよく歌えるよなぁと…。口の部分だけカパカパしてるんですが、実際あれをかぶって歌うのはとても大変そうです。
この先の展開が映画と大きく違うのですが・・・映画では剣を抜いたファントムがカルロッタたちにイチャモンつけてるシーンがありますが、
舞台ではこのシーンはもう少し後にあるわけで・・・舞台のファントムは『ドン・ファンの勝利』のスコアを渡した後、クリスティーヌの指輪を奪い取り床下へ消えてしまいます。消えた後すぐに階段上から赤ファントムが『ブワーッ八ハッハ!』(笑)と駆け下りてくるので、まさにこの時点で人間とは思えない存在となってます(笑)←2番目に登場するファントムはダミーの役者
ちなみにラウルは戦うために剣を取りに行ったりすることはなく(笑)、ファントムに誘われるまま近づいていくクリスティーヌに
「え・・・なんで行っちゃうんだ!」といった表情で見送るのみです(^-^;;; 地下へ消えたファントムを追いかけることもなく、他の人たちと同じように動揺している舞台版ラウル。そういったことから映画のほうがアクティブだと呼ばれているわけです(笑)。

Madame Giry's Tale / The Fairground

鏡の迷宮に迷い込んだラウルを助けたマダム・ジリーにファントムの過去を聞きだそうとするラウル。『みんなのためだと思って』という必死に説得にマダム・ジリーもファントムの過去について語りだします。この後が、この映画のために全く新しく書き下ろされたシーンとされています。

マダム・ジリーがまだバレエの寄宿生だった頃、街に来ていたサーカス団を見に訪れます。このサーカス団っていうのが
ものすご〜く怪しくて、見掛けは「イカサマ集団」ぽい(^-^;;;; ある檻に近づいてみると、そこには頭に袋をかぶされた少年が。猿のぬいぐるみを手に取る少年に、ショーとばかりに叩きのめし顔にかぶされた袋を取って顔の醜さを見せびらかしている男…。それを檻の上から奇声を上げてみている猿、笑って見つめている檻の外の客・・・それは凄く残酷な世界です。周りがみんな笑って見つめている中、マダム・ジリーだけが哀れみの目でその少年を見つめていたのですが、彼女はその直後に檻の中の少年が痛めつけた男の首にロープを巻いて絞め殺している現場を目撃してしまいます。絞め殺した後、猿のぬいぐるみを手に立ち尽くしている袋をかぶった少年の姿がとても印象的でした。顔の様子とか分らないんですけど、彼の存在からは憎しみ・怒り・悲しみがにじみ出ていました・・。猿のぬいぐるみも効果的に描かれていて、このサーカス団の中で唯一自分と接することが出来たであろう存在が、痛めつけられている間、奇声を上げていたあの猿だったと思わせます。ファントムがなぜ猿のオルゴールを作ったのか・・・そのルーツはここにあったわけですね。このエピソードがあるから猿のオルゴールのラストシーンはとても泣けるのです(T_T)。「人殺し」と追いかけられる少年を助けたのはマダム・ジリー。必死に逃げ込んだ先はオペラ座の地下室…。彼が初めてオペラ座に足を踏み入れた場所こそ、クリスティーヌがファントムの存在をいつも感じていたあの礼拝堂だったという演出に、なんだか目から鱗が落ちた気分!クリスティーヌとファントムのつながりの場所にはこんなルーツがあったんですねぇ。
その逃げ込んだ日以来、
ファントムはオペラ座の地下室で生きていくことになったわけです。その話を涙ながらに語るマダム・ジリーの心境って複雑だったでしょうねぇ。で、それを聞いたラウルの一言が『彼は狂人と化した天才』ラウルよ、この哀れな話を聞いてなんの同情の感情も表れなかったのか(苦笑)。彼の頭の中はクリスティーヌでいっぱいだから、そんなファントムに狙われている彼女のことしか考えられなかったのかもしれませんが、ちと冷たいですよねぇ(^-^;。ここで浮かび上がる疑問が、マダム・ジリーとファントムの関係です。今までの流れからすると、マダム・ジリーはファントムと密に連絡を取っていて彼の考えや行動は彼女の中では全てお見通し状態。そしてファントムもそんな彼女に信頼を置いているわけですよね。この2人の間に、それ以上の感情は芽生えなかったんでしょうか…。一般的に考えると、自分を救ってくれて援助してくれるマダム・ジリーにファントムの心は動くと考えてしまいますが、結果的にマダム・ジリーが実の娘のように育てているクリスティーヌのほうにファントムは心奪われてしまったわけで。男女の仲というのは何があるのかわかりませんねぇ(苦笑)。まあ、ファントムにとってマダム・ジリーは恋愛対象ではなく『自分の右腕』的な・・・秘書的な存在だったんでしょうね。マダム・ジリーも彼との関係を恋愛に持っていくことは考えてなくて、ただ彼を支えるだけの存在でいたと…。


舞台ではこんな感じ
赤ファントムが立ち去った後、ラウルはマダム・ジリーを引き止めて彼の秘密を聞きだそうとします。状況は映画とちょっと違えども、
彼女から事情を聞きだそうとするといったシーンは同じです。映画ではファントムの過去について詳しく語られましたが、舞台では立ち話状態(笑)。マダム・ジリーは、人から聞いた噂話のような形でファントムの過去を告白します。つまり、自分はその現場を見たわけでもないし、ましてサーカス団からファントムを救い出したわけでもないんですね。だからサーカス団にいたファントムの存在を『化け物みたい』とハッキリ言ってる(爆)。ある日サーカス団から逃げ出したファントムは噂では『死んだ』とされていたが、実はオペラ座の地下室に住み着いているらしいという話を恐怖に慄きながら語ります。ラウルがその先を聞こうとしたとき、もうこれ以上は語れないと持っていたランプの火を消して逃げ去ってしまうのです。映画では自分が実際にファントムを助けた過去があることから同情的に語っていたようですが、舞台のマダム・ジリーは実際に関わっていないのでファントムとの関わりはあるものの、同情ではなく恐怖心の方が大きいんですね・・・。この話を聞いた上でラウルがファントムよりもクリスティーヌを思いやるセリフを言うのは流れ的にもいくらか納得できるかも(笑)。それでも私は毎回ラウルに対して『何でファントムには同情しないのよ!』と思ってしまうんですけどね(^-^;

映画ではこのシーンの後に
クリスティーヌが墓場へ行くシーンがありますが、舞台では支配人のオフィスシーンが入ります。この場面が映画ではまるまるカットされたかというとそうではなくて、他のシーンに分散して存在していました(笑)。分散したそれぞれのシーンが集まったのがこの『支配人のオフィス』というわけです(^-^;; ただ、映画では描かれなかった部分もあります。それが冒頭のところ。ファントムから『ドン・ファンの勝利』のスコアを投げ渡されたアンドレとフィルマンは支配人室で「なんてひどいスコアなんだ」と憤慨しています。ファントムの作ったオペラの内容・音楽があまりにも客好みではないということをここで騒ぎ立てあっているんですね。映画で『ドン・ファンの勝利』のときに観客が変な顔をして騒いでいたのはこういう背景があるわけです。で、憤慨している二人の元に再びファントムから手紙が来て、オーケストラやコーラスなどについてのひどい注文内容に2人は再び怒りを爆発させるのです。そこへまたまたカルロッタたちが怒ってやってくる。スコアの中でカルロッタは脇役扱い、ピアンジも侮辱的な役柄(ドン・ファン役)に大憤慨(笑)。そこへヒロインになっているクリスティーヌとラウルがやってくるので彼らには火に油状態となりさらにヒートアップ(^-^;;; 「あんたがこうなることを仕組んだんでしょ!」とつっかかるカルロッタにクリスティーヌは負けじと「なんてこと言うのよ!」と大反論して大変なことになります(笑)。このシーンがあることで、映画よりも舞台のほうがカルロッタとクリスティーヌの険悪な関係がより濃く描かれているんですね。で、2人の支配人は事件が起こることを恐れてクリスティーヌに役をやるよう願い出ますが、クリスティーヌは「やりたくない」と拒否し、ラウルもそれに同調します。そこへマダム・ジリーが再び手紙を持ってきて一同ため息。この手紙の内容から映画では各シーンに分散して描かれているわけです。

分散しているシーンのその1
映画ではマスカレードのシーンでファントムが剣を取り、カルロッタやピアンジたちに注文をつけていましたが、舞台では『支配人のオフィス』に出てくるマダムジリーの手紙の内容として登場します。手紙の内容なのでファントムは声のみの出演となります(笑)。内容的には映画とほぼ同じで、カルロッタには『もっと演技の勉強をしろ』、ピアンジには『お前は太りすぎだ』(映画では健康に良くないといっていたのが笑えた 笑)、支配人には『芸術に口を出すな』と警告。クリスティーヌには『声は素晴らしいがまだまだ教えたりないから戻って来い』とのメッセージが添えられてました。私はここは映画での描写の方がすごく好きでした。ファントムのクリスティーヌに対する熱い想いがダイレクトに伝わってきましたし、2人が見詰め合うシーンはとても感動的でした。舞台では言葉だけのファントムからクリスティーヌへのアプローチなので真の意図は伝わらず(爆)、クリスティーヌは逆に恐がってさらにファントムを拒絶してしまいますからね…(^-^;;;。

分散しているシーンのその2
映画では墓場から戻ったラウルがみんなを集めてファントムを捕らえる策を語っていますが、舞台では
支配人のオフィスでファントムの手紙を聞いた直後にひらめきます。策の内容は『クリスティーヌが歌っているときに必ず現れるであろうファントムを追い詰めて始末する』といったもので映画とほぼ同じ。ただ、そのあと間髪いれずにマダム・ジリーが『勝ち目がないからそんなことするのやめなさい!』と戒めます。映画ではラウルと支配人たちがやる気満々のところで、後ろでマダム・ジリーが何かを言いかけようとしたシーンで途切れてましたが(^-^;;; たぶんあのあと舞台と同じセリフを言ったのではないかと想像できます。
ここからは舞台オリジナルで、反論するマダム・ジリーにラウルは
『やつを助ける気か!?』と怒鳴りつけ、後ろでカルロッタとピアンジが『彼女は怪人とグルだ!』と騒ぎたて、各々言いたい放題言いまくって収拾つかない状況に(苦笑)。この時の5重奏は誰がなんといっているのか聞き取るのが大変ですが(^-^; 音楽的にはとても面白いので私は好きですね。で、この騒ぎを聞いていたクリスティーヌがスコアを投げつけ『止めてちょうだい!』と一喝して場が収まります。

分散しているシーンその3
ラウルの提案が恐くて受け入れられないというクリスティーヌ。映画では『ドン・ファンの勝利』の後に礼拝堂で震えているクリスティーヌがラウルに心情を告白する形で出てきますが、
舞台ではあんな甘い雰囲気ではありません(笑)。クリスティーヌの恐がり方は映画以上でして、ファントムのことを彼女の中では『悪魔』としか映っていないような感じです(^-^;。『あちこち引きずられて』とか『執念深く追いかけてくる』とか『死の影がさす』とか、とにかくものすごく恐がってるんですね。この恐がり方だから、ラウルが『僕に任せてくれ』というセリフが舞台では生きている感じがします。ちなみに、ラウルが任せてくれ、というときに周りにいた支配人たちも彼女に『役を演じてくれ』と懇願してるのですが、そのなかにさっきまでスコアのことで激怒していたピアンジも入っているんです(笑)。これを見たときのカルロッタ・・・「なんであんたまで彼女に頼んでんのよ」って表情で見ているのが笑えます(笑)。まぁ、カルロッタ自身もクリスティーヌの恐がり方を見て、先ほどまでの怒りを忘れて『この人頭が変よ』と奇妙な顔してましたけどね。
で、ラウルの
『任せてくれ』という言葉に映画では素直にその思いに応えていたクリスティーヌでしたが舞台ではその言葉すら拒絶し、『いや〜!』と叫んで飛び出していってしまうのです。ラウルはそのあと、ファントムに向けて『今度泣きを見るのはお前の方だ!』と宣戦布告。この時のラウルはけっこうカッコイイ(^-^ゞ


Journey To The Cemetery 〜 The Swordfight

ラウルとマダム・ジリーの話が終わった後に、老ラウルが車で墓地に向かうシーンが入ります。外を走るシカを見つめながら当時を振り返るラウル・・・。このパトリックの老ラウル演技が渋くてなかなか素晴らしい!
夜明け前、みんなが寝静まった頃に
髪の毛をセットしているあなたは誰!?あれってマダム・ジリー!?髪の毛長かったしねぇ…。パンフを見ると未公開シーンの写真もあったりしたので、あそこは思い切り編集されているのではないかと(苦笑)。そういえば、ジェラルド・ファントムがバラを手に黄昏ている未公開ショットもありますが、これはマダム・ジリーとラウルの話の後に入れられるはずだった『learn to be lonely』だったとか!どうやらここは編集の過程で『やっぱり流れ的には必要ないや』とのことで切られたんだそうです(^-^;; ジェリーの歌うこのナンバー…観たかった!写真見るだけでも泣けてきそうな私はきっとこのシーンを見たらもっと泣いたに違いない。

さて話を戻して・・・夜明け前、クリスティーヌは不意に目を覚まし、
自分の部屋の前で見張っているはずのラウルが眠ってしまっているのを確認しながら外へ出て行きます。これってもしかして、今までもラウルが寝静まるのを待っていたんでしょうか(笑)。まぁ、ラウルはあれだけアクティブに動いていたわけですから睡眠するのも早かったとは思うんですけど(^-^;。御者にお金を渡し、墓地へ行くように伝えたクリスティーヌは上着を着ながらふとバラの花束が目に留まります。舞台では墓地へ行くまでのシーンは描かれていなかったので、映画ではなんだかよりリアルに感じました。馬車の準備をする御者に後ろから魔の手が・・・ってこの展開がすごく分りやすくていいわぁ(笑)。御者が入れ替わったのを知らずに馬車に乗り込むクリスティーヌは果たして!といったシーンなのですが、ここで流れているBGMが私はすごくお気に入り♪映画オリジナルのものでALWが新たに作曲した部分なのですが、緊迫感がすごい出ててカッコいいんですよ〜。御者が後ろから襲われた音と同時にクリスティーヌの部屋の前で眠っていたラウルが起きる絵が入る展開も好きです。この時のラウルってちょっとオマヌケっぽいんですけど(笑)、それを見事に払拭させるシーンが白馬の王子様(笑)。クリスティーヌが馬車で去っていくのを見てラウルは急ぎ後を追うのですが、そばにいた白馬に飛び乗って走り出すんです!!しかも鞍もついていない裸馬ですよ!いや〜ビックリ(@O@)。あれを見たとき、『パトリック・ウィルソン、すごい役者だ!』と感動してしまいました。 クリスティーヌを乗せた馬車とラウルの走らせる馬が夜明けの森を抜けていくシーンは非常に美しく、クリスティーヌの歌声が幻想的に響いていて素敵です。で、墓地に着いたクリスティーヌを降ろした馬車がゆっくりとその場を離れるのですが、よく見ると一瞬だけ白いマスクが映るんですよ。この映し方もミステリアスですごく好き!つまり、御者に入れ替わっていたのはファントムだったとここで主張しているんですね。まぁ、御者が襲われた時点でその犯人がファンと無駄ということは分るんですけど(笑)。舞台ではファントムがどうやって墓地に着たのか謎のままだったのですが、映画を見て納得です。この展開ならファントムが墓地にいることが理解できる。でも、地上に出るのはこれで何度目だったんでしょうか… ちと気になる。

墓地に着いたクリスティーヌは自分の父親を想いながらその墓へと歩いていきます。
墓地のセットもとてもよく出来ていて、雪景色と非常にマッチしていたと思います。マリア像など墓地に並んでいる数々の石像もヨーロッパ的で素敵・・・。これ、全てスタジオセットだというんですから驚きです。
実は舞台でこのナンバーのシーンになったとき、私はたまに
『退屈』と感じてしまうことがあるのですが(爆)、エミーのクリスティーヌはとても素晴らしくて、孤独と向き合っているクリスティーヌの寂しさを見事に表現していてとても感動しました。この歌詞って亡くなった父親に向かって歌っているようなのですが、その対象を『父』と表現しないで『あなた』と表現していることが多いんですよね。だから、『父』に向けているようで実は『音楽の天使』に向けているとも取れる。つまり、恐怖に思っていても心の奥底では『音楽の天使』のイメージだったファントムを求めていると私は思ってしまうんですが・・・。父の墓に着いたとき、『さよならを言う勇気を与えて』と雪の中座り込むクリスティーヌがとても切なくて泣けてきます(T_T)。それにしてもあの雪の中、肌を露出しているあの衣装・・・寒くなかったのか、クリスティーヌ!?(爆)。

クリスティーヌが父の墓の前で落ち込んでいると、
父の墓の奥からファントムの歌声が聞こえてきます。初めその声が誰のものか分らず混乱するクリスティーヌですが、以前聞いた優しい『音楽の天使』としてのファントムの歌声に我を忘れて近づいていきます。ここでクリスティーヌの父親の墓室が明るくなるといった不思議現象が起こるのですが、クリスティーヌに恐怖はなく不思議なほどその歌声に引き寄せられていくんですね〜。ここで歌われるのが、ファントムとクリスティーヌによる『エンジェル・オブ・ミュージック』なのですが、舞台以上にこのシーンを見たとき泣けて泣けて・・・もう大感動してしまった(T_T)。『否定していても心はつながっている』『私を否定しないで』。このフレーズを聞いただけでも二人の奥深い絆が痛いほど伝わってくるんですよ…。2人のデュエットはまさに相思相愛のラブソングに聞こえてしまって、それが実現しない未来を知っているこちらとしてはとても辛いですね…。
ファントムの声に導かれるように墓の中へ吸い込まれようとするクリスティーヌを止めたのは白馬でかけ付けたラウル
(かなりの薄着 笑)『そこにいるのは君の父ではない』と言った瞬間、父の墓の上から飛び降りてくるファントム。これがまたカッコイイんだなぁ(^o^)。そしてそのまま剣を抜き、クリスティーヌを巡って二人は激しく戦います。ファントム、長い間地下暮らしをしていたとは思えない機敏な動きしててめちゃカッコイイんですよ(笑)。最初のうちはラウルを圧倒していてマントを利用して彼に傷を負わせることに成功。ところが、この傷を負わされたラウルが逆にスイッチが入ってしまい(笑)形勢逆転(^-^;; 最後にはラウルに刺し殺されそうになってしまい、クリスティーヌの『やめて、ラウル』の一言で見逃されます。剣を振り下ろそうとするラウルの下でゼエゼエ言って睨みつけてるファントム・・・つまり彼は戦いに敗れたのですが、舞台版ファントムではこの展開は考えられなかっただけに最初はちょっとビックリしました。ファントムって他のどの人間よりも優れた能力があって、常に人の上をいっているイメージがあったので、まして恋敵に『負けた』うえ、その命をクリスティーヌに救ってもらうなんてありえないってイメージだったんですよね。映画ではそういった絶対無二の存在ではなく、ファントムという一人の哀れな男を描いているんだなってこのシーン観て思いました。この展開がダメであるかといえば、そうではなく、私的にはむしろ映画の描かれ方のほうが好きです。たしかに『ファントム』という存在としては『負ける』というのはどうかと思いますが、そのほうが彼の哀しさや怒りがより強く伝わってくるし、ファントムにますます感情移入したくなってしまうんです。2人が白馬で立ち去った後、屈辱と怒りに満ちたファントムは彼らに宣戦布告すると言うのですが、この時の表情!!絶品です!ジェリーって本当に表情で感情を表現するのが上手い役者さんですよ。そのあとのマント捌きもカッコイイし・・・またまた更に惚れちゃったわ(笑)。

でも、またしてもここで
不思議な戸田訳が…(爆)。『戦争を宣言する』って…(苦笑)。ここで言うセリフじゃないだろう。武器を持ってきてドンチャンやるわけでもないし、ここは素直に『宣戦布告だ』と訳せばいいのでは。どうもビックリする訳が多いんだよなぁ…。

それにしてもクリスティーヌ、ラウルがファントムにやられた時には何も言わず、ファントムがラウルにやられそうになったときに
『やめて!』と止めに入りましたよね。ここに彼女の微妙な心情・・・つまりファントムへの思慕のほうが強いのかな、なんて思ってしまいました。ちなみに、白馬で立ち去るシーン。パトリックとエミーが二人乗りしてますが、ここは撮影がかなり大変だったようです。エミーを乗せるシーンではスタントを使った方がという話もあったそうなのですが、エミーが自分で演じると申し出たようで、彼女は何度も落馬してしまったとか。エミー!すごい役者魂だ!!


舞台ではこんな感じ
支配人のオフィスシーンのでクリスティーヌが部屋を飛び出してしまった後に、
『ドン・ファンの勝利』の練習風景シーンが入ります。ここはまるまる映画では描かれなかったシーンなのですが(苦笑)、なかなか面白いやり取りがあって私は好きなんですよね。
(指揮者ではなく演出家としての)ムッシュ・レイエがピアノを使いながら歌の指導を行っていますが、ピアンジのパートになると毎回そこでもめてしまう。ピアンジにとって、『ドン・ファンの勝利』の譜面の歌い方は苦痛以外の何物でもなく、自分独自の歌い方で歌ってしまうんです。それを必死に修正させようとするレイエとのやりとりがけっこうコミカルで楽しいんですよ。結局ピアンジは譜面どおりに歌うことが出来なくて、ついに周りの人から『いい加減にしてくれ!』と苦情が出たり、カルロッタが『彼の歌い方のほうがいいわよ』と庇ったりします。その騒ぎの中、練習用のピアノがひとりでに『ドン・ファンの勝利』を演奏しだし、今まで騒いでいた人たちがいっせいにピアノの前に集まって、譜面どおりに歌いだすのですが・・・この景色はかなり不気味に演出されてます(笑)。その騒ぎの中、クリスティーヌは練習を離れ一人墓場に向かうわけです。

映画のように墓場に行くまでの過程は描かれておらず、
クリスティーヌが歩いているのにあわせて父親の大きな墓セットが登場します。舞台版だとこのようにあまり場面転換がないため、たま〜に『退屈だなあ、このシーン』と思うこともある私(爆)。シーン的には映画のほうが好きでしたね。そして、クリスティーヌのソロが終わった時点でファントムの声が聞こえてくるのは映画と同じなのですが、映画では声のみでクリスティーヌを引き寄せようとしていたのに対し、舞台では歌っている途中に大きな十字架のなかからファントムが姿を現し、まるで催眠効果をかけるかのような仕草で『おいで、エンジェル・オブ・ミュージック』と誘います。ファントムを異常に恐がっていた舞台版クリスティーヌもフラフラとファントムのほうへ行ってしまうので、このあたりの演出からもファントムがいかに不思議な存在かということがわかります。というか、墓の十字架から出てきただけで十分怪しいです(笑)。そんなクリスティーヌを止めに入ったのは、自分の足で走ってきた(笑)ラウル。映画では2人は剣を交えて戦っていましたが、舞台では墓の上からファントムが杖みたいなのから火の玉をラウルに向けて飛ばしてます・・・って文章で書くとなんだかお笑いっぽいのですが(爆)実際観るとけっこう緊迫したシーンなんですよ(^-^;;。ただ、この火の玉なんですが・・・近年火力が弱まっているようで(気のせい!?)どうも情けなく映るんですよねぇ(苦笑)。だから、ラウルに『他に子供だましは!?』と言われても本当に『子供だまし』っぽく見えてしまうのが気になる…(^-^;;; で、散々火の玉をラウルに向けて飛ばして威嚇していたにもかかわらず、その効き目は結局無いに等しく(苦笑)ラウルにクリスティーヌを奪われてしまうファントムがちょっと哀れです。彼らが去り際に思わず『行くな!』と叫んでしまうファントムが切ないです…。最後に2人に向けて宣戦布告を叫ぶのは映画と同じですが、舞台ではその瞬間にババッと火の玉が飛んで迫力あるシーンになってます。


We Have All Been Blind

墓場から帰ったラウルは、支配人たちを集めてファントムを捕らえる策を説きます。二人の支配人もそれに乗り気で、今度こそファントムを負かしてやろうと息巻いているのですが、それを聞いていたマダム・ジリーは後ろで何かを言いかけています。前にも書きましたが、舞台ではこの後マダム・ジリーが『勝ち目がないからやめろ』と歌っているので、映画でもその描写があったのではないかと思われます(^-^;; その後ろにはピアンジもカルロッタもいて一緒に歩いているのですが、映画版ではこのシーンの2人は存在感なしですね(笑)。ラウルの提案で劇場周辺に警備兵がつけられ物々しい雰囲気になっている時、オペラ座の裏部屋ではファントムが興奮しながらなにやら仕掛けを施していますこの時のジェラルド・ファントムもカッコいいんだよなぁ〜(^-^ゞ。この仕掛けが後の大事件に大きく関わることになるわけです。
『ドン・ファンの勝利』開演前、
礼拝堂の中で一人震えているクリスティーヌにラウルは励ましの言葉をかけます。基本的流れは舞台と同じですが、場面が違うため印象的には映画のほうがずっとロマンチックに描かれています。舞台ではラウルの励ましの声にも耳を貸さずに逃げ出してしまうクリスティーヌですが、舞台ではラウルの優しい言葉に全てをゆだねようとするクリスティーヌの姿があります。それに、ファントムのことを語るときもどことなく同情的。映画のクリスティーヌの気持ちは揺れに揺れているんですねぇ。この時の怯えている表情のエミーがすごくカワイイ!
その頃ファントムは一人ドン・ファンの扮装をしながら全てを終わりにするような言葉を歌っています。つまり、映画ではファントムが
舞台にドン・ファンとして現れることをここでほのめかしているんですねぇ。バレバレです(笑)。この扮装をしているとき、よく見ると髪の毛に手をやって調整しているんですよね(^-^;; これが後の悲劇につながるんですが…。


舞台ではこんな感じ
墓場からかえったラウルは劇場警備に躍起になります。
オーケストラピットにも銃撃手が控えていて、ラウルから『そのときが着たら撃ち殺せ』と命令されます。上手くいくんだろうかとちょっと弱気になっている支配人を尻目に、ラウル頑張ってるんですね(笑)。しかし、それをあざ笑うかのようにファントムの影が・・・。このシーン、『ここだファントムがいるぞ』と劇場の色々なスピーカーからファントムの声が聞こえてきてなかなか面白いのです。あちこちにファントムが現れているって感じがしてついつい音のしているほうにむいてしまうんですね(笑)。そしてボックス席にファントムの影がチラッと見えたとき、オケピにいた銃撃手が思わず発砲してしまいます。ボックスにファントムが現れたのを見ていなかったラウルは『時が来たらといっただろう!』と諌めるのですが・・・あれは銃撃手の判断の方が正しかったわけで(^-^;; 怒られた方がちと気の毒であります(笑)。そしてその直後にファントムのそれをあざ笑うかのような歌声が響いてきて、そのまま『ドン・ファンの勝利』の幕が開きます。


ドン・ファンの勝利 〜 The Point Of No Return / Chandelier Crash

ファントムが作ったオペラ、『ドン・ファンの勝利』の音楽が鳴り出すと客席からはざわめきが起こります。それぞれの表情を見てみると『なんか変な音楽じゃない?』『舞台の雰囲気も物騒でイヤだわ』といった感じで、この演目が当時の人々にとって受け入れられなかったことが分ります(苦笑)。舞台では観客は我々なのでそういった反応を観る事はないわけですが(^-^;; 映画ではこういった面も楽しめると思います。映画版『ドン・ファンの勝利』に出てくるキャラクター達の衣装は全体的に情熱の『赤』。舞台中央にも炎のオブジェがあるなど、作品全体が『燃えるような熱い』情熱的なものであることを表現していました。雰囲気的に言うとスペイン系ですかね。『またもやドン・ファンの勝利』と出演者が歌うところでは、カルロッタと他のキャストが指の指しあいでモメているのがなんか笑えます(笑)。気の強いカルロッタは少しでも自分が目立とうとして他の出演者と密かに争っちゃってるんですね(^-^;;。

そしてまずはピアンジ扮するドン・ファンと忠実な部下パッサリーノの登場。これからやってくる娘アミンタのことについて、
一通り手順を語った後にピアンジはカーテンの奥に姿を隠します。そのカーテンの裏で、ファントムがピアンジを襲う様子が映画では描かれていました。この、上からバサーッと降りてくるファントムの映し方が・・・ピアンジには申し訳ないんですけど(苦笑)・・・やっぱりカッコイイ!! そこへクリスティーヌ演じるアミンタが登場し、それにあわせるようにドン・ファンに成りすましたファントムが登場するのです。舞台では登場してしばらくは正体が分らない様になっているのですが、映画ではピアンジを襲っているシーンもあるし出てきた瞬間からピアンジとは全くの別人としてファントムが登場するのが特徴的ですね。この登場した後のファントム扮するドン・ファン・・・どえらいセクシーでカッコイイのです!!(壊)『Silent,Silent』のときの「シーッ」と口に手を当てる仕草なんてまさに悩殺ものですよ(笑)。でもこのシーン、観る度に思ったのですが・・・アントニオ・バンデラスの『マスク・オブ・ゾロ』とすごい似てるんですよ・・・ジェラルド・ファントム。やっぱり、ジェリーとバンちゃんって色気の面ではすごい共通点があるのかも。まぁ、バンちゃんのほうがちょっと濃すぎるんですけどね(笑)。ドン・ファンの歌声が聞こえてきたとき、クリスティーヌはもう早い時点でそれがピアンジではなくファントムであることを悟ります(っていうか、誰が見ても分る 爆)。そのときの『あ〜〜・・・』っていうエミーの表情がまた絶妙です!既にこの時点で彼女は覚悟を決めたように見えました。それに、ファントムの迫り方がまた超セクシーで…あれは拒もうと言う気持ちもどこか吹き飛んじゃうでしょう(笑)。ラウルや支配人たちもファントムが堂々と現れたことに驚き、密かに警官隊を配置させるように目配せをしますが、舞台上ではお構いなしに2人の情熱的なやり取りが続いているのです。映画を見て改めて思ったんですけど、このオペラはファントムの全身全霊を掛けたクリスティーヌへの激しい愛情が詰まっているんですよね…。そこまで彼女のことを思い詰めていたのかと思うと、なんだかとても痛々しくて切ない(T_T)。ジェリーのファントムはその激しい愛情を身体いっぱいに表現しているのでなおさら見ていて泣けるのです…(橋の上にマントをかける仕草も最高!!)。そしてその想いを汲み取ったかのようにクリスティーヌも次第に激しさを増していって全身でファントムと向き合おうとしていくんですねぇ…。この『Point of no Return』シーンがこんなに泣ける場面だとは今まで気付かなかった。ここは本当に映画で初めて胸を熱くしました。

しかし、こんな素晴らしいシーンだったのに・・・
戸田のおば様またまたやってくれちゃいました(爆)『Passion-Play』を、あの舞台の雰囲気に飲まれたのか『私たちの情熱のプレイが始まる』と過激に訳してくださっちゃいました(爆)。もともと『passion-play』というのは受難劇という意味らしく、アミンタ(クリスティーヌ)がドン・ファン(ファントム)の受難を受けるというような意味合いがあるわけです。たしかにニュアンス的には『情熱のプレイ』とも取れかねませんが(爆)、あそこでそのまんまその言葉を出すって言うのはどうなのよ!?一気に18禁の世界ですよ(爆)。戸田さん、何か変なビデオ見ました?(笑)。あの言葉でこの映画の雰囲気がちょっとおかしな方向に向いてしまうのは私的に許せないんですよ。もっとマシな表現を入れてくださいな。初めて映画館であの字幕を見たとき、それまで感動していた私の気持ちは一気に驚きへと変わってしまいましたよ(^-^;;; それ以来、この部分は特に字幕を見ないようにしたことは言うまでもありません(苦笑)。

橋の上でファントムとクリスティーヌが2人向き合いそのまま抱き合うシーンはとっても官能的
でした。現に撮影中、このシーンを見た人たちからは官能のため息が漏れたほどらしい(笑)。でもそれはちっともイヤらしくないエロで(むしろ下で踊っているダンサーのほうがかなりエロい 苦笑)、見ていて切なくなる2人のシーンなのです。エミーは当時17歳…それであの色気はすごすぎです! ラウルは5番のボックス席からこの2人を見て『どうしようもない2人の絆』を感じ敗北感から涙目になっているのがまた切ない(T_T)。役柄の中とはいえ、あの時ファントムとクリスティーヌはたしかに結ばれていました。出来ればこの想いを成就させてほしいと真剣に思いましたから、私。そして、その劇中・・・ファントムは溢れる想いを抑えきれずに、ドン・ファンとしてではなく『ファントム』本人としてクリスティーヌに熱い胸のうちを告白するのですが、この時の歌が・・・ラウルとクリスティーヌが愛を誓う時に歌っていた『All T Ask of You』なんですよ(T_T)。舞台でも同じように歌われてはいたのですが、映画でこのシーンを見たときに初めて泣きました…。ラウルとクリスティーヌが愛を誓い合う言葉として歌っていたのに対し、ファントムは『この孤独から救ってほしい、自分にはクリスティーヌしかいないんだ』と告白するんですよ・・・。もうこの時のジェリーの切ない演技といったら・・・涙せずには見れませんでしたわ(T_T)。ここのフレーズの歌がこんなにも切なくて思い意味を持っているなんてと改めて思い知らされた気がしました。そしてクリスティーヌはというと、ファントムが素に戻ったときにフッと自分も我に返る瞬間がある。でも、ファントムを拒絶する態度を取らずに彼に真剣に向き合ってその言葉を聞いているんです。この描写は舞台とは違うところですね。ファントムが全身全霊をかけた告白をしたときクリスティーヌは彼の仮面とカツラをはがしてしまうのですが、『素顔で生きて』というようなメッセージを送っているような・・・彼を思いやっているような、そんな表情をしているんです。これにはものすごく感動いたしました!クリスティーヌ、本当に大人になったね・・・と。

仮面をはがされてしまったファントムですが、確かに醜いメイクはしているのですが舞台のを見慣れていた私としては
「そんなに卑下するほど醜くないじゃん」と思いました。舞台のメイクはすごいですからねぇ・・・けっこう(^-^;。それにジェリーがかなりのイケメンということもあり、どことなくカッコイイ(笑)。特に橋の上からクリスティーヌを抱えて地下へ落ちていくときの表情なんて最高にカッチョよかったですよ!ここでそう思うことがいいのか悪いのかは分りませんけどね(笑)。
そして、この去り際に切ったロープが「ドン・ファン」開幕前にファントムの仕掛けに繋がり・・
・舞台1幕ラストで落ちるはずだったシャンデリアがここで落下してくるわけです。スワロフスキー社製の豪華シャンデリア(実はダミーらしい 笑)が一気に客席めがけて落ちてくる様はまさに映画ならではの大迫力でした!!あの迫力を見ちゃうと舞台のシャンデリア落ちが地味に見えてしまうかも(苦笑)。さながら『タイタニック』で船が沈む時のような迫力がありましたねぇ。ムッシュ・レイエなんてかなり危険な場所にいましたけど、無事に逃げ延びられるのか見ていてドキドキしちゃいました。無事であってほしいです・・・レイエさん(;_;)。そして落ちたシャンデリアはその衝撃で火災をもたらし、オペラ座は一気に火の海に!支配人たちは『俺達はおしまいだ』と嘆きながら絶望・・・彼らも無事に逃げられたのか。そして、火事の中カルロッタは舞台で消えてしまったピアンジが死体となっているのを発見してしまいます。ここで彼女は『愛するピアンジ』と言って泣くのですが・・・ここの説得力がちょっとねぇ(苦笑)。この映画の中でカルロッタがピアンジに愛情表現した描写は無いに等しいし、ピアンジもカルロッタの前ではかなり消極的だったので(笑)、初めて見た人にとっては彼女がピアンジを愛していたと聞いてもピンとこなかったのではないでしょうか。


舞台ではこんな感じ
前のシーンでファントムに劇場を支配されている雰囲気を残したまま、『ドン・ファンの勝利』の幕が開きます。映画では思いっきりスペインチックな感じでしたが、舞台版は
あそこまで情熱の炎に燃えてるって雰囲気ではないです(笑)。衣装もなんとなく落ち着いているし、どことなくちょっと貴族っぽい。舞台セットも炎とかはなくて、机の上にご馳走がたくさん並んでいてそれを皆が分け合って食べながらこれから起こるであろうことを歌っています。演目は同じですが、舞台のほうがちょっと上品な雰囲気があります。カルロッタは脇役に配役されてしまっているのですがしっかり自己アピールはしていて、その他大勢の中でもひときわ目立った美声を響かせているのが彼女らしいところ(笑)。このあと、ピアンジ扮するドン・ファンの部屋からメグが出てくるのは映画と舞台は同じですね。舞台のメグちゃんのほうが甲高い笑い声を上げているので目立ってますけど(笑)。

映画版のドン・ファンはマスクとマントで顔を隠して騙そうとしてましたが、舞台では
上からすっぽり黒い被り物をかぶってバレないようにしているのが大きな違いです。つまり、一度奥に引っ込んで再び出てきた人物が本当にピアンジなのか傍から見ると最初は分らない仕掛けになっているのです。映画では再び出てきたのがピアンジではなくファントムだとすぐに分りますが、舞台では黒い被り物がかなり余裕のある大きなものなので、その中にファントムが入れ替わりで入っていることは誰も気がつかないのです。まぁ、判断基準としては『声』なんでしょうけど、最近の劇団四季はオペラ系の役者さんがピアンジとファントムを演じていることが多いのでかなり声質が似ているのでちと紛らわしいです(笑)。過去に全然違う声のファントムもいましたけどね(^-^;;。
クリスティーヌも
途中までドン・ファンはピアンジが演じていると信じていて、演技的にもかなり大胆な感じです。そんなクリスティーヌにファントムが一瞬我に返って彼女に触れようとしたのを躊躇い思わず後ろを向いてしまうシーンがあるのですが、これを見ると私は毎回切なくて胸が痛んでしまうのです(T_T)。ファントムのコンプレックスが素直に彼女と向き合うことをさせないんですよねぇ…。この時の後姿がとっても寂しい…。しかし、曲が進んでいくにつれドン・ファンとアミンタの情熱的になり、クリスティーヌの後ろからファントムがガバッと抱きつき、クリスティーヌが黒衣の上からファントムの顔を触るシーンになります。この時、クリスティーヌは仮面の存在を確認し、初めてここでドン・ファンがピアンジではなくファントムであることを知るのです!必死に彼の手から逃れようとするクリスティーヌを羽交い絞めにしているファントム・・・この場面は本当に緊迫していて見応えありですよ!映画とは違ったドキドキ感が味わえます。逃れようとしているクリスティーヌでも、舞台根性があるのか最後まで「ポイント・オブ・ノーリターン」をファントムと歌いきるのですが、一番最後のフレーズのところでドン・ファンの黒衣をめくってファントムの姿を観客に晒してしまいます。白いマスクをしたファントムを目にしたラウルたちですが、クリスティーヌもそばにいるため銃撃隊に命令を出すことが出来ません。このあと、正体を明かされたファントムは『ファントム』としてクリスティーヌに『オール・アイ・アスク・オブ・ユー』のフレーズに乗せて愛の告白をするのですが、この時にクリスティーヌの指にマスカレードで奪い取った指輪をそっとはめるんですよ…。ここのシーンもなんだかとっても切ないんですよね〜(T_T)。そして最後に『クリスティーヌ、君がすべ・・・(「て」まで言わせてもらえない 涙))』と言ったところで追い討ちをかけるようにクリスティーヌに仮面と髪の毛を一緒に剥がされてしまうのですが… 映画版ではこの時のクリスティーヌにファントムへの情が感じられたのですが、舞台版では『どうして私をこんなに苦しめるの!』といった憎しみに似た感情で剥ぎ取ったといった印象が非常に強いです。このシーンを観る度に『クリスティーヌ、なんてひどいことすんだ!』と思ってしまう私…。
ちなみに、舞台版ファントムの仮面を取った時の素顔はかなり頑張ったメイクをしてます(笑)
。舞台ということで遠くの人にも分るようにしてあるので、映画のように『なんだ醜くないじゃん』と思うことは無いと思います(^-^;;。舞台版ファントムの素顔を知っている人にとっては映画版ファントムの素顔はけっこう普通に見えたのではないでしょうか(笑)。でも、映画版でもジェリーは5時間とかメイクにかけたっていってたからなぁ・・・。ただ、映画的には私はあれでOKだと思っています。

正体をばらされたファントムは
銃撃隊の一発が発射された直後にクリスティーヌを連れて地下へと逃亡していきます。おそらく銃痕は当っていないと思われます。映画ではこのあと巨大シャンデリアが客席めがけて落ちてきましたが、舞台ではもう1幕ラストに落ちているので(笑) ここで落ちることはありません。ただ、今回映画を見て思ったんですけど・・・ドラマ的には映画のタイミングでシャンデリアが落ちたほうが盛り上りますね。舞台ではその後の処理とかもあるので途中で落とすのは無理だと思うんですが(^-^;。
ファントム騒ぎで舞台が騒然としている中、
メグがドン・ファンの部屋となっていたカーテンを開けるとピアンジの絞殺死体が現れ、メグのものすごい叫び声が響きます。映画ではカルロッタがピアンジを発見することになっていますが、舞台で最初にピアンジの死体を発見したのはメグということになっています。そのピアンジの死体が運ばれていく時にカルロッタは自分の愛する人が死んでしまったことを知り、担架にすがって泣くのです(;_;)。今までワガママ放題だった彼女がはじめて見せる弱さ・・・ここはちょっと気の毒に思ってしまいます。


ラストはかなりのネタバレです!気をつけて〜(笑)



Down Once More / Track Down This Murderer

シャンデリア火災の騒ぎの中、マダム・ジリーを発見したラウルはファントムとクリスティーヌの行方を聞き出します。それに対して『知っているから一緒に行く』というマダム・ジリー。本当にこのマダム・ジリーってファントムのことよく知っていますよねぇ・・・。でも結局途中まで案内してから『私はここまで』と言って引き返してしまう。この時のマダム・ジリーの表情がなんだかちょっと怪しい…(苦笑)。本当はその先まで知っていて案内できるんだけど、あえてわざと途中で別れたような印象です。ラウルはこの先の階段で落とし穴に落ちてしまうのですが、彼女はそれを予見していたんでしょうか? 私が考えるに、ファントムに今まで同情的だったマダム・ジリーですが、今回の殺人事件でさすがにクリスティーヌの身の危険を感じた・・・でも、やはりファントムに対する同情心も捨てきれずその先に危険が潜んでいることをラウルには告げず、ラウルを試す意味で途中別れてしまったのかな、と。なんだかこのあたりが複雑ですね。少なからず、彼女はラウルに対してあまり良い印象を持っていないと思います(^-^;;;
その頃ファントムは醜い顔を公衆の面前で晒されてしまったことで異常に興奮しており、なかば
自暴自棄になりながらクリスティーヌを地下の隠れ家へと無理やり連れて行こうとします。初めてクリスティーヌを隠れ家に招待した時はあんなに紳士だったファントムなのに・・・今回はその姿は微塵も感じられない。たぶん、馬も待機してなかったんだろうなぁ…。連れ込みながらファントムはクリスティーヌに『醜い自分はいつも人から嫌われ、追い詰められる・・・なぜなのだ!?』と迫るのですが・・・この時のジェラルド・ファントムの表情!!あの怒りと悲しみが入り混じった表情を見たとき、私はもう涙涙ですよ(T_T)。とにかく、痛いんです・・・彼のファントム・・・見ているだけで本当に痛々しい。あの一瞬でファントムの哀しみを表現しちゃうんだから、本当に一心同体になっていたと思いますよ・・・ジェリー。

一方、上から縄が落ちてきて首を絞められないように・・・との忠告は気に留めていたラウルですが、
天井の高さなどから考えて・・・あの階段で縄が落ちてくることはちょっと考えにくい(笑)。でも、マダム・ジリーからは縄の忠告しか聞いていなかったラウルは、階段を降りていく途中で水牢につながる落とし穴に落ちてしまいます。この階段から落ちるシーン・・・ちょっとだけパトリックの髪の毛が気になったのは私だけでしょうか(爆)。・・・いや、けっこう後ろにさがっていたような・・・(爆)←このシーンで気にするなっちゅうの。水に落ちたラウルの上から檻が降りてきて水中に閉じ込めようという罠があるんですが、これを見たときに真っ先に映画『タイタニック』の沈没シーンが思い浮かんでしまいました。あの時も自分がおぼれそうになった気分で見ていたんですが、今回もラウルが水の中で危機に瀕している間・・・私もなんだかおぼれた気分になってました(苦笑)。あの状況でよくレバー回せたよなぁ〜ラウル。舞台ではこうしたラウルの活劇が描かれていなかったので、映画版ラウルはなんだかとっても勇敢に見えました。

怪人の隠れ家ではクリスティーヌがファントムの「ブライダルマネキン」の衣装を着せられて、
「これで満足したの!?」と詰め寄ります。ここねぇ・・・字幕・・・直訳的には合ってるんだろうけど・・・戸田おばはんっっ!!『女の肌』だの『肉欲』だのストレートすぎやしないかね(爆)。そんなハッキリ書かなくとももうすこしオブラートに包んだ言葉もあるでしょうが。はぁ〜…大事なシーンなのにねぇ。なんか世界が違う方へ行ってしまいそうでイヤなんだよなぁ、この作品でこういう訳されるの。

と、話を戻しまして・・・クリスティーヌに攻め立てられたファントムは
『醜い顔のせいで自分は誰からも愛されないし、それが二人の愛を邪魔している』と嘆くのです・・・ううっっ(涙)哀しすぎる(T_T)。それに泣きながら歌っているジェリーの声の表情もまた泣けるんですよ〜(T_T)。特に一番私が『哀しい』と感じるのは『母にも嫌われ、最初に身につけられたのはマスクだった』と告白するところ。彼が如何に今まで孤独に過ごしていたか・・・今まで人から忌み嫌われて、絶望の中で自分の醜さを呪って生きてきたファントムの歴史がこのセリフの中に滲み出ています。そして歌っている時のジェリーの背中が泣いているんです・・・。クリスティーヌに花嫁のベールをかぶせるシーンでも、その前に彼女の顔を自分に向けようとしている仕草が・・・さっきまであんなに興奮して強引だったのが嘘のようにとっても優しいのがとても印象的。それだけファントムにとってクリスティーヌが神聖で愛しい存在なんだってことが痛いほど伝わってくるのです。そしてさらに、彼女の手のひらに優しく仮面舞踏会で奪い取った指輪を包み込ませる・・・もう、ここさらに号泣ポイントですよ〜(T_T)。このシーンを見たとき、ファントムの願いをかなえてあげたいといったいどれだけの人が思ったでしょうねぇ。しかし、クリスティーヌはもう以前までの怯えていたり憧れていただけの少女ではありません。花嫁のベールを脱ぎ去ると鏡を開いて『醜いのは顔ではなく、あなたの心の方よ』と告げるのです。ここはこの作品の中でもとても重要なシーンです。今回、怪人のメイクがあまり『醜い』と思わないと前にも書きましたが、それでもOKだと思ったのはこのセリフがあるからです。確かにファントムの顔は世間一般から見れば『醜い』部類なのかもしれないけれども、本人が卑下するほど実は醜いわけではない。それよりも、手に入れるためなら殺人まで犯してしまう、そういう心のほうがよほど『醜い』のだということを強調したかったんだと思います。現に、製作者側もそういった狙いが合ったとコメントしていますしね。そのことを今まで言ってくれる人は誰もいなかったわけで・・・このセリフを聞いた直後のファントムは一瞬とても寂しい表情をするんです(;_;)。ああ・・・切ない〜・・。

そこへ水牢から復活したラウルがヘトヘトになりながらやってきます。つい今しがたまで繊細な表情を見せていたジェラルド・ファントムですが、
ここで一気に『悪』の顔に変わるんです!いや〜、その感情の転換はほんとにお見事!『君が来るのを待っていたんだ』と不敵に笑ってラウルを中に入れた瞬間、彼に近づいていったファントムは水の中に潜ませてあったロープをラウルの首にかけ縛り首状態にしてしまいます。水攻めなどでヘトヘトになっていたラウルは縄のことを気にする余裕がなかったんですね…。実はこのシーン、どうやってラウルの首を狙うのかと思っていたのですが・・・まさか水の中からロープが出てくるとは思いませんでした(笑)。まず最初に水中から出たロープでラウルを縛りつけ、そしてあとから陸にあったロープでさらにラウルの首を吊るという・・・意外と古典的な方法、というか、舞台ではいきなりロープが出てきたりするので映画版はかなり現実的に思えました(^-^;; そしてラウルの首をロープで縛り付けながらファントムはクリスティーヌに『私と一緒になることを選ばないとこいつの命は無いぞ』と究極の選択を迫ります。それに対してラウルは『自分はどうなってもいいからファントムを愛するなんていわないでくれ』と懇願。クリスティーヌは『なぜ私をこんなに苦しめるの!?』と嘆きます。

このシーンは3人の激しい感情が一斉に歌われているので訳を入れるのはとても難しかったと思うのですが・・・そのせいか
ちょっと肝心なところが抜けていて(^-^;; ラウルが『ファントムを愛するなんていわないで』といったニュアンスのことを言っている場面に『ぼくを裏切らないでくれ』といった簡単な言葉が出てしまいました(苦笑)。これ、初めてこの物語に触れた人はラウルが命乞いをしているように思われたらしいですよ(爆)。ここまで勇敢に戦ってきたラウルが一気にこのシーンで情けない男のイメージになってしまったとは・・・哀しすぎです(;_;)。あのシーンの役は難しいというのは分りますけど、ここでこそ『彼を愛しているといわないでくれ』とストレートに訳してほしかったんですけど(苦笑)。

それはさておき(いや、置いてはいけないのだが 苦笑)、クリスティーヌに究極の選択を迫るファントムにクリスティーヌは
『あなたを信じていたのに!』と嘆きます。彼女はファントムの存在を怯えながらもやっぱり心の奥では慕っている心も捨てきれなかったんですね…。でももう後戻りできないところまで行ってしまったファントムにはその言葉は耳に届かず、まるで脅迫のように『選べ』と迫る。クリスティーヌはそんな彼の姿を見て怒りの感情から哀れみの感情が沸き起こり、静かにファントムのもとへと近づいていくのです。この時のジェラルド・ファントム・・・クリスティーヌのほうを見つめている時の目が・・・悲しみに満ち溢れているんですよ(涙)。さっきまでものすごく威勢の良かった男が、クリスティーヌが自分の方へ近づいてくるのを見つめている姿は、とても弱々しい一人の男になっている・・・。本当に抱きしめてあげたいくらい小さく見えて・・・もう今の状態が彼にとって苦しくて苦しくてたまらないというのが凄く伝わってくるんですよ(T_T)。あんな表情が出来るなんて・・・ジェリー・・・もう私ここは最大の号泣ポイントですよ…。そしてファントムに近づいていった彼女は『You are not alone』と言いながら、ファントムから渡された指輪を自分の指にはめ・・・そして優しい、気持ちのこもったキスをします。2度彼女はキスをするのですが、その2度目はファントムの醜くただれている顔を優しくなでながらキスをするんですよ(T_T)。ここ、100人体制のオーケストラ音楽もものすごく効果的に響いていてさらに涙を誘うんですよねぇ(T_T)。この2人のキスシーンはとても神々しく、見ていて心が洗われる様な・・・なんだか久しぶりに、とっても美しいキスシーンを見た気がします。このキスシーンのときのジェリーの表情も胸打ちます・・・。一度目のキスの時、彼は今まで自分が背負ってきたダークな部分が解凍していくような、人のぬくもりに初めて触れたときのどうしようもない感情を見せるんです(T_T)。それだけで、ファントムの哀しさがいやというほど伝わってくるんですが、さらに二度目のキスのときには彼はもう号泣状態なんですよ(T_T)。初めて真剣に向き合ってくれたクリスティーヌのぬくもりが全身を駆け巡った時、彼の中で何かが変わったんですね。もうねぇ・・・あそこの号泣シーンは涙なくしては見れませんよ(T_T)。あの感情は、ジェリー自身が暗闇の中を歩いていた過去があったからこそ(自殺を考えた時期もあるらしい 涙)出せたものだと思います。だからファントムの暗く哀しい部分を彼は一番理解して愛したんじゃないかな。

と、ここはものすごく感動する最大の山場シーンですよ。ところが・・・
戸田ババ・・・をっと・・・戸田おばさまっっっ!『you are not alone』『私もあなたに惹かれていたことを!』と訳したのはどういうことですか!!??劇団四季の『女の心』のときもビックリしたけど、これは更に驚きですよ(爆)。初めて映画館でこの字幕を見たとき『え!!??』と衝撃が走り素直に泣けなかったじゃないか〜〜(涙)。いや、たしかに、クリスティーヌはファントムに惹かれていた部分もあると思いますよ。でも、あのシーンではそういう『恋愛』ととれるような言葉をはっきりと載せるところじゃないと思うんですが。あそこでクリスティーヌがファントムに惹かれていたとハッキリ言ってしまうと、クリスティーヌとラウルの関係がとてもおかしいものになってしまうんですよ。そう、クリスティーヌは二股女になっちゃうんです(爆)。これは大問題!この作品のテーマが狂っちゃうじゃないですかっっ!!『you are not alone』と言っているのだから、ここは素直に『あなたは孤独なんかじゃないのよ』と訳すべきですよ。その言葉を見て、映画を見ている私たちは彼女の心の中を読むわけで、それは私たちの自由となるわけで・・・翻訳家はそこまで踏み込んじゃいけないと思うんですよね。せっかくの大感動シーンだったのにやってくれちゃいましたよ・・・ホント(涙)。もっとちゃんと映画の流れを読んでください。

さて、気を取り直し・・・。クリスティーヌのキスを受けて号泣したファントムはラウルを解放し、クリスティーヌも彼と一緒に出て行くことを許します。これは
ファントムが見せた初めての『情け』でもありますね。それは本当に断腸の思いだけれども、彼女を自分の下に縛り付けるという感情はもう消えていた。『一人にしてくれ、早く行ってしまえ』の涙の絶叫がなんとも哀しく響いていて見ているこちらとしては本当に胸が痛む(T_T)。そんななか、ファントムを捕らえようとする人たちがどんどん隠れ家に近づいてきます。メグを先頭にかなりの人数が・・・皆よく穴に落ちたりしなかったよね(笑)。追っ手がすぐそこまで来ているとき、ファントムはクリスティーヌを寝かせていた部屋で一人猿のオルゴールと向き合い『マスカレード』を寂しく歌っています(T_T)。もう、本当に消え入るような声で・・・ここまた更に私的号泣ポイント(T_T)。この時に歌われる『マスカレード』は、猿の人形を見ながらファントムが今まで自分が背負ってきた哀しみを思いながら孤独と向き合おうとしているんです・・・泣ける〜〜(涙)。そこへ、ラウルと逃げたはずのクリスティーヌが一人戻ってきます。この時、ファントムはクリスティーヌに向かって一番彼女に伝えたかった言葉『愛している』と告げます。ここのフレーズもクリスティーヌとラウルが愛を確かめ合った時のナンバーに被せているのでなおさら泣けます(T_T)。そんなファントムの元に静かに近づいていくクリスティーヌ・・・。そのとき、ジェラルド・ファントムは一瞬だけ、彼女が自分のことを選んでくれたのかというような『喜び』に似た表情を見せるんですよ・・・。この表情が、この直後の出来事を知っているものにとってはあまりにも辛すぎる(T_T)。クリスティーヌはファントムにキスする時にはめた指輪を外し、彼の手の中に優しくそれを返すんです・・・。今まで私はこのシーンはクリスティーヌがファントムを拒絶したんだと思っていたのですが、映画を見てその解釈が変わったような気がしました。たしかにクリスティーヌはラウルと生きる道を選んだけれども、彼女がファントムに指輪を渡した時・・・それは拒絶ではなく『想い』だったと思うんですね。つまり、「心はいつもあなたとともに」といった意味合いに取れるような雰囲気に思えたんです。ファントムはそんなクリスティーヌの気持ちを指輪を渡された時に悟ったから、温かい涙をあのあと流したんじゃないかな。そして彼女達が船で去っていくのを静かに見送ることが出来たんじゃないでしょうか。私はある意味、ファントムは救われたんだと思いました。ボートが消えていくまでクリスティーヌとファントムは見詰め合ってますしね・・・。この考えにたどり着くまで映画館5回分くらいかかりましけどね(爆)。でも、やっぱりクリスティーヌには傍にいてほしかったと思うなぁ・・・(涙)。2人のボートが完全に見えなくなったとき、ファントムはクリスティーヌとの永遠の別れを悟って象徴でもあった鏡を壊し、一人どこかへ消えてしまいます。そしてファントムが消えてしまった後にメグをはじめとした追っ手たちがファントムの隠れ家にやってきます。誰もいなくなった隠れ家でメグはファントムの白いマスクを見つけるのでした・・・。そう、ファントムはもうマスクをつけていないんですね・・・つまり、今までとは違った道を行ったということになるわけです。この先彼の人生がどう送られたのかは分りませんが・・・。

この一番最後のシーンの訳も納得できないんですよねぇ・・。
『ミュージック・・・オブザ・・・ナイト!』って・・・この中途半端な翻訳はどうなのよ!?(爆)。しかも、「オブザ」で切るっていうのはどうなのよ!?(爆)。これじゃあ日本語訳を出さない方がよっぽどマシです!!適当な訳が見つからなかったんだったら、あの画面に適当な日本語英語載せるのやめてもらいたいですね、ほんと!!

舞台ではメグが白いマスクを取った時点で終わるのですが、映画には
その後日談がちゃんと描かれていました。そう、老ラウルの物語です。オークションで落札した猿のオルゴールを手に、ラウルはクリスティーヌの墓を訪れます。『よき妻・よき母』と刻まれているクリスティーヌの墓から、彼女とラウルの結婚生活は平和なものだったと想定できますが・・・彼ら2人には『ファントムの存在』がいつも心のどこかに住み着いていたはず。それを表に出さずにずっと生きてきた二人は、ある意味、本当の夫婦ではなかったのかもしれません。それでも、クリスティーヌはラウルを愛し、ラウルもそんなクリスティーヌを愛し続けた・・・なんだかそう考えると切ないですね(;_;)。ラウルが落札した猿のオルゴールはまさに『ファントム』の象徴でもあります。彼はクリスティーヌの墓前にそれを供えることで心の重荷から解放されたかったのでしょう。マダム・ジリー以上に老け込んでしまったラウルの切なさがジーンと伝わってきました・・・。このあたりのパトリックの演技がすごくいいです!・・・っていうか、あの若ラウルと同一人物と言うのが本当に信じられません(^-^;;。 ところが、ふと帰り際に墓を振り返ってみると墓石の脇に黒いリボンのついた赤いバラの花一厘が!そう、赤いバラ一厘はファントムがクリスティーヌにいつも贈っていたものです。ラウルは身の凍る思いで周りを見回しますがそこには気はなく、驚きを隠せぬままバラの花を見つめるしかありません。彼はオルゴールを備えたことで解き放たれたかったのに・・・。ラウルの今後を思うと気の毒な気はするのですが、ファントムびいきの私はそれよりもやっぱり彼のことを考えてしまいます(苦笑)。黒いリボンの赤バラには指輪がかけられていました。その指輪はおそらくはクリスティーヌから最後去り際に渡されたもの…。よく見るとちょっと形が違うような気はしますが、加工したものと考えれば指輪はやはり同じものだと私は思います。ファントムは約50年間、彼女のことだけを想いながらどうやって生き抜いてきたのでしょうか。彼がバラの花に指輪を備えたのは、変わらずクリスティーヌを愛し続けているという『想い』の意味が込められています。なんとも切ないファントムの想い!!(涙)。バラの花がモノクロからカラーに変わって指輪が光を放ったとき、またさらに涙涙でございました(T_T)。ファントムとクリスティーヌは一緒にはなれなかったけれども、心の中ではどうしようもない絆があって・・・それは永遠に途切れることがないんだなと感じましたね。この後日談挿入については賛否両論あるようですが、私は好きでした…。猿のオルゴールの意味もより深いものになったし、こういう完結の仕方もありだと思います。


舞台ではこんな感じ
ピアンジの殺害で混乱したなか、ラウルはマダム・ジリーの案内で二人の行方を追います。
舞台版マダム・ジリーは映画版よりもラウル寄りなので(^-^;; 途中で案内をやめたのも『ここから先はマダム・ジリーも足を踏み入れたことがないからなんだな』と素直にに思えるんです。現に、ラウルはマダム・ジリーと別れた後上着を脱いで橋の上から湖と思われるところへ飛び込んでいるシーンがありますからね。彼女は泳げなかったのかも?ってそんなことはないと思うんですが(笑)。
ファントムは無理やりクリスティーヌを自分の隠れ家へ連れて行きますが、映画では引きずり回すように連れていましたが舞台では
ちゃんとクリスティーヌを船に乗せているシーンがあります。映画の勢いだと船にちゃんと乗せたのかも怪しい感じでしたから(^-^; 舞台のファントムのほうが興奮していてもいくらか紳士的なところが残っているように思えます。船の上でファントムはクリスティーヌに『わが身を閉ざす苦しみは全て醜い顔にある・・・いつも追いかけられているのはなぜなんだ』と涙ながらに訴えるのですが、このシーンは泣けます(T_T)。ファントムがものすごく小さな存在に見えるんです…。そんな彼を容赦なく追っ手が追い詰めていく歌がさらに拍車をかけていて胸が痛みますね(涙)。

怪人の隠れ家で花嫁衣裳を着せられたクリスティーヌはファントムを責めますが、
映画版のような『肉欲』といった描写は使っていません(爆)。いや、英語で聞けばそうなんでしょうが、劇団四季の場合は『飢えた悪魔の餌食の私』と訳していて・・・こっちのほうが俄然いいなと思ってしまう(苦笑)。訳に関しては映画を見てからますます浅利氏のものが冴えてるなと実感してしまうようになってしまったよ(爆)。で、クリスティーヌに問い詰められたファントムは母親にも嫌われていた自分を告白し、彼女に花嫁のベールを被せ『この運命に従え』と強制するのです。このベールの被せ方は映画よりも舞台のほうが乱暴で、何が何でも自分のものになれというファントムの興奮が伝わってくるようになっています。花嫁姿のクリスティーヌダミー人形ですが、このシーンではバラバラに壊されているのも特徴的ですね。そして、映画ではこの時点でクリスティーヌに指輪を渡していましたが、舞台では『ポイント・オブ・ノーリターン』のラストでファントムから授けられているので既にクリスティーヌの指には指輪がはめられています。強引に迫るファントムにクリスティーヌは『醜さは顔ではなく心の方よ』と告げますが、その言葉をファントムは素直に受け入れることが出来ません。このあたりは映画とほぼ同じですね。ファントムの切なさは舞台でも十分伝わってきて哀しいです(T_T)
そこへ
全身濡れて服もボロボロのラウルが隠れ家にフラフラとたどり着きます。映画ではラウルが落とし穴に落ちたり水牢攻めに合いそうになったりといったシーンがありましたたが、舞台ではラウルがたどり着くまでの過程がないので、そのボロボロの様子から『大変な目に遭ったんだ』ということを私たちは想定するわけです(^-^;。服がぬれているのはおそらくマダム・ジリーと別れた後に飛び込んだからだと思うんですけどね。それでも必死に入れるように懇願するラウルを中にファントムが入れるのは映画と同じですが、そのあとのシーンがちょっと舞台のほうがミステリアスです。映画では水の中からファントムが手でロープをラウルめがけて投げつけて縛っていましたが、舞台ではなぜか上から不思議なわっかになったロープが下がっていて(^-^;、ファントムはラウルがクリスティーヌと無事を確認しあっている隙にそのわっかになったロープを彼の首にかけて首吊り状態にするのです。舞台版のこのシーンをみると、映画版はとても原始的に見える私(笑)。

そしてファントムはクリスティーヌに究極の選択を迫ります。
ラウルを助けるためには自分を愛するように強要するファントム・・・この時のファントムはもう見ていてものすごく痛々しいんですよ(T_T)。もう自分でもどうしようも止められないところまで行ってしまって、彼自身も後戻りは出来ない状態なんですね…。そこまで追い詰められてしまったファントムにどうしても感情移入してしまいます。ただ、クリスティーヌは『悲しみの涙は憎しみの涙に変わる』と言うんですけど、舞台ではクリスティーヌがいつファントムのために悲しみの涙を流していたのかがイマイチ伝わってこないんですよねぇ…。なので、なおさらファントムが哀れに思えていつも彼に肩入れしては涙してしまう私なのです(T_T)。クリスティーヌはラウルを守るために彼の前で盾になったり、彼の傍でファントムに向かって祈るように懇願しながら歌っています。映画では水浸しの中でラウルは縛り上げられていましたが、舞台ではあれはおそらく陸の上ということになるからでしょうか・・・クリスティーヌは必死にラウルの傍で彼を守ろうとしているんです。このあたりが映画のシーンと違うところですね。ちなみに、映画の訳でラウルが『僕を裏切らないで』と言ったシーンは舞台では『僕を見捨てろ』とちゃんと言っています。四季の役のほうが的確ですわ…。

ファントムが
『許さない、どちらかを選べ』と告げたとき、クリスティーヌは静かにファントムのもとへ近づき『絶望に生きた哀れなあなた、今私の心を見せてあげる』とキスをするのです(この時ラウルは思わず2人から目をそらしてしまいます 涙)。ここの訳は劇団四季の方がものすごくキレイで好きです。一時『私の心』『女の心』と歌わせていたのはちょっと引いたんですけど、現在はまた『私の心』に戻っているのでこちらのほうがしっくり来ますね。少なくとも、映画版の誤訳よりはずっといいわけで…(苦笑)、なんだか四季の訳が今まで以上に素晴らしく思えてしまう(^-^;;。クリスティーヌは映画と同じく2度ファントムにキスをするのですが、舞台のほうがここはものすごく濃厚に見えます。ここは女優さんによって様々なのですが、以前私が見たときはものすごい強引に激しくキスをしたのでビックリした記憶があります(爆)。その時々によって色々な感情があるんでしょうねぇ。私的には今のところは映画版のほうが好みなんですけど・・・でも、舞台版も女優さんのそれぞれの反応が違っていて見応えがあると思います。で、キスをされたファントムなのですが・・・映画ではクリスティーヌにキスをされて号泣していましたが(涙)、舞台では2度目のキスをされているとき彼女を抱きしめたい感情が押し上げてきて、手を震わせながらもう少しで抱きしめるというところまでいく仕草を見せるんです(涙)。ここはかなり泣けます(T_T)。キスをしてくれている彼女を思いっきり抱きしめたいのに、彼は結局それを寸でのところで押し留めてしまうんです・・・(涙)。このシーンは毎回涙なくしては見れませんね。ファントムの切なく哀しい想いが痛いほど伝わる場面なんですよ…。そしてキスをした後のクリスティーヌもここで彼を想って泣いているんですねぇ・・・。この時初めてクリスティーヌがファントムに想いをささげたんだと思えました。それまでは本当にファントムのことを拒絶しまくってますので(^-^;。

そしてファントムは呆然としながらも
フラフラと自分の作曲台にあるろうそくを手に取り、ラウルのほうへ視線をやります。ここからの間がけっこう長いので、見ているほうとしてはファントムがラウルにその炎を向けるのではないかとドキドキするんですが、ファントムは自分の想いを断ち切るようにラウルを吊るしていたロープをその炎で断ち切るのです。ラウルの元に駆け寄るクリスティーヌを見たファントムは『船に乗って出て行け、一人にしてくれ』と絶叫しますが・・・この絶叫が涙交じりでものすごく痛々しい(T_T)。映画のジェラルド・ファントムは消え入るような声で『一人にしてくれ』と言っていましたが、舞台版のファントムは本当に涙ながらに『一人にしてくれ』と絶叫するんですよ・・・。ここは舞台でも本当に泣けます・・・。そして、猿のオルゴールが鳴り出すのですが、映画ではこのオルゴールと向き合いながら歌っていたファントムですが、舞台では離れたところにオルゴールがあってファントムはクリスティーヌに被せた花嫁のベールを握り締め、その音を聞きながら『マスカレード、仮面に隠れて生きてきた人生』と一人孤独をかみ締めて歌うんです(T_T)。ここも涙なくしては見れません・・・。
そこへ、クリスティーヌが指輪を返しにやってくるのですが・・・ここは
舞台よりも映画のクリスティーヌのほうが感動的です。舞台版ではどうしてもクリスティーヌが指輪を返すシーンが『ファントムを拒絶した』っていうふうに見えちゃうんですよ・・・だからなおさらファントムが哀れに思えて涙しちゃうんですけどね。そして、ラウルとクリスティーヌが2人ボートで愛の歌を歌いながら去っていったのを涙ながらに見送ったファントムは、『自分の愛はもう終わってしまった』と言って姿を消してしまいます・・・。このラストのフレーズは一番の盛り上がりどころで、毎回毎回聞くたびに涙が止まりません(T_T)。映画よりも舞台のファントムのほうがラスト、孤独感がすごく強く出ているように思えますね…。で、最後のファントムの消え方ですが、ここも映画とは違います。映画では鏡を割って3枚目の割れた鏡の中に自ら姿を消していますが、舞台では猿のオルゴールがある場所に黒い椅子があって、歌い終わった後ファントムはそのイスに座り真上から黒いマントを被せて自分は全く見えない状態にします。そこへ、追っ手とともにメグが隠れ家の中へ入ってきて椅子の存在に気がつき、覆いかぶされていたマントをバサーッとはがすとそこにはファントムの姿はなく、白いマスクだけが残されていてメグはそれを手に取りファントムが消えてしまったことに唖然とするのです。ここで舞台版は終了。ラウルの後日談もなく、消えてしまったファントムがどうなってしまったのかという謎を色濃く残したミステリアスなラストになっています。


後記

気がつけば、ものすごい長い文になってしまった(爆)。自分が夢中になったものってどうも上手く短くまとめられなくて…ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございましたm(__)m。もともと、『オペラ座の怪人』は初めて劇団四季で観た時からものすごく大好きな作品でして、今回の映画化はそんな私にとって本当に待ちに待った嬉しい知らせでした。なんといっても舞台1本分の代金よりも安く何度も観に行けるというのが大きい(笑)。でも、この映画版『オペラ座の怪人』に関しては本当に自分の好みにスッポリ当てはまる素晴らしいもので、何度も映画館に足を運ばせる力がものすごくありました。100人体制のオーケストラで聞く音楽はやっぱりすごかった!体中に音楽が駆け巡る感動を味あわせてもらいました。そして何より役者が良かった!特に主演のジェラルド・バトラーさんはこの映画で初めて知ったのですが、本当に素晴らしい演技を披露してくれて・・・今まで以上にファントムを愛しい存在にしてくれて本当にありがとうと言いたいです。彼にはもう大感謝!おかげで、ジェラルド・バトラーという俳優にも興味を持つきっかけとなり、今後の彼の作品は全てチェックしていこうと思っています。ジェリー、大好きです(^o^)←すっかりファンモード(笑)。クリスティーヌのエミー・ロッサムラウルのパトリック・ウィルソン、そのほかの役者さんたちも魅力的で上手い人たちが多くて・・・本当にこの映画にかかわってくれてありがとう!と伝えたいですね。
アカデミー賞は取れなかったけれども、日本ではこれだけ熱狂的な支持を受けた映画『オペラ座の怪人』。来日会見では『賞を取ることよりもお客さんに喜んでもらえる方が嬉しい』と言っていたシュマッカー監督の言葉が印象に残っています。素晴らしい映画をありがとうございました(^o^)。
ちなみに、舞台のほうも映画とは違った感動・魅力がたくさんです。これを機会にぜひ観に行ってみてくださいね。



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アイコンはUS公式および韓国公式サイトより拝借しました